How to Maintain Tube-Equipment 真空管式機材のメンテナンス
真空管式機材の取り扱い


真空管の動作

熱せられた金属からは電子が飛び出しやすい、という性質がある。このような状態になった電子を熱電子という。真空管は、熱電子の性質を使ったデバイスである。熱電子を効率的に発生させるためには金属を赤くなるくらいに熱しなければならない。それを行うのがヒーターである。真空管の中心部には電熱器と同じヒーターがあって、そこに電流を流すことでヒーターのまわりにあるカソードと呼ばれる金属の筒を赤熱させるしくみになっている。古いタイプの真空管では、カソードがなくて赤熱したヒーターそのもの(これをフィラメントという)から熱電子を飛び出させるものもある。プリアンプやパワーアンプの初段などでよく使われる12AX7の場合、ヒーターは6.3Vの電圧をかけて0.3Aの電流を流しているので消費電力は1.89Wになる。12AX7が2本あれば3.88Wになる。パワーアンプでよく使われるEL34くらいになると6.3V×1.5Aで9.45Wもの電力を消費する。ヒーターが消費するエネルギーは単に熱になって飛んでいってしまって、ほかに何の仕事をするわけでもない。

真空管を使った回路では低いもので100Vから高いもので1000Vくらいの高圧電源電圧が必要である。一般的なオーディオ・アンプでは200Vから400Vくらいの電源を使用する。従って、真空管を使った機材では必ず200V〜400Vの電源を持っているのでどうしても大掛かりになる。真空管式のコンデンサ・マイクロフォンが専用の外部電源装置を持っているのはそのような事情による。このような電源装置には、200V〜400VのB電源と呼ばれる電源回路と、6.3V〜12.6Vくらいのヒーター電源の両方を持っている。


電気ストーブ

真空管はヒーターがあるために、それだけでもかなりの熱が出るが、回路を動作させるための電流でさらに大きな熱を出す。電圧増幅管で1本あたり2Wから8Wくらい、パワー管になると1本あたり10Wから50Wくらいの熱が出る。こんなのが何本も立っているパワーアンプになると、ほとんど電気ストーブ状態になる。また、定格一杯で動作しているパワー管のガラス面の温度は200℃にもなる。ちなみに、ガラス壁が耐える温度の上限はほぼ200℃である。

真空管の熱は、ガラス面からの放射冷却と、空気による対流冷却と、真空管の足からソケットを経てアンプのシャーシへの伝導による伝導冷却の3つのルートによって過熱するのを防いでいる。従って、機材の通風孔をさえぎったり、熱の逃げ道をふさぐようなことをしてはいけない。機材内部の温度が上昇すると、真空管よりも先に他の部品がやられてしまう。電子部品は一般に温度が10℃上昇するごとに寿命が半分に縮んでしまうのである。寿命が縮むということは、単に壊れるということだけでなく、早くに性能が劣化してしまうということである。性能が劣化すれば、ノイズが増えたり、音そのものも劣化する。


ラックマウント

電子機材はすべて温度上昇対策が問題になるが、真空管はただならぬ熱源であるために特に温度上昇への配慮は重要である。熱は上に逃げるから、ラックにマウントする場合は特に注意がいる。真空管式であっても消費電力が小さいマイクプリであればまだいいが、パワー管を使ったビンテージのコンプくらいになると要注意である。上になった他の機材はほぼ確実に温度が上昇する。温度上昇は電子機器の最大の敵なのだということを忘れてはいけない。できれば冷気を取り入れ、熱気を逃がすために、上下に1Uか2Uサイズのダミー空間が欲しい。

パワーアンプに至っては、私はラックマウントすべきではないと思っている。モノラル構成の2台のパワーアンプをラックに置く場合、一体どちらを上にしたらいいだろうか。上になった方のアンプは寿命が縮むのである。真空管式パワーアンプで考慮しなければならないもう1つのポイントは「重い」ということだ。真空管アンプはエネルギー効率が低いので電源トランスが大型で重くなる。加えて出力トランスという半導体アンプでは必要ない別のトランスまで抱え込んでいる。しかも、良い出力トランスほど重いから厄介だ。私のモニター・アンプはたかだか30Wのモノラル・アンプだが13kgもあり、2ch分で26kgにもなる。半導体アンプだったら余裕で200Wは出すことだろう。このように重いので、地震が来た時にラックが倒れてきて潰されないようにくれぐれも用心されたい。

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