低温殺菌牛乳



 余分に加熱していない分、タンパク質の熱変性や、ビタミン類の分解が防がれ、よりマイルドでおいしいと言われています。

 牛乳といえば、牛の乳。べこつながりということで行ってみましょうか・・。
 


「牛乳もどき」に気を付けろ
低温殺菌牛乳の切り欠き  「牛乳」と呼べるのは成分無調整のものだけ。加工乳や乳飲料は「牛乳」ではありません。「ジュース」と呼べるのが100%果汁のものだけであるように。いや、ジュースの場合は「濃縮果汁還元」が許されるけれど、牛乳はそれがないだけより厳しいかもしれません。 「コーヒー牛乳」や「フルーツ牛乳」は一般的な呼称としてはあり得ても、ラベルの表記としては許されません。もともと乳脂肪分の多いジャージー種の乳でつくった「特濃牛乳」はあり得ても、乳脂肪を添加した「特濃牛乳」」はダメです。「特濃」なら○。
 平成15年11月28日から、「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」等の分類・表記が始まりました。
 「成分調整牛乳」・・生乳から乳脂肪分や水分を減らしてコクを出すなど、引き算で成分の調整をしたもの。
 「低脂肪牛乳」・・・生乳から乳脂肪分のみを減らしたもの(乳脂肪分1.5〜0.5%)。
 「無脂肪牛乳」・・・生乳から乳脂肪分をほぼ取り去ったもの(乳脂肪分0.5%未満)。
 これらの文言は切り離して使うことはできませんが、「牛乳」の二文字が含まれる以上、もともと注意する意識の希薄な消費者は区別を誤る可能性が極めて高いです。ましてやこれらの成分表示は全て「100%生乳」となります。
 紙パック入り牛乳の場合、てっぺんに丸く切り欠きがあれば、それは牛乳です。でも、地方の牛乳には切り欠きがありません。まだまだだな。

低温殺菌牛乳
低温殺菌牛乳  「低温殺菌牛乳」って何だかご存じですか?牛乳の殺菌をする際に、悪い菌が殺せる最も低い温度(62〜65度C、30分)で加熱殺菌した牛乳です。フランスの細菌学者パスツールが発見した方法であることから「パスチャライズド」と言います。ちなみに、パスツールはワインの変質を防ぐ方法を研究するうちにこの方法を発見したのですが、日本酒づくりでは昔から「火入れ」によって発酵がコントロールされていました。すごいですね。
 もちろん温度が高ければ高いほど細菌を確実に殺せるわけですけど、それではワインの風味が損なわれるし、アルコールが蒸発してしまいます。このリクツは牛乳にも当てはまりますよね。
 ところが日本の牛乳は、120度C、3秒などという殺菌法が一般的です。水の沸点を超えた温度で殺菌することから「超高温殺菌」と言います。高圧で沸騰を押さえながら加熱するのだそうです。こうして殺菌した牛乳はほんのりコクが出てきます。冷製スープのような牛乳を飲んでいることになりますね。実は同時にえぐみや臭みが出てしまうのですけど、最近はそれを嫌って、工夫によって酸化を抑えて殺菌し、「おいしい牛乳」が造られています。でも「超高温殺菌」はやめないんですね。
超高温にさらしたうえに、工夫で酸化を防ぎ、「ナチュラルテイスト」とは。私にはそのネーミングのセンスが理解できません。

 どうしてそんなに念入りな殺菌が必要であったかと言えば、1950〜60年代に、牛乳が日本で普及し始めた頃、乳質が悪く、冷蔵技術が未熟であったのを補うためであったと言われています。
 今では「雪印事件」のような人為的なものがない限り、冷蔵技術に問題があるとは思えません。ところが、牛乳の製造に関するHACCP(ハサップ)の認証では、より厳しい条件を課し、原乳がそれをクリアーしない限り低温殺菌による製品を認めていないのです。
 どうやら、農水省や厚労省、業界の有力どころは、大規模な施設を必要とし、たっぷりと殺菌のマージンを持った超高温殺菌を推奨しているようです。
 となれば、逆に低温殺菌の牛乳は、乳質の良さを保証された牛乳であるとも言えます。  乳質が保証されている上、なるべく風味や成分が変質しない方法で殺菌された牛乳。と言うわけで、私は低温殺菌の牛乳に固執し始めました。 

