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「ダイスケ〜、早く起きて朝ごはん食べなさ〜い」
「わかってるよぉ」
ダイスケはのろのろベッドから起きて着替え、ダイニングルームへ向かった。母さんの作る朝ごはんなんて、あんまり食べたくないんだけど…。
ダイスケはテーブル上の朝食を見て、固まった。
トーストはまあ、いい。カップに注がれた牛乳もだ。
問題はその隣の皿の上に乗っている、にんじん。
朝ごはんだぞ。料理だぞ。葉っぱをとったにんじん丸のままって、どういう料理だよ!
「うちの畑で今朝とってきたばかりのにんじんよ。おいしくゆでておいたから、あつあつのところを早めに召し上がれ☆」
母さんは庭で、やおやが開けるほどいろんな野菜を無農薬で作っている。しかしその野菜の料理は、ただゆでただけ・ただいためただけ、等々、とても料理とは言えない。
それでも腹ぺこなので、ダイスケは、おそるおそるゆでにんじんををかじってみた。
軽く「しゃり」という音。独特のあの、臭いにおいと味。甘さも塩あじも、ソースもドレッシングもない。
「こんなの食えるかよっ!」
口の中のゆでにんじんをはき出し、そう叫んだ瞬間、自分の家のダイニングルームへいたはずのダイスケはいつの間にか、見知らぬ草原へぽつんと一人立っていた。「…えっ?」
目をこすってみる。ほっぺたをつねってみる。あたりをぐるっと見渡してみる。…やはり、見たことも来たこともない場所だ。それにさっきまで朝だったのに、今太陽は頭の上・まっ昼間だ。
ダイスケの腹が、ぐうと鳴った。朝ごはんを食べられなかった…というか、食べていないから、当然だ。
誰かいないのか、できれば何か食べさせてもらえないか、それよりここはどこなのか。とりあえず近くに見えている森へダイスケは向かった。
「お、リンゴだ」
森の中では、真っ赤にうれた大きなりんごの実がなっていた。勝手にとるのはドロボウだけど、誰もいないし腹ぺこだし、後でことわっておけばいいさ。
ダイスケがリンゴをとろうと手をのばしたし瞬間、いきなりその手にりんごがかみついた。「ギャアァッ!」
ダイスケはふりほどこうとしたが、りんご…の形をしたモンスターはダイスケの手に食いついたまま離れようとしない。地面にばしばし叩きつけても口をこじ開けようとしても、りんごのモンスターはしっかりダイスケの手にかみついたままである。歯やキバはないみたいだが、力いっばいはさまれた手のズキンズキンはどんどんひどくなってくる。
「じっとしてな」
言うなりりんごのモンスターに、飛んできたナイフがぐさりと突き刺さった。モンスターは「ぐぎゃっ」と断末魔の叫びをあげると、かみついていたダイスケの手を離す。
地面に落ちたりんごは、ダイスケが普段見て食べている普通のりんごに戻っていた。
「果物を素手でとろうとするなんて。素人を通り越して、ばかだな、お前」
りんごに刺さったナイフをりんごあめの様に持って拾い上げ、うまそうにりんごをかじった人間を見て、ダイスケは思わず顔がデレっとゆるんだ。
もっと大きなりんごをふたつ押し込んだ様な、胸。ナイフを剣の様にぶらさげている、くびれた腰。迷彩色のズボンからはみでそうな、ヒップ。
