子宮筋腫 大きさと治療

子宮筋腫の症状と診断の解説です。

 


 


子宮筋腫の種類

子宮筋腫の治療

子宮筋腫の治療は、「子宮筋腫を小さくする」ことが目的ではありません。「つらい、または困る症状」を、「無くす、または軽くする」ことを目的に行なうものなので、「治療を行なう必要がある」ケースはほとんどありません。
子宮筋腫は腫瘍の一種ですが,悪性腫瘍(癌)ではないので,際限なく増殖したり子宮以外の臓器に転移したりしません。
原則的に子宮筋腫は癌に変化することはなく,手遅れになって命を失うような病気ではないの、症状がなければ治療の必要はありません。
子宮筋腫の治療は薬物療法と手術療法に分けられますが,「手術しないと危険,手術以外の治療では効果が望めない」というような、本当に手術が必要なケースそれほど多くはありません。
症状がなければ,大きいという理由だけで手術する必要はありません.逆に小さい筋腫でも,症状が強くて薬での治療がまうくいかないなら手術のほうが適しています.

 

子宮筋腫を小さくする食事療法 生活習慣/体質改善療法

インターネットで「子宮筋腫」をキーワードに検索すると、子宮筋腫を解説したサイトがたくさん見つかります。学会など公的団体、病院など医療機関、医師が運営しているサイトの記述内容は、概ね広く認められた間違いのない情報ですので、参考にされることを勧めます。
しかし、「子宮筋腫ー食事」、「子宮筋腫ー小さくする」などのセカンドキーワードで見つかる「まとめサイトや著者・製作責任者が明らかでないサイト」には、専門知識のない人の誤解に基づく記述が多数見られます。
たとえば、子宮筋腫の原因として「冷え、ストレス、ホルモンバランスの乱れ、エストロゲン過剰、高脂肪食、動物性タンパク、乳製品」などが挙げられていますが、これらは、すべて「間違い、俗説、デマ、嘘」です。
子宮筋腫の原因については、世界中で、たくさんの患者さんについての調査データが蓄積され、古くから研究されてきました。これらの研究により現在までに確認された事実は、「発生率と食生活との関係は明らかではない。人種による差がある(黒人に多い)。妊娠と出産を経験しなかった人に発生率が高い。エストロゲンとプロゲステロンが増殖を促進し、これらが低下すれば萎縮する。子宮筋腫を持つ女性と持たない女性を比較しても、エストロゲンとプロゲステロンの値に差はない。」ということです。
「ストレスがホルモンバランスの乱れの原因となることがある」というのは間違いではありませんし、ホルモンバランスの乱れが冷えの原因であることもあります。ホルモンバランスの乱れは生理不順や更年期障害の原因となりますが、このような状態の人に子宮筋腫が多いという傾向は見られません。
子宮筋腫がエストロゲンにより増大することがわかってから、子宮筋腫が見つかった女性と見つからない女性の血液中のエストロゲン量の比較検討が行なわれました。血液中のエストロゲン量は個人差が大きく、生理の周期の時期によって20倍も大きく変動しますので、これを考慮して統計学的に意味を持つことが保証される程度の大規模の調査が行なわれました。その結果、「子宮筋腫がある女性とない女性の間には、血中エストロゲンに差はない」ということがわかりました。
