Mic-Pre Technical Study & Information マイク・プリ技術情報
マイクロフォンの最大入力音圧レベルとマイクプリの許容入力

1パスカルの音圧 マイクロフォンの感度は、1パスカルの音圧を与えた時にどれくらいの信号電圧が得られるかを基準に表記される。「前章(マイクロフォン感度と信号レベル)」のところで説明したように、音の大きさの範囲は、20μパスカルから20パスカルくらいの範囲にある。その大きさの幅は100万倍ということだ。ごく一般的なコンデンサ・マイクロフォンでは、1パスカルの時に16mVの信号電圧が得られるから、そのマイクロフォンで20パスカルほどの大きな音をとらえた時には、基準時の20倍つまり320mVの信号電圧が生じる。実際のレコーディング現場ではギターアンプなどから出るかなり大きな音を間近にとることも少なくないので、1Vくらいの信号電圧がマイクプリに入力されることもある。

音の大きさは、「パスカル」という単位のほかに「dB SPL」という単位でも表現できる。人間の耳で感知できる最も小さい音の大きさは20μパスカルといわれているので、この20μパスカルを0dBとおいて基準にしたのが「dB SPL」という単位である。SPLというのは"Sound Pressure Level"の略。20μPascal0dB SPLだから、マイクロフォン感度の基準である1 Pacal94dB SPLとなる。

PacaldB SPLNotes
2hPa140dB SPLマイクロフォンが耐えられる最大音圧
20Pa120dB SPL人間の耳が耐えられる最大音圧
2Pa100dB SPL-
1Pa94dB SPLマイクロフォン感度表示の基準音圧
200mPa80dB SPL-
20mPa60dB SPL-
2mPa40dB SPL-
200μPa20dB SPL-
20μPa0dB SPL人間の耳が検知できる最小音圧
マイクプリの許容入力 単体で売られているマイクプリの利得はだいたい20dB(=10倍)から60dB(=1,000倍)だが、マイクプリの利得を中くらいの40dB(=100倍)に設定したとしよう。大音量の時に生じる1Vの信号入力を100倍増幅するわけだから、マイクプリの出力側からは100Vの信号電圧がでてこなければならない。しかし、現実のマイクプリの最大出力電圧はせいぜい数Vから大きいものでも十数V程度である(ちなみに、ライン出力の基準信号電圧(+4dB)は1.228Vなので数Vから十数V程度というのは十分余裕のある数字なんである)。ということは、1Vどころか320mVの入力でもマイクプリが飽和してしまってオーディオ信号は歪んでしまう。ここで生じる歪みは、コンプレッサのようなエフェクト的なものではなく、もっときたない不愉快な音になる。
入力された大振幅の信号に対する余裕のことを「ヘッド・ルーム」というね。時として、このヘッド・ルームぎりぎりで生じる歪みを一種のコンプレッサのようなエフェクタとして使うこともある。
この問題を回避するには、(1)マイクプリの利得を20dB(=10倍)程度まで下げるか、(2)オーディオ信号がマイクプリにはいる前に1/10(=-20dB)ほど減衰させてやるか、のどちらかになる。前者を利得コントロールあるいはトリムなどと呼び、後者はおなじみのパッドスイッチである。利得の可変範囲が狭いマイクプリやミキサーには、たいがいパッドスイッチがついている。マイクプリの多くが、カタログ・スペックに許容入力や最大出力を記載しているのはこのような時にそのマイクプリはどの程度の許容範囲を持っているか明確にするためである。

なお、ミキサーについているレベルコントローラ(MIXアウトを設定するためのボリューム)はマイクプリのフロントエンドアンプを出たところに配置されているので、これをいくら絞っても、ラインにMIXされるオーディオ信号はちいさくできても、マイクプリの許容入力はかわらないので注意すること。逆に、レベルコントローラを10時よりも絞った位置で適正なレベルになるような場合は、マイクプリの許容入力にひっかかる危険があるので、マイクプリの利得(Gain)そのものを下げるか、パッドスイッチをONにするなりしなければならない。

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