Doris Lessing


ドリス・レッシング

last updated: 26 April 2017

Biography +++

【生没】 1919.10.22 - 2013.11.17 (大正8年、未年生まれ)
【家族】 両親ともにイングランド人。農業をするため、1925年にベルシャ(現イラン)から南ローデシア(現ジンバブエ)へ一家で移住。その後、約25年間をアフリカの地で暮らす。
M.スパークも1944年までの数年間を南ローデシアで過ごした)
【仕事】 15歳で家を離れ、メイドとして働く。そこで政治や社会学の本を読み、執筆を始める。1949年、息子を連れてイギリスへ渡り、翌年デビュー作を発表。再び、南アフリカを訪れるのは46年後。
1980年代、出版界における知名度の重要性を試すため、Jane Somersという別名で小説を投稿したが、出版社に断られた。
【功績】 2001年、David Cohen Prize(1997年、M.スパークも受賞)。2007年ノーベル文学賞(歴代最高齢)。2008年、タイムズ誌の「戦後の偉大な英国人作家50人」で5番目にランクイン。
【結婚】 19歳の時、Frank Wisdomと結婚し、子ども2人を出産するが1943年に離婚。1945年、Left Book Clubで知り合ったGottfried Lessingと再婚し、息子を出産、1949年離婚。

 

Bibliography +++

The Grass is Singing (1950)
『草は歌っている』 山崎勉・酒井覚(訳) <晶文社・1970/新装版・2007>
Martha Quest (1952)
Children of Violenceシリーズ第一巻。
A Proper Marriage (1954)
Children of Violenceシリーズ第二巻。
A Ripple from the Storm (1958)
Children of Violenceシリーズ第三巻。
The Golden Notebook (1962)
1976年Prix Medicis受賞。
『黄金のノート』 市川博杉(訳) <英雄社・1983/エディフォア・2008>
Landlocked (1965)
Children of Violenceシリーズ第四巻。
The Four-Gated City (1969)
Children of Violenceシリーズ第五巻。
Briefing for a Descent into Hell (1971)
The Summer Before the Dark (1973)
45歳の専業主婦Kateは、結婚後ひさしぶりに1人の自由時間ができ、自分探しの旅に出る。
『暮れなずむ女』 山崎勉(訳) <三笠書房・1975/水声社・2007>
The Memories of a Survivor (1974)
『生存者の回想』 大杜淑子(訳) <サンリオ文庫・1984/水声社・2007>
Canopus in Argos: Archives Re: Colonised Planet 5, Shikasta (1979)
シリーズ第一巻。
『シカスタ:アルゴ座のカノープス』 大杜淑子(訳) <サンリオ・1983/水声社・2007>
Canopus in Argos: Archives The Marriages Between Zones Three, Four and Five (1980)
シリーズ第二巻。
Canopus in Argos: Archives The Sirian Experiments (1981)
ブッカー賞候補。シリーズ第三巻。
Canopus in Argos: Archives The Making of the Representative for Planet 8 (1982)
シリーズ第四巻。
Canopus in Argos: Archives The Sentimental Agents in the Volyen Empire (1983)
シリーズ第五巻。
The Diaries of a Good Neighbour (1983)
『夕映えの道-よき隣人の日記』 篠田綾子(訳) <集英社・2003>
Jane Somers名義で出版。2001年仏映画化(監督:ルネ・フェレ)
@女性ファッション誌の有能な副編集長ジャンナは、母と夫を癌で亡くし、中年の未亡人としての孤独感を覚え不安だった。「死」という事実から目を背け、亡き2人の最期を見届けることができなかった罪悪感から、近所の老人たちの世話に関心を持ち始める。そんな折、ジャンナの興味をひいたのがモーディーという90歳を超える老女だった。面倒を見てくれる身内はおらず、1人貧しい生活をなんとか送っている彼女は、ひどく気難しく自尊心が高い。だが、上質なもの、本物を知ってもいる彼女に、知らず知らずのうちにジャンナは惹かれていき、献身的に面倒をみるようになる。ヘルパーなどあらゆる介護の要請を断ってきたモーディーも、友情を持って接してくれるジャンナに対して心を開くようになっていく。

 