閉経した女性のエストロゲンは男性以下に低下しますから、閉経後は子宮筋腫は小さくなります。リュープリンやナサニールのようなGnRHアゴニストとよばれる薬は、エストロゲンを閉経レベルまで低下させ子宮筋腫の増大を止め縮小させる効果があります。しかし、閉経していない年齢の女性が食事内容を変えても閉経レベルのエストロゲンになることはありえません。最近、アメリカで行われた調査では「乳製品の摂取量は黒人より白人のほうが多い」という結果が出ましたが、「子宮筋腫は白人より黒人に多い」という事実を考えると、「乳製品が子宮筋腫の原因、または増大因子」という「あやしい説」が否定できます。
女性ではエストロゲンは主に卵巣で作られますが、女性ホルモンの直接の原料は実は男性ホルモン(アンドロゲン)です。男性ホルモンはコレステロールから作られます。コレステロール→アンドロゲン→エストロゲンへの変化は、複数の酵素によってコントロールされています。男性には卵巣がないのに男性のエストロゲンは閉経女性のそれより多いのですが、これは「脂肪組織にアンドロゲンをエストロゲンに変える酵素がある」ためです。閉経女性のエストロゲンがゼロにはならないのはこのためです。「高脂肪食、動物性タンパク、乳製品、が子宮筋腫の原因または増大因子」という「あやしい説」は、これらの事実の誤解から生じたものと考えられます。
激しいトレーニングと体重制限を行なう女性アスリートに、無月経や骨量低下に起因する骨折が起こることが問題になっています。また、戦争や肉親の死亡などのストレスや飢餓による体重減少が無月経の原因になることも古くから知られた事実です。これらは、いずれもエストロゲン低下によるもので、このような状態では子宮筋腫は小さくなると考えられます。エストロゲン、アンドロゲンそのものを含んだ食品はありませんが、コレステロールは多くの食品に含まれています。コレステロールは過剰摂取は問題になりますが、生体の構成材料でもあり、体内で重要な働きをする成分なので極端な制限は問題です。推奨される一日の食事からのコレステロール摂取量は200mg程度ですが、血中のエストロゲン量は平均的には100pg/ml程度です。100pg/mlというのは、1mlあたり100pg含まれるという意味で、「pg」は「ピコグラム」と読み、「ピコ」は「ナノ」の千分の一、「マイクロ」の100万分の一、「ミリ」の10億分の一ですから、簡単に言うと「コレステロールの10億分の一がエストロゲンになる」ということになります。エストロゲンもアンドロゲンも「ホルモン」で、ホルモンとは体内で特定の細胞に働きかける物質ですが、ごく微量で作用するので、コレステロールからアンドロゲンに転換されるのは、体内にあるコレステロールのうち極めてわずかで、これをコントロールするのは特定の酵素であり、食事からのコレステロール摂取量がエストロゲンレベルに影響することはないのです。
食事療法で子宮筋腫を小さくしようと望むなら、「生理が止まるまで断食してください」という結論になるでしょう。
なお、大豆に含まれるイソフラボンは「植物エストロゲン」として有名ですが、エストロゲン作用はかなり弱く、専門家の間では子宮筋腫に対しては悪化や改善するほどの作用はないだろうと考えられています。

