精神科エッセイ     

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H.16.1.28〜16.2.26の分までこのページにあります。
水中毒、躁うつ病、てんかん、精神科の入院形態、精神鑑定などがこのページの主な内容です。
H.16.2.27以降の分「精神科エッセイ2」のページをご覧下さい。


このエッセイの内容については、なるべく成書、文献などで再確認するようにしていますが、内容に不正確な点が一部生じることは避けられないかと思いますので、お気づきの点はメールにてご指摘いただければ幸いです。またここに書いてある内容はきわめて一般的な内容であり、個々の患者さん(患者様)においては様々な事情や事例があることを付記しておきます。



精神科の患者さんには、精神症状が悪化すると、水をたくさん飲む人がいます。精神遅滞(いわゆる「知恵遅れ」)、古い精神分裂病(今は統合失調症というようになりました)、自閉症などの患者さんに多いようです。
重症の場合は「水中毒」といって生命にかかわる場合もあります。
隠れ飲水など重度の多飲に、嘔吐、けいれん、意識障害などを伴ったものを水中毒と呼び、早期の対応が望まれます。

多飲、水中毒の対処法には水制限、行動制限など患者に制限を加えるものと、塩分投与など積極的に治療を行うものがあります。

塩分投与は、学会などでいくつか報告があり、それなりの裏づけもあるようですが、多飲患者の血清ナトリウム値が低いことが多い(低ナトリウム血症)ことと少なからず関係があると思われます。このような報告があるにもかかわらず、行動制限、水制限などに比べると、実際の臨床現場で行われることは、まだまだ少ないのが現状のようです。

抗精神病薬、抗てんかん薬などの向精神薬が、水中毒の病態のひとつであるSIADH(抗利尿ホルモン分泌不適合症候群)を引き起こすとされる報告が数多くありますが、向精神薬の減量、中止は一方で精神症状の悪化を引き起こし、過飲水を悪化させる場合も多いものと思われます(H16.1.28)



躁うつ病についてです。躁うつ病には躁とうつの両方の病相を呈する「双極型」とうつ病相のみの「単極型」があります。躁病相のみの「単極型」もまれにありますが、ここでは「双極型」である躁うつ病と「単極型」であるうつ病に分けてお話しした方が理解が早いでしょう。

うつ病は軽いものも含めると10人に1人が一生のうちに一度はかかるといわれています。精神分裂病(統合失調症)が100人に1人というのもかなりの確率ですが、うつ病はそれ以上に「珍しくない」病気といえます。

うつ病の主症状は不眠、抑うつ気分(「ゆううつ」)、くよくよ物事を考える傾向、悲哀感(「悲しい、淋しい」)、焦燥感(あせり、落ち着きのなさ)、意欲減退(やる気が起きない)、思考障害(考えが浮かばない、、進まない、判断が困難)など精神症状はもちろんですが、食欲減退、頭痛、めまいなど身体症状をともなう場合が多くあります。

特に身体症状が前景に出たうつ病は「仮面うつ病」といって、一見すると身体の病気のように患者さんも周囲も思って、内科、脳外科、神経内科などを頻回に受診します。ところがCTや採血などの身体の検査では異常がないため、「なんともないですよ」「自律神経失調症」など適切な説明がなされません。しかしながら患者さんはつらいことに変わりがないため、きちんと診断・治療してくれる医者を求めて病院を転々と受診します(ドクター・ショッピング)。このようにうつ病は以外と多い病気ですので、精神科以外の医師にもうつ病を疑ってみる資質が必要だと思われます。

少し難しい話になってしまいました(H16.1.29〜30)


