
週末の夜。いつもどおりにN駅から帰る途中、電車が立ち往生した。
私は窓から外を眺めていた。
向かい合った座席がいくつも縦に並ぶ車両。
私の向かいには誰も座っていない
その席と背中合わせになっている席ではおやじが煙草をふかし新聞を読んでいる。
外の暗さと電車内の光で窓に反射し、おやじの向かいに座る男の子が見える。
肘をついて退屈そうに外を眺めている。
FCバイエルンのフォイルナーにそっくりだった。
こんなところにのっているはずがない。
じっと見る。
相手も気づいたのか、こちらを見た、窓越しに。
彼が微笑んだので私は目をそらすのをやめた。
あちらからも私のことが見えるのかは分からなかった。
だからずっと見つめている勇気が出たのかもしれない。
電車が動いた。
私はずっと彼を見ていた。
彼はやさしく微笑み、私は微笑むことが出来なかった。
距離がこれ以上近づいたら、私は目をそらしていただろう。
今でも分からない、どうしてあんなに強く見つめることが出来たのか。
駅についた。
降りた私は勇気を振り絞って彼が座っていた席の方を振り返った。
彼はいなかった。
こうして私はR∀∪と出会った。
私はフォイルナーのファンじゃない。
フォイルナーに似ていなくても良かった。
ただ、あの日出会った微笑みさえあれば。
■出会い■
家に着いた。TVをつけた、チャンピオンズ・リーグが飛び込んできた。
面白くない。映画を見ることにした。
映画はくだらなかった、そんなもんだ。そう毎日面白いことがあるはずがない。
そうして私は電車の窓に映った男の子を忘れていった。
図書館。日課。昼食。
毎日お昼は同じ店。店員のお兄さんと少し話して上機嫌。それが私の些細な日常。お店は今でもあの街、あの場所に…。
その日いつものお兄さんはいなかった。
私の前にはあの窓ガラスの男の子が立っていた。良い奇跡?悪い偶然?
「***ひとつ、持ち帰りで。」
彼は微笑んでいった。
「Cokeをサーヴィスしてあげるよ、ここでお召し上がろう?」
「…今日、クリストフは?」
「今日は交代、あいつ病気で寝てるから。」
「…Cokeはいらない。」
彼はまた微笑んだ、こんな顔して笑ってナンパか。
胡散臭いにも程がある。
「じゃぁ、電話番号教えてくれる?G大の学生でしょ?」
「…はい。」
「あ、待って待って、普通市外局番から嘘書く?ばればれだよ。」
こんな顔して、意外に鋭い。
「僕は怪しくなんかないよ、G大の医学部1ゼメ。26だけど、Tokioに長い間いたせい。趣味はサッカーとマリファナ。」
「十分怪しいですよ、日本語が喋れる?」
「喋れるけど漢字はあまり書けない。」
「あなたが日本語で正しく私の電話番号を聞けたら、教えてあげる。」
「どうして君の方が僕より日本語が分かると思うの?」
「私の親は日本人。」
彼は素敵な日本語を話し、私は電話番号を教えなかった。
■金髪の男■
「アーニャ、聴いてるの?だから電車で見た男が、クリストフのところにいて…」
私は受話器に叫んでいた。アーニャは私の親友だ。
援交エンコウ援交。日本からのティーンニュースはそればかりだった。
ドイツの女の子もかわりはしない。
「そんなのどうでもいいのよ、週末P'insに行く相談をするために私はかけてるのよ。」とアーニャは言った。
「身分証明書は?」
「もう出来てる。」
当時P’insは有名人の溜まり場だった。
彼女は有名人なら誰でもいいらしい。
「私は+++見るだけで帰るからね。」
+++は私の大好きなグループで今この街にLiveで寄っていた。
彼らがP'insに行かないはずがない。
「えーもったいないよぉ。」アーニャのいつもの人生哲学が始まった。
P'insの前は黒人警備で一杯だった。私たちの身分証明書は破り捨てられた。
アーニャは煙草を吸いに行ってしまった。
私はその場に座り込んだ。
人のいないところより、ガードマンの近くの方が安全だ。
アーニャはなかなか戻ってこない。
立ち上がると、黒人が言った。「何度言ってもいれられないよ。」
思いっきり舌を出してやった。
その時後ろから声がした。
「彼女は俺の連れだよ。」
見たこともない大きな金髪の男が私の後ろに立っていた。
■R∀∪
「もう+++最高だったわよ!」
私は今日もクリストフの店でランチ。向かいに座るは電車の男。
最近顔を合わせる事が増えた(医学部ってそんなに暇なのか?)。
「なに?+++?!そんなの好きなやつTVに出てるバカteen以外に現実いたんだな。」
クリストフは口が悪い。だから女の子にもてる。彼は挨拶代わりに唇にキスをする。
光るようなロン毛金髪、それを目立たせるようにワインレッドのスカーフに全身黒のコーディネート。Issey Miyakeをまとう男。
カフェは雇われバイトで将来は外交官になるんだって。
「今日のパーティーお前達もこいよ、パンドラで23時から。」
クリストフはパーティーが大好き。
週末の朝に町で会うと必ず眠そうにこういう「分かるだろ、僕には夜は短すぎる」。
そのうち僕には人生は短すぎる!なんて言い出すんじゃないかと今からかなり心配。
「いいねぇ、お前主催?ドリンクはサービス?じゃ、ドウハンで出社しようか(笑)?」
と能天気な電車の男。私はホステスじゃないってば。
私はパーティーが嫌い。どうしてみんな簡単にその場に居合わせただけの知らない男と手をつなげるの?