低温殺菌牛乳にはまる
低温殺菌牛乳  元々牛乳はあまり好きな方ではありませんでした。小学校で給食には必ず付いてきたものでしたが、気乗りがしない日には手を付けずに 残していた方です。乳糖にあまり強い方ではなかったのかも知れません。「べこ」の風上にも置けないけしからん体質でした。
 それが高校に入った年の夏から夏バテ対策で意識して飲むようにして克服したのです。
体はある程度慣らしていけるものです。しかし今でも朝イチでキンキンに冷えた物や、変わった牛乳を飲むとお腹がごろごろしてきます。  で、低温殺菌牛乳ですが、最初に飲んだときにはあまり印象が良くなかった。何だかあっさりし過ぎている上に、例によってお腹がごろごろし始めたからです。 「こいつは熱変性していないタンパク質に、かえってアレルギー様の反応を起こしているのではないか?君子危うきに近寄らず。」 というわけで、かなり長い間避けていました。
 それが、一冊の本をきっかけに、好んで低温殺菌牛乳を買い求めるようになったのです。
「日本の牛乳はなぜまずいのか」  平澤正夫氏の著した「日本の牛乳はなぜまずいのか」(草思社)を読んでのことでした。「・・なぜまずいのか」なんていきなり言われても困る。 これまでそんなにまずくは思わなかったけれど、いやいや、世界の人々はもっとおいしい牛乳を飲んでいるのかも知れない。 と思ったのがひとつ。それから、豊島の浄化で名をあげつつあった中坊公平氏が昔取り組んだ「森永ヒ素ミルク事件」のことが載っていたので、まあ読んでみるかと思ったのでした。

 [この本によると日本の牛乳は世界的に見て非常に特殊な物らしい。 殺菌法とパッケージがアンバランスな為、「悪いとこ取り」になってしまっているという。 牛乳の殺菌方には、「120℃3秒」のような超高温の殺菌法と、 「75℃15秒」のような高温の殺菌法。そして「65℃30分」のような比較的低温の殺菌法がある。 温度が高いほどタンパク質の熱変性や、ビタミン類の破壊がおきやすい。香りなどの点でも不利になる。 一方、牛乳容器として今や最も流通している紙パックの方にも常温で長期保存に耐える缶詰に近いような物と、簡便な紙パックがある。  日本の牛乳として最も一般的なのは、超高温で殺菌し、簡便な紙パックで消費期限の短い「要冷蔵」品である。 つまり、風味より保存性を優先した殺菌法と、保存性に劣るパッケージの組み合わせなのだ。
 低温殺菌牛乳は、「風味優先、生もの扱い」の理屈にあった組み合わせということになる。]

 日本の牛乳はどうしてこんなねじれが生じてしまったのだろう。この本の中に登場する藤江才介氏の半生を追ううちに、 それは少しずつほぐれ、わかり始めるのですが。
 でもここでは深入りはよしましょう。


期限日の罠
消費期限と品質保持期限  理屈にかなった製品であるこれらの低温殺菌牛乳が、たとえばスーパーの牛乳売り場でどんな扱いを受けているかといえば、何か少し値段の高い牛乳として超高温殺菌の製品とまぜこぜで 並べられたりしています。それどころか、「特濃」などの加工乳と隣り合わせだったりしていることも珍しくありません。
「何だ、値段の順かよ。ワカッテネーナ」と、お店の中で言う・・わけないじゃないですか(汗)。心の中でつぶやきます。
 では、買う方の立場としては、どうやって牛乳を選んでいますか?値段が同じなら、なるべく消費期限・品質保持期限日の遠い、新鮮なものを選んでいましたね? ところがここにも罠が仕組まれているんです。超高温殺菌と低温殺菌では表記の日数が違うんです。超高温殺菌の牛乳は品質保持期限として8日。低温殺菌の牛乳は消費期限5日です。 と、いうことは残り3日の低温殺菌牛乳の方が、残り5日の日付の付いた超高温殺菌の牛乳より新しいということになります。 さらに、130度Cで殺菌し、パックを組み立て後に殺菌するなどの管理を施した、ESL(Extended Shelf Life)製法を用いた牛乳は、品質保持期限が12〜14日となっています。 つまり、ESL製法の牛乳と、低温殺菌の牛乳が同じ日付なら、低温殺菌の方が1週間以上新しいということになります。いずれの牛乳も、開封後は2日以内に飲みきることが望ましいのは同じです。
 製造年月日ではないところがみそですね。今まで、古いのを選んでませんでした?

