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基礎分野編 生理学
内分泌
 体内の各種の器官の機能を協調的に調節する機構には、神経系のほかに内分泌系がある。神経系が主に迅速な調節を行うのに対し、内分泌系は主として緩慢であるが長期にわたるような調節を行う。

●ホルモンの種類と働き

1ホルモン
 ホルモンは、内分泌腺の細胞から直接血液中に分泌され、血液循環を介してそのホルモンに対する受容体を有する特定細胞(標的細胞)に達して効果を及ぼす。内分泌腺には、

 下垂体  甲状腺  松果体  副甲状腺(上皮小体)  膵臓  副腎    

  精巣   卵巣  などがある。

消化管にも内分泌細胞が散在する。腎臓もホルモンを分泌する。さらに視床下部で産生されるホルモンもあり、視床下部のある種の神経細胞も内分泌腺の役割を果たしていると考えられている。(神経内分泌)ホルモンは、微量で、かつ特異的に作用を及ぼすという特徴をもっている。ホルモンの働きは多様で単純化することは難しいが、成長 生殖 代謝 および内部環境の協調などに関与るするといえる。

2ホルモンの種類と受容体
 ホルモンは、化学構造の上から ポリペプチド型 ステロイド型 アミン型 3種類に分けられる。視床下部 下垂体ホルモンや膵臓のランゲルハンス島から分泌されるホルモン、消化管のホルモンの多くは、ポリペプチド型ホルモンに属する。

 一方、性ホルモンや副腎皮質ホルモンはステロイド型に属する。

 副腎髄質ホルモンや甲状腺ホルモンは、アミン型ホルモンに属す
る。
 
 ポリペプチド型ホルモンが、細胞膜に作用するのに対し、ステロイド型ホルモンは、細胞膜を通過して細胞質内の受容体に作用する。アミン型ホルモンは、ホルモンの種類によって、細胞膜の受容体に作用するものと、細胞質内の受容体に作用するものとがある。

Aポリペプチド型ホルモン受容体
 ポリペプチド型ホルモン(および一部のアミン型ホルモン)に対する受容体は、細胞膜上に存在する。ホルモンが受容体と結合すると、膜にあるアデニル酸サイクラーゼが活性化され、これによりATPからサイクリックAMP(cAMP)がつくられる。cAMPは、蛋白質キナーゼを活性化し、これにより種々の酵素が活性化されて、生理作用をあわらす。 この場合、ホルモンをファーストメッセンジャー、cAMPをセカンドメッセンジャーと呼ぶ。

Bステロイド型ホルモン受容体
 ステロイド型ホルモン(および甲状腺ホルモンのような一部のアミン型ホルモン)は細胞膜を透過し、細胞質内にある受容体と結合して核内に入る。その結果DNAが活性化され、ある種の蛋白質が合成され、生理作用をあらわす。


3ホルモン分泌の調節
 ホルモンは、分泌量が過剰となっても不足しても生体に障害が生じる。ホルモンの分泌量および血中濃度は、種々の機構により一定の範囲に保たれている。

A:ホルモンの分泌の階層的支配
 多くのホルモン分泌は、上位ホルモンから下位ホルモンへと階層性に支配されている。たとえば、視床下部から分泌されるホルモンによって、下垂体前葉ホルモンの分泌が調節される。さらに、下垂体前葉ホルモンによって、下位の多くの内分泌腺からのホルモン分泌が調節される。

B:負のフィードバック
 多くのホルモンの分泌量は負のフィードバック機構によっても調節される。上位ホルモン分泌は、下位ホルモン濃度が低くなれば増加し、高くなれば減少する。すなわち、ホルモン分泌が過剰のときには、負のフィードバックが作動して分泌は低下し、ホルモン分泌が不足の時には、負のフィードバック機構が弱まって分泌が高まる。負のフィードバックには、長い経路を持つ 長環フィードバックと、短い経路を持つ 短環フィードバックがある。




C:自律神経や血中成分による調節
 副腎髄質、膵臓、消化管などの内分泌腺から分泌されるホルモンは、自律神経による調節を受ける。その他、血糖値や血中カルシウム濃度など、血液中の成分の変化が直接内分泌腺に作用する場合もある。(例:血糖値は膵臓に作用 血中カルシウム濃度は甲状腺と副甲状腺に作用する)