毎回一時間もたったら手を握りだして、顔も体も近づけてくる男達が私は大嫌い。
自分がとても安っぽく思えるから。
だけどパーティーで新しい男を捕まえられない女の子なんて目立ちすぎる。
だから仕方ないけど。家に帰ると泣きたくなる。
「私は行かない。クリス知ってるでしょ、私は友達の誕生日でも憂鬱になりながら行くのよ」
店を出ると、電車の男がいった。
「僕とパーティーに行くのがイヤだったから、あんなこと?」
この人、最初は軽いと思ってたけどかなり繊細で「まともな人種」だと最近思う。
「知らない人が一杯で騒ぐの嫌いなの。」
「二人で、今夜でかけない?」
「……」
「僕はまだ知らない人かな?」
■ア−ニャ
私の親友のアーニャは、BFが一杯いる。
BFにもレベルがあって、彼女の場合、BFは最後までいっちゃえるBFということ。
いつも必ずそのBFの中での「イチバン」がいるんだけど、その人が彼氏って訳でもない。
だって3ヶ月ごとにかわるんだから。
アーニャはもちろんパーティーが大好き。どうして私達が親友でいられるのか、不思議に思っている人は多いみたい。
あの夜、あんなことがなかったら、私はR∀∪を好きにならなかったのかもしれない。
R∀∪と私はクリストフのカフェ以外でもデートのようなものをするようになり、ついに二人でパーティーに行くことになった。
パーティーはつつがなく終わり、心配していた“この男は酒癖が悪くないだろうか”という心配も問題なくパス。
バスも通らない時間に、街灯に照らされながら二人で歩いて帰った。
「パーティー良かった?」
「パーティー良かった。」
「僕がいたから?」
「……」
「なーんて…」
「あなたがいたから。……かもしれない」
「本気で?」
「音楽が良かった、飲み物が良かった、場所が良かった、に次ぐ理由として。」
「……それって進歩かな?」
携帯がなった。アーニャだ。
「お願い、私の部屋にきてくれない?私このまま帰ったらヤバイ。でもあの男家までついてきそうなの。」
アーニャの声は尋常ではなかった。私はR∀∪に頼んで彼女の部屋に向かった。
でも、鍵は開いていて、私達がついた頃には……
立ち尽くす私に構わずR∀∪は部屋に入って男を殴りつけた。
「この子は俺の彼女なんだよ」
それからR∀∪はアーニャをひっぱたいた。
「お前、俺が留守にしてるからっていいかげんなことするなよ、この売女!」
R∀∪の剣幕に男はそそくさと立ち去った。
「デートレイプ寸前……」
アーニャは放心している。私も何がなんだかわからない。
しっかりしなきゃと思うのに、アーニャを慰める言葉が出てこない。
「どうしてこんなことになるの?君にも責任があるんだよ?