ホモジナイザー
ノンホモ低温殺菌  もう一つ、牛乳のおいしさを決める要素として「均質化」の処理を受けるかどうかがあります。
 牛乳は、子牛の成長に必要ないろいろな成分が混ぜ合わされた混合物ですよね。けっして完全な水溶液ではありません。コップに入れて長い時間静置すれば、軽い脂肪分は浮き上がり、 重い成分は底に沈んでいくはずです。常にかき混ぜていないと、大きな容器の上と下で、味も成分も違ってしまうことになります。それを避けるために行うのが「均質化」の操作です。 ホモジナイザーという機械に牛乳を通し、成分のうち、脂肪などの比較的大きな粒子を砕きます。すると、家庭で飲み終わるまでほぼ均質でいる牛乳になるというわけです。 均質化していない牛乳はしばらくすると脂肪分が浮き上がり「クリームライン」という色の違う境目が現れます。また、粒子が大きいために、少しくすんだ色をしています。それに対して、 「均質化」をした牛乳は粒子をきめ細かくしたためにまぶしいほど真っ白。そして、賞味期限いっぱいまでもほぼ変化無くそれが続きます。 透明な牛乳瓶越しに、その差は歴然でした。そこでホモジナイザーを最初に導入し、製品名としたのが「森永ホモ牛乳」です(現在は販売されていません)。
 「均質化」は、功罪相半ばですね。均質な状態がいつまでも楽しめる反面、本来牛乳が持っていた味わいが損なわれてしまう可能性があるわけですから。少なくとも、 牛乳とはクリームが浮くものだという当たり前のことが起きない(経験できない)わけで、この点において自然な味わいからは外れてしまいます。
 というわけで「ノンホモジナイズド牛乳」は、低温殺菌とともに、自然な味わいを求めて再び出回り始めているわけです。

ESL「おいしい牛乳」
 超高温殺菌でホモジナイズド。全く正反対の「おいしい牛乳」には、どんな工夫があるのでしょう。
 まず「おいしい牛乳」を大ヒットさせたのは明治乳業でした。ついで森永乳業が続きました。どちらも、どうして牛乳嫌いになるのか、何がまずい牛乳なのかを調べ、 それを取り除くことでおいしい牛乳をつくろうとしたのです。調査の結果、これもともに、最も嫌われる理由は、加熱殺菌時に付いてしまう「焦げ臭」であることを突き止めました。 そこで両社はこの「焦げ臭」を付けないための工夫を探しました。
 明治乳業は加熱前に酸素を取り除くと、酸化を防ぎ、焦げ臭が生じにくいことを突き止めました。酸素を取り除き、一気に超高温殺菌する方法を「ナチュラルテイスト製法」と名付け、導入したのです(メグミルクの「低温脱気製法」は、同様の理由から為された工夫ですが、このネーミングの紛らわしさは・・いけませんね)。
 また、森永乳業は、加熱した金属板の間に牛乳を通して殺菌するこれまでの方法だと焦げ臭が付いてしまうということで、高温の蒸気と牛乳を直接混合し、一気に既定温度にして殺菌を済ます。 後に吹き付けたのと同量の蒸気を取り除き一気に冷やすという殺菌自体の工夫をしました。
 こうして「焦げ臭」を回避した牛乳が「おいしい牛乳」なのです。大変な技術力です。しかし、何とも釈然としないのは、牛乳をいじめる方向で解決が図られているからでしょうか。 焦げ臭回避を素直に進めたいなら、自ずと殺菌温度を下げる・・すなわち低温殺菌へと向かうはずです。牛乳にはもともと酸素が含まれているものであるし、それが自然というものです。蒸気に巻かれて失うのは本当に水蒸気だけなのでしょうか?揮発成分は?ビタミンは?カルシウムのコロイド化は本当に味を変えないのだろうか? 「本当のおいしさ」を目指して、最大の敵は倒したが、それに次ぐ難敵は放っておいていいの?とても歯がゆい。もどかしい。 何だか牛乳が生ものであることを忘れてしまっている気がします。さらに言わせてもらうなら、超高温殺菌を前提として製品開発が進んだように見えます。
 実は両社の「おいしい牛乳」の共通点として、ESL(Extended Shelf Life)製法を用いた牛乳であることが挙げられます。だから殺菌温度はこれまでの120度Cより上乗せの130度Cとなっているのです。 これは単なる偶然ではないと思います。ESL製法の新製品を出したいが、ESLを導入するにはより高温での超高温殺菌が避けて通れない。これをそのまま行えば必ず「焦げ臭」が付いてしまう。だから工夫が必要になった。こう考える方が自然です。 そうだとしても、「おいしい牛乳」の栄誉は揺らぐものではありません。問題点を克服したばかりか、むしろアピールポイントとした商品パッケージのすばらしさ。お見事と言うほかありません。
 牛乳をいじめてはばからないのはなぜか。「それは彼らがもともと「練乳屋」だからだ」と看破したのは上で紹介した藤江才介氏でした。練乳づくりは牛乳をぐつぐつと煮詰めて行われます。そういえば、両社とも系列の製菓はミルクキャラメルのおいしい会社でした。 そういう方向への製品進化は必然だったのかも知れません。


