
![]()
今働いてる出会い系サイトの会社は、全部で4つのサイト(番組)を運営している。俺が所属している番組のメンバーは、俺以外皆一年以上働いている。ベテランばかりだ。
現在主要メンバーは6人。うち4人が女性。
メンバーには、一人異端児がいる。
女だ。名前を山田という。
19歳の学生だというその女は、鋭い眼光と異様なオーラを放ち、他のスタッフを寄せ付けない。
余計な会話は一切話さず、交流を持たず、おかっぱで年齢不詳のその女を入社5ヶ月までずっと年上だと思っていた。26ぐらいか?
そしたらなんと、19歳というではないか。俺より年下らしい。ちょっと信じられない。
容姿も少し変わっているが、別に外見をどうこう言うつもりはない。
問題は、彼女のメール内容だ。
隣に座った岡山出身の三村さんが言う。
「子蜂君これちょっと見てよ。あ〜」
「ん?どしたん?」
「昨日な、この台山田さんが座ったんじゃがー、お客さんとケンカばっかしとってなー。金キャラならいいんじゃが、ラブラブのキャラとかでもケンカしとってなー、たぶん今日受信悪いわー。ほら、ばんちゃんにむっちゃ怒っとるし」
ばんちゃんとは、1キャラにつき一日2〜3回しかメールをしてこない客だ。複数のキャラとメールしてるが、出会い系サイトには毎月決まった額しか使わないとがっちり決めていて、勤勉で、金キャラには絶対に引っかからず、意中のラブラブキャラとしかメールをしないという客。メールの内容も毎日自分の身の回りのことを報告してきて、ほのぼのとしたメールが特徴だ。番組内でも有名な「癒し系客」である。別にまともに相手しなくても、ちゅっちゅちゅっちゅ言ってれば必ず後で返事くれるから手のかからない客でもある。
そのばんちゃんと三村さんの会話。
ばんちゃん
「ミミたんこんばんは☆今日は焼きそば食べたんだね。俺はカレー食べたよ。ココイチのカレーはいつも1カラなんだけど、ミミたんはココイチ行くかな?今日は会社で足をひねっちゃって捻挫したけど、がんばって仕事してきたよ。ミミたんがお昼に応援してくれたから一日がんばれたよ。ありがとう☆今はお風呂から上がってプレステの筋肉マンやってるよ。ミミたんは今何してるのかな?ちゅ♪」
ミミたん(三村さん)
「ミミたんだよ☆ミミたん辛いの苦手だよ。1カラも食べれないかもしれない(>_<)今度一緒に食べに行こうね♪ちゅ♪」
翌日。
ばんちゃん
「ミミたんこんにちは☆今日もがんばって授業受けてるかな?俺は今ご飯食べて一服してるところだよ。この前ドンキホーテで低反発枕買ってきたんだけど、すごく寝心地が良くてよく眠れるよ。買ってよかったよ。ミミたんにも貸してあげたいなぁ。これのおかげで最近毎日安眠なんだ。すごくいいからミミたんにもあとで買ってあげるね。もうすぐ仕事だから行ってくるね。ちゅ♪」
ミミたん(三村さん)
「ミミたんだよ☆低反発枕かぁ。そんなにいいの?ミミたんも最近寝不足だから、低反発枕欲しいなぁ。ちゅ♪」
夜
ばんちゃん
「こんばんはミミたん☆今仕事から帰ってきてご飯食べてビール飲んでたところだよ。ミミたんも低反発枕欲しいんだね。いいよ、あとで買ってあげるね。これすごくよく眠れるからおすすめだよ。電気量販店でも売ってるらしいけど、高いからダメだよ。1万円とかするみたいだから。買うならドンキホーテだね。2,980円で売ってるから、やっぱりドンキホーテがおすすめだよ。ミミたんにもドンキホーテで買ってあげるね。今日はミミたんなに食べたのかな?いっしょに筋肉マンやりたいね。ちゅ♪」
ミミたん(三村さん)
「ミミたんだよ☆ほんとにいいの?ばんちゃん優しい!これでミミたんの不眠症も解消できるかな?ちゅ♪」
「ここまでは私のメールなんやけどな、ばんちゃんいっつも低反発枕薦めてくるじゃん?」
「あぁ、言ってくるよな。俺んとこのキャラにもすげー薦めてきた。よっぽどいいもんなんかな?」
「それがさー、昨日買ってきてさー」
「ええっ!マジで?」
「だって、すごい薦めて来るんだもん。ここ一週間くらいずっと薦めてくるもん。欲しくなってなぁ、買ったんじゃがー、全然寝心地よくなくてなぁ」
「あひゃひゃひゃ。そうなんだ?」
「うん、買わんかったらよかったがぁ」
「へぇ〜、あぶねーな。俺も実はよ、ちょっと欲しいなって思ってたんだ。ネットで2000円で売ってたから危うく買うとこだった」