どうして自分で断れないの?どうして危険だと分かっていて、知らない男を部屋まで連れて来るの?」
「ちょっと、アーニャだって傷ついたんだから。そういう話は今じゃなくても」
「じゃ、あんたはオトモダチがまたこんな目にあってもいいってわけ?」
もういつものR∀∪じゃなかった。初めてこの人は男なんだって、そういう頼もしさを感じた。
アーニャを一人にしておけないので、私は彼女の部屋に泊まることにした。
沈痛な雰囲気を紛らわせるためか、帰るときにR∀∪は笑えない冗談を言った。
「あーあ、僕も今日はデートレイプのチャンスだったかもしれないのにね」
私達3人は、そのとても面白くて仕方ない、わけではない冗談に暫くバカみたいに笑っていた。
笑うきっかけを探してた。
はやくあの哀しい空気から逃れたかった。
■こうやって悩みながら
アーニャは見事に立ち直った。
「まぁ最後までいってないからオッケーかな」
なんて強がってる。
R∀∪をアーニャの凶暴な同居人と信じ込んだのか、
アルコールで頭が梨になって住所を忘れたのか、あの男はそれ以来現れてない。
R∀∪はその後のアーニャの復活の様子を聞いて、あきれていた。
「とめないで覗いてれば、良かったかなぁ。惜しいっ!」
なんていいながら。
アーニャはでも、ずっと前から私に言ってることがある。
どうして誰も本気で愛せないのか、についての自己分析を。
ドイツでは珍しいことじゃないけど、アーニャは両親の離婚に傷ついている。
「お母さんと娘って同じ道をたどるんだって。雑誌に書いてあった。」
「そんなバカな雑誌の言うこと信じるの?」
「そういうけど、私そうかもなぁって思う。将来一人の男の人とやってくなんて、幸せになれるなんて、信じてない。」
「今からそんな風に考えてちゃ……」
「私もそう思うよ、そう思おうと思うよ。だけど、そんな幸せ信じられない。
ありえない気がする、そういう予感がする。だからいずれ離れていく男なんかに私は本気にならない。本気になんかなれない。」
だからアーニャは、たくさんの男と遊びたいんじゃない。
ずっとたくさんの男に囲まれながら、自分を探してる。
手玉に取ってるっていう人もいるけれど、アーニャはそんなんじゃない。
保険なしにただ一人の人だけにのめりこめないだけなんだ。
「私がついてるよ、おばあさんになっても二人ともヒトリモンだったら一緒に生きてこうよ」
「あんたもお堅いからね。そんなにバリアー硬くちゃ誰も近寄ってこないわよ。あんたまで売れ残っちゃうわよ。
もうそろそろさ、あのR∀∪だっけ?あいつちょっと年くってるけど、あんたにはちょうど良いんじゃない?
あいつで手を打つとかさ」
もうそろそろ、か。
私の初恋の相手は17歳のとき、自殺未遂をした。
あの日から意識が回復するまで、病院に通った。
天気が良すぎて、日差しがまぶしすぎて、気分が悪かった。
あの頃の記憶は全部白黒で、その頃を思い出すたび、私は精神がおかしくなるんじゃないかと思う。
あの頃私は、teenの例に漏れず、彼に常にわがままをいい、困らせることが男の子の喜ぶ振る舞いだと思って疑わなかった。
彼はいつも私にくっついてきて、ちょっと物足りなかったのかもしれない。
だけどわがままを言いながらも、困らせながらも、私は彼を必要としていたはずだった。
でも今考えたら、愛してたわけじゃなかった。もっと単純で、彼の反応が好きで、面白かっただけかもしれない。
彼のことを思いやったことなんてあったのかな?
いわゆる恋のマニュアルに従って、恋のステップを覚えるのに必死で、彼の喜ぶ事をしてあげても、それは雑誌に載ってたとおりにしてみたかっただけ。
女の子同士で集まって、自分達がどんなに上手く雑誌で学んだことを実行に移したか……そんな自慢話をしてるほうが楽しかった。
彼は彼で両親の離婚問題で行き場が無くなっていた。
彼女の私はそんなことも知らなかった。彼の悩みにすら気づかず相変わらずわがままを言いつづけた。
結論から言うと、彼の両親は離婚しなかった。息子の悩みを思いやる気持ちくらいは残っていたらしい。
何にも出来ない私は、もうこれ以上困らせるわけにもいけないし、かといって彼にやさしくできる自信もなく、もう別れようと思った。
もう縁を切るって言葉がぴったりなくらい、強く二人を引き裂きたいと思った。
恋人なのに悩みに気づけなかった、ってことに罪悪感はなかった。
哀しみに酔うことも出来なかった。
ただもうたくさんだと思った。
私はわがままをしてきた挙句、こんなときに別れようと決めた自分の冷たさに
懺悔の気持ちで、彼に自分をあげることにした。
他に何もなかったから。
気持ちもなかったし、未来もなかった。
一週間後、病院から彼は、家庭に戻った。
彼のほうもすんなり別れを承諾した。
二人とも相手を必要となんて最初からしてなかった。
ただ私は最後まで彼を愛していたんだという振りをしたかっただけで
彼も同じようにもうたくさんだと思いつつも後腐れなく終わらせたかったんだろう
こんなにひどい私は、ギムナジウムを卒業した今も、取り残されたように
愛するって事がわからない。自信がない。
■一緒に暮らそう?