うつ病の患者さんの中には「息子の離婚のことが心配で・・・」などと訴えてくる場合があります。単に家族のことを心配しているだけに見えますが、よく聞いてみると、離婚の件は既に後始末も終わり、解決した過去のことであることがわかります。このことから、一旦心の中で整理がついたことが、うつ病の発症により「くよくよ考える」症状として出てきたことがわかります。このようなとき不眠も伴っていると、離婚のことを心配して不眠症になったのだとカン違いして睡眠薬だけを処方しかねません。うつ病だとしっかり見抜いて、抗うつ薬を処方する臨床能力が必要となります。しかし一般科の先生にここまで期待することは難しく、精神科医の範疇といえるでしょう。
ここまで述べてきたように、うつ病はありふれた病気の割に以外と診断が難しい病気といえるかも知れませんね(H16.1.31)


うつ病の治療は抗うつ薬を中心とした薬物療法休息が原則です。なんでも悪い方に考える傾向などを改める認知療法というのも行われることがあります。
抗うつ薬は効果発現までに1〜2週間を要しますが、投与初期は口のかわき、物が二重に見える、便秘などの副作用が先に出ますので、このために服用を止めないよう指導が必要です。でも最近はSSRIとかSNRIといって副作用の少ない抗うつ薬が主流になりつつありますから、以前ほどのことはなくなりました。
休息をとらせることも大切な治療のひとつです。生真面目で働きざかりの方などは休むのを拒まれる場合もありますが、必要に応じ医師の診断書を付けるなどして休んでもらいます。
うつ病は重篤なときは抑制が強くかかっていますが、少し治ってくると抑制が取れて自殺企図に走る場合が少なくありません。どん底にいるときより、少し治りがけのときの方が自殺に注意が必要です。うつ病は治れば普通の生活ができる病気ですから、罹患しているときに自殺してしまっては元も子もなくなる訳です(H16.2.1)


「双極型」躁うつ病についてです。「双極性障害」とも言います。躁状態(躁病相)とうつ状態(うつ病相)が繰り返し現れます。20〜30歳くらいと、50代以上の高齢者に発病しやすく、精神分裂病(統合失調症)が遅くても40歳くらいまでの発病なのに比べると、高齢で初発することもありうる病気です。

うつ状態(うつ病相)の症状については既に述べましたので、躁状態(躁病相)の症状についてお話しします。躁状態では易刺激性(些細なことで怒りっぽい)、多弁、多動、行為心迫(次々と何かをせずにはいられない)、不眠(眠れないのではなく眠らなくても平気)、観念奔逸(話すことのまとまりが悪くなる)、誇大性などが見られ、周囲に多大な迷惑を及ぼします。しかし放置していても自然寛解(自然に病状がおさまる)する場合も少なくないため、性格の問題(時々怒りっぽくなる人etc.)の問題として長年(何十年と)治療を受けずに放置されている場合も少なくありません。単極型のうつ病と同じく病状がおさまれば普通に生活ができ、人格変化などを残すことが少ないため、一見して精神の病気と気づかれにくいのでしょう。

しかしさすがに躁状態のひどい時は周囲に迷惑、被害を及ぼしますので、警察などが介入して精神病院入院のやむなきに至ります。このときは本人は自分がどう悪いかがわからなる一方で(病識欠如)、強制入院させられたことだけは覚えていて、入院させた病院や家族に不満を持つことになります。このため寛解後は通院、服薬を中断しがちです(どう悪いかがわからず強制入院させられた訳ですから無理もありませんが・・・)。したがって急性期の強制入院はやむを得ないことながら、できるだけ早い、軽症なうちの精神科受診が望まれます。(H16.2.2〜2.3)

躁うつ病の治療は躁状態、うつ状態の治療はもちろんですが、長期的にみて大切なのは躁とうつの波を小さくする「病相予防効果」「再燃予防効果」のある薬を長期にわたり服用してもらうことです。

躁病相ではイライラ、興奮などが目立ちますので鎮静作用の強い薬を使います。うつ病相では抗うつ薬と休息を中心としたうつ病の治療を行います。しかしこれでは躁病相、うつ病相が現れたときにその場しのぎの治療をするだけになってしまいますので、「ムード・スタビライザー(mood stabilizer)」と呼ばれる薬を長期にわたり服用してもらい、病相予防、再燃予防をはかります。この薬は躁病相でもうつ病相でもない時期すなわち「中間期」でも服用が必要です。

