富士山 『山体崩落』で津波最大50mの可能性


  火山学に造詣が深く『破局噴火』(祥伝社新書)などの著書で有名な日本大学文理学部地球システム科学科の高橋正樹教授は、「富士山噴火の想定」について、週刊現代の質問に答え以下のように話しています。




(※週刊現代の記事「いま富士山が大噴火したら」より、高橋正樹教授の発言のみを抜き書きしました。)

* * * * *

〈引用開始〉

●富士山が噴火すると『山体崩落』、つまり大きな山崩れを起こす可能性があります。山体崩落によって富士山の土砂が駿河湾に流れ込めば、50mの津波が発生し、最悪の場合、富士山の周辺自治体で数万人単位の犠牲者(死者)が出る可能性があります。

山体崩落はいつ、どの場所で起こるかわからないので、避難のしようがないのです。次に地震が来れば山体崩落が起きる可能性が高いのですが、防ぎようがない。

富士山非常に不安定な形をしており、ちょっとしたきっかけがあればすぐに崩れてしまう

●1888年には福島の磐梯山山体崩落が起きましたが、5つの村が一瞬にして埋もれてしまった。山体崩落は瞬間的に発生するので、避難警報を出す間もなく、一瞬にして街が埋まってしまうのです。

最悪のシナリオをあえて挙げるなら、富士山で山体崩落が起こり、莫大な土砂が一気に駿河湾に流れ込む、すると最大で50mにも達する津波が発生し、周辺自治体が津波に呑み込まれてしまうことも考えられます。

●火山灰は空気中の水分を吸収して、雨となって降ってくることが多い。火山灰は水と混ざると固まるのですが、道路に積もれば運転は困難になり、電線に積もれば電線を切断してします。さらに、航空機の運航は不可能になり、各地に設置されている携帯電話の中継システムも故障するおそれがある。移動、通信、電気がダメになるわけですから、社会的混乱が起こることが予想されます。

富士山だけではなく、日本に破局的な被害をもたらす噴火が、いつ起きるとも限らない。

9万年前、熊本の阿蘇山が大噴火を起こしたとき、数週間から数ヶ月にわたって、600平方kmもの火山灰が放出されたことがわかっています。

 宝永大噴火の時の火山灰の量が0.8平方kmですので、約800倍もの火山灰が日本全土に降り注ぎ、平均で20cm北海道ですら15cmほどの火山灰が降り積もりました。

 その時日本列島に生息していた生物や植物は、死滅の危機に陥ったと考えられます。

 このように、日本では文明や生態系をほろぼす破局的な噴火が、低頻度ではありますが繰り返し起こっているのです。

 火山学的にみれば、9万年前の阿蘇山大噴火のように、日本を壊滅させるだけの噴火が、近未来に現実となる可能性は十分にあります。〈引用終わり〉

* * * * *

(私のコメント)

 先日、富士山噴火に伴う「山体崩壊」に関する新聞記事を掲載しましたが、多くの専門家から同じような警告が発せられるようになりました。

 しかし、現実は記事にあるように「山体崩壊のメカニズムを限定できず、対策のとりようがない」のが実情だと思います。上述、高橋正樹教授のように想定は出来ても、「避難警報を出す間もなく、一瞬にして街が埋まってしまう」のでしょう。

 実際に、
約2900年前には富士山の東側斜面「山体崩落」が起きており、その時発生した御殿場泥流厚さ最大50m、長さ約30kmにも及び駿河湾に到達しています。(高橋正樹教授によると、最悪シナリオは南側斜面での山体崩落、津波最大50m)

 また、その引き金となる
「富士山の新たな活断層」もごく最近の調査で見つかっており、活断層単体でマグニチュード7クラスの地震を引き起こす力を持っているようです。(下記記事参照)

 こうなると、どのような場合に「山体崩落」がきるかを科学的に解明し、「地震」や「噴火」を含め、そうした予兆を察知できるだけのシステムを構築し、山体崩落を事前に予測できるようにする他ありません。

