2004.08.20up

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 パーキンソン病におけるうつ
National Parkinson Foundationより


結論

ある特定期間にはPD患者の約20〜40%、一生のうちでは患者の
40%〜90%が重いうつになる。これは一般のうつの生涯発症率の
数倍になる。

PD患者はまた障害が同じ程度のほかの慢性病の患者よりもうつに
なる率が高い。

うつはPDのQOLを低下させ、治療に対して消極的な態度をとったり
異常行動や思考力低下などに影響を及ぼす。

うつは部分的にはPDであることに対する反応としておきるが、ドーパ
ミンの欠乏によって固縮・動作緩慢・ふるえがおこるのと同じように、
主として脳内化学物質の欠乏によってうつがおきるのである。

PDのうつに伴って無気力症、不安症、アネルジア、無快感症、性欲
減退やその他の行動変化といった症状が現れる。

これらの症状はそれだけでも悪化していき、うつとは別個に起きるか
もしれないがうつの症状があるともっと起きやすく悪化しやすい。

PDにおけるうつの診断と治療はPDの診断と治療と同じくらい重要で
ある。

しかしながらPDにおけるうつの診断は、PDの症状とうつの症状が重
なっているため難しい。

患者・配偶者・介護者にアンケートに答えてもらい、うつアンケート不安のアンケート行動アンケートを使うことが役に立つ。



1.はじめに

パーキンソン病は通常、65歳以上の人の2%近くがかかり、脳の黒質と呼ばれる領域にあるドーパミン神経細胞が失われて固縮、ふるえ、動作緩慢などの身体症状が出る病気。黒質内のドーパミン細胞が失われるだけでなく、脳のほかの領域のドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン細胞も失われる。うつや不安症のような症状が身体症状に伴ってよく起きるのは、こういう領域での損失が原因かもしれない。

うつや不安症はパーキンソン病患者に身体症状と同じくらいの影響がある。

2.パーキンソン病におけるうつの頻度

特定の期間にパーキンソン病患者がうつになる率は平均40%で、一生のうちでうつになる割合は、一般人(16%)の数倍になる。

3.どのようにしてうつ状態であることがわかるか?

うつ状態の患者の半数は基準を満たすほどのうつであり、残りの半数が軽いうつである。

A.うつを診断するときの落とし穴
PD患者がうつかどうかの診断が難しくなるのは、PDじゃない人と比べ表れ方が違うことと、うつの症状とPDの症状が重なっていることによる。

PDではないうつ患者は、ゆっくりした動き、表情のない顔、力のない声のせいでPDに見えることがあるが、逆にうつではないPD患者は同様の症状のせいで、うつに見えることがある。

4.うつを測定する

うつについてのアンケート(DQ)を使って、PDにおけるうつの診断ができる。

無気力、不安症、アネルジア(エネルギー欠乏症)、快感消失症、性欲減退などの症状はPDのうつ症状と関連がある。こういう症状はうつがなくても起きるが、うつがあるともっと頻繁に起き、悪化することになる。

たまには、うつ症状はアネルジア、快感消失症、不安症だけというPD患者もいるが、PDではないうつ患者に比べ、PD患者のうつは罪悪感を持つことが少ない。


  ★【うつのアンケート(DQ)】

5.不安・行動・無気力・睡眠

A.不安とうつ
不安とうつはつながりがあることが多い。

DQ同様、PD患者の診療には不安のアンケート(AQ)に答えることが求められる


  ★【不安のアンケート(AQ)】

B.不安症とうつの身体症状

不安症患者はうつ患者と同じく身体症状がある。身体症状に関連した不安が大きいのは交感神経系が活動しすぎなのが原因。反応を抑えるには交感神経系の活動を下げ、副交感神経系の活動をあげる。

うつに関連した多くの症状は交感神経系の低下と副交感神経系の亢進に起因する。うつの症状は不安症の症状とは違うようだ。


  ★不安症とうつの身体症状の比較

C.うつと行動
PDでは行動に変化がおきる。行動の変化はPDに関係するもの、うつに関係するものがある。無気力症が抗うつ剤で治療ができるうつであるか、治療に反応しない(うつではない)ものかの判断に、行動のアンケート(BQ)が役に立つ。患者が「BQで無気力でDQではうつじゃない」なら、彼の無気力症はうつの一部ではないことを示す。無気力症はPDの一部である(抗パ剤に反応する)かもしれないし、進行するPD痴呆(抗パ剤に反応しない)かもしれない。



  
  ★行動アンケート(BQ)】

D.無気力症とうつは関係があるか?

.無気力症、エネルギー欠乏症、快感消失症、不安症、性欲減退のような症状はうつのときよく起こり、うつの一部かもしれない。だが、ある研究者はこういう症状はうつとは別の生物学的根拠があると考える。このようにいくつかの研究では、(動機の欠如・自発性の欠如・無関心と定義される)無気力症とうつは別の独立した症状であり、その症状は個々の患者の中で見分けがつく。

この調査では、PD患者は無気力症とうつを併発するようだが、アルツハイマー患者(AD)、前側頭性痴呆(FTD)、進行性核上性麻痺(PSP)患者の多くは無気力症がなくてもうつを発症した。

PD患者では5%が無気力症のみ、28%がうつのみ、28%がうつと無気力症を併発。うつと無気力症を区別するには行動アンケート(BQ)が役に立つ。


E.睡眠
睡眠障害は、夜眠りにつくことができなくて、夜中目が覚めていることが多く、日中過度にうとうとねむくなるのをいうが、PDとうつの両方がある患者に睡眠障害はよく起き、パーキンソン病患者の67%以上に睡眠障害が起きると思われる。

