火花ノック,Knocking
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火花ノック,Knocking,続き



 ガソリンやそれのオクタン価を説明してきましたが,耐ノック性を言っても,ノッキングがどういうものか解らなくては納得が得られないようです.幸いにも先に可視化エンジンを使ってノックの発生を撮影した動画がありますのでそれを見てもらうことにしましょう.

 The explanation of gasoline octane rating in another page might give an imperfect understanding to many people due to the lack of knowledge on engine knock phenomena. You can see herewith a high-speed schlieren movie of engine knock, visualized using a single-cylinder motored engine in the Engine Combustion Laboratory, Nagoya Institute of Technology, Japan. Copyright © 2003-2012, Engine Combustion Laboratory, Nagoya Institute of Technology, All Rights Reserved.

繰り返し表示するようにしてありますので,止めたい場合には画像を Click してください.


 

 画面の中の数値は時刻で,単位は ms です.上死点 TDC を 0 ms (0o CA) としてありますので,マイナス符号付きは上死点前,数字だけのは上死点後です.シュリーレン Schlieren 写真のつもりですが,Knife Edge は浅くしか懸かっていませんので,ほとんど影写真になっています.


 画面下方右寄り壁面で可燃混合気に電気火花放電で点火がなされたあと,-1.37 ms (2o bTDC) あたりで火炎核が生じ,その後火炎が伝播で拡がります.火炎伝播は右下方から左上方に向かって進行しますが,まだ伝播火炎が到達していない左手やや上の未燃混合気 (End Gas と呼びならわします) が 5.80 ms (8.4o aTDC) あたりで自着火して伝播炎を押し戻しています.このときの圧力経過は下図のようです.

 Piston is moving up and down perpendicular to the image. Numerical value in the image indicates crank angle degree from the top dead center. A spark plug is located on lower right-hand side of the image, from which a semicircular flame kernel is created at -1.37 ms (2o CA bTDC) and then a turbulent propagating flame developing to the opposite wall of cylinder. At the final stage of flame propagation, a self-ignited explosion can be found at 5.80 ms (8.4o CA aTDC) on slightly upper left-hand side of the cylinder, which will push back the approaching flame to the other direction.

 Pressure history corresponding to the movie is shown in the right-hand side figure.


 上の指圧線図を見てお分かりのように,自着火が起こった後の圧力振動はあまり強くありません.これは低速の比較的弱いノックであるからです.実験装置を壊したくないので弱いノックしか生じさせていないというのが理由のひとつです.燃料がイソオクタンであるうえ,当量比 0.7 とかなりの希薄混合気ですので,条件を厳しく合わせないとノックが起こらないというようなギリギリのところであるというのがその次の理由です.当量比 0.7 は,通常の量論を基本とするガソリン機関の領域ではなく,いわゆるリ−ンバーンエンジンの領域です.

 右に示す指圧線図で,火花放電 (紫色丸印) を端緒に燃えるのが火炎伝播であり,緑線部分がそれです.それとは独立に,未燃混合気が自ら勝手に火を発してしまうというのが自着火であり,赤線部分です.ガソリンエンジンの場合には自着火が起こるということとノッキング Knocking とはほぼ同義です.

 火炎がすべての混合気へ伝播し終わらないあいだに自着火するという現象がノック Knock です."自着火" とは火種がないところで発火するということです.



 高圧縮比のエンジンでもノッキングを起こさせない,そのための高オクタン価燃料です.オクタン価は電気火花放電による強制点火やそれ以降の火炎伝播に対する指標ではありません.「自着火しにくい」 かどうかです.オクタン価の差が燃焼速度の差となることはほとんどありません.


____ : Flame Propagation, ____ : Auto-igniton
 

 点火というのは人為的に火種を与えるということであり,高圧電気放電で点火すればオクタン価に関係なく同じように燃えます.高圧縮は火花点火後の未燃混合気に対して自着火が起こりやすい温度・圧力場を準備します.ハイオクタンガソリンを供給するのがそれを起こさせないための対応策です.


 ここで撮影に用いたエンジンは右の図のようになっていて,計測用に改造されたものです.もちろん実機ではありません.シリンダ内を上から覗けるるようにできており,画面に垂直方向上下にピストンが動いています.吸入弁はシリンダ側壁に付いていて,φ87 のシリンダ全体が欠けることなく写ります.ショートストロークですので,火炎伝播の二次元性が保たれます.

 The whole cylinder comes into view for photography through a fully transparent cylinder head. A short stroke will give the flame propagation more two-dimensional aspect.

 Single Cylinder, φ87×84 mm, Engine Speed: 240 rpm, Compression Ratio: ε= 9.1, This engime is modified from Yamaha-oriented SR500. Fuel: Iso-Octane, Equivalence Ratio φ= 0.7


 火花ノックと表題に挙げたその名称のとおり,ピストン圧縮とそれにならび続く火花放電誘起火炎伝播発熱反応による圧縮を受けたエンドガス部が自着火して火花ノックが起こります.それゆえ,火花放電なしで,ピストン圧縮のみで混合気が自着火する条件を与えておいた上に,火花放電し,火炎伝播を加えて生じた自着火も同じ火花ノックという語彙で呼ぶべきものであるかどうかは大いに疑問です.火花ノックは火花放電がなければ自着火が起こらない条件の下での自着火現象として定義されているに違いありません.低速ノックについては火炎伝播と自着火まえ反応との競合で,それらを互いに独立の現象として扱ってもほぼ説明がついていますが,高速ノックでは火炎伝播と自着火まえ反応との相互干渉を考えざるを得ず,それなら低速ノックには本当に両者の相互干渉は皆無かと問われたとき,明確には返答できないというのがその理由です.それに関連する可能性がある事項として,火炎帯形状に 楔形の凹み が現れるということがあります.そのことについては別のページを用意しました.


名古屋工業大学 機械工学科の 「エンジン工学」 という科目で講義していた内容の一部,もしくはそれをすこし増補したものである.
読者を想定している書きようであるかもしれないが,聴講者のある講義が基であるがゆえであり,本稿の趣旨は自分のためのこころ覚えである.

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