前穂4峰

           八木、安川、藤田
 17日
      ルートは確定できず取り合えず、前穂へ...の発射。出来れば、4峰のどれ
      かを登って、3,4のコルでビバーク。次の日。東壁の古川ルートとなればな。
  22:00 出発。平湯の上高地シャトル用駐車場に2:30、到着、仮眠。
 18日
  05:00 起床、軽く朝食の後、06:30発のバスへ。
      30分で上高地、連休の割には少ない人の中、徳沢へ向かって歩き出す。
  10:30 「氷壁」の舞台の遭難碑を過ぎ、「火の噴くようなアプローチ」中畠新道も
      1時間で奥又白池に着く。2張りのテントが見える。水の補給と少しの休憩で、
      さっそく取付きへ直行。キツイかなと思ったが、明日の天気予報を考えると
      「行ける時に行くべし」。テン場から10分ほど登った稜線から奥又へ下る。
      「こんなに急だったかな?」と思いながらガレを降りたが、やっぱり100m程
      降りるのが早すぎたようだ。10年前の記憶はいいかげんなものである。
  12:30 テラス。本当は後の二人にリードしてもらうべきだったが、天候の事を考え
     「少しでも早めに」とルート経験のある自分がかってでる。
   1P しかし出だしから迷う。結局、左から同じようにある「草付ルンゼ」の2番目
     を登る。(たぶん前回神戸ろう労山で行った取付きが間違いだったようだ)
     何本か残置のボルトもあり、間違いない。
   2P 50mいっぱいに延ばし、右よりの壁にピトンを打ち足し、ビレー。
   2' 非常に脆い、出来るだけ甘そうな丸っぽいホールだけを掴み、右から上がる。
     ここで間違いと気づいたので15mほどの所で取り合えず、ピッチを切る。
   3P 草混じりのフェイスを登り、ハング手前でビレー。右手に「北条、新村」の
     ハングが見える、こんな近くに見えるのは???
   4P 霧から雨になる。当初、リードを交代するはずだったが、少しでも時間を稼ぎ
     たく、このままで先を急ぐ。ハング下のスラブを左上し、凹核の垂壁を越す。
     開けたフェイスが広がるが、この先が分からない。取り合えずまたピッチを切る。
   4’左数m下にテラスが見えたので、これが松高テラスと思い、フォローの二人に
     そのまま、そこまで降りてもらう。しかしビレー点がない。しかたがないので、
     直上することにする。それでも、所々に残置ピトンもあり何となくルートか?
     50mまたいっぱいに延ばし、ピトンを2本打ち足してビレー。
     5P さらに、似たようなフェイス(3,4級程度か?雨の中でしょっぱく感じる)
     を進む。ここでやっと、しっかしたリング2個の支点と出会う。
     右手に10年前「神戸労山」で来た時、見たあのシュリンゲのぶら下ったハング
     が見える。これがルートのどの部分なのか、未だ定かでない。
     左に回りこむ、10年前と違うルートへの思いと容易さで選んだが、凹のハング
     まで現れ、結構渋い。さらに、ハングは雨がもう滝のように頭から降りかかる。
     悲しい程の寒さと疲れも、この頃から忘れたように、心はすっかり猛進のみ、
     怖さも消え失せている。
   5’フォローの二人に易しそうみ見えたので「つるべ」で上ってもらおうとしたが
     スラブがいやらしいのか、10mほどで左に支点を見つけ、ビレーとする。
   6P スラブをやや左気味に、駆け上る。しっかりした支点がないので、右の壁の
     クラックにカムで支点を作り、確保。
   7P そのままフォローの二人には、また続けて上ってもらい、やっと終了点に到着。

  検証 (たぶん2Pを10m程手前で切って、その直上のフェイスが正規の3P目だろう。)
     (正規の4,5ピッチ目は「北条ー新村」ルートとの中間を松高ルートと交差)
     (しながら登り、6Pから正規のルートに戻ったのであろう)

  17:30 雨の登攀もやっと終了。もう薄暗くなりかけてきてる。縦走路にビバーク。
     やっと3人が腰をかけられる岩影にツエルトをセット。手でガスとヘッドを
     もったままで、お湯を沸かし、ささやかな晩飯。食べている間は少しは暖かい
     それも一瞬。ずぶ濡れの体に無常にも雨は降り続ける。時計を見る。19時
     あうあ、これから長い長い、寒い寒い夜の始まりだ。
 19日
     ほとんど一睡もできず、朝を迎えた。雨は無常にもまだ降り続ける。
  06:00 出発。5峰へのルートが分からない。さんざん危なっかしい獣道を行き来
     した後、縦走路を見つける。何の事はない、ビバーク地の真横にトラバースだ。
  07:30 5,6のコル。テントが1張り。どちらへ降りるか迷ったが、足腰の疲れが
     心配で、距離は長くとも、なだらかな涸沢へ向かう。
  08:20 涸沢ヒュッテ。大勢の登山客混ざって、しばしの休憩。空は太陽まで時々は
     顔をだす。昨夜から今朝にかけての荒天と寒さが嘘のよう。
  13:30 よれよれになりながら上高地バスターミナルに倒れこむ。
     後はシャトルバスえ平湯。一風呂浴びて、一路、兵庫県へ。
    
  久しぶりのハードな山行であった。またルートは初級でも、あの天候の中、2日間、
  ほとんど睡眠なしで、行動しっぱなしは、小生、58歳にしては強烈だ。
  何年振りかの「心地よい疲れ」とまだ「がんばれるかな?」の気持ちが、ちょっと
  だけ満足感を、味わわせてくれたなか。
   大正池から振り返る