ムード・スタビライザーで病相予防をはからない場合、年齢とともに躁うつ病の経過は悪化をたどります。すなわち病相の程度は強くなり、期間は短くなって、躁状態やうつ状態の程度のひどいものが、繰り返し頻回に現れるようになります。服用を続けていれば、仮に病相が悪化することがあっても「ゆっくり悪くなる」か、あるいは全く病相の出現がみられなくなります。症状がなくなるだけに却って服薬継続に懸念が持たれますが(悪いところがないから薬を飲まない)、いくら高齢になってもムード・スタビライザーを服用しない躁うつ病は悲惨な経過をたどり、周囲に多大な迷惑をおよぼします。ムード・スタビライザーには炭酸リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウムなどがあります(H.16.2.4)。




精神病院に入院中の患者さんの中には、20年、30年、40年などの長期間にわたり入院を続けている「社会的入院」の患者さんが病院によっても違いますが何割かおられます。
これは過去の一時期に精神障害者をできるだけ「収容」(今は「収容」ではなく「入院」と呼んでいますが)しようという時代があり、その時期に発病し入院した患者さんが、そのまま年齢を重ねて、両親も亡くなり、身寄りは兄弟だけになって帰る「家」がなくなったことによる結果ともいえます。ひとり暮らしをしようにも、長い入院生活で社会生活についてのスキルが失われて、退院しようにも事実上できない方々です。これは患者さんそれぞれに異なった複雑な事情がありますので、ここでは深く述べることは控えたいと思いますが、そういう側面もあるということをご理解願いたいと思います(H.16.2.5)



精神病院への「入院形態」には「任意入院」「医療保護入院」「措置入院」などがあります。これは一般病院への入院とはことなり、俗称「精神保健福祉法」(正しくは「精神保健および精神障害者福祉に関する法律」)と呼ばれる法律にもとづいた入院です。「任意入院」は自らの意思で入院を希望し入院するもので、患者が希望すれば退院できますが、治療上必要とされる場合は行動制限退院制限が行われる場合があります。この点でも「任意入院」は一般病院への入院とは異なります。「医療保護入院」は(興奮、意識障害などで)、入院が必要であるにもかかわらず、患者本人の同意が得られない場合に家族などの同意を得て入院させるものです。精神運動興奮の患者さんはもちろんですが、寝たきりで疎通の取れない患者さんなども、一般病院へは特別な法律上の手続きなく入院できますが、精神病院へ入院する際は、入院の意思を示すことができないので、「医療保護入院」が必要となります。「措置入院」自傷他害(自分を傷つけたり、他人に危害を加える)のおそれがある患者さんを精神保健指定医2名の診察により必要と認めた場合に、都道府県知事の命令で精神病院に入院させるものです(H.16.2.6〜2.7)。




精神科といっても精神状態だけを診ていればよいわけではありません(当然ですが)。20〜40年前に精神障害を発病して入院した患者さんたちは今、中高年〜老年期に達しており、(病院にもよりますが)入院患者の高齢化にともない、当然ながら生活習慣病を始めとした身体合併症に悩まされるようになります。長期間にわたる運動不足、間食の習慣は糖尿病、高脂血症の一因となり、これにともなう合併症にも対応を余儀なくされます。このほか高血圧、脳血管障害、がんなどが増えるのも健常者同様ですが、判断力、理解力の低下した患者さんでは治療がスムーズに運ばない場合も少なくありません(H.16.2.8)



