画像で見る子宮筋腫手術

子宮鏡手術

腹腔鏡手術は小さいとはいえ、おなかに傷が必要ですが、子宮鏡手術は子宮筋腫だけを削り取る「おなかも子宮も切らない手術」です.手術翌日には痛みもなく退院が可能で、仕事を休むのも4日くらいですみます。子宮を傷つけないので出産を帝王切開とする必要もなく,子宮筋腫が原因の不妊症にもおすすめです.
小さな粘膜下筋腫なら手術できる医師・病院が増えてきました,熟練した医師なら筋層内筋腫や10cmの粘膜下筋腫でも可能な場合があります.まだ腹腔鏡手術ほど普及していませんが、腹腔鏡手術よりもメリットが多いので,これからは確実に広がる手術でしょう.

子宮筋腫の種類

子宮鏡は子宮口から子宮腔に入れる内視鏡ですから、子宮鏡手術で摘出できるのは粘膜下筋腫と子宮腔に隆起するように発育した筋層内筋腫です。漿膜下筋腫は子宮腔から離れているので、子宮鏡手術では取れませんが、漿膜下筋腫は症状を示さないことが多いので、取る必要がない場合がほとんどです。
子宮筋腫で一番多いのは筋層内筋腫で、粘膜下筋腫はあまりありません。筋層内筋腫は子宮腔に隆起しなければ無症状なので放置(または経過観察)でよいのですが、過多月経・貧血を生じている子宮筋腫のほとんどは子宮腔に隆起した筋層内筋腫です。筋層内筋腫の摘出は技術的に難易度が高く、子宮鏡手術が行なわれず開腹または腹腔鏡手術がされる場合が多いです。

子宮鏡の写真

手術用の子宮鏡です。つながっているのは、右からビデオカメラケーブル、光源ケーブル、電気メスケーブル、潅流液チューブです。

子宮鏡電気メス

ハンドルを握ると先端から電気メスが出ます。手を握ったり開いたりして電気メスを前後させ、足元のフットスイッチで通電し、子宮筋腫を削ります。

子宮鏡による筋腫摘出

①子宮筋腫の奥に電気メスを入れ、②子宮筋腫を削り取り、③削った切片を挟んで、④体外に取り出します。モニター画面を見ながら、この操作を繰り返し、子宮筋腫を取り除いていきます。出血のため視界が悪くなるので、潅流液で洗い流しながら手術します。

子宮鏡手術に適した子宮筋腫のMRI画像

左のように、子宮の中に浮かんでいるように見える小さな粘膜下筋腫は、子宮鏡手術で取りやすいものですが、多いものではありません。
右はかなり大きい粘膜下筋腫です。子宮鏡で摘出可能ですが、技術的には難易度が高いので、開腹や腹腔鏡で行われる場合が多いです。

子宮鏡手術後に妊娠した8例のMRI画像

これらは筋層内筋腫なので、「子宮鏡での摘出は無理」と一般的には考えられていましたが、手術方法の工夫により可能になってきました。
この8人の患者さんは、いずれも生理の量が多く貧血がありましたが、子宮鏡手術で子宮筋腫を取り除くことができ、その後妊娠できた人たちです。

子宮鏡手術で摘出した巨大子宮筋腫

子宮鏡手術で摘出できた巨大筋腫4人のMRI画像です。下の写真が摘出した子宮筋腫の全量です。MRIでの子宮筋腫の最大径は14cm、摘出重量の最大は360gでした。このような大きなものは、一般には行なわれていませんが、条件が揃えば可能になります。残念ながら現在のところ,子宮鏡手術は不完全手術となるケースが珍しくなく,再発は多くみられます.実際,私が引き受けている子宮鏡手術の,およそ半分は再発例です.
子宮鏡手術は,手術手技が確立されているとは言えず,従来の開腹手術に比べると医師の技術格差が大きく,このような問題はしばしば起こっています.
再発させないためには,筋腫を100%取る必要がありますが,突出率が低いと子宮の壁(筋層)が薄く,破れる危険性があり難しい手術となります.このような場合,筋腫を筋層から剥離することにより,安全・確実に摘出できるのですが,剥離のテクニックは普及していません.
この技術が普及すれば,子宮全摘も,開腹手術も,腹腔鏡手術も現在よりずっと少なくなると思い,学会や研究会での発表を続けています.

 

腹腔鏡手術

おなかの中にビデオカメラ(腹腔鏡)を入れ,モニター画面をみながら、腹腔鏡用の特殊な手術器具を操作しておこなう手術です.二次元の画面で三次元の操作を遠隔的に行うため熟練が必要で,やれることに限界があります.