●各内分泌腺とそのホルモンおよび作用

1視床下部
 視床下部には、下垂体前葉および中葉におけるホルモン分泌を調整するホルモンを産生するニューロンや、下垂体後葉へ軸索を伸ばして下垂体後葉ホルモンを分泌するニューロンが存在する。
 視床下部のある特定のニューロン内で再合成された視床下部ホルモンは、正中隆起で下垂体門脈血中に分泌され、血流にのって下垂体前葉と中葉に運ばれる。 下記に示すように、視床下部からは、下垂体ホルモンの分泌を促す放出ホルモンと分泌を抑制する抑制ホルモンが放出される。

視床下部放出ホルモン 下垂体ホルモン 視床下部抑制ホルモン
視床下部から分泌→ 下垂体の分泌 ←視床下部から分泌
前葉 成長ホルモン
放出ホルモン(GRH)
成長ホルモン
(GH)
成長ホルモン
抑制ホルモン(GIH)
プロラクチン
放出ホルモン(PRH)
プロラクチン
(PRL)
プロラクチン
抑制ホルモン(PIH)
甲状腺刺激ホルモン
放出ホルモン(TRH)
甲状腺刺激ホルモン
(TSH)
副腎皮質刺激ホルモン
放出ホルモン(CRH)
副腎皮質
刺激ホルモン
(ACTH)
性腺刺激ホルモン
放出ホルモン(GnRH)

黄体形成ホルモン
放出ホルモン(LHRH)
卵胞刺激ホルモン
(FSH)
黄体形成ホルモン
(LH)
中葉 メラニン細胞刺激ホルモン
放出ホルモン(MRH)
メラニン細胞
刺激ホルモン(MSH)
メラニン細胞刺激ホルモン
抑制ホルモン(MIH)
後葉(神経下垂体)
 バゾプレッシン(ADH)
 オキシトシン







2下垂体
 下垂体は、視床下部の下にある。下垂体は腺下垂体と神経下垂体の2つの部分とからなる。下垂体前葉と中葉は腺下垂体であり、後葉は神経下垂体である。

腺下垂体(前葉と中葉は。下垂体門脈系によって視床下部と血流を介して連絡しており、視床下部から分泌される視床下部ホルモンによる調節を受けている。

神経下垂体(後葉)は、視床下部の視索上核や室傍核から神経線維を直接受けている。視床下部のこれらの神経細胞体において産生された後葉ホルモンは、軸索を通って後葉に運ばれ、そこで血中に放出される。

前葉ホルモン
 下垂体前葉からは、以下に述べるようなホルモンが分泌される。 
@成長ホルモン(GH)
成長ホルモンは、発育期の成長を促進する。ただし、血中GH値が発育期に特に高くなるのではなく、発育期には、組織のGHに対する感受性が亢進すると考えられている。GHは、下記のような作用をもつ。

 1)骨端での軟骨形成促進
 2)蛋白質合成の促進
 3)血糖値の上昇
 4)脂肪酸の遊離


 成長ホルモンは、視床下部の成長ホルモン放出ホルモン(GRH)によって分泌が促進され、成長ホルモン抑制ホルモン(GIH)によって分泌が抑制される。                    
Aプロラクチン(PRL)
ロラクチンは女性においては
 1)成熟した乳腺細胞に作用し、乳汁産生・分泌を促進する。
 2)性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌を抑制し、また、性腺刺激ホルモンの卵巣に対する作用を阻害する事により、排卵を抑制する。

(男性における作用は不明である)

 乳児による乳頭吸引刺激はプロラクチンの分泌を促し、乳汁分泌を維持する作用がある。プロラクチンの分泌は、視床下部からのプロラクチン抑制ホルモン(PIH)によって抑制され、プロラクチン放出ホルモン(PRH)によって促される。
B甲状腺刺激ホルモン(TSH)
甲状腺刺激ホルモンは甲状腺を刺激して、
甲状腺ホルモンの産生と分泌を促す。
視床下部ホルモンの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によって分泌が促される。また、甲状腺ホルモンによって負のフィードバック調節を受ける。
C副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
副腎皮質刺激ホルモンは、
副腎皮質ホルモン、とくに糖質コルチコイドの分泌を促進する
ACTH分泌は、ストレス時に増加する。また、副腎皮質ホルモンによって負のフィードバック調節を受ける。
D卵胞刺激ホルモン(FSH) 黄体形成ホルモン(LH)
FSHとLHは性腺活動を調節する作用を持つ。
FSHとLHを総称して、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)という。