特別牛乳!
特別牛乳  牛乳にも格があります。普通の牛乳は「牛乳」です。それに対してセレブな牛乳を「特別牛乳」といいます。
 何が特別なのかと言えば、乳質が一定以上の基準を満たし、殺菌は、するなら低温殺菌限定。それを取り扱った工場がまた、厳しい検査の末に得られる認証を受けていないと名乗れない牛乳だということです。 全国飲用牛乳公正取引協議会によると、特別牛乳とは、「特別牛乳は、牛乳であって特別牛乳として販売するもので、特別牛乳さく取処理業の許可を受けた施設でさく取した生乳を処理して製造したものです。無脂乳固形分8.5%以上、 乳脂肪分3.3%以上を含むものです。これは、極めて限られたルートで販売されています。   原材料は生乳のみです。」とのことです。
 私が知るところ、南関東でこれを生産しているところは千葉県と神奈川県の2カ所だけでした。千葉県の方は皇室の皆様がお飲みになられ、一般庶民には手に入らなかったのでは?・・ ところがこれが、調べても見つからない。もうやめてしまったのでしょうか。それともガセ?  で、神奈川県の方は、「こどもの国」の中だけで製造販売されており、500ミリリットル入り紙バック1種類のみ。よそでは手に入らない代物です。
 日本全国でも僅かに7カ所であると思います。前出の神奈川県横浜市にある雪印こどもの国牧場、北海道の中札内村レディースファーム、群馬県の東毛酪農業協同組合、愛知県の中部乳業、京都府のクローバー牧場、広島県のチチヤス乳業、そして、福岡県の白木牧場です。

究極の無殺菌牛乳!!
 特別牛乳の第1号はチチヤス乳業株式会社で、昭和12年のことでした。その後、認証の基準は変わりましたが、搾乳してすぐに同じ建物で製品にすることや、殺菌するなら低温殺菌に限るということなどの厳しい基準をクリアーするのが困難で、認証を受けた場所はごく僅かのままでした。  7カ所のうちで、最も後から認証を受けたのは北海道の中札内村レディースファームですが、ここの牛乳こそが、特別牛乳の中でも頂点に立つ究極と言っていい牛乳なのです。
 それは、加熱殺菌をしていない、無殺菌牛乳です。
 牛の乳を搾って、冷やして、詰めるだけ。しかしそのために有害菌ゼロを維持する努力は大変なものです。また、それを証明することも並大抵のことではありません。よく認可が下りたものです。
 このファームは平成12年に起業した酪農ベンチャー企業で、それまで社長の長谷川氏は北海道の酪農とは無縁だったということです。初めからよほどしっかりした経営理念がなければ、こうはいきません。「レディースファーム」の名の通り牛の世話をするのは女性ばかり。 女性は常に消費者の目線で生産できるし、牛に優しく接することができるということだそうです。  ここの採乳場には牛糞よけがありません。それというのも、乳の張った牛が自主的にやってくるから糞をしないのだそうです。人が牛を無理矢理連れてくるとストレスや緊張などから採乳の最中でも糞をしてしまうが、ここではそれがないというわけです。 牛に優しく接し、有害菌ゼロへのきめ細かい配慮をたゆまず続ける。女性ならではの仕事ぶりが無殺菌牛乳の生産を支えているのでしょう。
無殺菌牛乳の製品名は「想いやり牛乳」です。
 ちなみに、特別牛乳で無殺菌牛乳の第1号は1987年に製造が始まった東毛酪農業協同組合の「無殺菌牛乳」でした。しかし、施設が老朽化したために数年前に生産をやめ、現在は根利牧場に新設された施設から低温殺菌の特別牛乳「みんなの根利牧場」が生産されています。


特別牛乳の製造者
製 造 殺菌処理等 製品名等
(北海道)
  (有)中札内村レディースファーム
無殺菌牛乳、
ノンホモ
「想いやり牛乳」
現在唯一販売されている無殺菌牛乳
(群馬県)
  東毛酪農業協同組合
63度C,30分、
ノンホモ
「みんなの根利牧場」
1987年、日本初の無殺菌牛乳を製造販売(現在休止)
(神奈川県)
  雪印こどもの国牧場
65度C,30分「サングリーン」
500mLのみ。こどもの国の売店で販売。
(愛知県)
  中部乳業株式会社
63度C,30分「中部特別牛乳」
(京都府)
  農事組合法人クローバー牧場
62度C,30分、
ノンホモ
「クローバー牧場特別牛乳」
(広島県)
  チチヤス乳業株式会社
65度C,30分「チチヤス特別牛乳」
(福岡県)
  白木牧場
65度C,30分、
ノンホモ
「白木のジャージー牛乳ノンホモ低温殺菌」
 以上7カ所*代表的な製品名1つを記載
         

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