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裁判員制度~講評~

最新のディベート試合結果

■大会:BMディベートチャンピオンシップ

■開催日時:2008年12月06日(土)13:30開演

■場所:国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟417号室

■ディベーター:

中村貴裕の写真

井上晋の写真

奥山真の写真

■試合結果

チャレンジャー決定戦:
論題「日本はタバコ一箱1000円に値上げすべし」

肯定側:井上 晋【○:勝ち】
否定側:奥山 真【×:負け】

試合詳細フローシート

ディベートチャンピオンシップ2008 - 表戦:
論題「日本は裁判員制度を廃止すべし」

廃止側:中村貴裕【○:勝ち】
存続側:井上 晋【×:負け】

試合詳細フローシート

ディベートチャンピオンシップ2008 - 裏戦:
論題「日本は裁判員制度を廃止すべし」

廃止側:井上 晋【○:勝ち】
存続側:中村貴裕【×:負け】

試合詳細フローシート

■全体講評

1年ぶりの大会となった2008年12月6日。今回はシングルディベートの最高峰となる「ディベートチャンピオン」のタイトルをかけ 3人のシングルディベーターの闘いとなった。

現ディベートチャンピオン中村貴裕が3連覇を狙う。そこに、復活をかける奥山真、初タイトル獲得をもくろむ井上晋が殴りこみをかける構図となった。

聖地・国立オリンピック記念青少年センターのホールも10回目を数え、200名近い観衆が見守るなか行われた。今回は、歌舞伎をモチーフに「和」を演出、花道から登場する「着物姿のディベーター」に桜吹雪が舞う、拍子木が試合開始の合図を知らせるなど雰囲気にも凝った演出が見どころとなった

チャレンジャー決定戦:
論題「日本はタバコ一箱1000円に値上げすべし」

チャンピオンへの挑戦権を得る前哨戦奥山真VS井上晋の一騎打ちとなった。パフォーマンスの井上を、冷静な論理力で退ける奥山というのが今までのパターンであったが、今日の井上はちがった。

落ち着いた語り口に説得力があり、タバコの健康被害やコスト負担を冷静に分析。一方の奥山は、闇タバコにこだわりすぎたせいか、オーディエンスの共感を得られず、精彩を欠いた。

意外にも、大差で井上晋の勝利。チャンピオンへの挑戦権を得た。

ディベートチャンピオンシップ2008:
論題「日本は裁判員制度を廃止すべし」

チャンピオン中村貴裕へ井上晋が挑戦するメインイベント。今回は初めての試みとして同じ論題で、肯定・否定を入れ替えて2試合を戦う「表・裏」の完全決着制とした。

しかし、表・裏を通じてあまりにも抽象的な論に終始した中村、それに対し、一歩も引かず鋭く切れ込んでいった井上。表・裏の勝敗は一勝一敗の五分だったが、トータルポイントで井上晋の勝利!!主審・太田龍樹の講評では「井上晋の完全勝利」とのコメントがあったように、具体的な論証に加え、有効な反論が随所に見られ持前のパフォーマンスが開花した瞬間だった。

井上晋が、シングルディベート初の王者に輝いた歴史的瞬間であった。

■個別講評

ディベートチャンピオンシップ チャレンジャー決定戦「日本はタバコを1箱千円に値上げすべし」
○肯定側 井上晋 VS 否定側 奥山真●

肯定側は、タバコは健康被害を及ぼし、そのコストは国民全体で負担する。また、税収アップも期待できるとする。 一方の否定側は、1000円に値上げすることによって闇タバコが発生する危険性を指摘、タバコと健康被害には直接の因果関係はないと反論する展開。 健康被害VS闇タバコの構図となったが、論の重要性に差があり、否定側は苦しい展開となった。

■肯定側立論

<哲学>

愛煙家・喫煙家のひとは、自己責任において社会にも責任を取っていただきたい。

<現状分析1>

国民保険料をはじめとして社会に負担をかけながら非常に安価でタバコを手にいれている

<現状分析2>

タバコと健康について
2005年 タバコ規制枠組み条約
さまざまな機関で健康被害が発表されている
発がん率 15~30倍
その結果としてタバコは社会的損失も生んでいる
七兆三千億円のコスト負担
もはや喫煙は個人の趣味嗜好の問題ではなくて
社会的問題になっている
日本は国民皆保険制度をしいている
これらの医療費は国民全体で負担しなければならない

