2010.08.15 up

ふみくんの「仕事を続けたいあなたへ」

〜DBS後の職場との関係〜

by ふみくん

 この文章は、あるML(メーリングリスト)に書いたものに、若干の加筆・修正を加えたものです。まだまだ愚文でお見せするようなものではありませんでしたが、さるMLメンバーから「公開しないと後悔…」と脅され、止む無く公開することになりました。

 私はDBSを受け間もなく2年になります。この間「あーでもない、こーでもない」と調整を続け、その都度気持ちの面で何度となく社会復帰は無理かな、と思いました。主治医とは何回も衝突しました。反面主治医は、手術前の時間を私のために割いて下さったりと、様々な困難と救いがワンセットになった状況の中で、手術の目的であった社会復帰を望みました。

 この頃から今に至る様々な経験と、その間無我夢中で行なった社会(=職場)復帰のための努力を綴るつもりが、いつの間にか「上から目線」の愚文になりました。そのためか未だ完全な職場復帰に至っておりません。

 「えっ、そんなことは無理」とか「へー」とご納得いただけるところが多々あろうかと思います。本文中にもありますが、パーキンソン病はまったく同じ病状の患者はいません。治療法も同様に千差万別です。いつまでも「私は私、あなたはあなた」、そんな気持ちでお読み頂けたら幸いです。

 

機DBSの調整は「エベレスト登山」

 DBS(脳深部刺激療法)は、確かに症状の改善が図られます。

 振るえ、無動、ジスジネジア、そして薬の減量…。おそらく、いままで「もう無理、ダメだ!」と、半ばあきらめていた症状の改善が見られます。
このことは、PD患者やこの刺激療法を体験した多くの方から聞かれます。

 私の薬の減量は、それはそれは凄まじいくらいでした。私は生来無類の薬好きでした(誤解しないで下さい。薬物中毒ではなく、朝に夕に「胃散」を飲み、風邪薬も少し強めのでないと飲んだ気がしない…程度でした)。おかげで、PD関連薬や付随する症状を抑える薬含め、最高38錠/日飲んでいました。

 基幹薬のL-dopaは7〜8錠飲んでも日中変動が大きく、自分ではコントロール出来ない状況。それが今では4錠以上飲むと、未だ無縁のジスキネジアっぽくなります。

 これほどまでに薬は効くのに、DBSはイタズラなんです。
先程「振るえに効く」と書きました。私は四肢の振るえが大変強く、介護がないと食事もままならない状況でした。
 術後この振るえからは確かに解放されました。ところが引換えに首が振るえ出し、今でも悩みのタネのひとつです。さらに「突進歩行」が悪化し、久し振りに会う友人曰く「あら、お元気になられて…」。まるで蝉のように、今度はどこにつかまろうか、と飛び回る生活が継続、今でも駐車場は広くて嫌いな場所です。
 他にも、腰が痛い、声が出ない、うまく話せないなど、日常生活に影響の多い症状が現れます。

 いわば「副作用」とも言える症状とどのようにお付合いしていくかが、術後の気持ちを大きく左右します。私は「一日を振り返り、ああ何々が出来なくなった、と考えずに『今日は何々が出来た!』」と考えるようにしています。そうすると、なぜか元気が沸いてきます。マイナス思考よりプラス思考、この考え方が自分を嫌になりそうな気持を支えます。

 DBS調整は「エベレスト登頂」に似ています。一歩一歩、進みましょう。

 

供タ場の理解を得る(その1)

 パーキンソン病は、なかなか職場の理解が得られません。
それは「体調が不安定」だから。かつ「患者が自分自身でも、不安定な体調のコントロールを出来ない」から。

 この2点は、現代日本の企業社会と相容れないこと、と多くの勤労PD患者は悩み、中には不本意ながら「元勤労PD患者」に変身してしまう方も多いのでは、と思います。

 「そりゃそうさ、だってさっきまで普通だったのに突然動かなくなるし、時々訳も分からず怒りだすし使いにくくて…」は、人事担当の弁。冷静に考えれば、その通りなのです。人事担当の言いたいことも分かります。

 では、なぜ理解されにくいのか、どうすれば理解されるのか、この2点を考えましょう。

 

掘タ場の理解を得る(その2)

