How to Maintain Tube-Equipment 真空管式機材のメンテナンス
真空管の寿命とトラブル


真空管の寿命

真空管は消耗品である。真空管全盛期、業務用オーディオ機器はほとんどすべて真空管を使っていたわけだが、一定時間稼動させた真空管は無条件に交換されていた。秋葉原のジャンク屋の店先で、赤い字でNHKとプリントされた球が二束三文で売られていたのは30年くらい前のことだったろうか。

さきに電子機器の寿命は温度に影響を受けることを書いたが、真空管も同じである。酷使すれば非常に短期間に駄目になるが、余裕のある良い状態で使ってやると10000時間以上にわたって安定して動作する。一般論として、真空管の寿命は5000時間と言われている。5000時間ということは、毎日5時間通電すると1000日でベルが鳴るわけだ。温度が重要な因子であるため、常に高温でめいっぱいの動作を強いられるパワー管の寿命は短めで、電圧増幅管は寿命が長い。最も寿命が短いのは整流管なのだが、なんといっても過負荷で酷使されるギターアンプのパワー管が最も短命だろう。

真空管の寿命を決定するもうひとつの因子は、誰がどんな環境、どんな品質管理のもとで製造したかである。電極の処理がしっかり行われていて、管内の不純物が少なく、高い真空度が維持されている球は寿命が長い。そのような恵まれた製造環境というと、米国のRCA、GE、SYLVANIAといったブランドが作られた工場と、独逸のTELEFUNKEN配下の一連の工場で作られたものである。戦時中の日本の製造技術はお粗末そのものであったが、戦後、テレビが普及する頃の東芝、NEC、松下の製造技術は世界に誇れるレベルに達していた。旧ソ連の技術も捨てたものではない。今頃になってミグ戦闘機に搭載された球が秋葉原に並んでいる。それ以外の国になるとだんだん怪しくなってくる。

私は日常使用してるアンプに使っている球は、パワー管なのに15000時間以上安定して稼動した球がある。プリアンプで使用している球は20000時間経っていまだに健在でまだ寿命になっていない。球を痛めない回路設計というのもあって、よく管理してやれば真空管は意外に長持ちしてくれるものである。


良く起こるトラブル

故障の発生頻度は両側が持ち上がった「バスタブ・モデル」で表現される。使用し始めてしばらくの間は故障が出やすいが初期故障が落ち着くと一旦安定期にはいり、ある時間が経つと寿命による故障が増えてくる。真空管の故障も同様である。機材を使いはじめてしばらくの間に生じる初期故障には以下のようなものがある。但し、機材側には不具合がないことを前提に書いてある。

  • ガサガサ、ボソボソ・ノイズ・・・球の不良の場合と、ソケットとの接触不良とがある。古い球はピン(足)が錆付いていることがある。磨いてやれば元に戻る。
  • ブーンというハム・・・球の不良である。主にヒーターの絶縁不良。
  • 周囲の振動を拾ってしまう・・・球の不良である。管内の工作精度が悪く、電極保持がしっかりしていないため。
  • 叩くとカ〜〜〜ンと音がしてなかなか消えない・・・球の不良である。管内の工作精度が悪く、電極保持がしっかりしていないため。
  • ピー、ギャーと発振する・・・球の不良ともいえるし、機材の設計が甘く安定性に欠けるともいえる。
  • 音が出ない・・・球の不良である。
  • ガラス管内が白い・・・ガラスにクラックがあって空気が入ってしまった。オワリ。

経年変化による劣化、不良には以下のようなものがある。

  • ガサガサ、ボソボソ・ノイズ・・・寿命による球の劣化である。
  • ヒーターが切れた・・・寿命による球の劣化である。
  • バチバチ、ボッ、ボッと音がして、中でスパークしている・・・寿命による球の劣化である。
  • ピーと発振した、耳には聞こえないが高い周波数が出ている・・・球の不良ともいえるし、機材の設計が甘く安定性に欠けるともいえる。
  • 音が出なくなった・・・球の寿命である。そうなる前にすでに性能は落ちていることが多い。
  • 音が少し小さくなった・・・球の寿命である。すでに性能は落ちている。
  • パワーアンプでバイアスが調整しきれない・・・球の寿命である。すでに性能は落ちている。

どちらともいえないものを挙げてみた。

  • 電源をONにするとヒーターがピカッと光る・・・今にもヒーターが切れそうで不安になるが、これは不良ではない。気にしなくてもよい。
  • 管内のプレート(ヒーターではない外側の金属枠)が赤熱する・・・球の不良あるいは調整の不良、アンプ側のトラブルなどで電流が流れすぎている。放置すると球が駄目になり、アンプも壊れる。
  • 球を振るとカラカラ音がして、よく見ると金属片やガラスの破片がはいっている・・・金属片が電極に接触しない限り真空管は正常に動作をする。機材を一切動かさないなら放置してもいいし、運んだりするのであれば交換する。
  • ガラス管がベースから浮いてがさがさになっている・・・球の不良である。瞬間接着剤やセメダイン・スーパーXなどの耐熱性ボンドで固定すれば直る。
  • 足が歯抜けである・・・球によっては用のない足が省略されているからである。
  • ガラス管が傾いている・・・よくあることである。真空管は、電気的に正常に動作すればかまわないという考えで作られている。
  • 青白く光るものと光らないものとがある・・・よくあることである。青白い光の有無は真空管の動作や音には関係ない。
  • 真空管は、電気的に正常に動作すればかまわないという考えで作られている。
  • センターピンが折れた・・・黒い樹脂製のベースを履いた球はセンターに位置決め用のセンターピンが生えている。これが折れてしまうとどの向きにも挿せてしまうので危険である。どうしても使わなければならない時は、足の部分を良くみて正しい向きに挿すこと。なお、真空管の中身は、球によって向きがずれているのが普通!なので球を見ただけで向きを判断してはいけない。
  • トランスがすごく熱くなっている・・・電源トランスは、フルに動作させると触れないくらいの温度になるという前提で設計されている。但し、焦げ臭いとか異常な音がする場合は故障だと思った方がいいだろう。

寿命・劣化の判断

正常に動作してはいるが、そろそろ球の寿命かどうかを判断する材料には以下のものがある。

  • ガラスの内側に鏡のように光るものが塗られている(ゲッターという)。これはガラス管内のガスを吸着して真空度を保つ役目があるが、寿命になってくるとこれが透明に禿げあがってくる。
  • ガラス内壁の黒ずみ・・・新品の真空管のガラス内壁には黒ずみはない。寿命とともに足の周辺を中心にガラス内壁に黒い文様が現れる。

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