翻訳書で読みました 仕事一筋で生きてきたスタイリッシュな女性が、ある老女との関りによって、今まで知らなかった世界大戦の頃の実情や老人たちの過酷な実態を知り、徐々に老い・死と向き合うようになっていきます。自分を完璧に飾り立てるジャンナと、洗濯もままならないモーディーはまるで正反対です。最初はモーディーの部屋の余りの悪臭に辟易としていたジャンナですが、だんだん気にならないようになっていき、身内でもない老女の下の世話までするようになります。一方、親友でもありジャンナと共に第一線で仕事をこなしてきた編集長が、仕事よりも家庭を選ぶなど、ジャンナも自分のこれからの人生をゆっくりと見つめる機会が訪れます。
 いずれ誰にでも訪れる、避けようのない「老い」から逃げずに、しっかりと向き合っていかなかればならない。こんな想いを抱かせてくれる作品です。20代の私には、あまり身近ではないのですが、親の介護という現実はそう遠くはないのです(もちろん、まだまだ元気でいてほしいですが)。その時には、私は現実から逃げないような人間になっていたいですね。40代になって読むと、また違う捉え方ができるのだろうと思います。(2008年10月)

If the Old Could (1984)
Jane Somers名義で出版。
The Good Terrorist (1985)
ブッカー賞候補。1985年W.H.Smith Literary Award受賞。
The Fifth Child (1988)
『破壊者ベンの誕生』 上田和夫(訳) <新潮文庫・1994>
2007年映画化(監督:ウダヤン・プラサッド)
@理想だけで築かれた家庭を、5番目の子どもが現実へ引き戻す!
舞台は1960年代のロンドン郊外。古風な思想を持ち、自分たちが最も正しいのだと確信しているデイヴィッドとハリエットの夫婦は、広大な家でたくさんの子どもたちに囲まれ、家族や親せきが集う場所、という夢のように幸せな家庭を築く。だが、その幸福は父親の金銭的援助、母親の献身的支援がなければ、到底なりたたないものだった。
そんな中、5番目の子どもができてしまう。今までにない動きと痛みに恐怖を感じるハリエットだが、夫も医師もまともに相手をしてくれない。狂気ともいえる妊娠期間を経て誕生したベンは、ほかの子どもとは似ても似つかない赤ん坊だった。
自分たちの理解を超える子どもを、家族は見ようとせず、排除しようとする。だが、ハリエットだけはかわいそうなベンを見捨てられず、一家は離散してしまう。

     

翻訳書で読みました ハリエット以外の家族たちは、理解の範疇を超えた生き物に対する恐怖から、幼いベンを無視し続けます。そしてベンを産み落としたハリエットすらも、軽蔑の眼差しで見るようになります。確かに不可解なものを受け入れるのは難しいものです。特に大人になればなるほど、そうかもしれません。そして、子どもたちはそんな大人たちの態度から学んでしまうのです。
読み終わった後、この話について考える時間を持たないともったいないですよ。とらえどころがない、わかりづらい話、として終わってしまえば、それはベンを理解しようと努力しなかった家族と同じではないでしょうか。答えを出す必要はないと思います。ただ、自分だったらベンにどのような態度をとれたかを考えるだけでいいのです。レッシングが突き付けた問題から目をそらさずに向き合うことで、自分を成長させられるはずです。
少し変わった小説を読みたい時に選んでみてください。(2012年8月)
【幸福指数 5%  陰鬱指数 95%  恐怖指数 90%  幻想指数 40%】

Playing the Game (1995)
Charlie Adlardによるイラスト入り。
Love, Again (1996)
イギリス演劇界が舞台の恋愛小説。
『ラブ・アゲイン』 山本章子(訳) <メディアート出版・2004>
Mara and Dann; An Adventure (1999)
Ben, in the World (2000)
『破壊者ベンの誕生』続編。
The Sweetest Dream (2001)
The Story of General Dann and Mara's Daughter, Griot and the Snow Dog (2005)
Mara and Dannの続編。
The Cleft (2007)
Alfred and Emily (2008)
タイトルは両親の名前。

 

