探検!秘境・金郷渓!!(阿東町「金郷渓」)

※今回は写真がやたら多いんで ローバンドの回線の場合はかなり時間が掛かります

猿渓瀑
金郷渓のハイライト、「弁慶瀑」。

山口県民の中でも「金郷渓」なる渓谷の存在を知る人は少ないと思う。 かく言うわしも「滝のコンテンツ」を始める最近まで 近くにそんな渓谷があるなんて聞いたことも無かったからな。
金郷渓・位置概略阿武川上流の「長門峡」は国および県の名勝・天然記念物に指定され、「全国の渓谷30(くらい)選」にも選ばれており 山口県を代表する観光地にもなっている。

元々 この「長門峡」は明治の頃に英語教師・ガントレットによって紹介され 画家・高島北海が私財を投じて遊歩道を設置したことにより 世に広く知られるようになったんだが、今 現在知られている長門峡は あくまで狭義の「長門峡」だったりする。

高島北海が観光地として開発に力を注いだのは「長門峡」をはじめ 「生雲渓」「漣渓」そして今回紹介する「金郷渓」などをひっくるめた一帯だったんだが、これが「広義の長門峡」なんだそうな。しかしダム開発で水量が少なくなって「漣渓」は枯れ ミイラ状態、「生雲渓」は台風により遊歩道が崩壊し 財政難から修理も出来ずに忘れ去られようとしている。

で、「金郷渓」なんだが これは阿武側ダムによって出来た阿武湖に一番近い支流、蔵目喜川の下流域にあたる。ここも大正時代に高島北海が私財を投じて設置した遊歩道があるんだが 長門峡に向かう県道側から見て川の対岸に位置するため 吊橋や渡し舟でもない限りアプローチすることが出来なかったりする。そのため今は訪れる人もおらず 遊歩道は崩壊しヤブに覆われているらしい。

最初に述べたように わしもこの渓谷のことは存在すら知らなかったんだが 山口県の滝について記している「防長四十八滝」なる本を読んで この金郷渓と その渓谷の目玉である「弁慶瀑」の存在を知ったのだった。

「山口県で唯一 瀑布と呼ぶにふさわしい滝」と賞された この滝を、いつか見ることが出来れば良いな〜・・・と 思っていたら そのチャンスは意外に早くやってきたぞ。実は地元の新聞に入っていた折込チラシに「自然と植物を観察しながら金郷渓をハイキング」という地元の自然愛好クラブの参加者募集の記事を発見。
ボートで川を渡るしかアプローチする方法がないと思われていた金郷渓なんだが もしかしたらこのツアーに参加すれば行く事が出来るんではないのか?・・・・と いうことで 今回のツアーを企画し 自らも引率として参加する自然観察員のNさんに電話にて連絡を取ってみたぞ。

しかし こういう自然観察のハイキングは 主に地元の園芸好き、あるいはトレッキング好きな壮年の方々が中心となって行われるので 整備されてない金郷渓は危険を避けるためもあってホンの入り口までしか行かないし とてもじゃないけどヤブ漕ぎあり・沢渡りありの道なき道を進まなければならない弁慶瀑までは行けない・・・ということらしい。
蔵目喜川・弁慶瀑
なんだ それじゃしょうがないなあ・・・と諦めたんだが、自然観察員のNさんの言うことには この金郷渓は今では人が滅多に入らなくてヤブに覆われているんだが そのおかげで自然がそのまま残されており いかにも生物学者や植物学者が喜ぶような 見る人が見たら貴重な生態系が残されているんだそうな。 で、近々調査のための道を開きに行きたい、と思っていたのだが もし わしが「弁慶瀑」を見たいのなら 一緒にどうだ?という有難いお誘いを頂いたのだ。

てなわけで 暑くなって草が茂りマムシが動き出す前、という条件で検討した結果、GW連休明けの5月14日が調査日に選ばれたわけだ。今回 金郷渓にアプローチする方法は 川を溯上するコースではなく、上流の旧・むつみ村から阿東町に向かう県道11号の生雲地区、蔵目喜地区から 沢を下り山を越えながら 旧・川上村の県道293号、湯の瀬地区に向かうコースがセレクトされたぞ。
滝は金郷渓の真ん中あたりにあるらしいが 今回は雑木や草を刈りながら、崩壊した道にはロープで安全を確保して道を作りながら進むので 朝の8時から出発して夕方の6時頃には終わる予定らしい。

この探検に参加するに当ってNさんから心得として、「濡れてもいいような服」「トレッキングや沢歩きに向いたような靴」「念のため 替えの靴やズボン」「何時間も掛かる行程になるので 水と弁当は持参」ということを言われたが ようするにヤブを漕いで道を発掘するボランティア活動みたいなものかな?


蔵目喜地区の町道 自然観察員・Nさんとわしを乗せた車は 県道11号から蔵目喜地区・白井谷方面に進み 林道入り口に到着。
目印らしきものが何もないから場所は上手く説明できないが とにかくここから川に下りて下流の金郷渓まで沢降りするのだっ!

