2007.07.20up
◆ はじめに ◆
若年女性のパーキンソン病患者にとって結婚・妊娠・出産を考えるとき不安がいっぱいになります。それらを経験した先輩患者のお話を聞きたいと思っても誰に聞いたらいいのか分からず、一人で悩むことが多いのではないかと思います。 今回、一人の女性がその辛い過去を書いてくださいました。 これから結婚をと考えている方に病気ときちんと向き合って生きていってほしいのでこの文を載せさせていただきました。
妊娠・出産について主治医と家族を交えてよく話し合ってください。
わたしは、23歳で結婚、27歳で発病、ずっと薬を飲んでいます。 結婚して10年目に待ちに待った第一子を授かりまして、9週目から薬をメネシットだけにしましたが、胎児に首が後ろに反り返り、手は開かず、大きさもちぐはぐで足も地面につかないという奇形が見つかり、うまれても長くないかもしれないといわれ、結局死産となってしまいました。 産科の医師にしてみるといろいろ原因はあったのかもしれないが、薬の影響も考えられなくはない、とのことです。(奇形防止に効果のあるといわれている葉酸サプリも飲んでいました。) そのとき(妊娠時)飲んでいた薬は一日あたり メネシット3.5錠 ビシフロール8錠 FP錠1錠でした。 それから、ペルマックス(パーロデルと同じ麦角系のアゴニストです)をのんでいたときはプロラクチン値が普通は15前後なのに対し、0ないし限りなく0という数値がでてしまい結婚してから10年、発病してから5年もの間妊娠できずにいました。 パーロデルにはプロラクチンを下げる作用があります。プロラクチンというのは母乳を出す母性のホルモンで、この値が高いと、母乳を上げている子がいるからまだ妊娠しちゃだめよという指令を出します。不妊症の方はそれが高いことが多いので、不妊治療のためにパーロデルが処方されることもあります。ですが、少なすぎても母性がないと体が反応して妊娠しにくくなるそうです。 不妊検査(夫の精子検査までしましたが、体外受精は夫が「赤ちゃんは授かりもの」といい、それに納得したのでしませんでした)もしたのですが、不妊の原因はそれしか考えられませんでした。発病してからずっと飲んでいた麦角系の薬(ペルマックスとカバサール)をやめてから1年ほどで妊娠しました。 薬を飲んでいる以上、絶対大丈夫と言う事はありえません。また、薬だけが原因ということもありません。 妊娠、出産を期に若年性パーキンソン病になった方も多いので妊娠前から出産まで薬を飲んでいて大丈夫という人は、ごくひと握りで私のような人たちもたくさんいるとおもうのです。 ましてや若いころから薬を飲んでいるほど、赤ちゃんにとってけしてよい環境にあるとはいえないと思うのです。だからといって、妊娠出産をあきらめろとは言いたくありません。 しかし、私の父のように考える人もいるのもまた、現実です。古い考えを持つ父が言うには「他の健康な両親を持つ子供たちに比べて、障害を持った母親では他の母親がしてやれることをしてやれないこともある。人の手ばかり借りていては子供が不憫だ」というのです。 でも、わたしたち夫婦はそんなことは思いませんし、逆に、父が言った言葉は差別でありわたしたち夫婦にとって許しがたい言葉でした。病気になったことは誰のせいでもないし、(親戚 親族等に発病者のいない)単発発病で子供にかならずしも遺伝するというわけでもない。APPLEの妊娠出産のコーナーは何度も読み、はげまされて今度授かったら縁を切ってでも産もうと思っていました。 しかし、父は本心で言った言葉ではありませんでした。妊娠中薬を飲めずほとんど寝たきり状態になってトイレにすら一人で行かれず入院している私の姿をみていられず、恨まれるのを覚悟でいったのでした。 わたしも皆さんのように健康な子供がほしいです。 ただ、すこしでもこういうケースがある、ということをこれから結婚、出産を考えている人たちにも(脅かすわけではないですが)実話として心に留めておいて頂きたいと思います。この時代でもありえることなのですから、昔はもっと薬に対して安全性が確立しておらず、もっと多くの人が悲しい別れをし、出産、結婚をあきらめたと思うのです。ただまだ未来のある結婚前の方に、こんな辛いことを伝えていいのかずいぶん悩みました。自分のHPなどではなく、掲示板に書いていいのか。言葉が悪いですが、なにはともあれ、無事産まれ、育ってくれた子達は、ほんの一握りであるという現実を・・・。 無事出産をしたとしても、育児の大変さは他の方の体験記が教えてくださるでしょう。出産前の一年にも満たない期間だけでも、ずっと薬を飲んでいる身としては妊娠したと気づいてから薬をやめたのでは、遅い薬もあるでしょう。子供がほしいと思ったときには、主治医に相談し、細心の注意をはらってから、ご自分の両親、多少なりともお相手のご両親の助けも借りるほうがもちろんいいとおもいます。 遺伝子治療で効果が出たというニュースでパーキンソン病はおそらくこれから治る病気になるでしょう。 今まだ結婚前のかたなら、きっと、間に合うかも知れません。 希望を捨てず、その日を待ってほしいと思います。 <編者注> 参考までに、パーキンソン病治療薬の妊娠への影響についてはこちらをご覧下さい。