 FSH:女性では卵巣における卵胞の成熟を促す。またLHと協調して
     卵胞ホルモン(エストロゲン)の生成と分泌を促進する。

      男性では、精巣の精細管の発育を促し、精子の形成を促す。

  LH:女性では成熟卵胞に働き、
     排卵を誘発する。排卵後は黄体形成を促し、黄体ホルモン
     (プロゲステロン)の分泌を
増加させる。
     
男性では、精巣の間質細胞に作用し、男性ホルモン
      (テストステロン)の生成と分泌を促す。

FSHとLHの分泌はともに視床下部ホルモンの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)により促進される。 LHRHを性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ともよぶ。

中葉ホルモン
 下垂体中葉は、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)を分泌している。
 MSHは皮膚のメラニン細胞(黒色素細胞)におけるメラニン形成を促進し、皮膚を黒くする。
 MSHの分泌は、おもに視床下部ホルモンであるメラニン細胞刺激ホルモン放出ホルモン(MRH)メラニン細胞刺激ホルモン抑制ホルモン(MIH)とによって調節される


後葉ホルモン
 後葉ホルモンは、視床下部の室傍核あるいは視索上核のニューロン内で生成された神経分泌物質である。後葉ホルモンには、
バゾプレッシンンオキシトシンがある。
@バゾプレッシン(抗利尿ホルモン)
バゾプレッシンは、腎臓の集合管における水の再吸収を促進して、尿量を減らす(抗利尿作用)。このため、抗利尿ホルモン(ADH)とも呼ばれている。また、多量のバゾプレッシンには血管を収縮させる作用がある。
 塩辛いものを食べて血漿浸透圧上昇すると、視床下部の浸透圧受容器が興奮し、バゾプレッシンの分泌を増加させ、体内からの水分喪失が抑えられる。その他、出血による循環血液量の減少時や痛みなどのストレスもバゾプレッシン分泌を増加させる。
Aオキシトシン
オキシトシンは、女性では、
 1)子宮筋を収縮させる
 2)成熟した乳腺に作用して、乳汁の排出を促す。

   男性でもオキシトシンは分泌されるが、その作用は不明である。
  授乳期に乳児が乳頭を吸引すると、オキシトシンの分泌が増加して射乳
  を起こす。これを射乳反射と呼ぶ。この反射は、皮膚の感覚刺激がホル
  モン分泌を調整するという意味で、皮膚-内分泌反射の代表的な一例と
  考えられる。
   また、分娩時には胎児が産道に入る刺激によって、オキシトシン
  の分泌が増し、子宮平滑筋の収縮力を強める。
□分泌異常
下垂体の機能低下
下垂体のある種の主要や血管障害によって、下垂体ホルモンの分泌が低下すると以下のような異常が起こる。
内分泌器官の萎縮
甲状腺、性腺、副腎皮質の萎縮が起こる。このために寒冷に対する抵抗力の低下、第2時成長の消失、血糖値の低下など症状があらわれる。
成長の停止
成長期に成長ホルモンの分泌低下が起こると、成長が停止し,小人症となる。
尿崩症
後葉の機能が低下すると、バゾプレッシン分泌が減少し,口渇、多尿、多飲などの症状を伴う尿崩症が起こる。

下垂体機能亢進
成長ホルモンの分泌の亢進が、成長期起こると、巨人症になり、成人で起こると末端肥大症になる。

2-2松果体
松果体は、大きさはあずき粒大だが、形が松の実に似る。視床下部の底面にぶら下がっている下垂体に対し、背面に突出するのが松果体である。組織も下垂体の後葉に似て、神経膠細胞を主体とする神経組織より成り、典型的な上皮細胞よるなる内分泌腺とは異なる。
 ホルモンとしては、メラトニンを分泌する。メラトニンの人での作用についてはまだよくわかっていない。松果体間質細胞腫瘍で松果体機能が低下すると、性早熟が起こる事から、メラトニンは性腺刺激ホルモン分泌を抑制する可能性が考えられている。
 松果体のメラトニン分泌には明らかな日周期リズムがみられる。松果体のメラトニン合成は、交感神経により調節されている。この交感神経の活動は、光刺激で抑制されるので、松果体のメラトニン含量は夜間に多く、昼間少ない。