で、早速 「はい、じゃ、コレ持って♪」と 鎌と鋸を持たされたんですけど・・・

ヤブ漕ぎ誰も来ないんで無造作に竹の子が生えまくっている竹林がしばらく続くんだが、竹の子はせっかくだから帰りにでも お土産として2、3本引っこ抜いていこうかの。

しかし長閑な竹林を超えると いきなり草ボーボーの雑木林になってヤブ漕ぎ開始・・・

油断するとNさんの姿が あっという間に草に隠れて見えなくなるんで ブンブンと鎌を振り回しながら後を追うことに。
簡易橋しばらくすると川が見えてきたぞ。
要するに今回の目的地に行くには この川を遡る必要があるんだが、この蔵目喜川は両サイドが深い谷に挟まれていて 特に川の右側は急流や断崖絶壁が続くんで 左側サイドしか進むことはできないらしい。

で、この画像に見られる岩の上に置かれている小さい板は 前回行われた散策ツアーのときにNさんによって設置された仮設の橋らしい。雨で水かさが増しても流されないようにロープが巻きつけられていたな。
仮設の板といっても ほんとにホームセンターで買ってきただけの普通の板なんで 体重80キロ超のわしが乗っかると 思いっきり曲がって 今にも折れそうだったな。 
2M程度の岩と岩の間を越えるだけのために置かれたものだが この岩の間の流れは意外に急流で深さもあるみたいだったんで やっぱり無いことには先に進めないぞ。

こういう場合に備えて やっぱダイエットはしておかないとダメだな・・・
蔵目喜川 このように岩がゴロゴロしているのが この蔵目喜川の特徴みたいだが このあたりもなかなか趣があってええのぅ・・・

右の画像は岩がなくなって流れのスピードも遅くなり 全体が淵となった蔵目喜川。
「たぶん 長淵とか、何かしらの名前は付いているんじゃないのかな?」とは Nさんの解説だ。
長淵

山の中に立つNさん このあたりから河原が消滅して水辺を歩くことが出来なくなるんで 山の中をヤブ漕ぎを行いながら進むことになる。
このあたりまでは自然散策クラブが最近やってきたし 国土調査の人も最近入ったらしく 赤いリボンをところどころ巻きつけているんで 良く見ると人の歩いた跡らしきものが残っていたりする。

それでもツタや笹竹など 成長の早い草木が 早くも進路をふさいでいたりするんで 鎌や鉈はやはり必須だな。
とりあえず まだ蛇の活動が本格化してない事だけが救いじゃ・・・
山の中を歩くNさん
堰 渓流の大きいカーブを曲がり しばらくすると、目の前にコンクリートで作られた かつての堰が現れてきたぞ。

実はこのあたりが かつての観光スポット「金郷渓」の終点に当る部分だったりする。ここまで遊歩道があったというわけではないが この堤に来るための作業用の道は存在したはずなのだ。今は半分くらいは朽ち果てて良くわかんない状態だけどな。

ちなみにこの堰は農作業用なのか発電用なのか なんのために作られた水路なのかは不明なんだそうな。
かつての作業用通路
コンクリートの道跡が残っている部分は 進むのも非常にラク♪
一枚岩の上を流れる川 このあたりから よく見ると川底が一枚板の岩になっているのがわかる。 

こーゆー場所は子供の水遊びにはもってこいだが お子様はとてもココまでは来れないだろうな・・・
内務省の印再び山の中に進路を求めて進むと 川のカーブにあたる部分で「内務省」の文字の入った石碑というか目印みたいなものが・・・横に書いている文字を読むと「名勝」の文字が。

大正12年に史跡名勝天然記念物保存法によって、当時の内務省から名勝として指定を受けたときの名残なんだろうな。

弁慶瀑・上部
で、川の前方が落ち込んで 見えなくなっている場所に到達したぞ。
そう、ここが今回 わしの最大の目的地である「弁慶瀑」じゃっ!!

弁慶瀑 弁慶瀑
弁慶瀑
弁慶瀑・・・又の名を「猿渓瀑」、「猿渡の滝」とも言うらしい。
金郷渓のハイライトとも言うべきスポットで 巨大タンカーにも似た岩の塊の舳先や舷側の甲板に当る あちこちの部分から水が流れ落ちて大瀑布を形作っている。
くわしくもないが説明はこちら

さて、滝はこれで終了なんだが 今回の目的は「金郷渓の遊歩道を再確認して 動植物の観察のためのルートを確保する」ということにあるわけだ。
わしは学者じゃないから草木のことは良くわかんないし、真剣に植物探しをしたわけでもないから そんなに数は見れなかったが 今回の探索で目に付いた珍しそうな植物を折角だから2〜3紹介しておこう。
解説のNさんがいなければ 何のことやらわかんないような珍しいものばかりじゃっ!!