あるセンターの研究では睡眠障害があるPD患者は、74〜98%とより高くなる。睡眠障害は高齢者では普通だがPD患者では高齢だけによるよりももっと多く発症する。PDの睡眠障害の原因は、(寝返りが打てないというような)PDの症状、抗パーキンソン病薬、あるいは不安感とうつのせいかもしれない。


6.様々な種類のうつ

A.反応性うつ病

「反応性うつ病」は、愛する人を失う、仕事をなくす、自尊心をなくすなどの特殊な状況に対する反応で起こる。

PDと診断されて、著しく障害のある親戚を知っていたり、仕事を失うか性的行為ができない、基本的信念に違反するという罪悪感などが「反応性うつ病」の原因である。

B.内因性のうつ

特に外的原因がなく起きるうつは「内因性のうつ」と呼ばれる。PDによくあるドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンの化学的アンバランスによって起きる。

C.DBSとうつ

DBSを受けたPD患者についての最近の研究は、うつの化学を補ううつの解剖学を明確にしつつある。

刺激した場所にもよるが、あるDBS患者は明白な理由もなくひどくおちこみ、ある患者は躁になる。刺激を切ればうつや躁は弱まる。

黒質と視床下核の近くの中脳を刺激し、そのような刺激はドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンニューロンのシステムを興奮させ抑制する。

それらのニューロン・システムは中脳から大脳皮質(脳の考える部分)および辺縁葉(行動を調整する部分)に投影する。これらの大脳辺縁系と呼ばれるシステムは、うつでとても重要な役割を演じる。

D.激昂性うつ病

うつは通常黙って、ひきこもり、活動が減るものだが、たまにはPD患者は興奮した状態になる。興奮した行動は「激昂性うつ病」を示す。通常、興奮は70歳以上の高齢者におき、通常夜中に起きる。

興奮は電解質異常、高熱、肝臓・腎臓の衰弱、薬物によって引き起こされた脳の変化が原因で起きる。興奮は進行性痴呆の症状かもしれない。

これらのことを考慮したうえで「激昂性うつ病」の診断をする。


「激昂性うつ病」患者は行動アンケート(BQ)のうち以下の項目にイエスと答えるだろう。通常は興奮した患者ではなく介護者が質問に答える。


★行動アンケート(BQ)のうちの
1. 思考に問題がありますか
2. あなたの行動あるいは性格に変化はありましたか
3. 日中頻繁に眠りに落ちますか
4. 夜、睡眠に問題がありますか
5. 集中あるいは注意を払うことに問題がありますか
9 夜、混乱するかまごついたりしますか
21.あなたの気分は、平静なのが不安に変わりやすいですか
22.幸福感が悲しみに急に変わりますか
23.パニックになりやすいですか
24.興奮して叫んだりしやすいですか
25.蹴ったり物を投げたり人をぶったりしますか。


E.精神病的なうつ(心因性うつ)

精神病的行動は心因性うつをあらわすことがある。精神疾患は通常夜間に始まる。激昂性うつ病と心因性うつは重なることがある。

精神疾患は脳内の電解質異常、高熱、肝臓・腎臓の衰弱あるいは抗パーキンソン病薬によって起きることもある。精神疾患と診断する前に、これらを考慮に入れておく。心因性うつの患者は行動アンケートの以下の質問にイエスと答えるだろう。

16.人があなたの悪口を言っていると思いますか
17.人があなたから盗んだりあなたを傷つけようとしていると思いますか
18.あなたのパートナーが浮気をしていると思いますか
19.誰にも見えない動物、物体、人が見えますか
20.誰にも聞こえない音や声が聞こえますか




7.PDにおけるうつは欠乏症

A.うつはPDの発症前に現れる

PDにおけるうつは、PDという診断及びPDによる身体障害と向かい合う不安感によって、二次的におこるという説がある。現実にはPDの診断に先立ってうつがしばしば見られるということがこの説に反対するものである。

また、ほかの病気で同程度の障害を持つ患者と比べ、PD患者がうつになる確率が高いことも先の説に反対する。
いろいろな情報から考えるとうつはパーキンソン病に先立って発症するようだ。PDにおけるうつはこの病気に関連した変性によって脳内のドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンが使い尽くされるということから来るらしい。


8.PDにおけるうつの治療

A.伝統的な抗うつ剤

セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンに変化を起こす伝統的な抗うつ剤は、多くのうつのPD患者に効果がある。しかしこれらの薬をPDに使う際のきちんとした試験があまりなされていない。

それらの有効性はPDではないうつ患者を治療した結果からの推定である。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)と三環系抗うつ剤(TCAs)のふたつは、PDの症状と同じくらい気分を改善するのでパーキンソン病のうつに最もよく使われている。副作用として起立性低血圧がおこったり、TCAsの副作用として時に心不整脈がおこることがあるので、それによって使用が制限される。

SSRIsはより安全でよく使われており、PD症状が悪化したという報告はまれである。

B.ドーパミンアゴニストの抗うつ作用

非麦角系アゴニスト(ビシフロール、ロピニロール)はPDの固縮、動作緩慢、ふるえに対する作用とは別に抗うつ作用があるようだ。PDではないうつ患者でビシフロールの抗うつ作用(SSRIsと比較したもの)が示されたのち、最近の研究はうつのPD患者で、ビシフロールが抗うつ作用を示した。

C.薬以上のもの

薬を使っていい結果が得られてきてはいるけど、カウンセリング、行動療法、友や家族と話すことも役に立つ。PD患者と介護者(もまたうつになる)の相互の関係は、大脳辺縁系のニューロン同士の関係以上のものなのだ。

●原文http://www.parkinson.org/site/apps/s/content.asp?c=9dJFJLPwB&b=108269&ct=89704 

作成Almond 2004.08.20

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