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A-UK3 (続き)



A-UK3内部。拡大は前ページの写真で^^♪  A-UK3の内部は、基板のアートワークがきわめて美しい。信号の流れが後面パネル → リモートのセレクター → 2連VR → 初段オペアンプ と合理的に進むように設計され、視覚的にも流麗だ。CDプレーヤー・ケンウッド DPF-3010もそうだったが、基板デザインが美しいことは、私にとって所有していてとても心楽しい。こういった合理的で美しい設計が音質にも影響しているだろう、と思うのは、音を聴く際にもプラス(悪くいえばプラシーボ効果)になる。
 電源部のフィルター・コンデンサーは電源トランスから少し離れて基板上に設置されているが、スピーカー端子直近の配置になっていて、まさに スピーカーからのアース・リターンはコンデンサーの中点に最短で戻すべし というアンプ設計の王道に則った形を実現している。

 基板や内部構造をもう少し詳しく見てみたい。
A-UK3 初段オペアンプ周辺−拡大可  左 (クリックで拡大。以下、本ページ左側の写真は拡大可) は、ヴォリューム・スイッチ(2連VR)周辺写真。アルプスのでっかい角型ヴォリュームをおごっている。回転の摩擦感が若干軽く、振動の影響はありそうだが、このクラスでこのヴォリュームは贅沢だ。
A-400 ヴォリューム周辺  右に、欧州ヴァージョン A-400の同部分の写真を、ネット上で入手したので、小さくして掲げてみたが、ヴォリュームは、わが国でも安価なアンプによくみられる、そう高級でないタイプだ。

 A-UK3に戻るが、VRを出た信号は初段オペアンプ JRC NJM2114DD に入る。このオペアンプはJRC(新日本無線)が同社サイトでオーディオ用として 自薦する 品種である。
 さらに、写真左方には比較的大きくて青い抵抗器が2本見えるが、これはオーディオファンなら知る人ぞ知る理研電具のRMAと思しい。秋葉原価格で1本200円‥‥は自作用に十数本買うていどならそう負担ではないけれども、メーカーが4万円のアンプに使うというのは立派。RMAは金メッキのRMGになってからもアンプ自作派の机辺を潤してきたが、もう両方とも製造中止だそうだ。これも、A-400では異なる品種のようだ。これは、電流帰還の抵抗に使われているようだ。
 ことほど左様に、コントロール機能を省いた本機は、肝心な部分のパーツにはかなりよいものをつぎ込んでいる。音質そのものへの影響がどれだけあるかは断定できないけれど、10年以上使用してヴォリュームのいわゆるガリは皆無。


 略回路図は、前ページを見ていただきたいが、AC100%帰還の、ACアンプである。出力に直流は全くといっていいほど出てこない。あまりやってはいけないことだけれども、電源を入れたままスピーカーを離したりつないだりした場合、ふつうは大なり小なり「ガリッ」とか「パチパチッ」というノイズが出るが、A-UK3 では、全くこの「パチパチッ」が出ない。このノイズは、出力に出てきているDC成分のスパークが原因なので、これが出ないということはDC成分が出ていないということでもある。

 DCがわずかに ― 数mV〜十数mV ― 漏れていても、そうめくじらを立てることではないのだが、一時期、ビクターの‘HMV’シリーズの、デザインの美しいモノコック成型ボディのアンプを使ったが、片側のスピーカー端子から、端子オープンでかなりのDCが出ていた。実際にスピーカーをつないで電源を入れ、リレーが入ったとたん、ウーファーがぽこっ、と前( or 後)に動いた。メーカーに電話で伺うと、音質の検討結果から、DCアンプでかつDCサーボはかけていない、というようなお返事だったと記憶している。私は、左右の音質差 (前に書いたとおり、そのほぼすべては部屋のせいだったと思うが、入出力を逆にすると、わずかに音も変わったような気がした) が気になったのだが、左右でDC漏れがかなり違うというのは精神衛生上よろしくない。ポリシーとしては、DC漏れにあまり神経質にならないこと、あるいはDCアンプとしたほうがよい音質を得られる場合があることも、決して認めないわけではない者だが、個人的には A-UK3の出力の直流安定度の高さは安心できる。


 このアンプは、入力・録音セレクターとヴォリュームしか操作機能がない。フロント・パネルも回路自体もシンプルで、その点も好みに合った。直前に使っていた PM-44SEもフロント・パネルは酷似していて、ただしバランス・コントロールは付いていた。
 トーンコントロールについては、ユーザー側に不要論と必要論があるが、ユーザーの条件(聴く音源・部屋・他の機器…)によって必要だったり不要だったりする。私自身は、ステレオというものに触れた当初、トーンコントロールの面白さに、楽曲の鳴っている間ずっといじっているようなことが多く、音楽に集中するには無いほうがよかった。加えて、求めたアンプのトーンコントロールの変化曲線などがこちらの条件と合わない感触が少なくなかった。

