海の巨人セイウチ

セイウチは巨大な海洋生物だ。 タイヘイヨウセイウチとタイセイヨウセイウチの二種類が存在する。 主に貝を食べるが、補助的にアザラシや魚を食べる。 オットセイやトドと異なり外から耳は見えない。 また、他の鰭脚類と異なり巨大な牙を有する。

(体格等)雄成獣、体重800-1700kg。 メスはオスの長さの約83%で重さの約67%。 完全に成熟するのはメス10-12才、オス15-16才。 大西洋セイウチは太平洋セイウチの長さの約97%で重さは約90%。 首と肩の皮が最も厚い。 群れ内の順位は主に牙や体格の大きさ、個々の攻撃性で決まる。 参照。Francis H. Fayの1985年の論文。

セイウチvsヒグマ(3.2m vs 1.25m)

ヒグマ、肩高約1.25メートル。 体重は恐らく300kgを超えていると思う。 セイウチ、体長約3.2メートル。 上記資料から判断して、体重は一トンを超えていると思う。

ある映像では、海から忍びよったホッキョクグマが岩場を埋め尽くす無数のセイウチに襲い掛かっていた。 ホッキョクグマは全方位からの複数のセイウチの牙による攻撃を難なくかわして子供のセイウチを捕まえていた。 あれを見ると、ヒグマも同様の事が可能だと思う。 即ち、恐らく高い確率で単独のセイウチの攻撃をかわし得るということである。

動画(ホッキョクグマのセイウチ狩り)。 一、3:40から(www.youtube.com)。 二、(www.youtube.com)。

防御力は凄まじいが、セイウチの攻撃(命中精度、機動性等々)それ自体は大した事がないと思う。 勿論、クマが油断したり、余程の無茶をするなどしたら話は別だろうが。 なお言うまでもないが、これはあくまでも陸上での話で、逆に水中では如何なる陸上の肉食獣も成獣のセイウチには勝てないと思う。

セイウチvsライオン(3.2m vs 1.0m)

平凡な雄のライオンと雄の成獣のセイウチとの比較。 両者の平均体重の差は5倍から6倍になるかもしれない。 両者の生息域は完全に異なる。 ゆえに両者が野生状態で遭遇する事はない。

セイウチvsトラ(3.2m vs 1.0m)

平均的なセイウチと平均的なトラを対比させた。 約200kg対約1000kgぐらいか。 仮にセイウチとトラが遭遇したら上の画像のような感じかもしれない。 完全な陸上での戦いではトラが有利だと思う。 陸上ではセイウチの能力が制限されるのに対してトラは100%の力を発揮できるからだ。 逆に、水中ではセイウチが圧勝するだろう。 陸上での戦いと異なり、両者の立場が完全に逆転するからだ。 常識的に考えて、水辺では引き分けではないか。 セイウチは数mも移動すれば海に入れる。 その僅かの間に、トラにセイウチが仕留められるだろうか。

セイウチとホッキョクグマ

ちなみに、ある研究エリア内におけるホッキョクグマとセイウチの関係(1981-1989)を専門家らが検証した論文がある。 科学者らは10頭のセイウチがホッキョクグマによって負傷、あるいは殺された事を示す証拠を発見している。 論文の要点を幾つか抜粋すると以下の通りである。
参照(Calvert_Stirling_8.pdf)。

一、Most authors suggest polar bears prey on young walruses only (Loughrey 1959, Fay 1985). This results, at least in part, from the perception that polar bears can not kill large walruses, or do so only with great difficulty. This impression is reinforced by anecdotal suggestions that a large walrus may occasionally kill an attacking polar bear (Freuchen 1935, Kiliaan and Stirling 1978).

二、(1)The 2 adult male walruses observed being dragged from the water (Fig. 1, site 2; K. Frost, pers. commun.) were both killed by single large, probably male, polar bears. (2)The data also suggest that subadult walruses are most vulnerable, but that large male bears are capable of also killing adult male walruses.

