Mic-Pre Technical Study & Information マイク・プリ技術情報
マイクロフォン感度と信号レベル

信号レベル・ダイヤグラム マイクロフォンからのオーディオ信号の大きさはまちまちであり、マイクロフォンの種類や使い方によって大きな差が生じる。同じ音圧を与えた場合、ダイナミック・マイクロフォンはおしなべて信号出力は小さく、コンデンサ・マイクロフォンは大きい。また、室内楽の録音などでオフ気味にセットした場合と、パーカッションなどデカイ音が出る楽器に近接してセットした場合とでは、マイクロフォンにかかる音圧には100倍以上の差が生じる。

これに対応するために、マイクロフォン・アンプは、最も小さくて1mV以下の微小なオーディオ信号を1000倍(60dB・・・ろくじゅうでしべる)にも増幅ができるだけでなく、0.1V以上の大きな信号レベルのために10倍程度(20dB・・・にじゅうでしべる)の低い増幅率にも調整が可能なように作られている。「でしべる」とは、電話機を発明したグラハム・ベルさんの「ベル」と、10分の1の意味の「でし」を足したもので、オーディオ信号の大きさの単位(のようなもの)である。

オーディオ機材の入出力および各増幅段におけるオーディオ信号の大きさを表したチャートのことを私みたいな技術屋はレベル・ダイヤグラム(右図)と呼ぶ。

マイクロフォンの出力信号の大きさは、決められた基準の大きさの音を与えた時にどれくらいのオーディオ信号電圧が得られるかで表記される。マイクロフォンの規格表でいう感度(Sensitivity)のことだ。音は「気圧の変化」でもあるので、1パスカルの気圧の変化が生じる大きさの音がマイクロフォン感度の基準になっている。カタログでは一般に以下のような表記になる。

(コンデンサ・マイクロフォン)
RODE NT2A・・・Sensitivity:-36dB re 1Volt/Pascal (16mV @ 94dB SPL)

(ダイナミック・マイクロフォン)
SHURE SM58・・・開回路感度:-54.5dB re 1V/Pa

※1 Pascal=94dB SPL、詳しくは次章を参照。

コンデンサ・マイクロフォンのRODE NT2Aでは、1パスカルの音圧を与えた時、-36dBの信号電圧が得られるという意味でである。-36dBというのは、0dBを1Vとした時の電圧の表記法で15.8mVにあたる。カタログでは親切に16mVという表記もなされている。

ダイナミック・マイクロフォンのSHURE SM58では-54.5dBとなっているが、これは0dBを1Vとした時の電圧の表記法で1.88mVにあたる。ダイナミック・マイクロフォンはコンデンサ・マイクロフォンに比べて10分の1程度感度が低いのだ。ちなみに、人間の耳に聞こえるぎりぎりの小さい音の大きさは20μパスカルといわれており、耳がおかしくなるくらい大きな音で20パスカルくらいだから、マイクロフォンの感度の基準となっている音圧の1パスカルというのはかなり大きな音だということになる。

10倍は20dB(デシベル)、100倍は40dB、1000倍は60dBと表現する。また、30dBは31.6倍であり、50dBは316倍である。このような「dB」による表記・計算方法を「デシベル算」という。利得は一般に「n倍」と表現し、「掛け算」で求めるが、デシベル算では「足し算」で求める。それは、利得とデシベルの間に「デシベル(dB)=20×log10(利得(倍))」の関係があるからである・・・わかるかー。

1倍は0dB、2倍は6dB、4倍は12dB、8倍は18dBです。10倍は20dB、100倍は40dB、1000倍は60dBである。3dBは約1.4倍だが、-3dBは1/1.4(すなわち0.7倍)で、-20dBは1/10(すなわち0.1倍)である。

デシベルには利得(=増幅率 or 減衰率)を表現するだけでなく、オーディオ信号の大きさを表す場合にも使う。この場合は、基準となる「0dB」がどれくらいの大きさ(何V)であるかを決めて表示しする。レコーディングやPA、放送の世界では、0.775Vが基準(0dB)である。ちなみに、0.775Vという大きさは、600Ωを負荷とした時に1mW(=1/1000W)の電力が得られる大きさのことをいう。600Ωを基準にした場合には、「0dBm」という風に末尾に「m」をつけて区別する。単に「4dB」というと「1.58倍」を意味するのだが、ミキサー出力の基準になっている「4dBm」となると「1.228V」をさすようになる。1Vを基準とした場合は「0dBV」と表記する。

単位0dBの基準Notes
dBm0dB=0.775V1mW at 600Ω
dBv, dBu0dB=0.775V600Ωでない場合
dBV0dB=1V-

以上のことは覚えといた方がいいね。でないと、機材をちゃんと使いこなすことができないか、できたつもりで実は間違っていたってことになる。こーゆーことは誰もちゃんと体系立てて教えてくれないから、自力で覚えよう。

マイク・プリは、微小なマイクロフォン出力信号をライン・レベル(0dBm=0.775V)まで増幅する。マイクロフォン・レベルとライン・レベルのひらきは、ダイナミックマイクロフォンで50〜60dB、コンデンサ・マイクロフォンで30〜40dBである。この差がそのままマイク・プリに要求される利得となる。事実、マイク・プリのほとんどは30dB〜60dBの利得を十分カバーしている。大きな音の楽器や、近接した状態でのボーカルの収録ではさらに大きな音圧になるので、ほとんどの製品が30dB以下の低利得にも対応して調整可能になっている。

感度・最大入力音圧レベル一覧 以下の表は代表的なマイクロフォンの感度、最大入力音圧レベルを一覧にしたものである。最大入力音圧レベルについては次章で詳説する。

Type Maker / Model Sensitivity
(dB 1V/Pa)
Maximum SPL Maximum Output
コンデンサ Neumann / U87Ai -34dB/-31dB/-33dB*
(20mV/28mV/22mV*)
(*Omni/Card/Fig8)
117dB(THD 0.5%, Cardioid) -6dBu(390mV)
Neumann / TLM193 -35dB(18mV) 140dB(THD 0.5%) 13dBu
AKG / C414B-XLS -33dB(23mV) 140dB SPL(THD 0.5%) -
AKG / C451B -41dB(9mV) 135dB SPL -
RODE / NTK -38dB(12mV) 158 SPL(THD 5%, 1kHz) 29dBu
RODE / NT1A -31.9dB(25mV) 137dB SPL(THD 1%, 1kHz) 13.7dBu
BEHRINGER / B-1 -34dB(20mV) 138dB SPL -
audio-technica / 4033A -32dB(25mV) 140dB SPL(THD 1%, 1kHz) -
audio-technica / AT825 -47dB(4.7mV) 126dB SPL -
ダイナミック SHURE / SM58 -54.5dB(1.88mV) - -
Electro-Voice / RE20 -57dB(1.5mV) - -

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