レビュー

主にSF小説の書評です.
原稿募集中!!!


題名 デリラと宇宙野郎たち <未来史@>
原題 THE PAST THROUGH TOMORROW
作者 ロバート・A・ハインライン
訳者 矢野 徹
出版 早川書房(SF文庫670)
年代 1986
本国出版 1967
 <著者紹介> Byデーモン・ナイト

あらすじ
 <生命線>
 ピネロ博士は人の生命線を読み取る機械クロノヴァウタメーターを発明する。それは反響を巻き起こすが反対勢力も存在し...
 <道路をとめるな>
 アメリカの道路都市ではコンベア式の動路帯による物、人の流通を可能にしていた。
ところが自分たちの立場に不満をつのらせていた道路技手たちがストライキを起こしパニックがはじまる..
 
<爆発のとき>
 原子力発電所では二人の技術者に監視係一人という体制で作業をすすめていた。
技術者にとってはみはられる圧迫感があり職を捨てるものもおおいが何よりも恐れられたのは事故への恐怖感からの発狂であった。
そうした問題点を解決するために呼ばれたのがレンツだった...
 
<月を売った男>
 ハリマンは多くの大会社に関係している男だ。だがこうした財産も彼にとっては少年時代からの夢をかなえるための手段だった。
それは月に行くこと...
 
<デリラと宇宙野郎たち>
 宇宙ステーション建設場には荒くれ男たちが働いていた。
そんな彼らをまとめるのがおれ≠フ仕事だ。だがそんな中で女の技師があらわれてしまった...

感想
一語一セントのデビュー作<生命線>や宇宙開発SFの白眉<月を売った男>など読み応えのある短編集。
もっとも<月を売った男>はSF的な展開よりもハリマンが月ロケット開発を成功させるためにあの手この手と繰り広げる術中権謀が中心となって話がすすめられる。
そのラストはしみじみとした味わいが感じられた。
 ほかにも原子力と人々の恐怖を描いた<爆発のとき>や宇宙開発の現場をユーモラスに描いた<デリラと宇宙野郎たち>など多様なハインラインのパターンが楽しめる。 

評者:凹


題名 地球の緑の丘 <未来史A>
原題 THE PAST THROUGH TOMORROW
作者 ロバート・A・ハインライン
訳者 矢野 徹
出版 早川書房(SF文庫673)
年代 1986
本国出版 1967

あらすじ
<宇宙操縦士>
 久しぶりの休暇で妻とすごしていた操縦士のジェイクだが正規の操縦士が飛べなくなったため交代として呼び出されてしまう。
妻の反対を押し切りジェイクは仕事に向かう。様々なことに思いをめぐらすジェイクだったが見学にきた少年のいたずらで船は航路を外してしまった...
 
<鎮魂歌>
 ハリマンという一人の老人が月のロケットの見学に訪れた。ロケットの飛行のために身体検査を受けたハリマンだが結果はNO.
ハリマンは仕事が終わった飛行士たちを呼び出し話をもちかけた。わしを月へ連れていってもらいたいんだ...

 <果てしない監視>
 月基地の中尉ジョニィは副指令のタワーズ大佐に呼び出された。
ジョニィは大佐からクーデターをもちかけられる。
いったん切り抜けたジョニィは核爆弾貯蔵庫を占領し大佐の野望を阻止しようとする...
 
<坐ってくれ、諸君>
 ジャーナリストのジャックは天文台のノールズと鉱夫のファッツォの案内で月の地下トンネルを歩いていた。
この時強い地震が起こりジャックたちはトンネルに閉じ込められてしまった。さらに悪いことに穴があき空気が漏れていく..
 
<月の重い穴>
 ディックと父、母、そして幼い弟は父の仕事で月旅行にでかけた。
仕事も終わり一家は月の表面の見学ツアーに出かけた。
ツアー中弟が行方不明になり一同は大騒動となる...
 
<帰郷>
 アランとジョゼフィーン夫婦は念願かない月から地球に帰ることになった。
帰り着いた地球だったがそこは彼らが予想していたところとは違い人々の反応も冷たいものだった...
 
<犬の散歩も引き受けます>
 ジェネラル・サービス社は世界規模の何でも屋。
そんな彼らに政府からの依頼がまいこむ。
内容は太陽系の知的生命体の種族それぞれの代表者の接待の準備。
それは重力の問題など多くの難題が絡んでいた。それを地球上でやれという...
 
<サーチライト>
 天才少女ピアニスト盲目のベッティ≠ヘ月基地で慰問を行っていた。
月上を飛行機で移動中、レーダーから外れ行方不明となる。
広大な月の中で彼女を発見するため、ある作戦がとられる...