ワイルドな美女を前にしたダイスケは、しかし腹ぺこには勝てなかった。
大きく鳴ったダイスケの腹の音を聞いて、その美女は、りんごをかじるのをやめる。
「お前、腹が減ってるのか?」
「あ、はい」
「このくらいのりんごひとつなら200ゼンぐらいだが、かじっちまったから、50ゼンでいいよ」美女は、食べかけのりんごを差し出す。
「ゼン?」
「なんだ、金持ってないのか?」
「というか…ここがどこなのかも、わかんないんだけど…」
「別の世界から来たばかりか。それで素手でりんごをとろうなんで、ばかなまねしたんだ」
美女はナイフを引き抜き、食べかけのりんごをダイスケに投げ渡す。「特別に、タダでやるよ。これからは果物ナイフでバトルして、りんごをとることだ」
「あ、あのっ!」
美女はそのまま立ち去ろうとしたので、ダイスケはあわてて呼び止める。
「ここ、どういう世界なんですか?」
「あたし達は『クック』って呼んでる。この世界じゃ、果物も野菜も肉も魚も、バトルして勝たなきゃ手に入らない…つまり食えないんだ」
美女は腰に何本もさしている、商売道具のナイフを見せる。よく見ると大きめのナイフは、よく研ぎすまされた包丁だ。
「あたしは狩人のハン。バトルして手に入れた食材を料理人に売って稼いでる。お前も生きのびたけりゃ、バトルして食材を手に入れて食いつなぐんだな。…『食材とれぬもの食うべからず』だ」
「けどっ、ぼく、そんなナイフとか持ってないし、バトルなんてしたことないし」
「そうだったな」ハンはしばらく考えてから、「あたしのお得意様に、料理人を欲しがってる店があるんだ。そこで住み込みで働けば、住む場所にも食い物にも困らないし、いつかはお前の元いた世界へ帰れる」
「帰れる!?」
ダイスケは、意気込んで尋ねる。「どうやって!!」
「どんな願いでもかなうという『まぼろしの料理』を作って食えばいいのさ。自分の願いをかなえる為、この世界では誰でも『まぼろしの料理』を作り出そうとがんばってる。ま、どうやったら作れるのか、誰もわかっちゃいないけどな」
それからダイスケはハンに連れられ、町はずれにある一軒の料理店へ案内された。そこは小さな古ぼけた店だったが、中からかわいらしい元気な声が聞こえてくる。「はぁい、お待たせしましたぁ…あ、すぐお持ちしますぅ」
「マナ。住み込みで働きたいっていうやつ、連れてきたぞ」
お客で込み合う店内に、お客の誰よりも小さな少女が一人、めまぐるしく働いていた。白い三角きんに白いかっぽう着姿の給食当番っぽい、小学校一、二年生くらいに見える少女だ。
「ほんとぉ?」マナの顔はぱっと喜びに輝く。「さあっすがぁ〜ハンさまぁ、マナ、感謝感激ぃ☆」
マナはひまわりの様ににこにこしながら、手に持ち運んでいた丸焼きチキンの皿をいきなりダイスケに押しつける。
「じゃこれ、一番奥のカウンターへ運んでねっ☆」
それからダイスケはマナに命じられるまま、転びそうになりながら料理の皿を運び、危なっかしい手つきで肉や野菜を切り、何枚か割りながら皿洗いをし、気がつくと夕方の閉店時間となっていた。
家でも学校でも、ダイスケはこんなにたくさん働いたことはなかった。
「ごくろうさまぁ。これ夕ごはん、えんりょせずに食べてね」
えんりょなんて出来るもんか、腹ぺこすぎて気持ち悪いくらいなのに!