 体調不安定のパーキンソン病、特定疾患であり巷に患者は1,000人にひとり。どうして理解されないか、外的・内的要因を考えてみます。

 外的要因はズバリ「パーキンソン病は、お年寄りの病気でしょう」、つまり世間に若年発症があることを、周囲の人々が知らないからです。事実患者の私すら若年発症がある、なんてまったく知りませんでした。

 では、内的要因を考えます。

 その答えを考える前に、皆さんに質問です。
「自分の症状・治療法について、周囲の人に詳しく話したことはありますか?」
 この答えが「もちろん『ハイ!』」と言う方は、これからの記述内容をお読み頂く必要はありません。時間ももったいないので、お先へどうぞ。
 お先に行けない方には「ご自分のことを知っていますか」と再度問い直します。ご自分の病気を自分自身がよく理解しなければ、他人に説明は出来ません。つまり、もっとも大切なことは「自分が理解する」ことです。

 この病気は非常に名の知れた病気なので、また、言いたくないから隠しておこうと考えたら、理解してもらおうは「夢のまた夢」です。
 PDを十分理解している医師は、それ程いません。これが大変残念ですが現実です。
これは、お薬の出し方ですぐ分かります。とんでもない処方に「体調がどんどん悪くなる」ということが日常茶飯事。しかし、本当の専門医は「診察のキレ」が違います。
「日本神経学会」という専門医の学会がありますが、ここの先生方は実に多くの病気を扱っておられるので、PDの専門医を見つけだすことは、本やら諸先輩の話に頼らざるを得ません。
 さらに「隠しとこ…」は最悪だと思います。
個人的見解ではありますが、この病気は必ずいずれ周囲の方のお世話になるのですから、初めからカミング・アウトしておいた方が、精神的にも楽だ、と思います。

「自分の病気を周囲の人々に知ってもらう」
「そのために、自分が罹っている病気を知る」

 このハードルを超えたとき、初めて第一歩となる、と私は考えます。

 

コラム「えっ、この人もパーキンソン病…嘘だぁ!」

 昨日、書いた記事に感想を頂いたので、少し考えてみようと思う。

 コラム表題の続きが、ひとつのポイントになる。
「嘘だあ、だって症状が私と違うもん。」
 このように感じるのは当然だから、もしこのような感想がない方がいらっしゃればある意味幸運かもしれない。

 パーキンソン病の症状は千差万別、全く同じ症状の方を、私は見たことがない。
 ものの本には「ふるえ」「固縮」「無動」そして「姿勢反射障害」、この症状を四大症状と書いてある。そして「その他の症状」として様々な症状が紹介されている。日本人は真面目なので「私はふるえないから」とか「無動はない」など四つの症状が揃わないから私は違う、と思いがちだと思う。ましてパーキンソン病患者は概して真面目な方・几帳面な方が多い、と言われているから始末が悪い。

 四大症状がすべての人に当てはまらないことも多い。
 先程も書いたが、パーキンソン病の症状はバラバラなのだ。さらにこの四大症状に「その他の症状」が加わり、出来上がりの症状は「十人十色」「千差万別」になってしまう。
 毎年インフルエンザが流行し、都度新型云々と騒がれる。インフルエンザの症状は千差万別であろうか。大なり小なり症状は似ているから、ワクチンと特効薬がある。
 「パーキンソン病の症状は千差万別、同じ症状の患者はまずいない」このことを理解することが、この病気と末永くお付合いする上で非常に大切、と思う。

 そうすると「あの人が効いたから」と薬を変えても意味がないことにお気づき頂けただろうか。症状が千差万別なら、当然薬も千差万別なのだ。かつ医師も手探りで効く薬を探している。だからこそ「特定疾患=難病」なんだろう。
 真似出来ない病気なのだ。だから治療法や薬も真似出来ない。

 「自分の症状、よくわからなくなっちゃった」と考えたあなた。よかった、「わからないことがわかる」ことに、気が付いたんだ。
 「解っていないことに気付かない」人よりも、500歩前進なのだ。

 

検セ纏を続けたいあなたへ

 それでは、職場に対する対応法をまとめましょう。
 最初にお断りします。以下の内容は、部分的に「労働法」の内容に立ち入りますから、個別の内容は「無料法律相談」等で弁護士らに必ずご相談ください。
 また、それ以外の部分も一患者(私ですが…)の体験をもとにまとめたものです。よって多々私見が入ることをお許しください。