あの事件以来、段々私はR∀∪に上手く軽口を叩けなくなっていた。
R∀∪が私をつまらない女の子だって見破って離れていくことが怖くなっていた。
きっと好きになったってことだろう。
だけど何ができる?私はまた気まぐれになってしまうかもしれない。
自己中な私はR∀∪のこともいつか面倒に思うのかもしれない。
あの頃から成長してなかったら……私は自分のことを知るのが怖かった。
そんなに考えるくらいなら一人でいるほうが気楽。
R∀∪とは会わないようにしようと決めた。
「ねぇ、なんで電話かけなおしてくれないの?携帯、着信、のこってたはずだよね?」
R∀∪がドア越しに叫んでいる。頭が痛い。
「やめてよ、叫ばないで、近所迷惑。何の用よ?」
「何の用、だって?普通そう思ってたら電話、かけなおすでしょ?」
「忙しかったのよ、それよりどうして?住所?」
「昨日図書館で僕は神様の使者に出会ったの。その子がね、この前のお礼にって。愛情こもったお返しだと思わない?」
アーニャか……。
「で、入れてくれないの?」
「何か話があるの?」
「話があるから来てんだよ。」
「はいはい、じゃ、カフェ行こうか。」
「いい加減にしろよ、一体どういうことだよ。いきなり理由も分からず避けられて、挙句の果てにそれ、どういう態度?」
上手く言葉が出ない。私はますます殻に閉じこもってしまう。ますます傷つくことを恐れてしまう。
「話したくない。帰って。」
普通は帰る。こうやって私は守りにはいって、いつも誰とも進まない。
あれ以来、彼氏らしい彼氏がいないのもそのせい
「冗談?帰らないよ、今来たばっかり。」
「……!あなたおかしいんじゃない?」
「少なくともお前よりは健全な精神を持っていると自負してるよ!」
「私もうすぐ授業だから……」
「さっきカフェ行こうって言ったのに?」
さすが!だてに医学部じゃない。
「カフェはあなたを追い返す口実よ」
「だからなんで俺は返されなきゃいけないわけ?それを教えてほしくてきたんだよ。
何なんだよお前、そういう態度が俺にも通用すると思ってるの?」
「迷惑なんだけど」
好きだって言う事すら出来ない。
「…前の彼のこと、あの子、アーニャから聞いたよ。」
「……」
「だけど別に同情はしないけどね。」
「……」
「そうやって、いつまで自分を傷ついたかわいそうな女の子、特別な女の子って思ってれば気が済むわけ?」
「あなた何も知らない。そんな風には……思ってないよ。」
「“私は冷たい女だ”だろ?アーニャから聞いた。
だけど君はそうやって都合よく傷つくものから自分を遠ざけてきただけなんだよ。
彼氏も迷惑だろうな、そんな都合のいい逃げ道の理由にされてさ。」
「どうしてそんなこというの?」
泣かないって、こんなやつの前で泣かないって思ったのに。悔しい。
「お前見てるとイライラするから。いつも俺の言うことに正面から答えない。」
「じゃぁお互い嫌いだってことでいいでしょ、もう帰って。もう二度と会わない。」
「最後まで聞けよ、俺はお前の傷を治してやろうとかそういうことはこれっぽっちも思っていない。わかったか。
だからお前も俺や他の男にこれ以上そういう甘え方はするな。
自分の殻も破らないで都合よく男と付き合っていけると思うなよ。」
「……」
「…黙ってるってことは、承諾、異義なしってことでいいんだよな。
じゃぁ次のステップに進むよ。おい、泣くなってば。
俺の部屋、かなり広いんだ…お前くらい一人や二人なんでもないっていうか…」
「……?」
「だから、これから一緒に暮らさないか?」
重苦しい沈黙。R∀∪はそれ以上何もいわなかった。
無言の圧力ってこんなにも強かったのか?
しかたないから私は口を開いた。
「これが愛の告白だとしたら、史上最悪のやり方だと思うわよ」
■金髪の大男
こうして私は一応部屋はキープしたまま、R∀∪の部屋に移住することとなった。
週3,4日は恋人の部屋というのが私の周りの大学生の平均的な姿だった。
同じ年代では完全に一緒に住んでいる子もいたけれど、学生の場合、殆どは半同棲スタイルだった。
しかしR∀∪は完全移住を要求した。
なんだか都合のいい解釈の気もするが、私にちゃんと自立した社会的な女になってほしいから、という理由だった。
つまり私の場合は一人でいるほうが自立しているように見えて、殻に閉じこもってよろしくないということだそうだ。
一緒に住むようになって、R∀∪はクラシック音楽が好きで、サッカーが好きで、猫が嫌いだということを知った。
そしてある日、TVの中で私は意外な人物を見つけた。
R∀∪がTVを見てブツブツいっていたので、私はお皿を洗いながら振り向いた。
「あ、今の人、+++のボディーガードさんだ!」
「……」
「なに?」
「きみ、本気?」
「あのね、あの人前に+++がきたとき、アーニャとBOX(P'insの呼称)にいったんだけど、いたの。少しだけ喋ったけど、いい人でね……」
「TVにでてるんだよ、人違い。もしくはBOXにいたんならボディーガードじゃなかった。」
R∀∪はなぜかイライラしながらTVを消してしまった。
「何で消すの?+++出るかも知れないじゃない。」
「出ないよ。」
私は憶えてる。絶対にあの人だ。
連れだよ、といったくせに、さっさと入っていっちゃって、アーニャともあえなくて、私は途方にくれてしまった。
スツールに腰掛けていた彼を見つけて、私は話し掛けてみた。