原因

煙草の価格 主要国の3分の1~5分の1
日本はトップレベルの喫煙率

プラン

1000円に値上げし、活用方法は以下の3点
    1 社会保障の負担
    2 不正の取り締まり
    3 禁煙の補助

メリット1

税収アップ
奈良女子大教授の試算 5.9兆円の税収アップ

メリット2

健康になれる
平成15年 JTの調査
6割以上が辞めたいと言っている
そのきっかけを与えてくれる

■否定側尋問

タバコと健康の因果関係があるかどうかについてつめていく
→ 易学は統計学なので、因果関係は証明できないとの回答を引き出す

■否定側立論

哲学

人類の旧来の友であるタバコへの迫害は日本の社会に大きな混乱をもたらす

日本には400年以上のタバコの歴史があるやめようと思ってもなかなかやめられなかった

問題点(デメリット)

闇タバコが蔓延する。イギリスで20%の不正タバコ。日本でも暴力団があり、麻薬と同様に扱われる。

肯定側への反論(矛盾)

1 平均寿命が世界一
2 喫煙率が下がっているのに、肺がんは増えている
3 不公平税制 3回も値上げ
4 税収は増えない(やくざにながれる)
5 消費量はかわらない→社会保障費は減らない

■肯定側尋問

欧州で喫煙率が下がっていることは、タバコが健康に良くないことを認めさせる。また、肯定側の反論のベースであった、喫煙率と肺がんの相関関係の矛盾をうまくついたような形となった。

■否定側反駁

闇タバコの存在について強調。イギリス・カナダの例をとって説明。 また、健康については、肺がん発生率は5倍と言っているが、0.1%と0.5%ではインパクトはそれほどない。

■肯定側反駁

肺がんのインパクトが少ないというが、これは命の問題。 改めて、禁煙によるガン発生率の減少(効果)を説明。 増税の根拠は ニコチン依存症の管理料に社会保険料から徴収される よって、タバコを吸う人からそれをとるのは理にかなっている。

■否定側最終弁論

400年続いた歴史が物語るのはタバコの有効性 肯定側への反論、疫学というのは差があることしか証明できない。 闇タバコが蔓延し、タバコ消費量が減らない、社会コストも減らない 青少年の育成にも問題。

■肯定側最終弁論

健康について、相手の論を受けた上で、科学的に論証された健康被害ゆえにタバコはやめるべきであることを訴える。そのうえで吸いたい人は対価を払って吸えばよいという(社会的責任を負う)論で締めくくった。

■総評

この論題は、もともと健康に有害であるといわれるタバコを千円に値上げすることで、喫煙者が減少するのか? 税収はどうなるのか?という論点があった。

肯定側は、この問題は社会全体がコスト負担をしている(7兆3千億円)大変重大な問題としてクローズアップ。安価に入手できる日本、1000円に値上げすることで税収アップし健康被害や禁煙促進に利用できる、さらに禁煙者の増加については健康面でメリットがあるとした。 これに対し、否定側は、闇タバコの存在(社会悪)という一点で勝負に出た。さらに、肯定側の反論には、健康とタバコに因果関係はない(疫学では証明できない)とした。 闇タバコについては諸外国の例を用いながら、規制がかかれば闇ができることを主張するが、それがこの論題のインパクトとして「千円の値上げ」を阻止するには弱い(関連性が薄い)と言わざるを得ない。 400年のタバコの歴史という観点はよいが、それであればその「永年の人間の権利(趣味嗜好)」を国が値上げという事実上の規制をすることへの是非を論じたほうが、わかりやすかったのではと思う。 あるいは、千円に値上げすることでどれだけの禁煙者がでるのか、禁煙者がふえれば結局税収はそれほど増えないのでは(論証メカニズムの矛盾を突く)ないかという反論もできたのではと思う。

肯定側は、禁煙者が増え税収があがるという前提で(否定から反論なし)社会的コストの抑制、健康によい影響を与える、吸いたい人は自分で負担して吸うということを終始一貫わかりやすく論じており、相手の反論も受けながら、そしてうまくかわしながら訴えていた。落ち着いたパフォーマンスも観衆の理解を深めた。

