青森県古来武道振興会による秩父宮台覧古来武道大会

(昭和11年(1936)3月18日 於 弘前市 東奥義塾大講堂)

 

      

            梶派一刀流剣術(弘前藩伝)                     小野派一刀流剣術(弘前藩伝)

 

         

            直元流長刀術(弘前藩伝)                          卜傳流剣術(弘前藩伝)

   ◎解説

 昭和11年(1936)年3月18日、

 「古来武道の伝統を誇る津軽地方の武道が漸次すたれ気味になって来たのを再興さすべく」

 青森県古来武道振興会が主催となって、秩父宮殿下、同妃殿下の前で、津軽南部両藩に伝わる各流を演武する

 「古来武道大会」が、弘前市の東奥義塾大講堂で午後6時より、約2時間にわたって開催された。

 演武の式次第は以下の通りであった。

 (剣道)

 △小野派一刀流:切組大太刀高杉健吉、仕方市川弁治、同宇野武雄、同柴田良蔵、

  仕方宇野運次郎、切組小太刀打方小舘俊雄、仕方鶴海成知、小太刀仕方藤原二夫、

 △當田流:大太刀打方関彦四郎、表五本仕方榊健三

 △卜傳流:大太刀打方小山秀雄、仕方佐々木志郎

 △神夢想林崎流居合術:打方田中定二、同向身仕方竹内国英

 △本覚克己流和術:受方宮本源五郎、取方木村庄七

  (休憩十分)

 △梶派一刀流:打方武田永孚、大太刀五点五本仕方油川貞策、小太刀表五本仕方齋藤龐涓

 △小野派一刀流:切組大太刀打方高杉健吉、仕方小舘東、同極意刃引打方笹森順造、仕方鶴海成知、

  同極意払捨刀仕方小舘俊雄、同向上極意五点仕方藤原新太郎

 △當田流:大太刀打方関彦四郎、中極意二本小太刀五本仕方関正寛、表五本仕方三浦千代壽

 △卜傳流:大太刀打方小田桐友太郎、表五本仕方市川宇門、折身五本仕方小山秀雄、

  同流小太刀打方藤原新太郎、仕方藤原典夫

 △神夢想林崎流居合術:打方笹森順造、向身、左身、右身仕方小舘俊雄

 △當田清見流棒術:打方野沢扇治、仕方中里幸能

 △穴澤流長刀術:打方藤原新太郎、仕方藤原典夫

 △直元流長刀術:打方佐藤直一、仕方佐藤イチ、仕方白取レン、仕方小舘俊雄

 △柳生流鎖鎌:打方野沢扇治、仕方中里幸能

 (柔道)

 △日下新流:受山内甚三郎、陰の月、無手、山嵐手取二川原吉蔵

 △日下眞流:受竹内助七、取石田慶助

 △同流手弓術:石田慶助

 △一當流柔術:受野沢扇治、取中里幸能

 △本覚克己流和術:知覚の段、琢磨の段、重練の段、受木村庄七、取瀧川幸男、

  剣詰、剣乱、受宮本源五郎、取木村庄七、極意攻具足の段、受福士敬太郎、取三浦良七、取今泉鐵定

 △起倒流竹中派:取工藤一三、受前田武卿

 

   記事によるとこの日の演武者の最高齢は、もと弘前藩士で一刀流師範の高杉健吉83歳。

  また、新影治源流取縄術の図と人形模型も台覧した。

  石田慶助なる人物は、手弓術、日下眞流柔術、講道館柔道、柳生心眼流柔術、柔道整腹師の武歴だという

(本多徳治『秩父宮両殿下御高徳録』東奥日報社 昭和12年3月、p103~110より)

 

 

 

小野派一刀流演武(中畑英五郎師範、高野佐三郎師範)

(明治36年(1903) 於 青森県弘前市 東奥義塾)

  20世紀初頭の一刀流剣術を写した貴重な古写真。

 演武する高野佐三郎は、近代剣道の祖としてあまりにも有名。一方の中畑英五郎翁は、旧弘前藩の小野派一刀流剣術師範であった。

 その系統は小舘俊雄(笹森順造と同門)、岩田夏岳、佐藤兵衛、高橋長夫の各師範(いずれも故人)に受け継がれた。

 筆者も幼い頃、岩田、佐藤、高橋各先生から、何度も竹刀剣道の地稽古をいただき、必死にかかっていったが、岩田、佐藤両先生が遣われた独特の歩み足と、終わらない連続技にしごかれた記憶がいまも思い出される。

 各師範が継承された弘前藩の小野派一刀流剣術は、いまもなお北辰堂道場(弘前市)で稽古が続けられている。

 以下の古写真を見れば、同じ一刀流剣術でも、中央剣道界の高野師範と、旧弘前藩の中畑師範の、両者の姿勢、歩法の明らかな違いが興味深い。

 現代武道からすれば前者の方がなじみ深いかもしれないが、後者の柔らかな身体の遣い方、特に現在の剣道のものとは異なる「中段の構え(?)」や撞木足等には目を見張り、ほか古流剣術との共通した理合を感じる。

 近代剣道の歴史的変遷を考えるうえで貴重な資料である。ご提供いただいた方に深く感謝申し上げます。

(小山隆秀 筆)

 

      

 

     

 

      

 

  

 

1