「さっきはありがとう。」
「……」
「私+++のファンで、大ファンで。会えるかなって思って。」
「お嬢さん、+++はここにはいないよ」
後ろから来た男が笑って言った。
「えっホントに?何で知ってるの?」
「俺たちボディーガードなの。もう仕事が終わって、こうやって飲んでるの。なぁ?」
大男が笑った。
そういわれれば二人ともガタイがかなりいい方だ。後から来た男はともかく、このぶっきらぼうな男なら、秘密も守りそうだし。
なんだか知らないうちに、後から来た男は私に飲み物を渡して消えてしまった。何が入っていたんだか、すごく強かった。
遅れてアーニャも無事進入に成功したようだ。アーニャは持ち前の色香で、金髪大男を誘惑にかかった。私はもう眠くて仕方がなかった。
あの夜のことを、アーニャは帰りの電車の中で物凄く怒っていた。
金髪男はそう上手くいく相手ではなかったらしい。
何とアーニャの誘惑に男は静かに目を覗き込んで
「どうしたの?」
と訊いたらしい。
粘りつづけるアーニャに「君はそういう子じゃないはずだよ」とまで言った男に、アーニャは「馬鹿にして」と悪態を付いたけど、
彼は彼女の年齢以上に力みすぎてる容姿を通り越して、心のバリアーの原因を本当に気にしてくれたらしい。
アーニャは男と結構喋ってた気がするけど、照れ隠しからか何を喋ったのかは教えてくれない。
電車の中であの夜の話を聞いたときは涙が出たな。
アーニャの周りにはずっと彼女の正面から向かってくる「僕を見て!」という男しかいなかった。
並んで同じ方向を見て、アーニャの見てるものを気にして、アーニャを一番に考えてくる男なんていなかった。
アーニャはずっと、自分を見てって言う男じゃなく、アーニャにどうしたの?って問いかけてくれる男を求めてたんだ。
アーニャは「最低の男」っていった。
「私と寝ない男なんて信じられない」と。
私は「変なやつだね」と相槌を打った。
だけどそういいながらもアーニャはどこか嬉しそうで、私たちは心が温まった。
■サッカーファンへの道
「ねぇR∀∪ってFCBのフォイルナーににてるね。」
「それ誉めてるの?」
「一応」
「サッカー見ないのになんでフォイルナーなんて知ってるの?」
「以前ICで前にいたおやじが私の顔面で新聞を広げて読んでたから、
その人だけは顔と名前が一致する。」
私たちが一緒に暮らし始めて問題は一杯発生した。
その一つが週末のTV番組争いだった。
私は音楽番組が見たかったんだけど、R∀∪はその時間にしているサッカー番組(Bundesligaハイライト)といって譲らなかった。
結局R∀∪がビデオを撮ることで落ち着いた。
WM2002が始まる頃まで、その状態が続いた。
WM2002が始まって、そんなことは私にはどうでもよく(R∀∪は一生懸命だったが)私はおばあちゃんのいる日本に3ヶ月遊びに行った。
日本はワールドカップフィーバーで、正直驚いた。
メディアはヒーローを量産していて、私もそれに捕まってしまった。
神様に出会ったんだ
ドイツに帰った。私はR∀∪とサッカーのことを話せると思って、待ちきれなかった。
R∀∪はとても喜んで私を迎えてくれた。
だけどすぐに、R∀∪には私の代わりの“間借り人”がいたことが発覚した。
嫌な女。金髪の髪が長くて、細くて、頭の悪そうな女の人だった。
私は自分の部屋には帰らず、しばらくアーニャの家に泊まることにした。
私たちはずっと行き場がない気持ちのときにお互いの部屋に泊まってきた。
ボディーガードさんが“神様”となって私達の前に現れたあの頃。
信じられなかったけど、メディアの強いインパクトの方がすんなり私の中に入ってきた。
TVの中の彼は抵抗もなく、妄信的になった私の“神様”になって行った。
TVの中の彼はとても遠くて近かった。
ドイツのメディアを見てたら、彼は“神様”にならなかったかもしれない。
あの頃ずっと私は“神様”にすがっていたと思う。
ドイツに戻って新しくとった彼の出てたTV番組のビデオを繰り返して一日中見ていた。
外に行くときは彼の雑誌を買いに行くときだけだった。
嫌なことを書いてあるものもあって、そのたびに私の気分は左右された。
アーニャはずっと何もいわずにほうっておいてくれた。
この人に会いに行けば、私は毎日を、何とか生きられると思った。
そう決め付けてた。
アーニャのところに私を迎えにきたR∀∪が私に言った。
「あいつは、そんなやつじゃないんだよ、オクトーバーフェストでもいろいろやってたんだよ、サポーターの中じゃ有名な話だよ。
メディアに騙されるなよ、あいつをもっと知っても、傷つくのはお前の方だよ。あいつは神様なんかじゃない。」
一体何の権利があってR∀∪はそんなことがいえたんだろう。
“間借り人”を家に入れてたくせに。
私は帰らない。
R∀∪がいなくても生きていける、私は“神様”を見つけたから。
私たちの街からそう遠くないところにに“神様”が遠征にきた。
私は誰にも知られないように、見に行った。
アーニャにも黙って
ドキドキした。抱えきれないほどの期待を胸に。
でも人が一杯で、ガードも固くて、当たり前だけど全然喋れるなんて感じじゃなかった。
私以外にも“信者”が本当に一杯いるのを目の当たりにして、ますますさびしくなった。
でも3日目の夜、神様が私にチャンスをくれた。
諦めて帰ろうと思って歩いていたら、向こうから“神様”がやってきた。
神様……!