3甲状腺
甲状腺の組織内には多数の球形のろ胞がある。ろ胞は1層のろ胞細胞と中央の腔(ろ胞腔)よりなり、その腔はコロイドで満たされている。ろ胞細胞甲状腺ホルモンとして サイキシン(T4 とトリヨードサイロニン(T3を分泌する。

 ろ胞の外側には傍ろ胞細胞(あるいはC細胞)と呼ばれる特殊な細胞が存在し、ホルモンである カルシトニンを分泌する。 (甲状腺ホルモンという場合、カルシトニンではなく、T4 T3 をさす)

 甲状腺ホルモンは、ヨウ素を含むアミノ酸である。T4は1分子中に4つのヨウ素原子を含み、T3は3つのヨウ素を含む。

A:甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンは、一般に代謝を高める作用をもつ。
 T3はT4の約10倍の活性をもつ。
物質代謝の亢進
甲状腺ホルモンは骨格筋、心臓、腎臓、肝臓などの多くの臓器の酸素消費量を高め、基礎代謝を亢進する。 また、代謝の増大により体温を上昇させる。 
蛋白質代謝(蛋白質の生合成と分解の促進)
糖代謝(腸管からのブドウ糖の吸収、糖新生および肝グリコーゲン分解の促進による血糖上昇、組織の糖利用促進)
脂質代謝(血清コレステロールの低下)など、物質代謝に関して多岐にわたる作用を示す。 
発育促進
甲状腺ホルモンは骨格筋、心臓,腎臓、肝臓などの多くの臓器の酸素消費量を高め、基礎代謝を亢進する。また、代謝熱の増大により体温を上昇させる。
 蛋白質代謝(蛋白質の生合成と分解の促進)、糖代謝(腸管からのブドウ糖の吸収、糖新生および肝グリコーゲン分解の促進による血糖上昇、組織の糖利用促進)、脂質代謝(血清コレステロールの低下)など、物質代謝に関して多岐にわたる作用を示す。
精神機能刺激
精神活動一般にも影響を与える。甲状腺ホルモンが欠乏すると精神活動が鈍くなる。
その他
他のホルモンの分泌や作用に相加的、相乗的な影響を及ぼす(許容作用)たとえば、カテコールアミンの組織に対する効果を増強する働きをもつ。
〔分泌調節〕
 甲状腺ホルモンの生合成と分泌は、下垂体前葉から分泌されるTSHによって促進される。逆にTSHの分泌は、甲状腺ホルモンの血中濃度によって調節される。血液中の甲状腺ホルモン濃度が正常に戻る(負のフィードバック機構)。寒冷刺激は、視床下部TRH-下垂体前葉TSH系を介して甲状腺ホルモンの分泌を促す。

□分泌異常
甲状腺機能の低下が小児におこれば、成長や知能の発達が阻害されるクレチン病となる。成人でおこれば、基礎代謝や精神活動の低下や皮膚の異常(皮膚の水分増加)をともなう、粘液水腫となる。甲状腺機能が異常に亢進すると、甲状腺肥大、基礎代謝の増加、心悸亢進、眼球突出、手指の振るえなどをおこすバセドウ病となる。

B:カルシトニン
 カルシトニンは、骨と腎臓に作用して、血漿中のCa2+濃度を低下させる。
すなわち、骨からのCa2+放出(骨吸収)を抑制して、骨の形成を促進する。また、腎臓からのCa2+の排泄を促進する。 血漿中のCa2+濃度が増加すると、カルシトニン分泌が促進され
る。


4副甲状腺(上皮小体)
 副甲状腺は甲状腺の後ろ側に左右2個づつあり、パラソルモンを分泌する。
パラソルモンは、骨と腎臓に作用して、血漿中のCa2+濃度を増大させる。すなわち、

@骨のCa2+を血中に遊離させる。
A腎臓の尿細管におけるCa2+の再吸収を促す。
B腎臓におけるビタミンDの活性化を促進する事により
 間接的に腸からのCa2+の吸収を促す。


