子宮筋腫 大きさと症状

子宮筋腫の症状と診断の解説です。

子宮筋腫の症状

1.生理の量が多い,生理の日数が長い、血の塊が出る,
2.貧血(女性の貧血の主な原因です),
3.生理痛(単独で起こることは少なく、出血の増加を伴う),
4.不妊・不育症(流産しやすい),
5.頻尿(トイレが近い),排尿困難、尿閉(尿がでなくなる)
6.便秘,腰痛(子宮筋腫とは無関係のことが多いが、生理と一致していれば可能性あり),
などですが,
症状とその程度は、子宮筋腫のできている位置、大きさ、数でかわり、症状の強さは大きさよりも位置で決まります。
子宮筋腫は20代後半からみつかりますが、小さなころは無症状のことが多いです。
子宮筋腫以外の問題で産婦人科を受診したり、健康診断などで、たまたま見つかることも多く、ずっと症状がないこともあります。
子宮筋腫は、女性ホルモンの分泌がある(生理がある)年代では、ホルモンの影響で大きくなり、症状が強くなっていきます。
大きな子宮筋腫でも、子宮の外側に発育したタイプでは、一生にわたって無症状のこともあります。50才を過ぎて女性ホルモンが低下すると閉経し,筋腫は小さくなります.
生理がなくなると症状もなくなるので治療の必要はなくなります.

 

子宮筋腫の診断

子宮筋腫の診断は,以前は内診という触診が中心でしたが,現在では超音波とMRIが必須の検査になります.「指先に目がある」といわれるような名医の触診でも発見できなかったものが,現在では発見でき,悪性かどうかの判断にも役立っています。
超音波は装置が小型化され、診療所・クリニックなどの小規模医療施設にも必ず行なわれる簡便な検査で、子宮筋腫の発見のきっかけになることもよくありますが、手術の是非や術式の検討と、悪性腫瘍の除外診断のためにはMRIが必要になります。
MRIは大掛かりな装置が必要で維持管理のコストがかかるため、放射線科があるような比較的大きな病院に導入されています。内科や外科では画像診断としてCTが広く行なわれていますが、子宮や卵巣の診断にはCTよりMRIが優れています。MRIはCTと異なり放射線被爆の心配がなく、必要があれば妊娠中に行われることもあります。超音波と比べた場合、費用が高い、撮影に20分程度かかる、診断に専門的知識が必要、などの欠点があり、診断は放射線科の医師が事後に行なうことが多く、ふつうは複数回の通院が求められます。

正常子宮MRI画像

上の画像は、子宮筋腫が見られない正常の子宮のMRI画像です。右が背中側、左がおなか側で、おへそから下の下腹部の縦切り断面です。子宮の大きさは身長や体格とはあまり関係なく、出産経験のない場合は約7cm、出産経験がある場合は約8cmです。子宮は筋肉でできた袋状の構造をしていますが、内部のスペース「子宮腔」は平たく、あまり広いわけではありません。MRIは撮影方法により、見え方(コントラスト)が変わりますが、この撮りかたでは子宮の筋肉(筋層といいます)は明るい灰色に見え、その内側の白い部分が子宮腔です。子宮腔は空洞というわけではなく、子宮内膜という粘膜で内張りされています。女性ホルモンの周期的変動が内膜に出血を起こしますが、これが生理です。生理の出血は、腟の奥に開いている「子宮口」から腟へ排出されます。

子宮筋腫MRI画像

こちらは、子宮筋腫ができた子宮のMRI画像です。子宮の前側(画面では左側)の筋層内に8.7cmの子宮筋腫があり、子宮腔に大きく隆起しています。子宮は全体として大きくなり16cmあります。この断面では筋腫の数は1個ですが、子宮筋腫は1個しかない場合よりも複数個できることのほうが多く、10個以上ある場合もめずらしくありません。子宮筋腫は発生する部位により3種類に分けられます。この筋腫は「筋層内筋腫」ですが、大きくなり子宮腔への隆起が見られるため「粘膜下筋腫」に近いものとなっています。筋腫の分類は次の項で詳しく解説します。

子宮筋腫の種類

紙粘土で作った「子宮筋腫がある子宮のカットモデル」で、体の前方から見た断面です。ほとんどの子宮筋腫は筋層(子宮の壁)から発生します.①と②は筋層内で発育していて「筋層内筋腫」と呼ばれます。②のように大きくなってくると筋層を押し広げ内腔の変形が起こることがあります。③のように外向きに発育しコブ状になれば、「漿膜下筋腫」と呼ばれ、表面は筋層がなく漿膜という薄い膜で覆われています。④のように内向きに発育すると内腔にとびだし、ほとんど筋層に覆われず子宮内膜という粘膜に包まれた状態になり「粘膜下筋腫」と呼ばれます.③の外向きコブ型タイプはリンゴくらいに大きくなっても無症状で治療不要のことが多いのですが,②の筋層内タイプは大きくなると内膜面積が増加するため出血量が増え,内腔変形のため血が塊となりやすく排出が困難になり生理痛がひどくなります.④の内向きコブ型タイプは 1-2cmの大きさでも出血量が増加し,あなどれません.④粘膜下筋腫は子宮の内側にあるため、従来の手術法では帝王切開のように大きく子宮を切り開かないと摘出できなかったため、「場所が悪い」と言われることがありますが、子宮鏡手術を行なう医師なら容易に摘出できます。実際には、これらの中間型もあり,複数の筋腫が見つかることが多いです.従来は,おなかと腟から手で子宮の大きさ,硬さ,コブの位置,などを探る診察法(内診)で,にぎりこぶし大以上の子宮で症状があれば手術がすすめられていました.最近は,超音波やMRIで筋腫のタイプと子宮の大きさを正確に把握することができます.にぎりこぶし大だとだいたい200gくらいですが,外向きコブ型タイプなら300gくらいでも生理痛も貧血もないまったく症状のない人もいます.大きくなっても,このような場合は治療の必要はありません.