立ち尽くしていた私にファンサービスとしてサインをする義務があったのか、彼が私に近づいてきた。
何も話せない。
サインをしてもらったのにありがとうもいえない。
彼が行ってしまう……
気づいたら言葉が出ていた。
私は立ち去る彼に、読んでいた雑誌の彼のインタビューのページを見せていった。
「あなたはみんなに勇気をくれる。私は、寂しくなったらあなたのインタビューを探す、TVであなたを探す。
メディアがなんていっても、あなたの言葉はファンに届くよ。そうやって…ありがとう」
“神様”は驚いた風でもなく、ちょっと笑って静かに言ってくれた。
「ありがとう」
いいんだ、“神様”がどんな人だって。
少なくとも彼は、私の前で“神様”のままいてくれた。
私の都合のいい憧れに、合わせてくれた。壊さなかった。
それだけで、私は明日も生きていける。
■一度だけでいいんだ
「一度だけでいいんだ、これっきりだから、僕にチャンスをくれ。」
R∀∪がそういってきたころ、“神様”に会って元気になっていた私は、自分の部屋で一人でまた生活できるほどになっていた。
R∀∪は金髪女とはきっぱり別れたらしく、毎日そんな電話をかけてきた。
R∀∪は卒業でなんだか忙しかったみたいけど、私は夏休みで新たな恋を探していた。
男なんてみんな一緒だ。深刻になることなんてない。
街で久しぶりに会ったWernerと出掛ける事が多くなっていた。
私たちは上手く行くかもしれない、と思った矢先に、道でWernerの“彼女”と鉢合わせてしまった。
小さくてかわいい子だった。
私たちは友達だといったけど、彼女は物凄い剣幕でWernerを引っ張っていってしまった。
あぁ、これが正しい対処法なんだな。
私はそんなことを考えていた。
R∀∪の部屋から出てきてしまった私は、人とちゃんと向き合うってことを、また避けてしまったってことなのかもしれない。
夕方Wernerから電話がかかってきた。
「ごめんね今日。」
「こっちこそ、彼女いるって……知らなかった……」
「俺、言わなかったもんね…」
「私も聞かなかったしね…」
なんて難しいんだろう、彼女持ちの男はみんな首から“使用中”って書いた看板でもぶら下げていればいいのに。
私もこれじゃ、あの金髪女と一緒じゃないか。
結局私にはR∀∪しかいないのかもしれないな。
浮気くらいで怒って別れるなんて出来ないほど、私はR∀∪が好きだった。
どちらかが加害者だったり被害者だったり、相手を裁いたり、裁かれたりなんて不可能なんだろう。
恋人同士でもそれぞれの生き方なんだから。
■リトアニア戦
私はR∀∪のもとに戻った。
そして思ったより何でもなかったように、私たちはまた暮らし始めた。
私は相変わらずサッカー番組を見ることもなく、音楽番組の方が好きだった。
“神様”はサッカーの試合以外で見られれば良かった。
所詮私にはサッカーはわからない。
男達が何でこんなに熱狂するのか分からない。
でも、あの日はR∀∪と一緒にTVで見てた。平日だったから。
神様以上に私はTVに映る同じ世代の若い男の子に熱狂した。
R∀∪は日本向けのサッカーサイトを作りたがっていた。
当時は彼が持っていたドイツ語のものの一部として日本語が置かれ、気まぐれに運営されていた。
彼は私が翻訳を手伝えば、きっと今までにない面白いものができるよ、
ドイツ人が日本に向けて、日本語で発信するんだから、としきりにいっていた。
しかし私はサッカーの言葉を日本語で分からなかった。
だけどR∀∪の日本語の勉強のため、さらには私たちのコミュニケーションのために、私たちはそのプロジェクトを徐々に実行した。
しばらくは知人のみ訪れるサイトとして公開してきたけど、日本のドメインで分離させた方がいいということで、
様相も新しく実行されることになった。
そのときに私がつけた条件が、この若手の男の子の情報を中心に集めて、ということだった。
■スキャンダル
Webを独立させようとしていた頃、“神様”に思いもがけないスキャンダルが生じた。
段々段々ドイツ中が黒く塗りつぶされった。
恐れていた日がきたという感じだった