 

子宮筋腫のホルモン治療

薬で筋腫をなくすことは不可能でも,薬で症状が改善するなら手術の必要はないわけです.症状が生理痛だけで,痛み止めが有効ならそれでいいですし,軽い貧血なら,ときどき造血剤(鉄剤)をのむだけでよいわけです.しかし、痛み止めが効かなくなったり,痛み止めの副作用(胃腸障害など)が強かったり,年中出血していて貧血が悪化していく場合は次のステップの治療が必要です.
 生理不順や生理痛,生理の量が多い時などによく使われてきたホルモン剤(中用量ピル)があります.これは,エストロゲン(卵胞ホルモン) とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤です.生理の規則的なサイクルはこれらの女性ホルモンによってコントロールされています.この分泌のリズム不整が生理不順の原因なので,ちょうどパソコンの調子が悪くなったときに再起動させるように,人工的にホルモンをコントロールして,生理を起こさせ,「生理の周期をリセット」しようというわけです.旅行などで生理日を変更したい時に使う薬も,この中用量ピルです.
 筋腫が原因でない生理不順や生理痛には適した治療法ですが,筋腫はこれらのホルモンによって増殖する性質をもっていますので,長期の使用は禁忌とされます.
 以前は「エストロゲンは筋腫を増殖させるが,プロゲステロンは増殖を抑制する」という説もありましたが,プロゲステロンも筋腫の増殖に関わっていることが確認されており,「プロゲステロン善玉説」は,現在では完全に否定されています.プロゲステロンは子宮内膜に抑制的に働くので、この作用を強めるようにプロゲステロンの構造を一部改変した「プロゲステロン誘導体」が、子宮内膜症や過多月経の治療薬として保険で使えるようになっています。
ひとつは「ディナゲスト」ですが、子宮内膜を萎縮させ過多月経を改善し生理痛を軽減します。しかし、子宮筋腫の縮小や増大抑制効果は期待できず、粘膜下筋腫には無効な場合が多いです。エストロゲンの分泌はあまり減らないので、次に述べるGnRHアゴニストのような更年期障害や骨のカルシウムが減る恐れがなく、長期服用もできますが、高価なことが難点です。
もう一つは「ミレーナ」です。これは子宮腔内に挿入留置する避妊器具に「プロゲステロン誘導体」を含ませ、長期間にわたり微量の放出が続くように作られたものです。ディナゲストと同様の仕組みで作用しますが、一度装着すれば5年くらい薬の放出が続くのでディナゲストより「飲む手間」が省けて楽です。しかし、過多月経など患者さんが困っているのは、粘膜下筋腫や内腔に隆起した筋層内筋腫内腔の変形拡張を生じているケースで、このような場合は挿入困難で装着しても脱落することが多く、効果が期待できません。
 エストロゲンとプロゲステロンの分泌を強力に抑制して人工的に閉経状態にする薬GnRHアゴニスト(スプレキュア,リュープリン等)が筋腫治療に用いられることがあります.これにより生理がなくなり,生理痛から開放され,子宮筋腫もかなり縮小します.現在まで、子宮筋腫を小さくする効果が証明されているのは、このGnRHアゴニストだけですが、有効な場合は体積が半分以下になります。ただ、子宮筋腫がなくなるわけではなく、やめれば大きくなります。
 閉経状態になるわけですから,更年期障害の症状(のぼせ,肩こり,めまいなど)が副作用として問題になります.エストロゲンが低い状態が続くと,骨のカルシウム量が減ります.高価な薬なので長期になると費用も高くつきます.
 これらの問題から,この治療は長期に続けられず保険では6か月以内とされています.6か月で治療を終了すると,また生理が再開しますが,6か月後にはほとんどの人は筋腫がもとの大きさ以上になります.大きな子宮筋腫は、おなかを切らないか小さな傷ですむ内視鏡手術が困難なことが多いですが、子宮筋腫を小さくしてから手術すれば可能になるので、「子宮筋腫を小さくして内視鏡手術をやりやすくする」ことを目的とした術前治療としての意義は大きいです。
リュープリンは乳がんの治療薬としても使われていますが、乳がんのホルモン治療薬として広く使われるものに「ノルバデックス」があります。リュープリンはエストロゲンとプロゲステロンを下げるので、これらで増殖が促進される乳がんに用いられるわけですが、ノルバデックスは子宮に対してはエストロゲン様の作用を示し、子宮筋腫が増大することがあります。
最近は、ノルバデックスにかわり「アリミデックス」が乳がんに用いられることがあります。アリミデックスはアンドロゲンをエストロゲンに変える酵素の働きを強力に抑えるので、子宮筋腫を小さくすると考えられますが、現在のところ保険適応はありません。

 