海老根
ランの一種、エビネ。園芸家に人気で盗掘や乱獲によって数が減ってきて希少種になっているらしい。
日陰で湿気のある山に生えるらしいが 今までいくつかの山を登ってみたが ここまであちらこちらで自生しているエビネを見たことは無かったな・・・
キンラン
これもランの一種のキンラン
やっぱり乱獲によって希少種になっているらしいが、栽培が難しく 盗掘して家に持って帰っても まず根付かせることは不可能らしい。
見かけたら掘り起こさないで眺めるだけにしましょう。
シライトソウ
シライトソウ
ユリ科の多年草で秋田以南の本州・九州・四国に生えているらしい。
これは園芸店でも売られていて育てやすいらしいが 実は見るのも初めてで なかなか興味深い形で面白かったな。
ナンゴクウラシマソウ 南国浦島草
ナンゴクウラシマソウ
サトイモ科のマムシグサ・ムサシアブミなどの仲間で仏炎苞を持ち、これを糸をたれて魚釣りをする浦島太郎に見立てたのが名前の由来らしい。右の写真はわかりやすいように仏炎苞を少し剥いたもの。
やっぱり かなり珍しいものらしいが こんなことしちゃって良いのかな?

ギンリョウソウ
ギンリョウソウ
白っぽい姿を龍にたとえたもので 普通の緑色の葉っぱを持たず キノコのようにも見えるので「幽霊茸」の別名もあり。
葉緑素を持たず 腐った木や落ち葉に寄生しているらしい。
これも見るのははじめてなんだが こういう植物って知らないとホントに無造作に踏みつけたりなぎ払ったりしてしまうと思うんで 日ごろから興味を持っていないとダメだと改めて感じ入ったぞ。

崩れ落ちた道にはロープを張って このあたりには高島北海が作った私費を投じて設置した遊歩道が残っている・・・はずなんだが やはりところどころで崩落しているわけだ。
で、次回 誰かが来るときに備えて 足場の悪いところは補助としてロープを張り、崩れ落ちたところは どこからか流れてきた木材を利用して簡易ハシゴを設置。

こんなことを行いながらの進行なんで やたら時間は掛かるんだが その代わり帰りのルートと 次回 誰かが来たときには大幅に時間が短縮されて危険も回避できるわけだ。
崩れ落ちた階段には仮設のハシゴを設置
でっかい岩 でっかい岩どんどん進むと川にでっかい石があったんで ここで一服。
見上げると右の画像のでっかい一枚岩が どどんと天空を突くように聳え立っている。
これが「弁慶瀑」に並ぶ金郷渓の見所の岩で、「屏風岩」だか「金剛岩」だかの それらしい名前がついているらしい。

ちゃんと名前がついている名勝は 弁慶瀑とココの2箇所だけらしいが、萩博物館に飾ってある「萩市街鳥瞰図屏風」には それらがしっかり名前入りで描かれているらしいぞ。

今度行ったときに名前を調べておこう・・・
洞門1 この金郷渓には岩をくりぬいて作られた洞門が2箇所ある。
全て手作業で非常に素朴な構造だが やっぱりこれも高島さんのポケットマネーで作られたものらしい。

今 この遊歩道を再整備しようとしたら 何億円掛かるんだろうな・・・どっちにしろ市町村合併でどこからも見放されて財政難の阿東町では なかなか手が付けられないんだろうな。
洞門2

遊歩道 このあたりは遊歩道が何とか残っているが 足を踏み外したら命は無さそうだな・・・ 岩の間を進む
終点 なにやら住居の跡のような塀に囲まれた場所に出てきたが この先は阿武川との合流地点になって行き止まり、ココが今回のゴールなわけだな。

ふと 右上空を見上げれば 長門峡手前の断崖絶壁として有名な「切籠切窓」が聳え立っている。草むらから垣間見れば対岸には長門峡へ向かう県道293号のガードレールが確認できたぞ。

道を走っている車も まさか対岸の藪の中から わしのような男が見つめているとは 思ってもいないだろうな。ふふふ・・・

対岸には県道293号

いやいや、今回は自然調査員のNさんがいなければ とてもじゃないがこのような探検は出来なかったと思う。滅多に見れないものを拝めて 感謝感激雨あられじゃ。

あと、心残りは 凄みのあることで知られる もう一つの渓谷、「生雲渓」なんだが ここにも「暗がり淵の滝」やら「飛渡の滝」なんかがあるらしい。 
これもいずれは調査したいと思っているわけだが やっぱり遊歩道が陥没したり山崩れがあったりで 未だに通行止めなんだよなあ・・・何とかなりませんか?阿東町の町議会議員さまよ・・・

ここまでの所要時間は約5時間。ちなみにココから出発点の仮設の橋まで戻るルートは3時間程度だったな。朝から歩き始めて撤収が夕方6時半か・・・さすがに疲れたが なかなか印象深い探検だったな。ふふぅ〜・・・



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参考サイト・・・長門峡あらまし(旧・川上村HP)
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