あまりもののカボチャやツチノコといった食材でマナが作ってくれた、見た目はかなりグロテスクなごった煮のシチューを、ダイスケはがっついてかきこむ。
それは、ダイスケが今まで食べた料理の中で一番うまかった。
それからダイスケは、マナの店で必死に働いた。とりあえず食いつなぐ為に、そして元の世界へ帰る為に…『まぼろしの料理』を作る為に。
自分で作る料理の食材は自分でとってくるのが、この世界の料理人の基本らしい。つまり、『まぼろしの料理』を作るには、その食材も自分でとってこなくてはならない。ハンみたいな狩人から食材を買うことも出来るが、それはかなり高くつく。
マナはお母さんと二人暮らしだったが、お母さんが病気で寝込んでいるので、マナ一人で料理店をきりもりしている。『まぼろしの料理』の食材を探す為にもダイスケは自分の包丁を買いたかったが、高い薬代の為に毎日朝から夜まで働き、その合間をぬって母親の看病をしているけなげなマナを見ていると、ただで食わせてもらって寝泊まりしてる上に「バイト代ください」とまではとても言い出せない。
ダイスケはマナの包丁を借り、店で出す料理の食材をとるついでに、『まぼろしの料理』の食材を探すことにした。…『まぼろし』と言うくらいだからきっと、誰も予想がつかない、とんでもない食材に違いない。
この世界では料理は、切り方や味付けではなく、素材の新鮮さが重要だ。その日とれたての食材でなければお客は食べてくれない。時にはお客の注文を受けてから、食材をとりに行くこともあった。
それが自分では勝てそうにない大物の食材の時は、ハンの力を借りた。
…ハンは、すごい。いや、胸もすごいんだけど、オリジナルの改造を加えてバージョンアップさせた万能包丁で、トラ一頭くらいならたった一人であっさりとってくる。普通狩人は何人かのグループを組んでバトルするのだが、そんなやつらとは腕が全然違う。
ハンと一緒の時は、「いろんな料理を作ってみたいから」とせがんで珍しい食材とバトルし、いろんな料理を試してみた。しかしピラニア・バクテリア・マンタ・モアイ、どれも『まぼろしの料理』ではなかった。…「元の世界へ戻りたい!」と願いながら食べても、状況は全然変わらなかった。
こんな調子で、本当にだいじょうぶなのかな。いつになったらぼくの世界へ帰れるんだろう?
ちょっと弱気になりかけていたそんな、ある日。
「いらっしゃいませぇ〜」「いらっしゃいませ!」
ダイスケが、マナに負けない元気な声がやっと出せるようになった頃、そのお客がやって来た。
『にんじんの煮物を頼む』
声にならない、声。クモの様な手足。生き物というよりアニメで見る高性能人型ロボットの様なそのお客は、宙に浮いたまま移動して店に入ってきた。
店にいたお客全員がいっせいに、そのモンスターに注目した。
厨房で料理していたダイスケは、急に静まり返った店の方を不審に思い、のぞき込む。「どうしたのかな」
店には、人間以外のモンスターもお客としてやって来る。ここの料理で食材として使っている、人魚やマンモスもだ。食べられる側のモンスターが食べる側としてやってくるのを、はじめはダイスケもびっくりしたけど、ここではそれが普通だった。
しかしそのお客に対しては、別だった。
そのあまりに異質なお客を見た他のお客は、急にひそひそとうわさ話をはじめた。お店で夕食をとっていた狩人のグループは殺気立ち、腰の包丁を手に立ち上がる。
「ちょっと、料理店でのバトルは御法度よっ」
マナは腰に手をあて、めっ、と狩人たちをしかった。狩人たちは互いに目くばせをすると、そそくさと店から出ていく。
「あちらのお席へどうぞ、オメガさん。すぐお持ちします」
オメガを窓際の特等席へ案内したあと厨房へ戻ってきたマナに、ダイスケは待ちかまえた様に尋ねる。「マナ、あのお客、何者なんだ?」
「オメガさんといって、ハン様でも倒せない強いモンスターさんのひとつよ。宇宙に住んでるらしいんだけどめったに姿を現さないから、誰も詳しくは知らないわ」
「じゃ、オメガって、宇宙人!?」
この世界では、宇宙人も料理して食べるのか。ううん、宇宙人ってどんな味なんだ。
「ただウワサでは、『まぼろしの料理』の食材はオメガさんだって言われてて。それで狩人さんたちはあんなに色めきたっちゃったの」
『まぼろしの料理』の食材!?
