2008.11.23作成

女性とパーキンソン病

Contents ■女性に与える影響    セックス    妊娠と授乳  ■生理と更年期


パーキンソン病が女性に与える影響

 パーキンソン病はひとりひとりに違う影響を与えるが、女性には生活面で特によく考えなければならないことがたくさんある。 すなわち

  • セックス
  • 妊娠と授乳
  • 生理と更年期
 パーキンソン病患者のほぼ半数が女性(男性の発症率が僅かに高い)にもかかわらず女性患者だけが経験するかもしれない問題の調査研究は実に少ししかなされてこなかった。実際、殆どの情報が臨床研究に基づく情報というより、どちらかといえば困ったことを患者同士が話し合うことから出てきたケース・スタディだといえる。

しかし女性患者全てがこういう問題に直面するわけではないので、この記事の全体はおそらく女性の経験を広く代表するものではない。 



セックス Intimacy and Sexuality
 

 愛情を共にし受け入れることは親しい関係を保つのに大切なことで、”生活の質”全体にかなり影響するだろう。寄り添い、手を握ることから性交へと範囲が広がっていく。パーキンソン病と診断されると自分が今までとは違って感じられて、おそらくセックスが心地よくなくなり、そのせいでバランスと調和の取れた関係がめちゃくちゃになってしまうかもしれない。もはや魅力を感じなくなり、性的行為をする気持ちがなくなったという人もいる。 

大切なのは、気がかりなことをパートナーと話し合う、心配や問題となることをできる限りオープンに話すことで、これを軽く考えることはできない。自分が感じていることをお互いに話しあう時間を持つようにしよう。そして相手の言うことによく耳を傾け、相手の立場に立って考えを理解しよう。恐れや不安を隠していると恨みや葛藤の原因になる。だが、コミュニケーションがよく取れていると、そういう障壁はできず結びつきは強くなり、一緒に解決法を見つけようという気持ちになる。もっと援助が必要な場合は、カウンセラーとか理学療法士・心理療法士(セラピスト)、セックス・セラピストのような熟練した専門家にアドヴァイスしてもらうことができる。→「支援してくれる人」参照。

さもなければ、殆どの国にサポート組織があるのでそこで助言してもらおう。 
 

性的欲求 

 長期間にわたる病気をかかえていると、性的欲求すなわちリビドーが減退することがあり、欲求の程度は日によって、あるいは薬の服用によってさえ違ってくることがある。いつも同じやり方では性的欲求が低下しがちである。セックスに関心が薄れたら行動パターンを変えるとよい。そうすることで二人の関係は活性化し、セックス・ライフに新たな活力を与えることになる。 
 

自発性 Spontaneity

 性的行為には薬が効いている必要があるので、気持ちの赴くままにいかないこともあるだろう。だが、薬がよく効いている時間にセックスするよう前もって計画するのはちっとも悪いことではない。意欲を失わないで、あなたが必要なことやできることにあわせるように努めよう。
 

性的興奮とオーガズム Arousal and Orgasm  

 パーキンソン病は時には、性的興奮の程度やオーガズムに響くことがある。これは苛立たしいことだが全くノーマルなことなので落胆しないようにしよう。オーガズムは得られるが、小さなピークが何回かあり、ふつう徐々に消えていくのだが、突然終わる傾向がある。

性機能や性的関心に影響を与える薬がある、例えばドーパミン・アゴニストは性欲過剰(性欲が増す)を招いて二人の関係を緊張させることがある。

衝動調節障害(impulse control disorder)には性欲過剰も含まれるが、女性より男性に多く見られる。だが、こういう問題が潜在的にあることを知っていて性的になにか重要な変化がないか観察することで、主治医とそのことを話し合い、状態に合うように薬剤の服用量とタイプを変更できるようになる。

「性機能障害」の項を参照 
 
 

動きやすさ  Mobility

 一般的に動きにくくなるとベッドルームでの動きやすさにも当然影響することになる。それが問題ならPT(理学療法士)に話せば役に立つ方法を提案してくれるだろう。振るえ、固縮、疲労感のような症状があるとセックスがしにくくなるので、その場合は主治医と相談して薬を調整して症状をうまくコントロールしよう。 

激しい運動をしたときのように、エネルギッシュに性的行為をするとPDの症状が悪くなるとか薬が早く切れるとか気にする患者もいるし、振るえがひどくなると言う患者もいる。だが、身体活動は殆どの場合、常にいい結果を生み、積極的に気晴らしして日常の問題を忘れることもいい。 
 
