003 医師へ診断書を頼むとき その1                    2005.11.01 掲載  

0000 はじめに   001 「障害」とは何か  002 障害認定基準と診断書
 003 診断書の頼み方  004 診断書の頼み方  005 申立書のポイント
 006 制度を活用しよう  007 いつ請求するの?  008 決定に不服のとき


第3回 医師へ診断書を頼むとき、こういうふうに言おう!その1

わかりやすく説明するために、正確な法令・医学用語を使っていない箇所があるので注意してください。また、ここでは、特にパーキンソン病の方を念頭においているため、障害年金についての一般的な説明は厚生労働省や社会保険庁のサイトなどをご覧ください。

Q:今回は診断書を書いてもらう場合の注意すべき点などを取り上げるんですよね。やっと具体的になってきました。

A:そうなんですが、また少し回り道をすることにします。というのは、最近APPLEやその他の機会に質問をいただくと、「あれっ?」と思うことがあるからです。どうしてそう思うかというと、”医師との信頼関係があるのか”心配なケースや、ご本人が”必要以上にへりくだって遠慮している”ケースが見受けられるからなのです。

私は障害年金の請求手続をしていて、請求する方の手を引っ張って、障害物競走をしている気持ちになります。どういう障害があると感じるかその例を下に示します。
 1.ご本人の意識
   ・老齢年金をもらえない人がいるのに、私が障害年金をもらっても良いのだろうか。
    (ベーチェット病でほぼ両眼とも失明している方の言葉)
   ・保険料を払っていなかった時期があるのに良いのかしら?
    (障害のもととなった病気で失業していた時期に滞納した。)
   ・年金の診断書を医師に依頼するのに、忙しそうだから書いてもらえないのではと
    思い込む。
 2.ご家族・親戚の思い
   ・障害年金をもらっている人が近くにいるのは恥ずかしい。
    (そういう人に限って資金援助はしてくれません。)
 3.医師の勝手な思い込み等
   ・寝たきりでないと1級はもらえないよ。
   ・年金の保険料払っていないからもらえないよ。(20歳前に発病した方に対して)
   ・年金の診断書を書くのは初めてで、よくわからないのに作成してしまう。

まだまだあるのですが、制度や法律を理解していれば、こういう誤解はなくなります。

そこで今回は、障害年金を請求する方の権利と医師の義務についてお話ししたいと思います。

Q:今、話してくださったこと思い当たります。私たち障害年金をもらうのが申し訳ないことだと思わされてるのかもしれません。日本的考え方かしら。
裁定請求の書類を市役所や社会保険事務所にもらいに行くと、なんだかずうずうしいことをしているような気にさせられる。これって被害妄想でしょうか。
法律や制度がきちんとあるのだから当然のことだと確信しました。

A:まず年金を請求する人の権利についておおまかにお話しします。

国民年金法は昭和34年に施行されましたが、昭和61年に大改正がありました。その際に、
国民年金(基礎年金)を1階部分とした、全国民に共通した3階建ての体系となりました。
(厚生労働省のHPで詳述されています。)つまり、日本国民である限り、みんな国民年金法に規定されている通りに、保険料を支払い、保険給付を受けるのです。そして障害の状態にある方について、障害年金をもらえるということは第1回でお話しした通りです。

実際には、保険料を支払っていたか、サラリーマンの妻だったか等により、保険料の支払い方は違いますし、生年月日などにより保険給付の受け方等も異なりますが、ここでは現在の年金の考え方を理解していただくことだけを目指して、説明します。

国民年金法は第一条で「日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き」として、国民年金制度の目的を示しています。

日本国憲法第二十五条では第一項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、第二項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、規定しています。

私達には健康で文化的な最低限度の生活を営む権利があり、年をとって収入がなくなったりしたとき・障害の状態になったとき・働き手が死亡したときにあっても、健康で文化的な最低限度の生活を営むために、それぞれ老齢年金・障害年金・遺族年金があるのです。飛躍するようですが、これは憲法で保障された私達の権利なのです。

だから周囲の人や医師に対して、障害年金をもらうことを遠慮する必要は全くありません。
20歳前に障害の状態になったとしても、国民年金法第三十条の四で、保険料を支払っていなくても20歳になると障害年金をもらえることが規定されています。

私のところに障害年金の請求手続を依頼なさる方は、みなさん「障害年金をもらう権利がある」と、はっきりとした意識をお持ちです。色々と悩まれ、葛藤もあったはずですが、それらを乗り越えないといけない切迫した事情があったのだと思います。でも、一旦決断されると、その後にやるべきことは明らかなので、時間はかかるものの前進することができます。

社会保障制度全般について言えるのですが、元々は困ったときの助け合いの制度だったはずです。助けてもらわないといけなくなったときには、法令に従って、清々と手続を進める以外にありません。それまでに色々な形で社会に貢献してきており、(子どもであったとしても、子どもは周囲を明るくしてくれ、希望を感じさせる存在で、十分貢献していると私は思います)、保険料を支払っている方も多いのですから、気後れする必要はありません。

