ロシアの国民飲料・クワスをつくる


 ……モスクワを去る前になって、シコロフ博士が一かかえのクワスの瓶を持ちこんで来たので、われわれは、やっとクワスにめぐりあうことができた。早速コップに注ぐと、ブツブツと泡が立ちのぼる醗酵中のビールのような感じで、色は日本の麦酒より大分濃く、酵母や乳酸菌でうすく濁っている。ドイツでおなじみのワイスビーヤによく似ている。飲んでみると、甘ずっぱくて苦味はないが、ビールのように麦芽の香味も豊かである。また、糖蜜のような香気や果実の味もする。ビールに糖蜜や果汁をまぜたらこんな味になるかと思える。とにかく複雑でおいしい飲物で、流石国民飲料といわれるだけの貫禄十分である。

 ……クワスは大きく分けて二つの種類がある。その一つは「甘味パンクワス」で、他は「酸味レモンクワス」であるという。まず、ロシヤ特有の黒パンをちぎって水に浸し、数日後これを荒い布で濾し、濾液に砂糖とパン酵母を加えて醗酵させる。醗酵のすんだ後に干葡萄などで味つけをする。これがパンクワス。酸味クワスの方は、干葡萄やみかんの汁に砂糖を加えた煮出し汁にパンやパン酵母を加え、醗酵させて造る。……

 坂口謹一郎「パンの酒」より

 ・ここに掲載するクワスの作り方は、笹野好太郎 著『趣味の酒つくり ドブロクをつくろう実際編』の記述をもとに自由にアレンジしたものです。坂口博士の上記の分類からすれば、「酸味レモンクワス」の部類だと思われます。黒パンを使うという最小限の約束さえ守れば色々な作り方があるようなので、やる気ある方はそれぞれお好みで工夫してみるといいとおもいます。


● 準備

 前もって揃えておく材料・道具

  ・ライ麦パン 200g(角形のドイツパン「シュレーゼンブロート」がお奨めだが丸い田舎パンでも可。あまり塩の強いものだとしょっぱくなるのでお薦めできない)

  ・水 1.2リットル
  ・レーズン 100g
  ・レモン汁 50ml
  ・ハチミツ 大さじ5
  ・ショウガ 薄切り数片(任意)

  ・タカジアスターゼ 4錠(『新タカヂア錠』。酵素製剤で麹・麦芽などの代用。澱粉を糖化するのに使う。250錠入りが薬局で1000円ほど)
  ・ドライイースト 一包

  ・3〜4リットル程度の容器

● 仕込み

 まず、1.2リットルの水を火にかけ、レーズン、レモン汁、ハチミツ、ショウガ片を加え10分ほど煮沸する(お湯に十分材料の香味を含ませる!)。少し水分が蒸発したくらいが丁度いいので、減っても補充はしなくてよい。

 ・レーズンは植物油でコーティングされているので、投入前に熱湯で油をよく落としておく。そうでないと出来上がったクワスの上に黄色い油が浮いて実に見栄えが悪くなってしまう。

 火を止めた先の容器にパンを細かく砕いて入れ、よくかき混ぜる。

 仕込み容器に先の材料を移し、しばらくさます。おおむね60度以下まで温度が下がったらタカジアスターゼを加える。
 さらにさまし、人肌以下まで下がったらドライイーストを入れてよくかき混ぜ、暖かい暗所に置いて発酵を待つ。

● 発酵中

 夏場、気温30度程度でならば丸3日間発酵させる。
 一日一回程度ふたを開け、よくかき混ぜる。

● 瓶詰め

 三日ほどたって発泡も落ち着き、三層に別れた液の中層の水が透明になったら瓶詰め。

 用意するもの

  ・漏斗
  ・ふきん
  ・300ml入りの空瓶5本または500ml入りの空瓶3本(開栓すると炭酸が抜けるので一度に飲みきれる量を瓶詰めする。今回は500mlを3本)
  ・濾液を一時溜めておくための容器

  ・100ccのぬるま湯にハチミツ大さじ5を溶かした液

 容器からおたまでもろみをすくい、漏斗あるいはざるのようなものにかぶせたふきんに移して別の容器へ濾過する。固形分がふきんにたまって次第に出が悪くなってくるのでけっこう力を入れて搾る。
 濾過を終えたら濾液にハチミツ水を加え、よくかき混ぜてから漏斗を通して瓶詰め。

 その後、炭酸を含ませるために2時間ほど室内に置いて追発酵させる。糖分を加えたのでふたたび勢いよく発泡する。様子を見ながら、瓶が割れない程度に加減してください(内部の圧力がじかに分かるプラスチックのペットボトルなどがやりやすい。私が使っているのはカナダドライの炭酸水の瓶です)
 ある程度炭酸が出たと思われたところで冷蔵庫に移す。

 完成! よく冷やしてお飲みください。


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