三、Although walruses may not be killed frequently, the energetic return to a bear from killing one might justify the amount of time spent unsuccessfully investigating and stalking hauled-out animals.

四、Although encounter and predation rates likely vary among different habitats, we suggest that polar bears are important predators of walruses in our study area.

(要約)一、ホッキョクグマは若いセイウチのみを捕食すると殆どの著者は述べている。 この様な考えは、部分的には、ホッキョクグマは大きなセイウチを殺せないか殺せるとしても相当な困難が伴うとする思いから生じている。 また、その様な印象は大きなセイウチが時々攻撃を仕掛けたホッキョクグマを殺すかもしれないという確証のない話によって更に強くなっている。

二、しかしながら、今回の研究では、大きな雄のホッキョクグマが実際に雄成獣のセイウチを殺すことがわかった。

三、セイウチは頻繁には殺されないかもしれない。 だが、セイウチを殺す事によって得られる利益はセイウチを狩るのに費やされた無駄な時間をも帳消しにし得る。

四、恐らく、遭遇及び捕食率は環境によって変わるが、研究エリアにおいてはホッキョクグマはセイウチの重要な捕食者であった。

具体例(雄成獣のセイウチに対する捕食)

上記研究において、ホッキョクグマが雄成獣のセイウチを水中から引き上げている事例が二例確認されている。 これら二頭の雄成獣のセイウチは、単独の大きなホッキョクグマによって殺されたものであった。 他にも、ホッキョクグマに殺されたと思われる雄成獣のセイウチの死骸が見つかっている(科学者が認定したもの)。 以下に該当箇所を引用する。

雄成獣のセイウチに対する捕食例(1981-1989)。
一、The date of death is known only for the kill at site 2 where the bear was observed killing a large adult male walrus and pulling it from its haulout hole (D. Grant, pers. commun.).

二、K. Frost (pers. commun.) observed a large male polar bear dragging a medium-sized adult male walrus, with approximately 25 cm tusks, out of the water at the edge of a floe. The walrus was bleeding profusely, indicating it had just been killed.

三、There was blood soaked into the snow beneath the head of the adult male found dead in February 1987 at the shoreline tidal cracks below our camp (site 11), suggesting that a bear killed him, though possibly only after the ice shifted and he was frozen out.

(要約)一、ホッキョクグマが大きな雄成獣のセイウチを殺して穴から引き上げていた。 二、また、氷盤の端で大きなホッキョクグマが中型の雄成獣のセイウチを水中から引き上げているのが目撃された。 セイウチは大量に出血しており、これはクマがセイウチを殺した事を意味していた。 三、発見された雄成獣のセイウチの死骸の頭の下には雪の中にまで染みこんだ血があった。 状況証拠から、科学者らはクマがセイウチを殺したのだろうと考えた。

具体例(負傷させられたセイウチ)

その他、捕食に至らなかったがホッキョクグマがセイウチを負傷させたと考え得る具体的な描写が幾つかある。 その中から一例を以下に引用する。

ホッキョクグマがセイウチを負傷させたと思われる例。
There was blood sprayed on the snow at 3 separate breathing holes around the edge of the floe in a pattern that probably resulted from the blood being mixed with expired air from the nostrils. We suspect the bear had time to hit the walrus on the head with a paw, or bite it on the face or nose, before the walrus escaped into the water.

(要約)雪の上に恐らくセイウチの鼻腔から噴出したと思われる血が飛び散っていた。 科学者らは、セイウチが水中に逃げる前にホッキョクグマがセイウチの頭を殴ったか顔か鼻を噛んだのだろうと考えた。

注)セイウチがホッキョクグマに襲われる危険性は生息地の環境によって異なり得ると科学者らは述べている。 研究エリアのセイウチは、逃げる時に利用する氷上の穴が凍結し易いなどの幾つかの理由から他の地域よりも攻撃、捕食され易くなっているのかもしれないと科学者らは考えている。

320 cm vs. 130 cm average pb

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参照資料集

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