しかしオメガは、見るからに強そうだ。今でもハンの手助けなしにはバトルのほとんどに勝てないダイスケには、とうてい無理な話だ。
けど…。
ダイスケが調理したにんじんの煮物を食べ終わると、オメガは店を出た。ダイスケはその後を、こっそりついていった…マナの包丁を握りしめたまま。
『やはり来たか狩人たち』
オメガの前に立ちはだかったのは、さっき店にいた狩人のグループだった。みんなワザものの包丁を手に、じりじりと包囲網をせばめていく。
『わたしとバトルしても無駄だぞ』
狩人たちは、いっせいに襲いかかった。
が、ダイスケがまばたきする間に、狩人たちは全員地面にのびて気絶していた。
…まさか瞬殺?
ダイスケには、何がどうなって狩人たちが負けたのかすら、見えなかった。
『おまえもバトルする気なのか』
瞬間移動したオメガがダイスケの目の前に、いきなり現れる。
「え?あ、いや、ちっ、違います、」
ダイスケはあわてて手にしていた包丁を後ろに隠す。…こんなの相手にバトルなんて、ぼくには絶対無理、無理。
「その、あなたが『まぼろしの料理』の食材だって聞いて…」
『おまえはさっきの店でにんじん料理を作った料理人だな』
「あ、はい」
『あのにんじんの煮物はうまかったから『まぼろしの料理』のコツを教えてやろう』
「えっ!?ほんと!?」
やった、これで帰れる!
『『まぼろしの料理』のコツは素材のとり方だ』
そう言い残すと、オメガはふうっと消えた。
え?それだけ?
それじゃ意味わかんないよ!
とり方って、何か必殺技とか、特別な包丁とか、あるのかな。…今まで聞いたこと、ないけど。
店に戻って、マナやハンに聞いてみよう。
しかし店は、それどころではなかった。
「あれ、どうしたのハン」
ハンが顔色を変えて、店から飛び出て来た。
「マナの母親の具合が悪くなったんだ」ハンは先を急ぐ。「あたしは隣町まで医者を呼びに行って来るから、店を頼む」
マナの母さんが?
そう言えば最近お母さんの食欲がないって、マナ、心配してたな。
最後のお客を見送ると、ダイスケは急いで店を閉め後かたづけをして、店の二階にあるマナの母の病室へかけ上がった。
「だめたよぉママぁ、少しでいいから食べてよぉ」
マナは半分泣きながら、薬をまぜたスープをすくって母の口元へ運ぶ。が、マナの母さんは弱々しい笑みを浮かべるだけで、すぐ目を閉じてしまう。いつになく顔色も悪い。…やばいよ、これ。
そうだ、りんご。
ぼくの母さんは、ぼくが熱を出したとき、りんごをすって食べさせてくれた。マナもよく枕元でりんごを切って、マナの母さんに食べさせてた。
ダイスケは下へ降りると、りんごを探した。が、こういう時に限って店にりんごが、ひとつもない。
そうだ、あの森のりんご。この世界へ来て、初めて食べたやつ。
あれ、ハンの胸みたいにでっかくで…あ、いや、とってもうまかった。
ダイスケは店から駆け出ると、暗くなった道をあの森へ走った。
あまりに急いでいたのでダイスケは、すっかり忘れてしまっていた。「…あっ!」
包丁。包丁、忘れた!