子宮筋腫の漢方治療

現在日本で保険で使われる漢方薬は150種類ほどあります.多くは2000年近く前の中国の古典に基づくものですが,使用量とその使い方は日本人向けにアレンジされ,江戸時代に日本で改良されたり創りだされた処方もあります.
中国では現在でも動物,鉱物由来の原料を構成成分にした処方が多くあり,薬効は鋭いが副作用の強いものも多いようです.現在の日本の漢方薬はほとんど植物由来のもので,日本で生き延びた処方は副作用の少ないマイルドなものが多いと言えます.
中国の古典では「当帰芍薬散」とか「桂枝茯苓丸」とか「温経湯」とかいう名前がならんでいますが,薬草などの原料を砕いて粉末にしたものが「散」,はちみつやごま油で丸めたものが「丸」,お湯で長時間煮出したものが「湯」だったわけです(中華料理のメニューにある「湯」というのはスープのことですね).
日本では「散」も「丸」も「湯」のかたちで用いられるようになり,「薬草の煎じ汁」が漢方薬のベーシックスタイルとなりました.30年ほど前にインスタントコーヒーのように「薬草の煎じ汁」からフリーズドライによる顆粒状のエキス製剤がつくられ,これが保険で使えるようになってから,漢方薬を処方する医師が増えてきました.
中国では早い時代に産婦人科が内科から独立し,女性を対象とした処方が工夫され,冷え症,生理痛,生理不順,不妊症,つわり,妊娠中のかぜ,流産早産予防,更年期障害,など女性特有の症状に使われてきました.
日本の漢方では月経,出産にまつわる異常から更年期障害などの女性特有の疾患症状を「血の道症」とよび,数多くの処方を使い分けたこまやかな治療をしてきました.妊娠中に出血したり,おなかが痛んだりして流産するかもしれない状態を「切迫流産」といいますが,漢代の古典ではすでに切迫流産の治療をタイプ別に記述しています.たとえば,妊娠中におなかが痛む時の薬「当帰芍薬散 とうきしゃくやくさん」,子宮筋腫のある女性が妊娠して出血する時の薬「桂枝茯苓丸 けいしぶくりょうがん」,などです.
最近の研究によりこれらの処方は,子宮の異常な収縮の抑制効果,止血効果,子宮筋腫に対する効果,などがあることが確かめられ,妊娠以外の時にも幅広く使われています.
「立てば芍薬,座れば牡丹,歩く姿は百合の花」というあでやかな美人のたとえがありますが,芍薬(しゃくやく)と牡丹(ぼたん)は女性を対象とした漢方薬にはほとんど必ず配合されています。最近の研究では芍薬と牡丹には女性ホルモンの分泌を調整する成分,子宮筋の異常収縮を抑制する成分,微小血液循環を改善する成分,などが含まれていることがわかっています.古代中国のひとたちがこのことに気づいていたとは思えませんが,不思議ですね.

芍 薬 (薬用種) ボタン科 中国原産の宿根草
薬用腫には白花と赤花があり,根を用います.婦人病,胃腸の薬に広く配合され,鎮痛,消炎,抗潰瘍,女性ホルモン分泌調節,などの作用を持つ物質が含まれています.
観賞用に改良された品腫には,バラ咲き,ボタン咲きなどの豪華な花を咲かせるものもあります.

牡 丹 ボタン科 中国原産の落葉低木
芍薬と牡丹は同一属に分類され,英名はどちらも peony .園芸種の牡丹は芍薬に接木して栽培され,雑種もできるほど近縁です.
園芸種には白,ピンクのほか最近は黄色の花もあります.
漢方では,古い血液が滞ると心身の不調がおこると考え,これを改善する目的で牡丹の根の皮を用います.
芍薬と同様の成分のほかpeonolというアスピリンに似た成分が鎮痛,消炎,抗血小板(血液凝固を防ぐ)作用を持つことが確認されています.
芍薬と牡丹は更年期障害や卵巣機能不全に用いる処方に広く含まれています.