腹腔鏡による子宮筋腫摘出手術

腹腔鏡下子宮筋腫摘出術のようすです。子宮筋腫を取り出した後、子宮筋層を縫い合わせて閉じます。執刀医は画面右側のモニターを見ながら、左手の器具(鉗子)で糸を持ち、右手の器具(持針器)で針を掴んでいます。手前の助手はカメラ操作をしています。

 

腹腔鏡手術トレーニング

 

モニター画面を見ながらの縫合の練習です。スムーズに縫って、手際よく糸を結ぶことができるまでには、トレーニングが何か月も必要です。自宅で縫いぐるみや手袋などを縫って練習しています。

腹腔鏡下子宮筋腫摘出術

 

筋層を切開し、筋腫を剥き出し、筋層を縫合し、針を取り出すまでのダイジェストです。

 

巨大子宮筋腫の腹腔鏡手術

開腹手術で、おなかを大きく切れば、大きな子宮筋腫を取り出すことも簡単ですが、腹腔鏡の小さな傷から取り出すのは大変です。そこで、モーターで回転する刃物「電動モルセレーター」が開発され世界的に使用されてきました。しかし、おなかの中で電動の刃物を使うことは、周囲の臓器や大血管を傷つけた場合に極めて危険な事態になるという問題があります。また、刃物が回転することにより、切れ端や切りくずがおなかの中に飛び散ります。子宮筋腫は良性腫瘍なので転移しないと考えられてきましたが、飛び散った子宮筋腫のかけらが腹膜や腸の表面に付着して増殖することがあるという報告が相次ぎました。つまり、子宮筋腫の手術後に子宮以外に筋腫が再発したわけです。また、アメリカでは、「術前に子宮筋腫と診断され電動モルセレーターが使われたが、術後の病理診断で子宮肉腫だったことがわかった例」が報告され、製造メーカーが販売を中止しました。

下のMRI画像は、へその高さを超えた超巨大筋腫ですが、電動モルセレーターを使わずに腹腔鏡下子宮筋腫摘出術ができた例です。小さな傷から大きな筋腫を出すテクニックを連続写真で示しました。

腹腔鏡手術で摘出した巨大子宮筋腫のMRI画像

 

腹腔鏡下子宮全摘術

子宮筋腫は複数できることが普通で、時には100個以上もできます。子宮筋腫の大きさは大小さまざまで、小さいものも大きくなっていきます。子宮筋腫摘出術では見つかったものを取っていきますが、見つからない小さなものは取り残されることになり、これらは術後に大きくなるので筋腫摘出術は「再発」が避けられない術式です。
子宮筋腫だけ取り出すのではなく、子宮ごと取ってしまう手術を子宮全摘術といいますが、この手術では子宮筋腫の再発は絶対に起こりません。「生理がなくなること、避妊の必要がなくなること、子宮がんにならないから健診を受ける必要がなくなること」なども子宮全摘の利点ですが、子宮ごと無くしてしまうと妊娠することはできなくなりますから、子供がほしい場合や妊娠の可能性を残したい場合には、これはできません。
腹腔鏡手術では、子宮筋腫摘出も子宮全摘もどちらも可能です。入院期間・休業期間、実質的な費用、などは、ほとんど同じです。子宮筋腫の大きさや数によって一律ではありませんが、一般的には腹腔鏡下子宮全摘のほうが腹腔鏡下子宮摘出よりも、手術時間が短く、おなかの傷は小さく少なくすみます。この理由は、筋腫摘出では、「筋腫を取った後の子宮を縫い合わせて修復しなければならない、取った筋腫をおなかの傷から出さないといけない」のに対して、子宮全摘では、「子宮を縫い合わせる必要がなく、子宮と筋腫は腟から取り出せる」からです。ただし、子宮全摘には筋腫摘出では問題にならないリスクがあります。子宮全摘では、子宮を取った後の骨盤腔の底(腟の奥)を縫って閉じます。極めて稀にですが、性交時の刺激で、この傷が開くことが報告されています。また、子宮全摘は子宮が体とつながっているところを切り離す手術なので、このつながっている場所にある尿管と膀胱が損傷を受ける可能性も、わずかにあります。

腹腔鏡子宮全摘した巨大子宮筋腫3例

腹腔鏡下子宮全摘をした3例です。上のMRIと下の摘出物の写真が対応しています。
左は、へそを超える高さまで大きくなっていたもので、摘出重量731gでした。
中央は、へそを超えてはいませんが、おなかが盛り上がっていました。摘出重量は1015gでした。
右は、正面から見たMRI画像ですが、骨盤内いっぱいに子宮筋腫が大きくなっています。摘出重量は915gでした。
いずれも術前に6か月間、リュープリンによる偽閉経療法をしており、体積(重量)は半分程度に小さくなっています。リュープリンなしでは、腹腔鏡手術は不可能な大きさです。