大した事じゃないというR∀∪に、私はFanへのひどい裏切りだよ、といって泣いてばかりいた。
R∀∪と金髪女のことが思い出された。
裏切ったんだよ。いろんなことが、振り返ったら今はもう、ウソになるんだよ
信じられなかった。
だけど本当はずっと信じてなんかいなかったんだ。
サッカーをする彼を見てこなかったのも、R∀∪の言ってた素のままの“神様”を見るのが怖かったんだろう。
私は理想の“神様”像にそれこそ縋り付き過ぎていたから、メディアが汚した彼なんて見られなかった。
私が見てきたのは彼じゃなくて、私が作り上げた“神様”。
どこにもいない“神様”。
スキャンダルの少し前に彼を見に行った。
あのときも彼は、私が見たい“神様”として振舞ってくれた。
ごめんね。
勝手に作り上げていただけなのに、あなたのせいにしてしまってごめんね。
R∀∪がサイトに向けてどんな楽天的なメッセージを書いても、訳してる私の気持ちは二分したままだった。
私が書いたものも、気持ちは二分したままだった。
どうしても、そのまま、都合のいい理想像でいて欲しかった。
ずっとスキャンダルを信じることすら出来なかった、お祭りの後、あの映像を見るまでは。
“神様”は「理想化されるのはウンザリ」ってメディアに向かって言いながらも、
私たち個人個人の前ではいつも理想像のままに振舞ってくれた。
私たちはそれが、彼の本当の姿だと信じることが、彼へのリスペクトだと履き違えてしまってたのかもしれない。
バカな私はメディアに向かって彼が言う、“ウンザリな理想化”は他にあるんだと思ってた。
だって私たちファンはこんなにも彼のことを想ってるんだから。
だけど、瞬時に彼がいやでも感じるような、ファンの期待のこもった目、それに彼はうんざりだよって言ってたのかもしれない。
あんなにたくさんのインタビュー、何をよんできたんだろう。
あの日ありがとうって言ってくれた彼が見せたのは、諦めの微笑だったのかもしれない。
落ち込んでしまった私にあの時初めてR∀∪が教えてくれた。
「あいつが男に人気があるのは、自分の欲しいものを分かっているからさ。
結局、どんなに外野にいろいろいわれても、自分の一番欲しいものを、ちゃんと手に入れる。
ちゃんと見てやれよ、あきれるほどかっこいいぜ」
誰もが矛盾だらけで生きている。
だけど彼は、批判も恐れず、欲しいものを手に入れる。
立ち向かう。
彼の持っている人生への真実のメッセージ。
本物のメッセージ
神様ありがとう、あきれるほどかっこいい彼に会わせてくれてありがとう。
■Blödsinn
たくさんのニュースが流れて消えていった。
彼の写真は、汚い言葉の見出しをつけられ、粗雑な新聞紙に刷られて、街じゅうにあふれていた。
どっちを見ても、みんなその紙くずをもってた。
彼の写真が、色んなところで踏まれてた。
捨てるくらいなら買うなよ、エロオヤジ。さっきまでニヤニヤ読んでたくせに。
ちょっと、踏まないでよ、おばさん。あんたそんな無神経さで街でていいと思ってるの?
アーニャと私はクリストフのカフェでその憎たらしい週刊誌を広げていた。
「こーんなオヤジのどこがいいの?サッカー選手って言ったら聞こえがいいけど、要するに肉体労働者だよ?
あんな顔なら掃除夫とか作業員とかでそこら中にいるじゃん。ほらあの人とか、どう?」
「違うって顔じゃないんだって。そういうんじゃなくて、なんて言うの?内面からにじみ出てくる…」
「あ、やっぱり顔じゃないんだ?」
「だからそうじゃなくて、人間全体としてのリスペクトよ。」
「そこらの労働者とあのオヤジが違うとしたら金だけよ、金。」
「もう、インタビューとか読んでみなさいよ、洗練されてるって言うか……」
「あ、年収でてるよ。うわーこの持ち物見て、ブランド品ばっか。」
「いいよ、みんな好きにいうがいいさ……。偉人は自国と時代に受け入れられないものなのさ。」
「こーんな暮らししてたらねぇ、そりゃ遊びまくってるって、ねぇ。ヨリドリミドリ。来るもの拒まず。」
「そんなこと、思ってないくせに。」
「ねぇ見た?昨日のニュース!!」
窓際に座った女の子達。
その甲高い声はどこから出してるの?宇宙人!
