2005.05.08更新

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すくみの克服 by はとぽっぽ
私が初めてすくみを経験したのは3年前48歳の時でした。朝、ごみを出しに行った折に近所の奥さんと顔をあわせた途端、足が動かなくなりました。それからすこしずつ症状は厄介なものになっていきました。朝、薬の効きが十分でない時によくすくみました。私の場合に特徴的だったのは、すくみと不安感との関連が顕著で、知人に突然出くわした時や人の視線を感じた時、突然目の前を自転車が通り過ぎた時などによくすくみました。朝、人に会うのではないかと思うと、ごみ出しに行くのが大変苦痛でした。

すくみは転倒と表裏一体です。すくんだ時に、バランス感覚が不十分であるために、立ち尽くす事よりは、前方に膝を着いてしまうことのほうが多いとおもいます。ですから私の場合、どちらかというと転倒との戦いと言うほうがいいかもしれません。

すくみ始めて半年くらいはわけが分からないまま混乱の中に過ごしていました。しかし気持ちも徐々に落ち着いてきて、やがて、自分で対策を立てようと考えました。この間主治医の先生は「よくすくみ転ぶので困っています」という私の訴えに対してあまり重要性を感じて居られませんでしたが、ついにある日診察室へ入ろうとしてすくみ、転倒したために、周りの人たちが声をあげ、それを聞きつけた先生が出てこられてようやく事態を理解してくださいました。

冷静に分析してみると、まず第一に大切なのは姿勢と重心の位置でした。姿勢は背筋をしっかり伸ばす事、重心は足のつま先ではなくかかとの方になければなりません。そのようにぐっと胸を張ると前方に十分な空間ができて足が前に出やすくなります。その当時、すくみそうになったら「私は前に行きたくない。」と心で唱えて、でにくい足より先に上半身を後ろにぐっとのけぞらせると却って足のほうは勝手に前へ出てくれる、とそんな逆説的な工夫をしてみたりしました。

第二に不安感の克服です。これは、私のいささか臆病な性格が手伝ってとても難しい課題でした。私は臆病なくせに負けず嫌いなのです。一度すくんで転んだ場所に行くと、たいがい、前の失敗経験を思い出してしまい、再度すくんでしまうのです。だったらそこを避ければよさそうなものですが、私は性格上なかなかそれができない。失敗がくやしくて、2度3度と同じ場所へ出かけて何とか克服しようとします。それはあまり効率的な方法ではないとは思いますが、私にはそういう風にしかできませんでした。ただそうやって失敗を繰り返すうちにいろいろ気がついたこともありました。

まず、人と同じスピードで歩かなければならない場所はできれば避けます。例えば混んでいるエレベーターとか回転ドアです。自動改札機を通るのも一時期大変苦労しましたが、これは、切符を入れる、取るのタイミングが分かったら気持ちが落ち着いてすくまなくなりました。電車に乗るのに足がすくんで乗れなかったらどうしようとこわくなるのですが、これについては電車がホームに入ってくるのにあわせて少しずつ歩いていって立ち止まらずに自然にその歩調のまま電車に乗ってしまいます。信号がある横断歩道を渡るときは黄色の信号に変わりそうなときは次の青信号を待ち余裕を持って渡るようにしました。わずかの不安のために横断歩道の真ん中で立ち往生してしまった事が何度もありました。バスを待っている時や青信号を待っている時は、左足に重心をかけて右足を前に出しているとはじめの一歩が出しやすいことが分かりました。様々な場面でこのような工夫をこらしていました。

これらを考え合わせると、すくみの克服には頭で考えて歩くと言う事が大切だと分かります。あるパーキンソン病患者が「歩き方を忘れてしまった」といったと言うのが思い出されますが、すくみが始まったら頭で歩き方を考えながら歩くことが多くなりました。また意識していなくても頭はそちらに行っているので、人と話しながら歩くのは、時には苦痛ですし、また転びやすくなるようです。

社会生活との兼ね合いでは、すくみ始めてからは,意識して外出するようにしました。外出する用がないときは散歩にでることにして、そのようにして頑張った自分へのご褒美に外でランチを食べました。家にいると外にでるのが怖くなってきます。それが原因で外出できなくなることだけは避けたいとおもいました。すくみと必死で戦っていた一時期は、好きも嫌いもなく、晴れてさえいれば、必ず毎日外出しました。今も、週に2回ヨガ教室に通っています。ヨガ自体いろいろな面で体の柔軟化に役立っていますが、ヨガ教室に出席するという必ず出かけなければならない用事があるというのが、価値あることだと思います。

杖も私には強い味方になってくれました。すくみ始めてしばらくして、杖を持ってみようと思った時は、私にとってはかなりの決心が必要でした。今になってはそんなにたいしたことでもなかったのですが。杖を持ってみたものの、最初に数ヶ月は大して役に立ちませんでした。杖の専門店で教わったとおりに、利き腕である右腕にもって、左足と同じリズムでついていました。ある日ハッと気づきました。私は転倒するとき左前のほうに膝をつくのです。ですから。左手に持ってそのときにぐっと体重を支えてこそ杖の役目が果たせるのです。それに気がついてからは、杖は本当に強い味方です。普段は、杖を地面から浮かせてぶらぶらさせて歩きます。すくんで重心が前に行った時にぐっと杖に体重をかけて支え転倒を防ぎます。パーキンソン病なりの杖のつき方があるわけです。

患者の立場で薬の処方について意見を述べるのは躊躇われますが、私の場合デパスとシンメトレルがすくみに効きました。デパスは不安感を相当程度軽くしてくれるので大変効果がありました。シンメトレルは、私の感じではすくみそのものよりはバランス感の改善に効果があったようにおもわれました。

また、すくみについて色々工夫していく過程で、アメリカのNational Parkinson Foundation のLieberman博士による「パーキンソン病における歩行困難」という短い論文が大変示唆に富んでいて役に立ちました。

すくみ始めて3年がたち、今でもまだ完全に克服したわけではありませんが、一時期に較べると明らかに改善されてきました、いずれもう少し気を使わずに歩けるようになるのではないかと期待しています。恐らく、すくみ自体がなくなって以前のように意識せずに歩けるようにはならないかもしれませんが、すくみに対する対策がごく自然に頭の中で行われる様になっていくのではないかという気がします。
2005.05.08


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