てんかんについて簡単にお話しておきます。てんかんは精神科だけでなく、小児科、脳神経外科、神経内科などの医師の範疇です。一回だけの発作はてんかんとは呼ばず、反復性のてんかん発作があることがてんかんの定義のひとつです。
周産期障害などで生下時から発作のある「特発性てんかん」(原因がよくわからないという意味)のものと脳腫瘍、脳動静脈奇形、脳梗塞などの発症のため、ある一定の年齢から発作が始まる「症候性てんかん」とがあります。いずれも何らかの原因で脳細胞が部分的に破壊され、そこをフォーカス(焦点)としててんかん発作が起こります。
発作型ですが全身痙攣をともなう「全般発作」と、ともなわない「部分発作」に大別されます。
部分発作ですが、悪心など胃部不快感のみだったり、手や足がピクッと動くだけ、幻覚が見える、聞こえる、変なにおいがするといった症状のみで意識消失をともなわないものや(単純部分発作)、意識消失があってもけいれん発作はともなわないもの(複雑部分発作)など、一見しててんかん発作と思えないようなものも「てんかん」には含まれています。要するにフォーカスとなる脳の損傷部位の元来持っていた機能が発作型としてあらわれているともいえます。手の運動をつかさどる運動野がフォーカスなら、手がピクッと動く運動発作が起き、知覚をつかさどる脳の部分がフォーカスなら変なものが見えたり、聞こえたり臭いがするるといった具合にです。

治療は継続的な抗てんかん薬の内服で長期間にわたっての服用が必要です。薬物でどうしてもコントロールできないてんかん発作で脳のフォーカス部分に外科的治療をほどこす場合も、数は少ないですがあります(H.16.2.9〜2.10)。

「部分発作」
はあまりてんかんらしくないので一般にはあまり認識されていないと思いますので、もう一度繰り返しますと、部分発作のうち、意識消失をともなわないものを「単純部分発作」、ともなうものを「複雑部分発作」といいます。単純部分発作には悪心や上腹部異常感覚をともなう「自律神経発作」、手や足がピクッと動く「運動発作」、幻視、幻聴、幻嗅などをともなう「特殊感覚発作」などがあります(H.16.2.11)


患者さんが訴えるおかしな症状(妄想など)にはどう対応したら良いかは、よくある疑問です。「おかしなこと、ありえないこと」として頭から否定するのは考えものです。誠実に患者の訴えを聴き、患者の苦痛がどういうものかを考え、理解に努めます。その上で「不思議がる」のが良いようです。例えば「暴力団が自分を狙っている」という患者さんには、それが患者さんにとっては心の中の真実(心的事実)であることを認めます。本当だとしたら自分ならどんな気持ちがするだろうか?と考えます。しかし一方で「妄想」に共感しすぎるのも妄想の訴えを助長するため問題かと思われます。難しいところですね。なおこの項については私が以前上司からいただいたプリントを参考にさせていただきました。この対応の仕方は主に精神分裂病(統合失調症)の患者さんを対象としたものですが、痴呆患者など他の病気にも応用できる大切なことですので、患者の家族の方はもちろん一般の方も知っていて損はないと思いますよ(H .16.2.12〜2.13)。                

精神分裂病(統合失調症)についてはまだ一般的なこともお話していないので、先に対応の仕方を話すのは順序が逆ですが、ついでに述べたいと思います。統合失調症は再燃の多い病気ですが、そのきっかけとして1.抗精神病薬の中断、2.家族が患者に批判、敵意、過保護をもって接する、3.生活や人生上の過度のストレスなどがあげられます。周囲の人は、本人の苦痛、病気のためにできないことを考え、服薬を確実にさせ、思いやりを持って暮らす必要があります。

患者は、「融通がきかない」「プライドが高い」「変化が苦手」「緊張しやすい」「抽象的な考えが苦手」といった行動上の特徴があります。したがって「分かりやすく、具体的に」「繰り返しをいとわず」指導します(H.16.2.14)。