ダイスケはマナの包丁を借りているので、店を閉めて後かたづけする時、包丁もきれいに洗って皿やコップと一緒に食器だなへしまう。毎日のくせでつい、しまったまま出てきてしまった。
けど、森はすぐそこである。ここから店へ戻って包丁を取ってくるには、時間がかかりすぎる。
それに前かまれた時、りんごのモンスターは歯がなかったから、あざにはなったけど大けがはしなかった。いざとなったらかみつかれたまま、店まで戻ればいいし。ちょっと…いや、かなり痛いけど、マナの母さんの為だ。うん。
ダイスケがよしっ、と心を決めてりんごに手をのばすと、その木に実っているたくさんのりんご全てが、ダイスケに向かってぱかっと口を開け、襲いかかった。
ダイスケは、固まった。
夜遅く帰ってきたダイスケを見て、マナは悲鳴をあげた。「どっ、ど〜したのよダイちゃんっっ!」
全身ぼろぼろ血をにじませ青あざだらけになったダイスケが、どうっと床へ倒れこむ。「あの…これ…」息もたえだえだったが、それでも手放さなかった一個のりんごを、マナに差し出す。
「ダイちゃん、まさか包丁もなしでこのりんごを?」
「りんごのモンスターくらいなら、だいじょうぶって思ったんだけど、りんごの木全部のりんごが、襲って来ちゃって…」甘いよなぁ、ぼく。これじゃいくらがんばっても、いい料理人になれやしないし…。『まぼろしの料理』なんて夢のまた夢だ…。
…なさけなくって、涙が出る。
「…ばか。食材とるのに素手なんて、だいだぁい大ばかよっっ!」マナは目をうるうるさせる。
マナに言われるまでもない。ぼくってほんと、ばかだ。
傷とへこみだらけの商品としてはとうてい売り物にならない、見るからにまずそうなダイスケのりんごを、しかしマナは鼻をすすりながら大事にすりおろす。
「ママ、ダイちゃんがとってきてくれたんだから、きっと元気が出るから。食べよう、ねっ」
「少しでも食べてよ、おばさん」
ベッドをのぞき込んだダイスケの悲惨な姿を見て、マナの母はぎょっとした。が、すぐにダイスケの奮闘・苦労を察し、感謝を込めて弱々しくうなずくと、やっとの思いでりんごのすりおろしをひと口、口にした。「…あら?」
マナの母はすっとベットから起きあがると、晴れ晴れしいすっきりとした表情で大きくのびをする。顔色も、すっかり良くなっている。
「元気になったわ、マナ」「…え?」
マナもダイスケも、状況がよく飲み込めない。
「マナ、医者を連れてきた…ぞ?」
大急ぎで医者を引きずってきたハンも、すっかり元気になってベッドの横で体操しているマナの母に、ぽかんとする。
「おかしい。病気が治ってる」
マナの母を診察した医者も、首をひねる。
「みんなにこんなにも心配かけさせて、早く元気になりたいって思ってひと口、ダイちゃんのすりりんごを食べたら、あっという間に元気になったの」
マナのお母さんは、マナをぎゅっと抱きしめる。「ありがとうマナ、ダイちゃん、これからはママがお店、がんばるわ」
何が起こったのかわけがわからなかったマナは、しかしどうやらママが元気になったらしいとわかるとうれしさがこみあげ、ママの胸でしくしくと泣きはじめた。「ママ…ママ…」
『まぼろしの料理』のコツは素材のとり方だ
オメガが言い残した言葉に、ダイスケははっとする。「ああっ!」
まさか…まさか!
ダイスケは、まだ残っていたすりりんごをひとさじ、自分の口に突っ込み、飲み込んだ…「元の世界へ戻りたい!」と強く願いながら。
ダイスケはいつもどおり、自分のベッドで目覚めていた。
あれ?
ということは、今までの『クック』世界の話、夢だったのか。
まぁ、そうだよなぁ。母さんが毎日まずい料理作るからだ。
「ダイスケ〜、早く起きて朝ごはん食べなさ〜い」
「わかってるよぉ」
ダイスケはいつもと同じようにベッドから起き、母さんの作るあまり食べたくない朝ごはんに向かった。
「うちの畑で今朝とってきたばかりのにんじんよ。おいしくゆでておいたから、あつあつのところを早めに召し上がれ☆」
やれやれ。朝ごはんにこんなまるごとのにんじんを出すから、あんな夢を見るんだよ。
それでも腹ぺこなので、ダイスケはしぶしぶ、ゆでにんじんをかじってみた。
軽く「しゃり」という音。その奥からにじみ出る、何とも言えないにんじん独特の甘みと旨み。
「うま…い…?」こんな、馬が食べる様なにんじん料理が?
「でしょ?」母さんは満足げにほほ笑む。「お母さんも『まぼろしの料理』、食べたんですもの☆」
母さんはぼくに、ウインクして見せた。
おわり
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