戸台七丈ノ滝

甲斐駒最大の氷爆。 聞きしに勝る氷であった。

                               山岡、竹谷(はりま),川井(塩飽),今井(神戸),藤田(Berg)
 久しぶりにきわどい山行をしてしまった。
 CRVに5名を詰め込み、今年には珍しくスキー客の多い高速を一路北へ。戸台の堰堤手前の駐車場に着いたのはもう4時近くであった.
 2月10日
 今日は偵察だけと...のんびりした9時出発、約3時間で丹渓山荘に着く.テント設営後、ただちに左岸のトレースを進む。途中人
 気の舞姫の滝を左に見ながら、ここからはラッセルをしてのアプローチ。2時間ほどで一昨年、駒津沢に行った時のbaseに着く。と
 いってもデブリの後でその面影はない。突然七丈滝の雄姿が現れる。象の鼻は残念ながら繋がってない。このコンディションでだめ
 なら何時凍るのだろう。F1で少し遊び、ギヤーをデポし、後は明日のお楽しみ。
 2月11日
 4時起床。5時発。天気は晴天。満月に近い月明かりの中、昨日付けたトレースを快適に登る.一時間あまりで取り付き。
 7:05 登攀開始。F1は藤田のリード。後ろの山岡(3人)パーティーは川井さんがリード。快適にF1を抜け、腰ビレー。気が入らぬ
 のかあの竹谷君がこんなところでテンション。腰ビレーで油断してただけに、ちょっとギク!
 次の120mほどはノーザイルで2ピッチ目に。ここも4級程度だろうが、コンテで飛ばす。3ピッチ目、3級。これも飛ばす。快調!
 氷の着きぐあいが違うのか、ルート図では5級、5級+の右から左へのコースだが、我々はむしろ左から右へ3ッピチに分けての
 トライとなった。藤田がリード(この後は竹谷君にお任せの為、今の内にトップを)。4級程度だが、斜めのトラバスが怖い。
 20m程でピッチを切る。いよいよ核心の氷柱の塊のようなバーチカル。今山行のヒーロー竹谷君の出陣。
 ビレーをする小生の緊張させられる.ボロボロと氷柱の崩れが落ちてくる。彼もかなり苦労している。アックス、テンションでの
 休憩を入れながらの登攀。こんなところ俺が少しでも色気を出してやるなんて言わなくてよかった。胸をなでおろす。
 そういえば竹谷君、登りだす寸前に「しょせんリード以外は皆、他人事だもんなあ...」恨めしくつぶやいた。
 「ウワー!」
 頭より大きな落氷が目の前に落ちてきた.。右目上と腕を直撃。どうなったか朦朧としながらも、トップは必死でもがいている。
 俺のこんな怪我にうつつを言っては申し訳ない。ビレー続行(あたりまえか?手を離せるわけない。)
 「グギャー!」
 今度は竹谷が落ちてきた。祈る気持ちでビレーを握り締める。体が1mほど飛ばされた。
 「ピンよ!飛ばんでくれ。せめてビレー点の俺のだけは。」(うそだよ。死ぬときは付き合うよ)
 ...止まった。アイススクリューの威力を知り、そして感謝、感謝感激。
 しかしこの若者は技術もさることながら、体力抜群。ついに登りきってしまった。
 さあ俺の番だ。でも体が動かない。左半分は水飛沫が凍ってカバカバ、ロボコップのような動き。右半身はびしょぬれ。キョンシー
 のよう。でも待ってはくれない。ロープが引かれる。しかたない行け!
 思った以上に悪い。アックスは利かない。使い初めのモノポイントも頼りにならん。
 「ウヘー!」
 ついには俺が落ちた.セカンドで落ちると実に惨めな気持ちになるもんだ。もうこうなりゃメチャクチャ登り。テンションあり、
 氷柱を思わず握り「ポッキン!」折れてまた落下。やっとのことで竹谷君の顔が見えた。「あんたはエライ!」こんなところ
 リードしてしまうなんて。小生がお母ちゃんならきっと「愛しき我が息子よ」と抱きしめて誉めてやったろう。
 (でも本当のおかあちゃんなら「大介!もうええかげん、そんなあほな事止めろ」と言うのが人の親かな?)
 最中ピッチは10mほどの4級か。ほっとして、終わった。よくクライミングの終了点で握手してる写真を見て「何を..チャンチャラ
 おかしいわい」と思ったもんだが、気持ちがわかった。がっちり握手「そしてご苦労さん、有難う!」
 13:10 幸いにして恵まれた快晴の空がまぶしい。生きている。54歳になったおっちゃんもしっかりと生きている。まだ...
 下山は雪が締まっていたとこで、早く、楽にできたのはきわめてラッキー。



F2竹谷リード