血漿中Ca2+濃度が減少すると、パラソルモンの分泌が高まる。

〔血漿Ca2+濃度の調節〕
血漿Ca2+濃度は正常で、10mg/dlである。血漿Ca2+濃度が正常より低下するとパラソルモン分泌が増加して血漿Ca2+濃度を上昇させ、正常レベルより上昇すると甲状腺のカルシトニン分泌が増大して血漿Ca2+濃度を低下させる。
□分泌異常
副甲状腺の機能低下により血漿中のCa2+濃度が低下すると、筋細胞の興奮性が上昇して、ついには骨格筋の不随意的収縮を引き起こす。これをテタニーといい、喉頭筋の痙攣により死に至ることもある。一方、副甲状腺の異常な機能亢進は、骨の脱灰を促すため、骨が折れやすくなる。


5膵 臓
膵臓には、膵液を分泌する外分泌腺組織に混じって、内分泌細胞の組織がある。ランゲルハンス島と呼ばれている。ランゲルハンス島は膵臓内に100〜200万個存在し,その重量は膵臓全体の1〜2%である。ランゲルハンス島の細胞は、
 α細胞(約20%)・・・・・グルカゴン分泌
 β細胞(約60〜75%)・・インスリン分泌
 δ細胞(約1〜8%)・・・・ソマトスタチン分泌


の3種類の細胞の大別される。

A:インスリン
インスリンは、主に骨格筋、脂肪組織、肝臓に作用して、糖、脂肪、蛋白質の同化を促進する。
@糖代謝
細胞のブドウ糖取り込みを促進し,またブドウ糖のグリコーゲンへの変換を促して、血糖を下げる。
A脂質代謝
ブドウ糖の脂肪への変換を促す。また、脂肪の脂肪酸への分解を抑制する。
B蛋白質代謝
アミノ酸の細胞内への取り込みを促し、蛋白質合成を促進する。
〔分泌調節〕
インスリンの分泌は、主に血糖値の変動によって直接的に調節され、血糖が上昇すると分泌が促される。一部神経性(迷走神経により分泌促進)や他のホルモンによる調節(グルカゴンによる分泌促進、ソマトスタチンによる分泌抑制など)も知られている。

□分泌異常
インスリンの分泌低下や組織のインスリンに対する応答の性の低下によって糖尿病が起こる。その症状は高血糖、糖尿であるが、その他に多尿、多飲、多食,代謝性アシドーシス、ケトン症、低カリウム血症、感染に対する抵抗力の低下などの諸症状をともなう。さらに重篤な場合は、昏睡などの中枢神経障害をおこす。

B:グルカゴン
@肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生を促して、血糖を上昇させる。
A肝臓の脂肪を分解して、血中遊離脂肪酸を増加させる。
B膵臓からのインスリンとソマトスタチンの分泌を促がす。
グルカゴンの分泌は血糖値の低下により促され、血糖値上昇により抑制される。
 コレシストキニンやガストリンは分泌を促し、ソマトスタチンは分泌を抑制する。交感神経刺激は分泌を促がす。

血糖調節
血中のブドウ糖濃度(血糖値)は約100mg/dlに維持されている。血糖値が正常レベルより上昇すると、インスリン分泌が増して血糖値を低下させる。一方、血糖値が正常レベルより低下すると、グルカゴン(及び副腎髄質からでるカテコールアミン)の分泌が増して血糖値を上昇させる。

C:ソマトスタチン
膵臓のソマトスタチンは、ランゲルハンス島のα細胞 β細胞に作用して、インスリンやグルカゴンの分泌を抑制する。


6副 腎
副腎は、腎臓の上端に接して左右1対存在する扁平な三角形の小器官である。副腎は,髄質と皮質に分けられ、おのおの異なるホルモンを分泌する。

A:副腎髄質ホルモン
副腎髄質の顆粒含有細胞(クロム親和性細胞またはクロマフィン細胞とも呼ばれる)から
大量の アドレナリン(エピネフリン)、
わずかの ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、
ごくわずかの ドーパミンが分泌される。

3つ合せて、カテコールアミン とよばれる。

アドレナリン&ノルアドレナリン
@循環系のおよぼす作用
アドレナリン・・・・・心筋収縮力 心拍数増加
ノルアドレナリン・・末梢血管収縮 血圧上昇
A血糖値におよぼす作用
肝臓や筋肉におけるグリコーゲン分解を促し、血糖値を上昇させる
B遊離脂肪酸におよぼす作用
脂肪の分解を促して血中の遊離脂肪酸を増加させる
C酸素消費に及ぼす作用
遊離脂肪酸増加および血糖値上昇の結果、組織の酵素消費量は増加する
D血管以外の平滑筋に対する作用
胃腸運動を抑制し、機関紙を拡張させる。