 

「うつ」と不安 

 パーキンソン病は「うつ」と不安とを引き起こし、二人の性的関係に内在する気がかりを絶えず深刻にする原因になることがある。もし「うつ」や不安になっていると感じるなら主治医に話し、抗うつ剤を慎重に選ぶことで薬がよく効き問題が解消することがある。健康にいい食事をして活動的であれば、一般的健康(well-being)は改善し”生活の質”を高めることができる。 

 35歳から59歳までの女性患者グループを研究したところ、彼女たちが身体や性的イメージについて不安をいっぱい抱えていることが明らかになった。そんな問題は医師やナースから述べられることは滅多にないので、あなたがそう感じることがあり医師がそれを真面目に考えそうもないと思うなら、あなたのパートナーやセックス・セラピストあるいはカウンセラーと話し合わなくてはならない。 

 大切なことは、触ったりキスしたり抱き合ったりお互いにマッサージするような行為が性交と同じように快く、親密な関係はすばらしいと感じることなのだ。

 親密な瞬間を無理やりエロティクでセクシャルな行動に変えようとしなくていい。性的にできないことは気にせずに、やさしさに満ちた瞬間をのびのびと楽しむことができるなら。パートナーと愛情あふれたふれあいを交わすことができれば、あとであなたの性機能をもっと高めることになる。過去の思い出を語ることも役に立つし、ロマンティックなときを思い出すこともお互いへの愛情を再燃させ、しばらくの間でも日常の生活から離れることができる。そして、もう歳だからセックスや正常な性的関係がなくていいとは絶対に思わないで。 
 

知っていますか?

ストレスがあるときは、笑うこと。笑うことがストレス・ホルモンのレベルを下げ、同時に免疫システムを強くする。


妊娠と授乳                                  2008.11.23 作成

 
 パーキンソン病の女性患者で妊娠するのはほんの僅かしかいない。おそらく、ほとんどの患者が人生後半で発病するからなのだが、エビデンスが非常に限られていて、知りたいことはたくさんあるのに回答が得られないままである。妊娠はストレスはかかるだろうけどパーキンソン病患者の妊娠はおおむね結果的に成功している。



薬の使用と影響

 妊娠期間中に服用する抗パーキンソン薬が安全かどうかについて十分なエクスペリエンス(経験)がないので信頼できるような結論は得られない。できれば妊娠する前か妊娠を知ったらすぐに、あるいは授乳を計画しているなら、いつものように薬のことを主治医と話し合って薬の処方を必要に応じて変えることになる。

・Lドーパ製剤―妊娠中に服用した例は少ないが、現在、妊娠中にひどい症状を抑えるのに望ましく推奨できる薬である。
 
・ドーパミン・アゴ二スト―妊娠中に服用した例は少ないが処方はしてもらえる。

・FP(セレギリン)・ラサジリン―現在エビデンスが不十分なため安全性は不明。

・コムタン―今のところエビデンスが不十分なため安全性は不明。

・シンメトレル(他の出て間もない薬も)―妊娠中は服用してはいけない。動物の研究例ではシンメトレルが有毒あるいは催奇性があり、胎児の成長や発育を妨げる可能性があることがわかっている。

 どんな理由があろうと薬の服用量を減らせばパーキンソン病の症状は改善されにくくなるだろう。ホルモンの変化と妊娠につきもののストレスが一緒になって症状を悪くすることもある。こういう状況のときはさらに薬を追加するより、ストレスをコントロールするほうがいい。



胎児の発育

 上記で述べたようにシンメトレルは胎児の発育にマイナスの影響を与える可能性があるので、妊娠中は避けなければならない。ほかの薬については、今のところエクスペリエンスがあまりにも少なくて間違いのない結論を得ることはできない。



運動症状

 患者の中には妊娠期間中、運動症状とりわけ振るえがひどくなったようにみえることがあるが、常に起こることではなく、症状が突然進行したのでも増悪したのでもない。繰り返して言うが人によって違うので一般的なルールというものはない。



授乳
 
 パーキンソン病の薬をのみながら授乳するのが安全かどうかは、残念ながら今のところエビデンスが充分でなくてなんとも言えない。 

・LドーパとMAO-B阻害薬(FP、ラサジリン)が母乳中に移行するかどうか、もし移行するならそれがこどもにどんな影響を与えるかはわかっていない。

・ドーパミン・アゴニスト(レキップ、ビシフロール、ロチゴチンなど)は母乳がつくられるのを妨げることがあるが母乳自体に移行するかどうか、移行するならこどもにどんな影響があるかは‌わかっていない。