 大変ハードルの高い研究課題ではありますが、研究者の方々には、是非頑張って頂きたいと思います。

* * * * *

地震で富士山噴火 山体崩壊も想定を 静岡 (産経新聞)

2012.8.22 02:02

 県防災・原子力学術会議の地震・火山対策分科会が21日、県危機管理センターで開かれ、大規模地震に連動して富士山が噴火した場合の防災対策などを検討した。委員からは、大規模噴火で富士山が崩れる「山体崩壊」についても想定して対策するよう指摘があった。

 この分科会は、火山学などの専門家8人で構成されている。静岡大学の小山真人教授は「富士山の山体崩壊大規模噴火や南海トラフ巨大地震と同程度のリスクがあり、想定して対策すべき」と提案。

 別の委員からは「地震に伴って富士山が噴火すると、首都圏からの救援が望めず、県は対策を考えるべきだ」との指摘があった。

 藤井敏嗣分科会長は「分科会では山体崩壊まで想定すべきとの考えで一致しているが、現在の研究では山体崩壊のメカニズムを限定できず、対策のとりようがない今後の調査を待ちたい」とまとめた。

 県が来年6月をめどに策定中の第4次地震被害想定には、富士山噴火対策が盛り込まれる予定。

 県の小川英雄危機管理監は「噴火対策は避難が基本。首都圏からの応援部隊が県内に入れないことも想定し、他県への広域避難まで検討したい」と話した。

富士山直下に活断層か 山体崩壊の恐れも 文科省調査、自治体に説明

2012.5.10 11:28




 富士山(3776メートル)の直下に活断層が存在する可能性が高いことが文部科学省の調査で9日、分かった。地震の揺れで「山体崩壊」と呼ばれる巨大な山崩れが発生、東山麓の静岡県御殿場市などで大規模災害の恐れがある。約2900年前に起きた山体崩壊と泥流の引き金だった可能性もあり、調査チームが地元自治体に説明を始めた。

 文科省が実施した3年間の調査で判明した。チームの佐藤比呂志・東大地震研究所教授は9日、結果を静岡県に伝えた。千葉市で20日から始まる日本地球惑星科学連合大会で発表する。

 調査報告書などによると、富士山の東山麓で人工地震波などを使って地下構造を探査し、御殿場市付近で地下に隠れている断層を発見した。数十万年前以降の火山噴出物の地層を動かした形跡があり、活断層の可能性が高いと分析した。

 北東−南西方向に伸びる長さ約30キロの逆断層で北西に傾斜しており、下端は富士山直下の深さ十数キロと推定。マグニチュード(M)7級の地震を起こすとみられ、揺れで東斜面が崩壊し、大量の土砂が雪崩のように下る「岩屑(がんせつ)雪崩」や泥流が発生する恐れがあり「甚大な被害を周辺地域に引き起こす危険性がある」と結論付けた。

 富士山では約2900年前大規模な山体崩壊と岩屑雪崩が発生した後、泥流が御殿場付近を広範囲に埋め尽くす「御殿場泥流」が起きた。地震などが原因とされており、今回の断層が動いた可能性もある。

 この断層は御殿場泥流以降に動いた形跡はほとんどなく、地震の頻度数千年に1回程度とみられるが、切迫度などは分かっていない。佐藤教授は「山体崩壊は噴火を伴う場合は事前に分かるが、突然の地震で起きると避難する余裕がなく、防災上は厳しいシナリオになる」と話す。

 この断層は活断層「神縄(かんなわ)・国府津(こうづ)−松田断層帯」の西側延長線上にある。付近は泥流の堆積層で厚く覆われ地下構造は不明だった。国が平成16年に作製した富士山のハザードマップもこの断層は想定していないため新たな防災対策を迫られそうだ。

* * * * *


地震関連のコラムに戻る