〔分泌調節〕
副腎髄質ホルモン分泌は、交感神経によって神経性に調節されている。激しい筋運動時、著しい寒冷あるいは温熱刺激時、大量の出血による血圧低下時、低血糖時、酸素欠乏時、情動刺激時などに分泌が急激に増加する。
 このように生体が緊急事態に直面すると、副腎髄質からアドレナリンが分泌され、闘争、防衛などの行動に都合の良いような身体の状態(血圧上昇・高血糖など)がつくられる。これを緊急反応という。ノルアドレナリンは、副腎髄質からのみ分泌されるのではなく、全身に分布されている交感神経節後繊維(汗腺と一部の骨格筋)終末からも分泌される。
□分泌異常
クロム親和性細胞に由来する腫瘍(褐色細胞腫)が発生すると、副腎髄質ホルモンの分泌が過剰になり、高血圧、心悸亢進、発汗、頭痛、悪心、嘔吐などの症状が出現する。


B:副腎皮質ホルモン
副腎皮質からは、数種類のステロイドホルモンが分泌される。これらのホルモンは、糖代謝の調節や電解質代謝の調節、性ホルモン作用などをもつ。 とくに糖代謝に対する作用の強いものを糖質コルチコイド 電解質代謝に対する作用のつよいものを電解質コルチコイドとよぶ。
 副腎皮質は、外側から顆粒層 束状層、網状層の3層に分けられる。

 顆粒層からはおもに電解質コルチコイド(アルドステロンなど)
 束状層からはおもに糖質コルチコイド(コルチゾールなど)
 網状層からはおもに副腎アンドロゲン(デヒドロエピアンドロステロンなど)
が分泌される。


A:電解質コルチコイドの代表的なものは アルドステロンである。

アルドステロン

@腎臓のNa+再吸収に作用
腎臓の遠位尿細管に作用し、Na+再吸収を増大させ、K+の排泄をうながす
ANa+再吸収に伴う細胞外液量増加
血液量現象・血漿Na+濃度低下により、レニン-アンギオテンシン系が作動し水の再吸収が起こり、細胞外液量が増加する。

〔分泌調節〕レニン-アンギオテンシン系
循環血液量が減少したり、血漿中のNa+濃度が低下したりすると、腎臓の糸球体近接細胞からレニンが分泌される。レニンは、血中のアンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンTに変換する。アンギオテンシンTはアンギオテンシンUに変換される。
 アンギオテンシンUは、副腎皮質に作用して、アルトステロンの分泌を促進させる。(アルドステロン分泌はこの他、ACTHによって、また血漿Na+濃度低下、K+濃度の増加の直接作用によって分泌が増す)


B:糖質コルチコイドは コルチゾールとコルチコステロンである。 医療機関でよく“ステロイド”と呼ばれるのはこのタイプである。
@物質代謝に対する作用
肝臓での糖新生を促進し、血糖値を上昇させる。蛋白質の分解を促進する
A抗炎症・抗アレルギー作用
炎症やアレルギー症状を抑える。
B許容作用
カテコールアミンの脂肪分解効果などの発現には、糖質コルチコイドが少量必要である。
C胃に対する作用
胃液の酸およびペプシンの分泌を促進し、粘液分泌を抑制する。そのため、糖質コルチコイド分泌が長期間増加すると、胃潰瘍を生じやすい。
Dその他
抗ショック作用など種々のストレス刺激に対する抵抗力を高める作用をもつ
 糖質コルチコイドの生成・分泌は、下垂体前葉のACTHによって促進される。一方、糖質コルチコイドは視床下部や下垂体に作用し、CRHやACTHの分泌を抑制する(負のフィードバック機構)ストレス刺激は、CRH-ACTH系を介して糖質コルチコイドの分泌を促がす。