精神病院での皮膚疾患についてです。精神病院は公立病院などでは患者の入退院が頻回でひとりあたりの入院期間も短いためあまり目立ちませんが、民間病院などでは(精神病院は民間病院がかなりの比率を占めます)、入院が長期におよぶ患者さんも多く身辺が不潔になることが多いためか皮膚疾患が多いです。白癬(みずむし)などは典型的で、足や股間部などにみずむしの薬を長期にわたって塗っている患者さんをよくみかけます。時には爪白癬といって爪まで白癬菌に侵されて、外用薬だけはだめで飲み薬を必要とする場合もあります。他にも湿疹や擦過傷など精神病院では向精神薬と同等かそれ以上に皮膚科の軟膏、クリーム類が処方されていると言っても過言ではないでしょう。疥癬などの流行がみられる場合もときにあります。余談でした(H.16.2.15)


精神病院で多い身体合併症のひとつにイレウス(腸閉塞)があります。向精神薬は便秘を引き起こすものが多いので(外来患者さんの服用しているような量ではあまり問題はありませんが、長期入院患者は大量かつ多種類の向精神薬を服用している場合が多い)、精神病院の入院患者さんは人にもよりますが、かなり大量の下剤を服用しています。それでも病棟に長くいることによる運動不足や長期間の向精神薬服用の影響か詳しい機序はわかりませんが、ときにイレウスやそれに準じた状態(サブイレウス)を呈することがあります。腹部の聴診で腸の動く音(グル音)が聞こえなくなったり、嘔吐があったりします。治療は絶食と腸を動かす薬の点滴などですが、一時的な外科への転院を余儀なくされる場合も少なくありません(H.16.2.16)

精神病院に限りませんが、老人の合併症で多いのが嚥下性肺炎です。誤嚥性肺炎とも呼ばれるこの病気は、食事を口から食べる限りつきまとうやっかいなもので、本来胃に入るべき食物のごく一部が気管から肺に入り炎症を起こすもので、老人の死因としても重要な位置を占めます。治療はもちろん抗生物質の点滴静注ですが、あまりたびたび繰り返す場合はMRSAなど抗生物質に対する耐性菌の発生にもつながりかねません。このような場合の治療法の選択肢のひとつが胃ろうです。簡単な手術をして腹部に穴を空け、濃厚流動食を直接胃に滴下させます。これならば口から物を食べないので誤嚥は防げるわけですが、まだ食事を口から食べられる人に胃ろうを施すかどうかは家族の意向や医師の判断によるところが大きいと思われます(H.16.2.17)。


精神科の入院加療で、医療保護入院措置入院など本人の同意がないのに入院が必要となることがあります。また身体拘束(抑制)や保護室への隔離など本人の意に反して行動制限を余儀なくされる場合があります。このように本人の同意を得ずして行われる入院や行動制限を行うことができるのは精神科医のなかでも精神保健指定医という資格のある医師に限られます(12時間までの隔離は精神保健指定医でなくとも可)。
精神保健指定医になるには5年間医師として臨床経験を積み(うち3年間は精神科での経験が必須)、厚生労働省の定めた講習会を受講し、指定された臨床例のレポートを提出して合格することが必要です。このレポートは「精神保健および精神障害者福祉に関する法律」(俗称、精神保健福祉法)にのっとって法律を踏まえて書くことが求められます。精神保健指定医になっても5年ごとに講習があり、これを受けないと指定医の資格を持ち続けることはできません(H.16.2.18〜2.19)

精神保健指定医の仕事としては、医療保護入院や措置入院の入院時の診察入院届の記載、提出措置入院の場合は2名の指定医により診察が行われ「要措置」との意見の一致をみた場合、都道府県知事命令でいずれかの指定病院に入院することになります。これを「措置鑑定」といい指定医の大切な仕事のひとつです。措置鑑定は警察署や精神病院など当該患者のいる場所で随時都道府県の職員立会いのもと行われます)、これらの入院患者の定期病状報告書の記載、提出(医療保護入院は1年ごと、措置入院は半年ごとに必要)、身体拘束、隔離時の診察とカルテ記載などが主ですが、医療保護入院、措置入院の是非や退院請求の審査をする「精神医療審査会」のメンバーとなったり、精神病院で「精神保健福祉法」にもとづいて人権が守られた医療が行われているか、都道府県が「実地指導」する際に同行される方もおられます。法律の話でもあり、少々固い話になってしまいました(H.16.2.20〜2.21)