 まず、職場のタイプを考えます。
 (1)非常に協力的
 (2)一見協力的
 (3)非協力的
大きく分類すると、上記の3つになろうかと思います。
 (1)と(3)のタイプは、職場の考え方がはっきりしているので、対応法は比較的簡単に見つかる、と思われます。
 (1)はあまりない、と思います。職場との良好な関係を継続する、に尽きます。
 (3)はかなり多いと思います。残念ながらこの道は2つ、「職場に従う」か「徹底抗戦するか」です。前者は「配置転換」「転勤」、最悪「失職」もあります。しかし、自己都合退職でも場合によっては雇用確保のため受けるであろう精神的苦痛等考えると、トータルでOKということも考えられます。要は自分が納得できるかです。以前の自分を思い描くことなく、今の自分に何が出来るのか冷静に見つめ直してください。後者は弁護士先生とご相談ください。

 問題は(2)のタイプです。一見協力的ですが実は態度が不明確で、職場が「どうしよう?」となってしまいます。そのため、病人も「どうしよう」となり、知らないうちに自分の思い描いていたシナリオと逆の結論になっていた…ということもあるでしょう。
 この時は、実は私もそうだったのですが、如何に冷静沈着に対応できるか、がポイントです。多くのパーキンソン病患者は「頭に血が上りやすい」ので、しばしば職場に対し患者が挑発的態度に出たと誤解されやすいのです。結果職場の態度が一転することも多いのではと思います。あなたも困っていますがさらに職場も困っています。こちらの出方次第で「なんだコイツ!」となり、最悪の道になってしまいかねません。

 さて私たちはどのように対処しましょうか。
(ア)頭に血が上り職場と喧嘩
(イ)悶々となってうつ病併発
(ウ)冷静になって自分を見つめ直す
(ア)と(イ)は、避けたいですね。自爆か切腹です。私はDBS後、(ア)になりかけました。

 では、(ウ)を選択するために、私の経験を踏まえ、お話しします。なお多分に個人的見解が入ることは、最初にお断りした通りです。

・公的サービスで、自分の状況を客観的に見る。

 「特定疾患」「身障者手帳」「障害年金」「介護保険」を申請し、客観的な評価をしてみます。これらの公的サービスは、後々経済的側面も支えてくれますから、取得の手続きをしてみましょう。
 ただやみくもに手続きしてもダメなので、主治医とご相談のうえでなさってください。因みに私は完全制覇しました!

・自分自身を冷静に見つめ直す。

 パーキンソン病は、元の自分に戻ることが出来ない、この事実を受け止めます。そうしないと、いつまでも「前は出来たのに」「なぜ、どうして」と考え続け、上記(イ)の道まっしぐらです。
 元に戻れない、つまり社会的地位・収入も以前より落ちるのです。将来の出世も昇給も諦めます。最初は我慢出来なくて、が当たり前です。しかし、今後の生活を守る、という観点から冷静に考えましょう。ライフプランの見直しは銀行・保険会社等でサービス(顧客獲得のため)で見てくれるところもあるようです。

・周囲に自分を客観的に見てくれる人を作る。

 身近な人がいるいないは、大変に大きなポイントです。配偶者・家族・気の置けない友人、この人たちを大切にしましょう。
 身近な人は、なかなか冷静になれない自分を諌め、励まし、時には介護が必要な時に大きな戦力と成り得ます。決してひとりで戦わず、共に喜び・悲しみ・怒りなどを分かち合う人を、探しましょう。

 さて、あなたは職場との関係はどうですか、うまくいっていますか。

 この問題について、なぜかいままで活字になっているものはありませんでした。しかし仕事をされている方にとっては、大変切実な問題です。文字通り「生きるか、死ぬか…」となりかねない問題です。しかし、自分では決められない職場それぞれの決まり(就業規則ほか)もあり、思うようにはいきません。

 これから患者も権利を主張するだけではなく、職場とよく話し合う必要があります。お互いの考え方が歩み寄ることで、円満な解決をみることが出来たら、これほど幸せなことはありません。

 

ファイル作成 sophia 2010.08.15


感想をお聞かせください