2004.04.15 update

011 我が入院の記 2
by ゆうこ
(入院中のゆうこさんの投稿第2弾。)

治験と新薬

パーキンソン病になって 9年目。

ウェアリングオフ現象や日内変動がかなりひどくなってきた。薬あわせの目的で、 1月末ここK病院に入院した。

それから 2ヵ月半、私がいる710号室はいろいろな人が入っては退院していった。次々と(入院する)人が変わっていくなかで未だに変わらないのは、私を含めてパーキンソン病の3人である。

入院前の話では、大体 1ヶ月くらいの予定であった。しかし治験をすることになったため、当初の予定が大幅に延びた。

主治医のY先生が「現在の私の状況はかなり厳しい。選択肢は少ない。今、外国で使われている薬で日本で治験中というEP薬の治験を受けて、EP薬の実薬をのめるようにするのが、今のところベターではないかと思う」と言われた。

治験を受けるとなると最短でも 10週間(約2ヵ月半)かかる。観察期間が最低1週間それで適格性ありと認められれば、8週間治験薬をのむ。(治験薬は0、100、200mgと3つある。どれがあたるかはドクターも知らされていない。)

それが終わり、続けて薬をのみたいと希望すれば継続投与移行期が最低 1週間ある。それが終わるとやっと実薬がのめるようになる。

かなり迷ったが臨床経験豊富な Y先生がそう言われるのだから、今の私にとってそれが一番よいのだろうと思った。

2月10日EP薬の治験同意書にサインをした。

1週間の観察期間を経て適格性ありと認められ、いよいよ2月20日からEP薬の服用が始まった。この治験薬は1回2錠をLドーパ剤(私の場合メネシット)と一緒に服用する。

私はそのときメネシット 100mgを1日6回、3時間ごとにのんでいたので、EP錠を一日12錠(2錠×6回)服用することになる。期待する気持ちは強かったが、1日12錠服用すると聞き不安になった。もし200rにあたったら1日総服用量は200r×12錠で2400rになる。

副作用が比較的穏やかだとはいっても 2400rものんで大丈夫だろうか。しかし、ここまできて中途半端のまま帰るわけにはいかない。

悪い方ばかり考えてしまうが、よくなるかもしれないのである。こうなれば、やれるところまでやるのみと決心した。

 

EP薬をのみ始めて1週間経ったが薬効持続時間は延びない。

2週間目にはいると 副作用と思われるような症状が出てきた。それがだんだんひどくなっていき、4週間を過ぎた頃には、朝は自分で起きることが出来なくなった。介助してもらって起こしてもらい、薬(Lドーパ)をのんで30分ほど経ってようやく動けるようになる。(薬も自分で取り出すことが出来ない、呑み込みもなかなか出来なくなっていた。)

Y先生は「止めるのは自由だから、いつでも言ってください」と言われる。

継続か、中止か?同じところを堂々めぐりしていた。せっかく折り返し点まで頑張ったのである。ここで止めれば今までの頑張りは無駄になる。

しかし胸は痛い、背部痛、頻呼吸、嚥下困難、声が低くなった。

それに加えてパーキンソン症状全般の悪化、特に姿勢障害(座位が保持できない)がひどくなっていた。

胸痛に対して、心電図、心エコー、24時間記録できるホルダー心電図まで装着して調べてもらった。だがなんの異常もない。2週目ごとに行われる尿、血液検査も異常なしであった。

だが現実にパーキンソン症状は悪化している。なによりショックだったのは声が低い音しか出なくなったことであった。

病が病だけに進行するにつれて、出来ないことが増えていく。字(手紙)を書くことができにくくなった。ミミズがはったような小さな字しか書けない。趣味のピアノも弾けない。テニスも出来ない、映画館へも一人では行けない。(洋画を観るのは学生時代から楽しみの一つであった。)声は少し小さくなっていたが、歌うことは出来ていた。(歌うことも好きであった。)それもできにくくなったのである。これではなんの楽しみもなくなる。左手で打っていたパソコンも出来なくなるのではと思うと、パニックに陥りそうになった。

すぐさま治験中止を申し出た。治験薬服用を始めてから35日目であった。期待していた分、失望感に襲われた。H先生に治験リタイアしたとメールした。折り返し「リタイアなどと言わないで、新しい選択をしたと前向きに考えてください」とメールをいただいた。主治医であるY先生も「気にしないように」と言われた。その言葉を聞き、気持ちがとても軽くなった。

 

それから1日2錠ずつ治験薬を減らしていった。そして3月末から新薬の服用が始まった。この頃には胸痛もかなり楽になり、座位の保持もできるようになったが、低くなってしまった声は未だに戻らない。(治験のコーディネータの薬剤師さんはEP薬で声が低くなったという報告は今のところないと言われた。)

日中、売店で買ってきたものをゴソゴソいわせながら深夜に食べていた(肝臓治療をしていた)Nさんは、とうとう看護師詰め所に一番近い部屋に移された。身体(肝臓)によくないと言われているものでも、好きなものは買わずにはいられないらしい。いくら看護師さんが注意しても止めようとはしなかった。これでは穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものである。真相はわからないので私自身の勝手な推測だが、Nさんが本気になって真剣に治療に専念すれば、かなりよくなるような気がしてならない。

難治性疾患の私からみれば、もったいないというかNさんがうらやましい。パーキンソン病は未だに確たる治療法もなく原因もわからない進行性の病気である。それを考えると「Nさん、頑張って、治療に取り組んで!!元気になって!!」と言いたくなる。(Nさんの病気に関しては、あくまでも私の勝手な推測であることをお断りしておきます。)

 

パーキンソン病は症状も進行の度合いも一人一人異なる、同じ病名がついているのに人によってこれほど症状などが違う病も珍しいのではないか。(私が知らないだけでもっとあるかもしれない。)

薬の調整は医師の経験による部分が大きいような気がする。私の主治医であるY先生は「やってみなければわからない」と言われる。現段階ではそれが正直なところかもしれないと思う。

新薬をのみだしてから10日余り、朝は何とか自分で起き上がることが出来るようになった。普段なにげなくしている動作の一つ一つがこんなに大変だと感じたことはなかった。座っていても支えてもらわないと身体が横に傾く、後ろにも倒れそうになる。2度ほど後ろに倒れたことがある。起き上がろうともがくが、どうしても起き上がれない。仰向けにひっくり返って手足をバタバタさせている亀と同じである。「もがいてもどうにもならん」と思いながら、もがいていた。

 

新薬はよい予感を感じさせてくれる。しかしのみ始めたばかりである。副作用など何が起こるかわからない。一人一人体質も違う。慎重にみていかなければならないと思う。よくなるのはうれしいが、根本的な治療薬(法)が出来て、今苦しんでいる人たちが共に苦しさや辛さから解放されたとき、一緒に喜びを分かち合いたい。そのような日がそう遠くない将来に必ず来ると信じている。

H先生は「共に頑張りましょう。決してあきらめないでください」といつも言われる。

                  Never give up!!                   2004.4.10                 by ゆうこ



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