谷桃子バレエ団「ドン・キホーテ」吉田悠樹彦
 



谷桃子バレエ団「ドン・キホーテ」
谷桃子バレエ団は日本で始めて上演されたヴァージョンの「ドン・キホーテ」(全
幕)を上演した。このバレエ団は今年で創立60周年にあたる。東京バレエ学校の教師
として来日をしたスラミフ・メッセレルによる版だ。日本バレエ協会の「ドン・キ
ホーテ」を谷が演出したことから協会の本作品にも連なる作品だ。活き活きとした踊
りの表情が印象的な版である。
初日(23日)、キトリを踊った林麻衣子は演技上手な華やかなプリマだ。対するバジル
を人気のあるベテラン男性舞踊手の斉藤拓は実力に裏打ちされた表現でクールに描い
た。颯爽と踊る林とともに斉藤が披露した3幕のグラン・パ・ド・デゥでの踊りは実
に見事なものだった。二日目(24日)は経験豊かな永橋あゆみの今一番のバレリーナ
の一人ならではの魅力溢れる世界と大きな伸びをみせる新人の今井智也のペアで盛り
上げた。二人のコンビネーションはとてもよくあっている。今井は優れた表現を魅せ
ることができるようになった。そのこれからの大きな飛躍に期待がかかる。
メッセレルが作ったこの版は様々なシーンに日本人による本作では出せないロシア人
ならではの持ち味がある。第ニ幕三場の幻想的な夢の中の森の世界や1幕のバルセ
ローナの広場や第三幕貴族の館の広間でそれらは活きている。さらに1幕の鶏を盗む
シーンなどは日本ではこのヴァージョンならではのもの。本当の馬も舞台に上げて見
せて客席を沸かせた。舞台美術は妹尾河童による明るいスペインの風景だ。画筆の
タッチもくっきりとしておりファミリータッチで朗らかなものになっている。風車に
ドン・キホーテがつっこむ名物のシーンでは空中から龍が現れた。
初演の時は谷桃子・小林紀子がキトリを踊った。ナデシタ・パヴロワや藤田繁の名前
も。“Ballet du Momoko Tani”と題された初演の時のプログラムには蘆原英了や桜
井勤が寄稿している。それから半世紀して様々な団で上演されこの演目は日本に根づ
いた。その日本初演の原点に触れた気になった。
(東京文化会館 1月23日・24日)

写真:
スタッフ・テス 飯田耕治


吉田悠樹彦

舞踊学者、舞踊批評家
Dance-Streaming.JP プロジェクトリーダー、エディター
慶応義塾大学院 政策・メディア研究科 後期博士課程(単位取得満期退学:博士候補 2004)
学生時代よりPrix Ars Electronica, International Advisory Committee(Digital Community)を務める。:参照
さらに同じく学生時代からテッド・ネルソンとザナドゥ・プロジェクトのアシスタントを務める。
また在学中より音楽舞踊新聞(音楽新聞社)、より批評活動を開始。以後Cut-In(die pratze発行),The Arts Cure(Dance Project Sequence),Channels(World Dance Alliance),RealTokyo,Dance Square,美術手帳 BT,ダンスワーク, Th Series, 激しい季節(大駱駝艦),「Danceart」(ダンスカフェ),「Paseo フラメンコ」,「CORPUS コルプス」(編集委員), Cinra, Spor-e, 北海道新聞 に批評、記事を執筆
Turblence.orgGuest Blogger
"Dances of Asia Pacific", Blogger and Editor,World Dance Alliance Asia Pacific, Research Documentation Network, Pan-Asian Society of Sports and Physical Education Research Network


update 2010.2.3wed No.13