エストロゲンは代表的な女性ホルモンで,卵巣,胎盤でつくられます(副腎,脂肪組織でも微量につくられ,男性にも閉経期女性と同じくらいあります).エストロゲンは子宮や乳腺に働きかけ,排卵,月経,妊娠,授乳など女性の生殖機能をつかさどるホルモンです(このため子宮と乳腺はエストロゲンの標的臓器 target organ とよばれます).
赤ちゃんの保育器である子宮が大きくなるのも,授乳のためおっぱいが大きくなるのもエストロゲンのおかげです.エストロゲンがたりなかったり,分泌のリズムが乱れるとうまく排卵が起こらず,生理不順や不妊症となります.
卵巣は40才代から機能低下がはじまり,ほぼ50才で機能を停止します.エストロゲンの分泌も低下し生理もなくなります.これが閉経で,その前後の時期を更年期とよびます.平均寿命がのびても閉経年齢はほとんどかわっていません.どの民族,どの時代でもほぼ50才です.黄帝内経という2000年前の漢方のバイブルにも閉経に関する記述があります.平均寿命はどんどん伸びているのに,卵巣の寿命は伸びてはいないのです.
ザクロにエストロゲンが含まれているので女性の美容と健康にざくろジュースがよいということが言われたことがあります.更年期におこるエストロゲン分泌の不安定と低下に起因した,さまざまな肉体的,精神的な不快な症状を更年期障害とよびますが,エストロゲンが低下しているタイプの生理不順や更年期障害にエストロゲンを補充することは実際に治療としておこなわれますから,もし,ザクロにエストロゲンが含まれるなら効果があるかもしれません.ところが,分析の結果ザクロにエストロゲンの存在は証明されていません.
エストロゲンそのものではないのにエストロゲンのような働きをする物質が存在することが知られています.ひとつは植物エストロゲンとよばれているもの,そしてもうひとつは「内分泌かく乱物質」でダイオキシンなどの,いわゆる環境ホルモンです.
植物エストロゲンはレッドクローバーとよばれるマメ科の植物ばかり食べていた羊に不妊が多いことから最初に気づかれました.環境ホルモンはワニや巻貝のメス化により知られるようになりました.ダイオキシンはよく知られた内分泌かく乱物質ですが,子宮内膜症を増加させることがサルによる実験で明らかになっています.このようにエストロゲン効果はかならずしも有益な効果だけを与えてくれるわけではありません.子宮内膜症や子宮筋腫,子宮内膜癌や乳癌はエストロゲンにより増殖しますし,実際これらの治療にエストロゲンを抑える治療がおこなわれることがあります.だからエストロゲン効果のある健康食品があったとしても,バストアップはできても内膜症や筋腫は悪化するかもしれないわけです.
エストロゲンは骨のカルシウムの維持に重要な働きをしています.そのため閉経期以後の女性の骨粗しょう症の予防と治療に用いられます.エストロゲンはコレステロールを下げ,コラーゲン(皮膚などのタンパク質)を増やし,脳神経の老化を防ぎアルツハイマー痴呆に有効と考えられています.女性ホルモンの欠乏によって起こるこれらの老化現象は女性ホルモンを補充することによって防ぐことができるので,アンチエイジングとしては最も確実なものです.
自然界の多くの動物は生殖年齢を終えると(つまり閉経を迎えると)まもなく,その命を閉じます.ヒトは医療と社会保障にささえられ閉経後も生きるようになったのですが,このこと自体が自然の流れに逆らう行為なのかもしれません.
漢方薬は生理不順と更年期障害には,うまく使えばホルモン剤と同等以上に効果的で,ホルモン調節作用を持っていると考えられる処方が知られていますが,植物エストロゲンとしての働きが確認されたものはあまりありません.また,エストロゲン補充療法のように閉経後の老化を防止できるかどうかも不明です.動物実験では.骨粗しょう症,アルツハイマー型痴呆に有効とされる漢方薬もありますが,ヒトでの有効性はまだ確認されていません.
植物エストロゲンとして最も研究が進んでいるのはダイズの成分イソフラボンです.この分野の研究は日本よりもアメリカ,ヨーロッパでさかんです.更年期障害に有効とする論文もあります.
日本には,豆腐,油揚げ,納豆,高野豆腐,みそ,きなこ,ゆば,などたくさんのダイズ加工食品がありますが,加工や調理によっても植物エストロゲンとしての効果は安定しているとされます.これらはコレステロールの取り過ぎを気にせずタンパク質とカルシウムが補給できる食品としてもおすすめです.
滋養強壮,疲労回復を効能にうたったドリンク剤はビタミン,カフェインのほか漢方の生薬成分を配合したものが多くありますが,最も有名なものが人参(にんじん)です.これは野菜の carrot(セリ科) とは別物で,朝鮮(高麗)人参とよばれるウコギ科の多年草の根です.
ヨーロッパでも古くは薬草を医療に用いてきましたが,化学の発達に支えられ,薬効成分を分析,抽出,純化して用いるようになりました.そのため薬効は鋭いが副作用も強くなり,副作用には,副作用を抑える薬を使うことになり,ひとつの症状ごとにひとつの薬を使うので複数の症状には複数の薬が必要,という問題がでてきました.
中国では医学はこのような方向には進まず,複数の生薬を組み合わせることで薬効を高め,副作用を減らす工夫をしてきました.漢方薬は複数の生薬からできていますから,複数の症状にも原則として1種類または2種類の処方で対処できます.
漢方には,同病異治(同じ病気でも患者に応じて異なる治療をする),異病同治(異なる病気でも同じ処方を用いる)ということばがあります.体質,体力などの個人差を重視し,同じ病気同じような症状でも,個人差(証 といいます)と病気の時期によって薬の組み合わせを変え,最も適切な薬の組み合わせを選ぶためのテクニック = 診断学を体系化してきました.