・シンメトレルおよびコムタン(エンタカポン)、トルカポンは母乳中に移行するがこどもへの影響はまだわからない。授乳期間は服用を避けなければならない。

・ナウゼリン(ほかの薬でおきる吐き気を抑えるのに使われる)は母乳を増やすが母乳のなかに分泌されるので注意しなければならない。


 パーキンソン病の薬を服用していて授乳しようと思うときは、主治医にアドバイスを求めよう。

 
【参考情報】
上記文中印についてEPDA(最終ページ参照)外の情報
  • Lドーパならびにドーパミン・アゴニストは動物実験で催奇形作用や
    母乳中への移行が認められている。
  • ペルマックスについては、外国でペルマックスの投与を受けた女性が妊娠し、33妊娠例で健児を出産、
    6妊娠例で先天異常(重度3例、軽度3例)が認められている。

 
                                        
                                               
生理と更年期                                 2008.11.24 作成


 生理と更年期は全女性にとって厄介な問題になりうるが、パーキンソン病の女性患者となると更に大変かもしれない。残念なことにこれまではこの問題領域が殆ど認識されてこなかったのだが、今やっとこの重要なテーマが注目されてきていて治療法を検討する調査研究が行われている。


生理

 今まで言われてきたことだが、更年期を迎える前の女性患者12人中11人という多数が、生理が始まる前の2~3日間および生理期間中に症状が悪くなり(ことに振るえ、不随意運動、固縮)薬が効きにくくなるという経験をしている。
 月経前症候群 PMS=Premenstrual Syndrome

月経前症候群の治療をするのが最初の1歩で、神経内科医と話し合い、この期間薬を追加するといい場合もある。

 さらにリサーチの結果、多くの女性患者がパーキンソン病発症後に生理について苦にしていること―ことに出血量が増えたり痛みを伴うなど―が増えるのが明らかになってきた。女性患者たちはまた、身体イメージが変わったことへの不安を口にしている。体型が魅力的でなくなったと感じたり、症状にあわせて着るもののスタイルを変えた患者もいる。

 症状をうまくコントロールできないとタンポンのような衛生用品を使うのは特に難しくなる。時間を計って薬が効いているオンのときにそれらを取り替えるといい。

 生理異常が深刻なときにDanazol のような排卵抑制剤が使われることがあるが、発汗やパーキンソン病の症状が悪化するという副作用が起きることがある。

 薬はいつも効果があるわけではないので、問題が深刻なら次のような選択肢がある。

・ホルモン療法― 排卵を抑制するためにエストロゲンとプロゲステロンを組み合わせて使う
・手術―子宮内膜除去あるいは子宮摘出も含む手術
・卵巣の放射線療法―で閉経を早める

 
 こういう療法はすべて、更年期のほてりのような副作用があるが、女性はみなそれぞれ違って、一人にうまくいくことが他の人にはうまくいったりいかなかったりする。



更年期

 更年期になると全ての女性の性的欲望と性機能が変化する。こうした変化はパーキンソン病と診断される頃に非常によく起きる。発汗のような更年期の症状でパーキンソン病の症状が悪くなる患者は婦人科医、あるいは女性の健康の専門家が必要になるだろう。また更年期の症状とパーキンソン病の症状は混同されやすく疲労感、うつ、多汗などは更年期でもパーキンソン病でも起こることがある。

 生理に問題があるときホルモン補充療法(HRT)が有効な場合がある。婦人科医あるいは女性の健康の専門家とあなたの神経内科専門医の連携を確実にすれば、更年期とパーキンソン病の両方に効果がある治療がなされるだろう。


 膣が乾くのは更年期によく見られることだが、医師に頼んで膣HRTを処方してもらおう、これはふつうの潤滑剤より役に立つかもしれない。



知っていますか?

 分析研究によると、更年期が始まる平均年齢は、50歳から52歳の間だという。歴史を通してこの年齢は殆ど変わらない。最初に更年期の年齢に触れたのはギリシャ人で、年齢は人種によって僅かに異なるが社会的地位や食生活とは関わりがない。


出典 EPDA Rewrite Tomorrow  "Women & Parkinson's"
http://www.rewritetomorrow.eu.com/en/dailyLiving/women_Parkinsons/

Translated by あーもんど

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