「見た見た、私も今度Tシャツの胸に“私は20歳”とか書いて行ってみようかな。」
一生無理だよ、バーカ。
「飢えてるって感じだもんね、顔からしてさぁ。」
あんた達のコメントのほうが下品だよ。
「しかもそんなことしながら偉そうに、今まであんなコメント言ってきたんでしょ、聞いて呆れるよね。」
やめてよ、そんなひどいこと言わないでよ。
「この子も有名な遊び人だって。こんなのにしか相手にされなかったのね?それに年離れすぎ、気持ち悪くなってきた。」
やめてよ、もうやめて。
アーニャが立ち上がった。
カウンターに行き、クリスの手からお盆をとって、奥の彼女達に向かっていく。
「あっ、ごめんなさいっ。私ったら」
アーニャはソフトドリンクの入ったグラスをテーブルに向かって垂直に“うっかり”落とした。
「手が滑ってしまって。あぁどうしよう。あっ。」
残りのグラスも見事に床に破片となって散らばった。
「何の騒ぎだよ、おい、お前っ……」
彼女達の洋服はCokeやSchokoで悲惨な状態になっていた。
もちろんアーニャのも
「ごめんね、この子、今度新しく、今試用期間だったんだけど、クビにするからね。もう!美女達が台無しだよ、あぁ俺どうすればいいの?」
クリストフの恐ろしき魅力により、女の子達はおとなしく、半ばまんざらでもなさそうに店を後にした。
「お前ら、今日は一日給料なしで働けよ。」
「何でよ、グラスそんなに高くないでしょ、掃除もちゃんとしたじゃない。」
「お前、ガラスで誰か怪我したらどう責任とるつもりだったんだよ。」
「そん時は、天罰ってことで。」
「はぁ?お前もお前だ、金輪際、こんな過激な友達は連れてくるんじゃない。」
「そんなこと、思ってないくせに。」
「思ってる!!!」
結局その日私たち3人は楽しくお喋りをして一日を終えた。
私たちが溜まってるような店なんだ、暇に決まってる。
帰りにクリスは店特製のバナナジュースを私たちにくれた。
ありがとうアーニャ……
私たちは夜の街を手をつないで帰った。
レズビアンのカップルと間違われるからやめてよ!
とアーニャは言ったけど。
いいもん、私はアーニャに惚れてるもん。
神様についての彼の見解はこういうことらしい。
„Immer wenn’s im Fußball nicht so klappt, muss dann der Fußballgott herhalten. Ich halte das für Blödsinn.
Es gibt nur einen Gott und der hat mit Fußball nichts zu tun.“
もし本当に神様がいたとしても、私はそんなにたくさんお願いはしないからね
彼やアーニャやR∀∪が居てくれれば、私は色んなことを乗り越えていけると思うから
神様がくれたこのプレゼントを私はずっと大切にしていくから。
■答えが欲しい
「それ、別れたいってこと?」
ため息をついてR∀∪は声を押し殺していった。
憧れのサッカー選手のスキャンダルは半年間毎日続いた。
全く関係ないけれど、私には夏の、R∀∪と金髪女のことに重なって仕方なかった。
あの当時は痛くなかった、なのにぶり返した不安はもうとめどなかった。
R∀∪は仕事で帰らないことが多くなっていた。
「見ず知らずのヤツの不倫は擁護するのにな、俺のことは許せないってわけか。」
「見ず知らずじゃないからだよ。」
「俺たち上手くいってたと思うけど?」
「今までのことじゃないよ、今の気持ちだよ。私は最近訳もわからず不安で、自分が嫌になる。
R∀∪のせいじゃなくて、私の問題なの。
前みたいに前向きな答えが見つけられないの。
ただ悩むことがクセみたいに取り付いていて、私はきっとあなたといたい。
だけどそれはポジティブな意味でじゃない。
きっと、これを乗り越えても、とめどなく私はあなたに期待することが増えていく。
もうただ苦しいだけだよ。」
「要するに飽きたってこと?」
「そうじゃない。」
「そうだよ。何でそうやって一人で急に決めるわけ?
新しい生活がしたいんだろ?もうこんな生活で得られるものがないって、そういうことだろ?
お前はきっと俺と離れて暮らしても、そのことだけで活き活きし始めるよ。
だけどそんなのは一時的なものだよ、お前はまた煮詰まったら外的要因に頼ることになる。
そうじゃなくて、お前の中で気持ちを変えられるものを見つけられないと、何も変わらないよ?」
「そんなの分からない。今私がしたいのはあなたとのこの暮らしから離れることだけ。
そしたら何か見つかる気がする。」
「どうして分からないんだよ、そんなこと、勝手に一人で決めて。
俺たち何のために今まで一緒に暮らしてきたわけ?」
あんなに突き詰めて考えなくても、生活していけたのかもしれない。
不安になりすぎて、逃げ出すことしか考えられなかった私は、子どもだったのかもしれない。
本当はまたR∀∪がどうにかしてくれるかもしれないって思ってた。
出会った頃みたいな、太陽の光にも、街の風にも意味を見出せる暮らしをR∀∪と二人で、取り戻したかった。
こんなことを言うことが許されるのなら、R∀∪が好きだよ。
だけど何でもいいから目先が変わる答えが欲しかったんだ。
©2003-2004 ウララウ