タバコの健康被害(周辺への2次被害)はやはり変えがたい事実、それにまさる否定のデメリットがだせず、闇タバコ(未知数)にこだわりすぎた感あり。千円値上げで喫煙者が減り税収があがるというメカニズムも崩せず。

よって、肯定側・井上晋の勝利。

試合詳細フローシート

ディベートチャンピオンシップ2008-表戦:論題「日本は裁判員制度を廃止すべし」
○廃止側 中村貴裕  存続側 井上 晋●

表戦として先に廃止側を選んだチャンピオン中村に、チャレンジャー井上が勝負を挑む。結果的には、オーディエンス票と審判団のジャッジが全く逆になる試合であった。言葉の使い方や構成のうまさでうわまわったチャンピオンだが、中身をよく検証する必要がある試合である。

■廃止側立論

哲学

「国民が対応できず日本に合わない制度は廃止すべし」とし以下の2点を基本理念とした。

・国民は人を裁けない
(人を裁くとは 真偽を見極め 法と照らし合わせて刑を決める)ということを基本理念とし、人を裁くのに必要なもの スキルと覚悟とした。

・国民にあわない
日本型民主主義とは 国民の自由を保障する自由主義
日本国民は自由をとり、政治や司法は 専門家にまかせた。

存続のデメリットを3点

1 真偽の追及ができない
  裁判がショーになる

2 公平でなくなる
  被告は裁判官を選べない

3 国民に負担を強いる
  8割が望んでない
  終わった後も守秘義務がある。現代版赤紙

■存続側立論

人を裁くというのは一種の権力であり正当性が必要

裁くとは、 事実を積み上げる&その裏にある想い

事実認定→誰にでもできる
その裏にある想いは裁判官だけではだめ

<反論>

負担は一生に一度あるかないかの程度。
可視化=わかりやすさ 一般の国民のためにやっている
有罪率 99.8% → 警察で裁判にかけるかどうかをきめている
司法でなく行政が決めている・・・三権分立でない

■存続側反駁

高い有罪率 →自白に基づくもの。人権が守られてない(1998年 国連人権規約)
警察・検察・司法が癒着している
クリーンにしよう → 国民のチェックが必要

裁判官によって異なる無罪率 → 専門家だけで機械的にながれている

多様な国民の目をいれてわかりやすくしよう

■廃止側反駁

高い有罪率 → 警察と検察がダブルチェック
必ず基礎になるものしか挙げてない
それだけ優秀 裁判の問題ではない

国民が司法参画する必然性ない
可視化が進んでいる
弁護士も裁判官になれる

国民にできるのか?
→ 事実認定・法解釈・量刑
対象が刑事裁判 → 難しい

公正性がない
→ 模擬裁判中に寝た これが国民の実態

■存続側最終弁論

事実認定 だれでもできる(プロの裁判官がいる)

その先にあるもの→多様な価値観
模擬裁判の結果がちがう → いいこと(ターンアラウンド)
検察と裁判官がべったり (三権分立してなければならない)
事実を積み上げて国民の感情をしっかり生かしていこう

■廃止側最終弁論

多様な社会 → 分業体制が必要(日本にあう)
高すぎる有罪率 検察にチェック機能がある・癒着ではない
国民に対応できない →国民に資質がない 難しい 覚悟がない
裁判の質がさがる
以上の4点をのべてまとめた

■総評

廃止側(中村)は、日本国民の裁判に対する資質と、日本の風土において存続することの意義を問い、デメリット3点があがるとした。

先進国のなかで唯一導入されていないといわれている司法制度のなかで、とりわけ「日本」という国に裁判員制度が導入されることを、国民の資質・風土(戦後の政治や司法のありかたなどで)検証した点は評価できるが、その論証としては具体性を欠くものとなってしまった。