「やめといたほうがいいって!ほんまばんちゃんにやられたわぁ。今筋肉マンにはまっとるやろ?」
「あぁ、はまってるね。こっち毎日筋肉マンの話してるよ」
「え、見して見して」
リョウコ(俺)
「ばんちゃん!それってベンキマン出てくるの?チュッチュッチュ♪」
ばんちゃん
「ベンキマンは出てこないけど、ベンキマンの弟子のウォッシュアスなら出てくるよ。リョウコちゃんはベンキマンが好きなんだね。俺はやっぱり筋肉マンが好きだよ。まだやり始めたばっかりだけど、全部プレイするには1週間以上かかりそうだよ。リョウコちゃんと一緒にやりたいね。チュッチュッチュ♪」
リョウコ
「ベンキマン出てこないの!?それモグリだよ!チュッチュッチュ♪」
ばんちゃん
「リョウコちゃんは本当にベンキマンが好きなんだね。でも隠しキャラがいるらしいから、全部プレイしてみたら案外出てくるのかもしれないよ。だってウォッシュアスがいるからね。リョウコちゃんは筋肉マン詳しいんだね。リョウコちゃんは筋肉マンの漫画いっぱい持ってるのかな?チュッチュッチュ♪」
リョウコ
「漫画持ってないよ!持ってたけどベンキマンに流されたよチュッチュッチュ♪」
「あはははははは!子蜂君何言ってんの」
「いやぁ、俺筋肉マンなんてしらねーしよ。こいつ何言っても必ず返してくれるから指先の動くままに会話してんだよ」
「あ〜、それはあるなぁ」
「ってか、山田さんの履歴ってどれ?」
「あぁ、そうだった。これこれ見てよ」
ばんちゃん
「ミミたんこんにちは☆今日も暑いね!もう夏だね。ミミたんは今年は友達と海に行くのかな?俺はミミたんと一緒に行きたいな。でも行く前に捻挫治さなきゃね。ミミたんが側にいてくれたらすぐに治りそうだなぁ。なんちゃってね☆ミミたんは今日もがんばって勉強してるのかな?俺はもうすぐ仕事だからがんばってくるね。ちゅ♪」
ミミたん(山田さん)
「うるさい!!なんなのいっつもいっつもおんなじことばっかり言って鬱陶しいんだよ。何?夏がなんだって?あんた怪我したの?知らないよそんなこと。私が側にいて治るわけないじゃん。病院行けよ。あんたのメールうざいの。暑いとか言わないでよ、見てるこっちが暑くなるから。大っ嫌い」
((((;゚Д゚)))!?
「え、これ、山田さん?」
「うん山田さん。ひどいやろこれー、他の客ならともかく、ばんちゃんいい奴やん」
「・・・・。」
キャラ豹変しすぎ。
「山田さん機嫌悪かったんかなぁ」
「そうかもな。他のキャラは?」
「もっとひどい」
京香
「どこにいるの?あんた本当に駅に来てるわけ?」
客
「え?来てるよ。中央改札の前でジーパンに白のTシャツ着た奴だよ。メガネかけてる。どこにいるの?服装は?」
京香
「嘘つかないで。あんた本当は来てないんじゃないの?改札にそんな奴いないわ。私を冷やかしたわけ?」
客
「えっ・・。そんなことないよ!どこにいるの?怒らないでよ」
京香
「ふざけないで。私は普段忙しいの知ってるでしょう!せっかく仕事抜けてきたのに待ちぼうけさせる気なのね?殺すよ?」
客
「待ってくれよ!俺本当に来てるってば!それじゃ西口から出てマックの入り口前にしよう!それならわかるだろ?」
京香
「移動したわ。どこよ。いないじゃない!ぶっ殺すよ?」
客
「えっ?ウソッ?どこ?」
京香
「もう行く時間になったわ。仕事残ってるのよ。せっかく時間割いて出てきたのにバカみたい。あんたなんなの?会う気あんの?」
客
「えっ・・・。会う気あるよ!ごめん、俺のせいなんだね。仕事抜けさせちゃってごめん。連絡先だけでも交換したかったけど・・」
京香
「そんじゃ明日の21時あけときなさい。いいわね?」
((((;゚Д゚)))
「マジで?何でこんなに怒ってんの?」
「わっからん、山田さん恐いわぁ」
ほんとに恐い。
というか、客は一通につき150円かかってるのである。金払ってんのに待ちぼうけさせられ、怒られ、罵られ、殺すとまで言われ、明日も来いと。
鬼か?
他のキャラも見せてもらったが、案の定ケンカばかりしてる。ひでぇ。会話のいたるところに『殺』『死』『呪』などの言葉が見受けられた。
おいおい、どんな出会い系サイトだよ。アブネーんじゃねーか?
「もうほんま嫌じゃわー。山田さんの次の日ほんまやりにくい」
そうだろうなぁ。俺んとこに来ないでほしい。
狐目の山田さん、19歳。
鋭い眼光と異様なオーラを放ち、誰も寄せつけない女。