 不要論の根拠は、余計な回路と接点を通すことで信号が劣化する、というものだ。こればかり強調される風潮があるので、これに対する反駁を加える向きもあり、それもまた理解できるのだけれど、前述の PM-44SEのような、バランスしかコントロールのない機種でさえ、当時の‘ダイレクト偏重’の風潮からかダイレクト・スイッチがあった。そして、それをオンにすると、バランスコントロールをパスしただけなのに、わずかながら情報量が増えた感じがあったのである。個人的にはコントロール回路は、不要な状態にシステム全体を持ってゆくのがベターか、と思っている。
 現在は、CECやトライオードなど、マイナーなメーカーが、ミドルプライス以下でこの種のシンプルなスタイルのプリメイン・アンプを発売しているが、A-UK3と同時期には、PM-44SEに加えてナカミチの IA-4s もあり、選択の幅があった。個人的に、このタイプのアンプはもっと出回っていていいと思うけれども、オーディオのビギナーはハイコンポに目が行くし、本格的なオーディオを求める層には、この価格帯はオーディオ機器とはいえないクラスなので、短期で消えてしまった。


 電源のコンデンサー付近も撮影したので ―
A-UK3 メイン・コンデンサー周辺−拡大可  メインのフィルター・コンデンサーはエルナー製、50Vで10,000μF。これも、この価格帯では8,200μFから6,800μFくらいのものが一般的なようで、10,000μFはでかい。ひとつには、DPF-3010の場合と同じく、電源電圧が低いので低圧用でよく、コスト的に容量に振り向けられるわけである。これも低出力(30W/8Ω、60W/4Ω)設計のお蔭(=電源電圧が低くてすむ)だ。

 取扱説明書には、「特長」のひとつに「■高音質部品として、ペアのコンプリメンタリーコンデンサーを使用」とある。電解コンデンサーは陽極側と陰極側の電極箔が、どちらか(たぶん陰極箔?)が外に、他方が内側に、セパレーターを介して巻かれるわけだが、正負2電源方式では、+側のコンデンサーは陰極側が、−側のコンデンサーは陽極側がアース=GNDに落ちる。そこで、+側、−側に用いるそれぞれのコンデンサーで、アース側に来る電極箔を外側に巻いてノイズへのシールドにしよう、というちょっと贅沢な試みを、当時のパイオニアは、もちろんより高級機で行なっていて、オーディオ誌でも取り上げられていたようだった。+側用と−側用とを分けて製造し(コンデンサー・メーカーに作ってもらい)、トランジスターのNPN型とPNP型のコンプリメンタリー・ペアになぞらえてこう称した。A-UK3もそれを使っている、らしい。

 あと、電源トランスの方向からヒートシンクを眺めたところを1枚。
A-UK3 ヒートシンク付近−拡大可  この電源トランスの下にも脚があり、5本脚である ― この辺は『週刊FM fan』1996年18号の「ダイナミックテスト」に、A-UK3IIのレヴューとして記されている。
 さて、ヒートシンクの前端とフロント・パネルの間に、少し基板のエッジが見えるけれども、この、基板の設置が意外に底板から離れた、高い位置にあるのが窺えよう。実は、これは私は大いに評価しているところで、こうすることによって底板の固有の響き=レゾナンスが基板に影響することを防いでいる、と考えられる。

 一般的には、底板に近く低い設置が低重心で振動しにくいように思われるかもしれないが、増幅度の大きい管球アンプなどでは、真空管の設置された部分の響き ― 周辺のシャーシや管壁を叩いて響く音、である ― に再生音は影響される。私はこれをマイクロフォニック・モジュレーション Microphonic Modulation ないしマイクロフォニック・カラレーション Microphonic Coloration と勝手に呼んでいる (厚かましい^^;)。これは管球プリアンプ・キットを作ったときに経験した。ノイズが出るわけではないので、マイクロフォニック・ノイズということはできないけれども、増幅に際して、周囲の振動モードの影響が再生音に出るのは確かだと言っていい。振動の影響を受けにくい半導体アンプでは、あまり問題にならないことではあるにしても、A-UK3の基板設置位置は、天板の響きからも底板の響きからもできるだけ遠くしようとしたとも受け取れる、心配りのある実装ではないかと思った。

 もう一点、本機は出力トランジスターの放熱板ヒートシンクは左右チャンネル共通である。当時すでに、安価なアンプでも左右独立ヒートシンクとすることが流行っていた。出力段でのクロストークを避け、ステレオ・イメージを改善する、といえば一般ユーザーはいいことだと思うに決まっている。が、私見だが、クロストークはインピーダンスが高い部分と、増幅度の高い部分で起こるのではないだろうか。通常の半導体を使ったプリアンプやプリメイン・アンプでこれが生じる場所は2連VR(とその引き出し線)だろう。というより、そこだけといってもいいのではないか。つまり、出力段のように、インピーダンスも低く、エミッター・フォロアーだから増幅度も無い箇処で、クロストークがステレオ・イメージを劣化させるほど起きるとはどうにも考えがたいのだ。

 というわけで、一見手抜きに見える A-UK3の左右共用ヒートシンクだけれど、共通にすることで振動しにくい重くて堅牢な放熱板となるし、これまた素人考えだが、ちょうど温度補償用トランジスターと出力トランジスターを「熱結合」するように、左右チャンネルの出力トランジスターが、熱結合し、片方だけがアイドリング電流が増えたりせず、バランスが取れるのではないだろうか、などと(漫画的発想だが)考える。逆にプアなアンプでなまじっか左右独立ヒートシンクとした場合は、それぞれが軽くなって振動しやすくなるし、片方だけアイドリングが増えて動作点が変わったりすることもあるのではないか(…ないだろうけれど^^)と思ったりする。この点も A-UK3の合理的設計を感じ取れるところだ。

 この辺で、アンプについてのゴタクは終了します。

2008年2月

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