子宮筋腫を小さくする漢方

漢方薬は筋腫の症状である生理痛に古くから用いられ,自覚症状の改善効果は知られていましたが,客観的な効果判定の手法がなかったため自覚症状だけの効果と思われていました. 子宮の手術方法が確立され安全に子宮全摘出術が行えるようになってからは,筋腫の根本的治療法は手術であると考えられるようになり,大きくなってしまった子宮には漢方薬は無効だと信じられてきました.
しかし,超音波による子宮測定ができるようになり,漢方治療の客観的な効果判定が可能になり,大きくなった子宮が漢方薬により縮小することがあることがわかるようになりました.詳細は、井上滋夫が以下の学会と学術誌に発表しています。


1996年   子宮筋腫の自然経過と桂枝茯苓丸の治療効果 第47回日本東洋医学会 
1997年   子宮筋腫合併妊娠に対する桂枝茯苓丸の治療効果 第48回日本東洋医学会
      超音波計測による桂枝茯苓丸の子宮筋腫縮小効果の検討 産婦人科漢方研究のあゆみVol.14 
      腫大子宮の自然経過と桂枝茯苓丸の効果についての超音波計測による検討 第18回エンドメトリオーシス研究会
1998年   超音波計測による桂枝茯苓丸の子宮筋腫縮小効果の検討(第2報 GnRHagonist投与後維持療法の可能性) 産婦人科漢方研究のあゆみVol.15
      子宮筋腫に対する漢方薬の使い方 漢方医学
1999年   子宮筋腫・今日的な筋腫治療における漢方の役割 産婦人科治療
      超音波計測による桂枝茯苓丸の子宮筋腫縮小効果の検討(第3 報低用量ダナゾール併用療法の試み) 産婦人科漢方研究のあゆみVol.16
     子宮筋腫の東西医学融合治療 日本東洋医学会関西支部例会
2001年   低用量ダナゾール併用桂枝茯苓丸による子宮筋腫治療―長期観察例の検討 産婦人科漢方研究会

これらの研究でわかったことは、「漢方薬を服用していない人の子宮筋腫は増大傾向を示したが、漢方薬を服用していた人たちの中には子宮筋腫が縮小傾向を示す例があった。全体としての比較で差があった」ということです。ただし、これらは超音波計測による評価ですので、残念ながら、あまり信頼性が高いとはいえません。より客観性が高いMRIを用いた検討は、現在まで行なわれていません。また、併用したダナゾールは保険での長期使用が認められず、より副作用の少ないディナゲストが発売されたため、ほとんど使われなくなっています。

 

子宮筋腫の手術

「画像で見る子宮筋腫手術」のページで詳しく解説します。