殺人、傷害などの犯罪を犯した精神障害者を触法精神障害者と呼びますが、彼らは「精神保健福祉法」にのっとった措置鑑定を経て、精神病院に措置入院する場合が多いと思われます。しかし措置入院になったから刑事責任能力が全く問われないのではなく、必要に応じ、精神鑑定が行われて刑事責任能力の有無が裁判で検討されます。精神鑑定には大学の精神科の教授や精神病院長などのうち司法精神医学に造詣が深く適任と思われる人が裁判所の命令であたります。鑑定人は裁判所の命令で被告人を一定期間鑑定留置(精神病院へ精神鑑定のため一定期間入院することですが、入院といわず鑑定留置と呼ばれます)し、被告人の問診を何回も行い、心理検査、脳波などの検査も必要に応じ行い、被告人に他院入院歴がある場合はそのカルテを参考にするなど膨大な資料を調べ上げ整理して、鑑定書を作成します。私も大学の教室に在籍していた時に教授(鑑定人)の鑑定助手をつとめ鑑定書作成のお手伝いをしたことがあります。鑑定書が作成されたのちは、鑑定人は必要に応じ法廷に呼ばれ証言を求められたりしますので、本業のほかにかなりの労力を要しストレスもかかる仕事だと思います。これに比べ検察庁が起訴するか否かを判定する参考のために行う起訴前鑑定や最近の成年後見制度にもとづく精神鑑定などは比較的簡単ではありますが、本業のほかに時間をかなりとられますので、意欲と責任感、労力の必要な仕事ではないかと考えます(H.16.2.22〜2.23)


先日もある方から、うつ状態(?)の娘さんのことについて相談を受けたのですが、10人に1人と先に書きましたけども、正確な数字でないにせよ、うつ状態というのは以外と多いです。一見神経症性の不眠(いわゆる「不眠症」)と見えたケースをよく問診してみると「うつ状態」だったり、高齢者の場合は痴呆と間違うこともあります(H.16.2.24)


精神鑑定について追加します。鑑定には刑事の鑑定と民事の鑑定がありますが、起訴前鑑定起訴後鑑定という分け方もあります。起訴前鑑定には簡易鑑定本鑑定があって本鑑定とは、先に述べた1か月くらい鑑定留置を行って本格的にやる鑑定のことです。起訴前鑑定は検察庁から委嘱されるものです。これに対し起訴後鑑定は本鑑定だけで、裁判所から命令という形で依頼が来ます(H.16.2.25)。


昨日(2/25)の北陸中日新聞に興味あるコラムがありましたので引用します。
ギャンブル依存症の治療でアルコール依存や薬物依存にも共通する話なのですが、「家族は「もうやめる」ことを約束させて代わりに支払う例が多い。しかしこの肩代わりが、本人のギャンブル依存を深めてしまう結果となる」「ギャンブル依存症の人も多重債務を肩代わり返済してもらって借金しやすくなると再び借金してギャンブルに走る」「家族が助けてしまうと本人の依存が深刻化するだけ。家族は世話を焼かず、本人に責任を取らせ、問題の深刻さを本人に自覚させなければならない」とあります。そして家族も「自分が当事者を助けてあげなければいけない」と考え、当事者を支えることを自らの役割とし生きがいとする「共依存」という状態になってしまう、とあります。この共依存が依存症の治療では重要な概念のひとつで、口でいうのはたやすいのですが、依存症患者に巻き込まれてしまっている家族に教育することは容易ではありません。これについては依存症についてお話する際に詳述します(H.16.2.26)。

続きは「精神科エッセイ2」のページをご覧下さい。