Collection +++

This Was the Old Chief's Country (1951)
Five (1953)
"A Home for the Highland Cattle", "The Other Woman", "Eldorado", "The Antheap", "Hunger"の全5作を収録。1954年Somerset Maugham Award受賞。
The Habit of Loving (1957)
全17作収録。
収録作品:"The Habit of Loving", "The Words He Said", "The Woman", "Through the Tunnel", "Lucy Grange", "Pleasure", "A Mild Attack of Locusts", "The Witness", "Flavours of Exile", "Getting Off the Altitude", "A Road to the Big City", "Flight", "The Day Stalin Died", "Plants and Girls", "Wine", "He", "The Eye of God in Paradise"
『20世紀イギリス短編選』(下) <岩波文庫・1987>
レッシングの「愛の習慣」ほかM.スパークM.ドラブルS.ヒル収録
『笑いの遊歩道 -イギリス・ユーモア文学傑作選』 <白水Uブックス・1990>
レッシングの「歓び」(沢村潅訳)ほかディケンズなど全12作収録
A Man and Two Women (1963)
全19作収録。
収録作品:"One Off the Short List", "The Story of Two Dogs", "The Sun between Their Feet", "A Woman on a Roof", "How I Finally Lost My Heart", "A Man and Two Women", "A Room", "England versus England", "Two Potters", "Between Men", "A Letter from Home", "Our Friend Judith", "Each Other", "Homage for Isaac Babel", "Outside the Ministry", "Dialogue", "Notes for A Case History", "The New Man", "To Room Nineteen"
『一人の男と二人の女』 行方昭夫(訳) <福武文庫・1990>
「陰の友」「わが友ジューディス」「一人の男と二人の女」「あまり愉快でない話」 収録
『ドッグ・ストーリーズ』(上) <新潮社・1990>
レッシングの「二匹の犬の物語」ほかレイモンド・カーヴァーなど全16名による、犬が登場する短編集
『イギリス:世界の文学』(4) <集英社ギャラリー・1990>
レッシングの「アイザック・バベルに敬意をこめて」(市川博彬訳)ほかマードックM.スパークの作品も収録
『超短編小説 世界編』 <文芸春秋・1989>
レッシングの「イサーク.バーベリー賛歌」収録
African Stories (1964)
全18作収録。
収録作品:"The Black Madonna", "The Trinket Box", "The Pig", "Traitors", "The Old Chief Mshlanga", "A Sunrise on the Veld", "No Witchcraft for Sale", "The Second Hut", "The Nuisance", "The De Wets Come to Kloof Grange", "Little Tembi", "Old John's Place", "'Leopard'" George", "Winter in July", "A Home for the Highland Cattle", "Eldorado", "The Antheap", "Hunger"
『イギリス文学20世紀-世界短編文学全集』(2)/『現代の世界文学』 <集英社>
レッシングの「黒いマドンナ」(小津次郎訳)収録
The Story of a Non-Marrying Man (1972)
全13作収録。
収録作品:"Out of the Fountain", "An Unposted Love Letter", "A Year in Regent's Park", "Mrs. Fortescue", "Side Benefits of an Honourable Profession", "An Old Woman and Her Cat", "Lions, Leaves, Roses...", "Spies I Have Known", "Report on the Threatened City", "Not A Very Nice Story", "The Other Garden", "The Story of a Non-Marrying Man", The Temptation of Jack Orkney"
This Was the Old Chief's Country : Volume One of Doris Lessing's Collected African Stories (1973)
This Was the Old Chief's Countryの全作品とFiveからの3編を収録。
収録作品:"The Old Chief Mshlanga", "A Sunrise on the Veld", "No Witchcraft for Sale", "The Second Hut", "The Nuisance", "The De Wets come to Kloof Grange", Little Tembi, "Old John's Place", "'Leopard' George", "Winter in July", "A Home for the Highland Cattle", "Eldorado", "The Antheap"
『老首長の国:ドリス・レッシング アフリカ小説集』 青柳伸子(訳) <作品社・2008>
「老首長ムシュランガ」「草原の日の出」「呪術はお売りいたしません」「二つ目の小屋」「厄介もの」「デ・ヴェット夫妻がクルーフ農場にやってくる」「リトル・テンビ」「ジョン爺さんの屋敷」「レパード・ジョージ」「七月の冬」「ハイランド牛の棲む家」「エルドラド」「アチ塚」「空の出来事」 収録
The Sun Between Thier Feet : Volume Two of Doris Lessing's Collected African Stories (1973)
The Habit of Lovingから8作品他、アフリカの短編を全21作収録。
収録作品:"Spies I Have Known", "The Story of a Non-Marrying Man", "The Black Madonna", "The Trinket Box", "The Pig", "Traitors", The Words He Said, "Lucy Grange", "A Mild Attack of Locusts", "Flavours of Exile", "Getting Off the Altitude", A Road to the Big City, "Plants and Girls", "Flight", "The Sun Between Their Feet", "The Story of Two Dogs", The New Man, "A Letter from Home", "Hunger"
To Room Nineteen : Collected Stories Volume One (1978)
全18作収録。
収録作品:"The Habit of Loving", "The Woman", "Through the Tunnel", "Pleasure", "The Day Stalin Died", "Wine", "He", "The Other Woman", "The Eye of God in Paradise", "One Off the Short List", "A Woman on a Roof", "How I Finally Lost My Heart", "A Man and Two Women", "A Room", "England versus England", "Two Potters", "Between Men", "To Room Nineteen"
『ドリス・レッシングの珠玉短編集―男と女の世界』 羽多野 正美 (訳) <英宝社・2001>
「トンネルを抜けて」「バカンス」「屋根の上の女」「候補リストにもれて」「十九号室へ」 収録
The Temptation of Jack Orkney : Collected Stories Volume Two (1978)
全17作収録。
収録作品:"Our Friend Judith", "Each Other", "Homage for Isaac Babel", "Outside the Ministry", "Dialogue", "Notes for a Case History", "Out of the Fountain", "An Unposted Love Letter", "A Year in Regent's Park", "Mrs. Fortescue", "Side Benefits of an Honourable Profession", "An Old Woman and Her Cat", "Lions, Leaves, Roses...", "Report on the Threatened City", "Not a Very Nice Story", "The Other Garden", "The Temptation of Jack Orkney"
『猫好きに捧げるショート・ストーリーズ』 <国書刊行会・1997>
レッシング「老女と猫」(大社淑子訳)ほかP.ライヴリーの作品を含め全21作品収録
London Observed; Stories and Sketches (1992)
全18作収録。
収録作品:"Debbie and Julie", "Sparrows", "The Mother of the Child in Question", "Pleasure of the Park", "Womb Ward", "Principles","D.H.S.S.", "Casualty", "In Defence of the Underground", "The New Cafe", "Romance 1988", "What Price the Truth?", "Among the Roses", "Storms", "Her", "The Pit", "Two Old Women and a Young One", "The Real Thing"
The Grandmothers (2003)
"A Love Child""The Grandmothers""Victoria and the Staveneys""The Reason For It"の4作収録。
『グランド・マザーズ』 <集英社文庫・2009>
表題作のほか、「ヴィクトリアの運命」「最後の賢者」「愛の結晶」収録

