2004.02.06up

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あるパーキンソン病患者の出産の記録         byきょん2

◆ はじめに ◆
以前に「出産の記録」を書いた作者が当時を振り返って、薬を止めての出産が良いかどうかを判断するにはその出産後のことも知ってもらう必要があると感じて書いて下さいました。

出産後ひどいうつ状態になり、パーキンソン病の症状も悪化したとのこと。それが薬をやめたせいであるとすれば、薬を止めて出産するというのは想像を超えてほんとに大変なことです。

最低限の薬を飲みながら出産を経験した方もいらっしゃいます。

妊娠・出産について主治医と家族を交えてよく話し合ってください。

さらに育児のことも考えに入れておいてください。パーキンソン病についての周囲の人の理解がないと出産も育児もできません。

●担当●よしこ


出産後のこと

 出産はかなりつらいものでした。11年たってもなおその印象はぬぐえません。赤ちゃんの誕生と引き換えに自分の体調は最悪まで落ちました。後産の痛みが相当なものであったこと。普通では初産の場合、そのように急激に子宮は収縮しないといわれましたが、私の場合はお腹が見事にぺしゃんこになりました。後産のあまりの激痛のため,産後は眠れずじまいでした。そのような激痛にもかかわらず、医師の処方の子宮収縮を促す薬を何も知らずに服用したことで事態は悪化しました。よけい収縮が進みなおひどい痛みに苦しむことになったのでした。

 それから高熱が出てそれが2週間も続きました。それで赤ちゃんの世話もできないままでした。周囲の声は「これで赤ん坊を無事に育てられるのか。」というものでした。赤ちゃんを抱くどころか自分の身も持て余し、体力を失って気力もなえていきました。ずっと点滴をしていましたが、快復する見込みもたたずどうしていいのかわからなくなって、だんだんうつになっていきました。無事に出産してもあとが続かなくてはどうしようもない、そんな無力感で身の置き所さえなく、つらい状況の中退院しました。ちょうど実家の父が体調不良で、実家の母には父の心配と私の心配と赤ん坊の世話と3重の苦労をかけてしまいました。結果、実家の母も倒れました。このときほど、自分の病気をむごいと思ったことはありません。自分の身体が病気のせいで皆に負担をかけてしまうとつくづく嫌になりました。このとき、自分の力でやれないものを無理に意志を通したことから起きた結果だと思えなくもない現実に、なんともやりきれない気持ちで、うつはますます進行していきました。母は心筋梗塞の1歩手前で、危険な状態でした。父が母に負担をかけたことで私に辛らつな言葉をはいたことも、私を苦しめました。

 つくづく親不孝な娘であると自分のことを責めました。子供の誕生はしあわせなことでしたが、私自身の現状はしあわせとはいえず、つらく悲しいものでした。何かを得るということは何かを犠牲にし、何かを失うことなのだと心の底で思い知らされました。そして追い討ちをかけるように私自身も1ヶ月検診後、にわかに多量に出血し止まらないというアクシデントに見舞われました。次々に起こるアクシデントでどうにかなりそうなほど追い込まれていきました。こんな時に母が頼れないということは、ただでさえどうしていいかわからない自分であるのに心細くひとりぼっちであることをますます際立たせるだけでした。まさに試練の連続で、赤ん坊が泣く、自分は動けない、地獄のような修羅場を体験したのでした。赤ちゃんを抱けない自分が思いついた方法は、寝かせたままクッションで哺乳瓶を支えミルクを飲ませるというものでした。これを見た姑が、「まあ、かわいそうに。」と言って抱いてミルクをやってくれましたが、私自身はありがたい反面、心底傷ついて悲しくなるのでした。心の中で、他にやりようがないじゃない、と繰り返し自問自答するだけでした。娘が赤ん坊の頃、ただひたすらつらい日々が続き、いい思い出が浮かばないので、このことをずっと長い間、私は心に固く鍵をかけて封印してきました。

今回、出産には育児がつきもので、身近な人を当てにしてもそれは不確定でいつ当てにできなくなるかもわからないという、現実を覚悟してもらいたいと思い、出産に伴う自らの体調悪化とうつ症状のことを書き表しました。

この最低の状態から、いかにして抜け出していったのかは、またの機会に筆を預けたいと思います。

出産と育児は切り離せないものです。誰かを当てにするというのが、いかに危ういものであるかということを胸の片隅においておかれる必要があるというふうに振り返ってみて私は思うのであります。

私のような薬を止めて自分を追い詰めるようなやり方は、決してお薦めできません。もっと気楽に薬も最低限やめるという時期だけやめて、あとはゆったり過ごされるようなお産をお薦めします。神経をすり減らすようなやり方は、後がたいへんです。薬を止めるというのは、思った以上にストレスのかかることです。

                        出産の記録

 

2004.02.02 File作成
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