特集:all about CAFE 東京カフェマニア  
  新宿DIG DUG物語〜あるジャズ喫茶の歴史  page 1 of 4
  「この店に刻まれた歴史は、すべてが本物です。ジャズ。店に集まってきたミュージシャンたち、常連客たちさえも」 
  親子二代にわたってDUGに通い続けている常連客は、そう言います。

  時代の象徴となったジャズ喫茶の歴史を、オーナー中平穂積氏のご子息、中平塁さんと二人の常連客にうかがいました。




いつの時代にも、そのとき街に漂っていた空気の象徴として記憶されるカフェがあります。

21世紀の東京では、その「時代」そのものがおそろしく短くなりました。
2000年を象徴するのは、あのカフェ。
2001年ならあのカフェ…という具合に。
いや、もはやとっくに、たったひとつのカフェが今の気分を象徴することなど、できない時代になっているのかもしれません。

新宿に、60年代、70年代の熱い日々の歴史を刻み込んだカフェがあります。
モダンジャズの時代。
「ジャズ的な生き方」に多くの人々が心酔した時代。
そんな時代のひとつの象徴として語られる偉大なカフェの名は、
DIGと、2軒目として開店したDUG。

ある人々は真剣にジャズを聴くために通い、
ある人々はそこで誰かに出会って話をするために通い、
ある人々はファッションとして訪れ、
またある人々は、ただ遠くから憧れをもって眺めるだけだった、
ジャズ喫茶DIGとDUG。

その名は「あの頃」を雄弁に語る記号として、さまざまなところに刻印されました。たとえば村上春樹の小説の中には、こんなくだりがあります。

…ドイツ語の授業が終わると我々はバスに乗って新宿の町に出て、紀伊国屋書店の裏手の地下にあるDUGに入ってウォッカ・トニックを二杯ずつ飲んだ。
…僕は黙ってセロニアス・モンクの弾く「ハニサックル・ローズ」を聴いていた。
『ノルウェイの森』 村上春樹

『ノルウェイの森』は学生運動が頂点を迎え、やがて収束していった時代に設定されていますが、そのとき、ジャズ喫茶でジャズを聴くことは何をあらわしていたのでしょうか?

「DUG」が生まれたのは忘れもしない1967年だった。…それは一方ですべての分野を通して社会の歪みに向かって異議申し立てを行っていた時期でもあり、新たな社会を目指した共通認識で一体化が始まったときでもあった。
ある意味において、「DUG」の開店はそうした時代を反映していたともいえる。ジャズを聴くということは、必ずしもその音楽だけを聴くことではない。音楽を媒介として時代感覚を享受することでもあった。

中平さん(註:DUGのオーナー中平穂積氏のこと)はそうした文化の中心にいた。

『一枚の写真の重要性』 内田繁(インテリアデザイナー)

往年のDIGやDUGには、どんな時間が流れていたのでしょう。そして、かくも人々を熱狂させたジャズ喫茶とはいったい何だったのでしょうか。伝説のオーナー・中平穂積氏の息子さんである中平塁さんと、15年近くに渡ってDUGに通い続けているというTさんにお話をうかがいました。 
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