 

Others +++

The Wind Blows Away Our Words (1987)
『アフガニスタンの風』 加地永都子(訳) <晶文社・1988/新装版・2001>
翻訳書で読みました 1986年にレッシングがパキスタンを訪ねたときの話を書いたものです。1部「カッサンドラーは髪をふりほどいた」では、ギリシア神話を元にして、地球の現状を述べ、2部「われらの叫びは風に流される」では、ソ連侵攻下のアフガニスタンから難民が流れ来るパキスタンの町ペシャワルを訪れたときの様子を詳しく書いています。アフガニスタンで必死に戦闘するムジャヒディンや自由を制限された女性の視点から、ソ連侵攻を見ることができます。3部「レジスタンス戦士タジワル・カカール夫人は語る」は、女性戦士のインタビューを掲載、4部「西側の意識の不思議」では、欧米の人たちのアフガン侵攻への関心について意見を述べています。2001年9月11日にアメリカのテロ攻撃を受けて以来、アフガニスタンの名前をひっきりなしに聞きますが、それよりもずっと前、まだまだアフガニスタンという国がなきに等しかった頃の話です。報道ではなかなか知ることのできないアフガニスタンの実状を、アフガンの人たちの視点から伺うことができる貴重な資料だと思います。
Under My Skin: Volume One of My Autobiography (1994)
アフリカでの子ども時代から1949年にロンドンへ渡るまでの自伝。James Tait Black Prize for best biography受賞。
Walking in the Shade: Volume Two of My Autobiography (1998)
1949年から1962年までのまでの自伝。
Time Bites: Views and Reviews (2004)
Ninety-nine Novels: The Best in English since 1939 (1984)
1939年から1983年の作品群の中から、アンソニー・バージェスが個人的に選び抜いた小説たち。『黄金のノート』ほか、E.ボウエン『日ざかり』、I.コンプトン‐バーネット『The Mighty and Their Fall』、I.マードック『鐘』、M.スパーク『マンデルバウム・ゲイト』『The Girls of Slender Means』が挙げられている。

 

References +++