C:副腎アンドロゲン

副腎皮質から分泌されるデヒドロエピアンドロステロンなどは、身体を男性化する作用があるが、活性は弱い。正常状態ではほとんど働いていない。副腎アンドロゲンの分泌は、糖質コルチコイドと同様に、CRH-ACTH系によって調節されている。
□分泌異常
@副腎皮質機能低下
糖質コルチコイド 電解質コルチコイドの分泌低下により、アジソン病が起こる。症状としては、皮膚の色素沈着、低血圧、低血糖、心筋萎縮、Na+の過剰排泄などがみられる。
A副腎皮質の機能亢進
1)クッシング症候群
 糖質コルチコイドの過剰分泌によっておこる。
 満月様顔となり、体内の蛋白質現象、高血糖、高血圧、精神異常をきたす。
2)コン症候群
 電解質コルチコイドの過剰分泌によって起こる。
 Na+貯留、K+消失がおこり、多尿、多飲、高血圧、虚弱などの症状を起こす。
3)副腎性器症候群
 副腎アンドロゲンの分泌過剰によって起こる。
 女性では、体型の男性化がおこる。思春期の男性においては、精巣が未熟であるのに、第2次性徴のみが早熟する。

7精 巣

男性化作用を有する天然および合成物質を総称してアンドロゲン(男性ホルモン)という。精巣から分泌されるアンドロゲンは、テストステロン(T)である。(注:アンドロゲンは副腎皮質、卵巣からも少量分泌される)

 精巣は、多数の精細管が束になって並んだものである。精細管の間を埋める間質にある間質細胞(ライディッヒ細胞)からテストステロンが生成・分泌される。


精細管には、分裂増殖して精子を形成する精細胞と、精細胞に栄養を送るセルトリ細胞がある。
テストステロンは

@セルトリ細胞に作用して精子形成を促進する
A男性副生殖器(前立腺 精のう)の発育を促進し、機能を維持する。
B男性の第2次性徴の発現(外生殖器の発育、体毛の成長、甲状軟骨の突出、声変わりなど)をしめす。
C筋肉及び骨基質の蛋白合成を促進する。(蛋白同化作用)
D性欲を亢進させる

テストステロンはの生成分泌は、下垂体前葉のLHにより刺激される。一方テストステロンはGnRHおよびLH分泌に対して負のフィードバックをおこなう。

8卵 巣

女性ホルモンは卵巣で合成されるホルモンであり、
卵胞ホルモン(エストロゲン)、
黄体ホルモン(プロゲステロン)
などがある。



卵巣は皮質と髄質よりなる。皮質には卵胞(原始卵胞、グラーフ卵胞など)、黄体などがある。卵胞からは卵胞ホルモンが、黄体からは黄体ホルモンが分泌される。

髄質は血管組織で占められている。

卵胞は原始卵胞(卵母細胞とそれを取り囲む細胞よりなる)、グラーフ卵胞の順に発育する。
グラーフ卵胞は、十分に成熟すると破裂して,卵子を放出する(排卵)
排卵後、卵胞は赤体を経て黄体になる。卵子が受精すると黄体は妊娠黄体となり、出産まで維持されるが、受精しなければ仮黄体となり、やがて退化して白体となる。

ヒトは生後、約100万の卵胞を持つ。卵胞は思春期以後、約4週ごとに1個ずつ成熟して左右の卵巣から交互に卵子が放出される。(生殖可能期において合計約400個) 残りの大部分の卵胞は退化して閉鎖卵胞になる。

A:卵胞ホルモン(エストロゲン)
卵胞ホルモンを総称してエストロゲンといい、エストラジオール、エストロンおよびエストリオールの3種がその代表的なものである。
生理作用は、エストラジオール、エストロン、エストリオールの順で強い。

エストロゲンは

@卵胞の発育を促がす
A卵管運動を高め、卵子の子宮腔への輸送を助ける
B子宮粘膜と膣上皮の増殖を促がす
C乳腺の発育を促がす
D女性の2次性徴の発現
  (乳腺の発達 骨格の女性化 皮下脂肪の沈着など)を促がす
E性欲を亢進させる


エストロゲンの生成分泌は、下垂体前葉のFSHによって刺激されるが、LHの存在も必要とする。エストロゲンは、GnRHおよびFSH、LHに対して負のフィードバック調節を行う。

B:黄体ホルモン(プロゲステロン)
黄体ホルモンの主なものはプロゲステロンである。プロゲステロンは、

@受精卵の着床を容易にし、妊娠を維持する作用をもつ
  (子宮粘膜の腺分泌亢進)
A乳腺の発育を促がす
B排卵を抑制する
C体温上昇作用をもつ


プロゲステロンはの生成分泌は、下垂体前葉のLHによって刺激される。一方プロゲステロンは、GnRH、およびLHに対して負のフィードバック調節を行う。