一方、存続側(井上)は、裁くことの意義そのものにフォーカスし、事実認定だけでなく、その裏にある想いは職業裁判官だけでのものではないとした。

この両者の哲学を対峙させ掘り下げていけばよかったが、反駁以降でかみ合ったのは、高い有罪率がなにに起因しているのかという点の応酬という、すこし中心からずれた議題になった。 廃止側(中村)は、最後まで自論の論証を丁寧にした。存続側(井上)は「可視化」や模擬裁判でさまざまな判決が出ることを逆手にとって持論の優位性に結びつける(ターンアラウンド)など、うまさも見られたが、廃止側の哲学を崩すまでには至らなかった。おたがい、相手との論を比較考量するという作業まではできてなかったが、そこは立論をきれいにまとめた廃止側が優勢に立ち、その土俵の中心で戦えなかった存続側という構図が残ってしまったというのがオーディエンスの評価につながったのであろう。

ただし、ジャッジ団は4名が存続側の勝利としている。これはやはり、廃止側があまりにも抽象的な論に終始したということ、存続側が唱えている、裁判員制度の効用(職業裁判官に一般人が加わること)への反論もなく、ただ国民の資質がないなどの持論の主張だけにおわったところはいただけない。これからの裁判員制度に対し存続側はある意味いろいろな投げかけをしており、それに答えなかった廃止側という試合になってしまった。

ただし、上記オーディエンスが受けた印象は廃止側のほうに分があり、トータルで廃止側が勝ちとなった表戦であった。

試合詳細フローシート

ディベートチャンピオンシップ2008-裏戦:論題「日本は裁判員制度を廃止すべし」
○廃止側 井上 晋  存続側 中村貴裕●

■廃止側立論

廃止する理由を、以下の2点とした

1 正しい裁判が行われなくなる
  事実の認定を
① 口頭にて ②素人裁判官が行う

2 負担がかかる
 時間的負担・・・ 短くて3日、もめれば9日~10日
 心理的負担・・・ 死刑制度がある

大きな哲学こそないが、シンプルに2点にまとめた。言葉の定義など丁寧に論証した点が評価できる。

■存続側立論

哲学

国民の民主主義を成熟させる制度 司法に対する民主主義の導入

※民主主義とは以下の3点

①ひとりひとり国家権力行使
②チェック&バランス 透明性
③チェック機能を担う

トクビル
 国政への参加
 司法参画 自己本位と闘う
G8で導入していないのは日本だけ

<反論>

正しい裁判とは
多種多様な経験 ひとりのプロが必ずいる(死刑の場合)

負担を軽減している
数か月 → 三日で終わる プロをいれている(陪審制とのちがい)

民主主義という大きな哲学を掲げ、その定義をしっかり掲げた。だが、それがこの論題にどのように機能し、どんな問題を解決するのか。国民にどう影響するのかがわかりづらかった。廃止側への反論は丁寧に行われていた。

■否定側反駁~肯定側反駁

トクビルや東大OL事件の例を持って、現行の裁判の問題点をあげようとする存続側(中村)に対し、廃止側(井上)は、忘却曲線を使って科学的に論証。口頭での審議は効果がなく正当性がないことを強調。具体性のある廃止側優勢に進む。

■存続側最終弁論~廃止側最終弁論

国際社会に必要なのは民主主義であるとする存続側であるが、廃止側(井上)の「裁判員導入前の裁判で民主主義においてなにか問題がおきているのか?」という問いは、この試合を象徴する決定打になったであろう。

■総評

裁判員制度を廃止すべき理由を、国民レベルの実態論で論証した廃止側(井上)に対し、民主主義の成熟というおおきな概念論(観念)で対抗した存続側(中村)だが、あまりに抽象的な論に終わった感がある。

廃止側は、口頭による裁判の弊害(緻密性の欠如)、負担の増大を論証したが、これに対する反論は議論のすり替えになっており、廃止側の論証が通った形となった。存続側は、民主主義の導入という哲学は評価できるが、トクビルの引用や、東大OL事件の例の用い方と「民主主義」という概念を証明するにはあまりにも小さすぎたといえるだろう。

廃止側の尋問で、「未必の故意とは何ですか?」という質問に、存続側(中村)がたじろいだシーンが印象的であった。反駁以降、その勢いに堂々たるプレゼンテーションが重みを増し、朱の羽織はかまの井上が勝利を勝ち取った試合であった。

試合詳細フローシート

ディベートブートキャンプ

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