Q:私の場合は20歳前の発症による障害で、その時点では保険料は払っていなかったけれど、その後30年間保険料を払い続けていたので頭では当然権利があると思っていました。それでも少し後ろめたい思いがあった。
本来は、障害年金は保険料を払わない無拠出の年金であるべきじゃないかという気もします。そうすれば学生その他の無年金障害者も出ないし、障害厚生年金と障害基礎年金の両方を受け取る人と基礎年金だけの人の不公平もなくなるのではないか。
脱線しました。

A: 次に障害年金の請求に必要な診断書を書いてもらう場合の、医師の義務についてお話しします。

「医師は診断書の交付の請求があった場合には正当の事由がなければこれを拒んではならない」と、医師法第十九条第二項に規定されています。また、「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と、第二十四条第一項で規定されています。

また、日本医師会が2002(平成14)年に「医の倫理綱領」を以下の通り制定しています。
医学および医療は、病める人の治療はもとより、人びとの健康の維持もしくは増進を図るもので、医師は責任の重大性を認識し、人類愛を基にすべての人に奉仕するものである。
1 医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす。
2 医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける。
3 医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める。
4 医師は互いに尊敬し、医療関係者と協力して医療に尽くす。
5 医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守および法秩序の形成に努める。
6 医師は医業にあたって営利を目的としない。

以上のことから、年金の診断書(以下、診断書)を書くのは医師の業務の一つで義務であり、請求する方はそれについて通常5,000円前後の料金を支払います。診断書の記載内容は診療録(カルテ)に忠実に書いてもらいますが、そもそも診断書の交付を請求された場合は、正当な事由がない限り、拒むことはできません。例えば5年の保存年限を過ぎていて療録が廃棄されている場合は、診断書を交付してもらうことはできません。

一方、医師、特に神経内科の医師は、大学病院や大病院で診療している場合は特に、忙しく無愛想にみえ、診断書を依頼しにくいと感じる方も多いようです。

医師が忙しそうなのは、診療時間に制約が設けられていることが多いからで、最近は採算管理の面からも患者1人につき何分と決められているところもあります。たとえ医師がもっと診察に時間を割きたいと個人的に思ってもそれは許されず、自分の時間を犠牲にしたりする医師もいます。一般論については教室形式にして患者さんを集めて話す等の工夫をしている医師もいます。

短時間で医師と意思疎通を図るのは難しいことですが、良い関係を築くために患者さんも工夫した方が得ではないかと、私は考えます。例えば初期の頃なら、自分の症状をメモ書きにして持参するのも有効でしょう。私は実践しています。大体カルテに糊付けされ、
問診の記録として残ります。

診断書を依頼するとき、医師に対し社会保険労務士がする論理的な説明は効果があると思いますが、請求する方の心に訴えるような説明もとても大切です。自分が困っていることを誠実に淡々と話すことが必要です。例えば会社から暗に退職勧奨されたが、次の仕事に就くのには時間もかかるし困難だと思うから、ここで障害年金を請求したいとか、薬効の低い時間が相当長くなってきて日常生活にかなり介助を必要とするようになってきたから障害年金の等級を上げるのに診断書を書いて欲しいと、明確に話すことです。話せないなら手紙にします。

社会保障制度についての理解度は医師により異なります。医師から障害年金の請求を勧められた方がいる一方、診断書を依頼しても「これは何?」という反応の医師もいます。後者の医師に対しては、例えば社会保険事務所にある障害年金のパンフをつけるのも一つの方法です。

どうしてここまで患者がしないといけないのだろうと思う方もいらっしゃると思います。障害年金は例えば20歳前の障害で20歳から2級で受給するなら、今の金額で平均寿命まで生きるとすると、男性で4600万円、女性で5100万円もらうことが可能です。何回か手続のために苦労しなければならないのですが、障害年金をもらった方がもらわないより、経済的に本人も家族も少しでも楽になることは間違いありません。

「障害年金をもらおう!」と、思って頂けたでしょうか。次回は診断書の重要な項目について、依頼するときに留意していただきたいことをご紹介いたします。


Q:佐々木さんのお話を伺って、堂々と障害年金を請求していいのだと改めて思います。だけど担当窓口の姿勢というか社会保険庁の方針は、ひとりでも裁定請求する人を減らそう、あるいは受給できる人を減らそうとしていると感じます。
これは法の精神として矛盾しています。
それから年月が経ってから裁定請求をする場合、5年分しか遡れない、それも障害認定日のカルテがなかったら遡れないというのはちょっとひどいんじゃないかと思うのですが…
A: おっしゃるとおりですが、現行の医師法ではどうしようもありません。たまにですが診療録を廃棄していない病院もあるので、必ず確認はしてください。
障害年金に関する法律については、実際にもらえるかどうか、個人の問題になった場合には、必ずしも理想論どおりに行かないケースもあります。
おかしいと思われる点については、何らかの形で声を上げていかないと、事態は好転しないと思います。みなで力を合わせられたらいいですね。

佐々木久美子社会保険労務士 / ファイル作成 Almond



ホームへ戻る



1