本の迷路書評と読書ガイド>12月の読書

泣き虫弱虫諸葛孔明

酒見賢一

2004
評伝
0401221 ★★★☆

 うわー、入荷したてのまっさら本じゃ〜と、感激のあまり抱き締める。
 酒見賢一はどっぷり中国歴史のヒトなんだけど、三国志となるとなぜか違和感がじゅわー。三国志が日本人に馴染みすぎているせいではないだろうか。わたくしなど子供のころは諸葛孔明は日本人だと思っておった。こういう卑近なものに手を出すなよ。って、わたくしは酒見賢一をよく知らないのに(昔『陋巷』を3巻くらいで飽きて放棄した)、偏見だけはソーニャ強いのである。いや、その違和感はご本人にもあるようで、のっけからやたらと弁解が多い。まあつまりこれは、内外の三国志書物の記述にいちゃもんをつけつつ、諸葛亮は英雄どころじゃなく、負け戦しか知らない変質者(変人)であると決めつけたツッコミ本なのであった。
 時折、ティッシュなしでは読めないくらいおかしい(面白い)。展開はたいそうのろく、この分厚い1冊の最後にやっと三顧の礼である。

付記:
続編はこちら。泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部

砂漠の薔薇

赤羽堯

1996
恋愛小説
041221 ★☆

 後ろのページに「乱歩賞応募規定」なんてのがあったもんだからさ、誤解しちゃったんだ。精神を病み失踪した妻を捜してローマからエジプトの砂漠へ。大学教授ってのはヒマで羨ましいのう。

たけまる文庫 怪の巻

我孫子武丸

2000
ホラー
041224 ★★★

 ひとり雑誌『小説たけまる増刊号』の抜粋再編集文庫本の『第一回配本』なのだって。『個人文庫』のどこが画期的か知らないが、要は単なる短編集である。著者解題とあとがきつき。雑誌版は目にしたことがあったが、不覚にも手出しする気になれなかった。機会があれば読んでみたい。各編は共通テーマに沿ったストーリーで、気が利いているような、目の付けどころが鋭いような、練り足りず呆気ないような、一応エンターテインメント。

黒い仏

殊能将之

2001
すーぱークトゥルー
041224 ★★

 昔、唐に渡った僧が持ち帰ろうとした秘宝を求めて暗躍する人々。い、いいけどさ。「本格ミステリ」なんて誤解を招く表記はやめてよね。『新時代』『の幕開け』云々と無意味な装飾つけたからって、言い訳にはならんぞ。でもって、次回は家から一歩も出ずに書いてください、福岡人のお願いです。超現実に混ぜ込まれたくそリアリズムが郷愁を掻き立てることを、OKAGE効果と呼ぶそうだ。

フラッシュバック 39II

永井泰宇

2000
ミステリ
0401224 ★★

 赤髭として評判の医師が、突如通り魔事件を起こし、十数名を殺傷した。しかもその記憶がないと言う。この容疑者の過去を探っていくと、驚愕の事実が・・・。『39【刑法第三十九条】』のパート2で、続編ではなく別編。今回は四十一条も絡んで、一層やり切れなさが増す。にしてもなんだかひどく無責任な印象。前作でも感じたが、いろいろと興味深いものを集めてかき混ぜてるうちに息切れするタイプではなかろうか。電動式の泡立て器を買いたまえ、楽だぜ。

ふたたびの虹

柴田よしき

2001
連作短編集
0401226 ★★

 風雅で庶民的なおばんざい屋の女将は若々しく美人で、店に集まる人々の悩みや事件を解決したり、ちょっとした名探偵である。でも何やら暗い過去を秘めているようで、その事情が徐々に明かされる。素材は女性好みだが、思わせぶりな割に深みのないお話だ。

ZOO

乙一

2003
短編集
041226 ★★★★★

 昔あったよね、「フェアレディZ」を「フェアレディ乙」と読むジョーク。が、少なからぬヒトがZをゼットと言う現実の前に、おつを笑うは笑止だぜ。
 「ジャンル分け不可能」とか称され、とりあえずはホラーに分類されるようだが、ご本人はミステリが好きだと思わせてくれたり。
 まあとにかくショッキングである。なんというセンス、なんという不条理。恐るべき才能の持ち主だ。

ジェシカが駆け抜けた七年間について

歌野晶午

2004
ミステリ
041226 ★★★

 マラソンの開催中、競技場の一室で殺された監督は、野心に燃え、合法ドーピングを行っていた。チームの選手ジェシカは(7年前)同僚が自殺した件で監督を恨んでいた。彼女は出走直後リタイアしていた。読み終えると、なんとも凝ったストーリーである。エチオピア歴などを持ち込んだ叙述トリックや、なんのつもりか分身の術が、いやが上にも混乱を深めている。殺しなどその他の点がシンプル過ぎるのは惜しい。

パンク侍、斬られて候

町田康

2004
ファンタジーか
041226〜041227 ★★★

 『腹ふり党』なる新興宗教を巡り、さまざまな策謀と術数が交錯し、藩内は大混乱。ってとこかしらね。でも侍が斬られたのは私怨からであった。
 時代小説のカバーに自分の写真を載せる作家って、なんなんでしょうね。思索的饒舌は本人の投影だと思うのだが、登場人物の大半が投影されちゃうと、似たり寄ったりのキャラクターになってしまう。書く側は疲れないのかしら。憑かれてるのかしらん。くほほ、面白ければいいんだ。話の面白さではなく、文章の面白さ(だけ)で読ませる人ってそうはいない。

天国への階段 上・下

白川道

2001
長編小説
0401227 ★★★

 某図書館に『少し前のベストセラー』というコーナーがあり、リクエストに応じてたくさん買い込んだものの、今は借りる人もない旧話題作が並んでいるのさ。とはいえ、売れただけあってさすがのエンターテインメント、読み応えじゅうぶんである。漢字や語句に気を使っているらしい点も好感大。
 読中『白夜行』を思い出したのよね。華やかな成功を収めた主人公と、時効を過ぎた殺人事件に絡めてその過去をほじくる執念の刑事・・・。女性キャラにてんで魅力がないのはあれ以上。男は実に上手く描けてる。どいつもこいつも感傷的でよく泣くのが難だが。ストーリー展開は安易でご都合的。
 『天国への階段』というタイトルがレッド・ツェッペリンの曲から来ているのはいささか拍子抜けであった。意外な青春って印象。

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