妊娠と子宮筋腫

妊娠中の子宮筋腫MRI画像

妊娠中に見つかった子宮筋腫のMRI画像です。これは横からの断面ではなく、体を正面から見た断面です。①と②が筋層内筋腫で、③が胎児、④は胎盤です。
②は小さな筋層内筋腫で、この程度のものは持ったままで、妊娠出産できることが多いですが、筋腫の上に胎盤が形成された場合は流産や早産が起こる可能性が高まります。①のような大きな筋腫でも漿膜下筋腫なら妊娠することもありますが、子宮筋腫があると一般に妊娠しにくくなります。子宮筋腫が胎児異常の原因になることはありませんが、子宮筋腫は妊娠中期に急速に大きくなることが多く、腹痛の原因になることがあります。また、出産時は逆子になりやすく、陣痛が胎児を押し出す有効な子宮収縮になりにくいため、難産が多くなり、産後の出血が多くなりがちです。
子宮筋腫があることがわかっていて妊娠出産を望んでいる場合、あらかじめ子宮筋腫摘出手術をするべきかというと一概には言えません。大雑把に言えば、大きな筋腫ほど妊娠出産への影響は大きいですが、漿膜下筋腫は問題になることが少なく、粘膜下筋腫は小さくても影響が大で、筋層内筋腫は位置と大きさによります。
漿膜下筋腫と筋層内筋腫の摘出は、開腹または腹腔鏡手術になります。漿膜下筋腫はあまり子宮を傷つけずに切り離すことができますが、筋層内筋腫は筋腫が筋層に包まれているので、筋層を切り開いて筋腫を剥がすことになります。切った筋層は縫合して閉じますが、傷ついた子宮は出産時の陣痛の圧力に耐えられず破裂することがあるので、筋層を切る手術の場合は帝王切開が勧められます。粘膜下筋腫は、子宮を傷つけず帝王切開の必要がない子宮鏡手術がベストの選択です。
開腹手術では術後に子宮と周囲臓器の癒着が起こることがあります。癒着は次回の手術が難しくなり、卵管の癒着は不妊原因になります。腹腔鏡手術は開腹手術より癒着が少ないことが長所のひとつですが、子宮鏡手術は周囲臓器の癒着は起こらないので、さらに優れています。医師の技術によっては、内腔に隆起している大きな筋層内筋腫も子宮鏡手術で摘出することも可能ですが、原則として粘膜下筋腫が対象になり、手術可能な医師が限られています。
子宮筋腫があっても妊娠出産できている人はいるわけですから、「どの程度の筋腫なら手術したほうがいいのか?」というのは、実はとても難しい問題なのです。子宮筋腫の数、大きさ、位置はさまざまで、この組み合わせにより状況は変わりますから、標準的な基準を設けることが困難なのです。「子宮筋腫を持った妊婦さんの出産」と「子宮筋腫の手術」の両方の経験が豊富な医師は多くはなく、個々の医師の経験という主観的な基準で決定されているのが現状です。

 

子宮肉腫

子宮肉腫MRI画像頸管内に発育した子宮肉腫MRI画像上の2枚の画像は、いずれも子宮肉腫のMRI画像(T2)です。MRIはT2、T1という2種類のモードで撮りますが、典型的な子宮筋腫は周囲との境界が明瞭で、T1でもT2でも黒く見えます。大きくなり変性を起こした子宮筋腫はT2で部分的に白い部分がでてきます。子宮肉腫では周囲との境界が不明瞭で、T1でもT2でも不規則な白い部分があらわれ、これは腫瘍内で出血が起こっていることを意味します。子宮筋腫と思われる腫瘍でも、発育のスピードが異様に速い場合,または閉経後も発育を続けるような場合は、子宮肉腫が疑われます。子宮肉腫は際限なく増殖する,子宮外の臓器にまでひろがる(浸潤,転移),命にかかわる病気,という点では癌と同じですが、増殖と転移の速度は癌よりも速く、抗癌剤が効かないので、癌よりも死亡率が高い病気です。頻度は癌より少なく、手術を勧められるような大きな子宮筋腫のなかで0.1~0.3%程度見つかります。
子宮肉腫の確定診断は、摘出した腫瘍の病理組織診断(顕微鏡による細胞の構造の観察が必要ですが、術前診断はMRIでほぼ可能です。MRIでは、①典型的な子宮筋腫、②非典型的な子宮筋腫、③子宮筋腫と思われるが子宮肉腫の可能性が否定できない腫瘍、④典型的な子宮肉腫、のグループ分けが可能です。①②は手術しない、または内視鏡手術をしてもよいと考えますが、③④は子宮全摘が強く勧められます。内視鏡手術は、腫瘍を体内で小さく分割してから取り出すため、悪性腫瘍だった場合に腫瘍細胞をばらまく危険があるので、③④では開腹手術を勧めます。実際の割合は①が約80%、②が約10%、③が数%で、④は極めて稀です。
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子宮筋腫の手術

「画像で見る子宮筋腫手術」のページで詳しく解説します。