 <宇宙での試験>
 宇宙飛行士ソンダースは事故により高所恐怖症となった。
地球に帰ってきたソンダースは友人の家に泊まった。
そこで彼は猫が高みから落ちそうになるのを目撃する...
 
<地球の緑の丘>
 宇宙中に知られる宇宙航路の盲目詩人<宴Cスリングだが彼がはじめから大詩人だったわけではない。
二等ジェット機関士だったライスリングは事故により視力を失った。
船を下りたライスリングは過去の美しい記憶と聴力により雄雄しい歌を紡ぎ出した...

 <帝国の論理>
 金星の開発会社のやり方に反対していた友人と酒を飲んでいたウインゲートは記憶を失い、
目がさめたときは自らが労働者として金星に向かっていることを知る。あの手この手で脱出を図るウインゲートだが...

感想
この短編集でお勧めとなるのは<月を売った男>の続編<鎮魂歌>、
宇宙詩人ライスリングの物語<地球の緑の丘>となろう。
個人的には墜落した月に飛行機とベッティを救う話<サーチライト>が大好きだ。(なんといっても少女の頑張りがよいのだ)
<宇宙操縦士>の男の仕事への葛藤、<鎮魂歌>の宇宙にあこがれた男と宇宙の荒くれもののふれあい、
<犬の散歩も引き受けます>のプロフェッショナル集団の活躍、
<地球の緑の丘>の詩人の旅、と読みどころ満載の完璧な短編集だろう。

評者:凹


題名 ガニメデの少年
原題 FARMER IN THE SKY
作者 ロバート・A・ハインライン
訳者 矢野 徹
出版 早川書房(SF文庫729)
年代 昭和62年
本国出版 1950

あらすじ
ビルは父親とともに木星の衛星ガニメデに移住することになった。
人口過密と食糧危機にあえぐ地球の唯一の解決策としてそれは奨励されていた。
だがたどり着いたガニメデではビルと父親の思惑とは違い歓迎されないものだった。
設備も何もかもがそろえられていないガニメデで彼らは土地を見つけ耕すことから始まった。
過酷なガニメデの状況でビルたち親子はどう乗り切ろうとするのか…
 
感想
 ハインラインお得意の少年の成長物語。
少年ビルが様々な人間や自然環境にぶつかり成長していく。
それは説教じみたものでなく自然と感情移入できる。
ビル親子が近隣の一家の手助けを得ながら土地を開拓していくさまはアメリカ人が理想とする自然人をあらわしているのではないだろうか。
 また訳者あとがきで矢野さんが自身の戦争体験や現在の日本の状況と比べて読まれているのも興味深い。

評者:凹 


題名 ナイトサイド・シティ 
原題 NIGHTSIDE CITY
作者 ローレンス・ワット=エヴァンズ
訳者 米村 秀雄
出版 早川書房(SF文庫1030)
年代 1993年
本国出版 1989年

あらすじ
 惑星エピメテウスは自転をしないと考えられており移住してきた人々は日光のあたる側を避けて夜側にシティを築いてすんでいた。
だがその後エピメテウスの自転が判明した。これはシティが居住不可能になることを示していた。
そんななかシティの片隅に住む女探偵カーライルはある日奇妙な依頼を受ける。
依頼人の住む土地の買占めを探ってほしいという。やがて住めなくなる土地の買占めとはどういうことだろうか?
カーライルは調査を引き受けることにした…

感想
 「移住前にちゃんと調査をしろよ」というつっこみは却下だ。
この作品はSFを舞台とした女探偵の活躍を描くハードボイルドである。
もっとも女性を主役としたミステリ作品が多々ある現在では女探偵という言葉自体が陳腐に映るかもしれない。
しかし筆者としてはSFと女探偵という組み合わせはありなのだ。
途中で敵にボコられてピンチにおちいるという基本もおさえている。
また惑星エピメテウスという特殊な部隊でこれまたナイトサイド・シティという特殊な町はハメットが描いた暗黒街と比較してもよいできだと思う。
 ローレンス・ワット=エヴァンズという人は、解説にも触れられているが、
『80年代SF傑作選「下」』に収録の「ぼくがハーリーズ。バーガーショップをやめたわけ」の作者である。

評者:凹


題名 第81Q戦争<人類補完機構>
原題 INSTRUMENTALITY OF MANKIND
作者 コードウェイナー・スミス
訳者 伊藤 典夫
出版 早川書房(SF文庫1180)
年代 1997年
本国出版 1979年

あらすじ
 <人類補完機構年表>
 
<序文>フレデリック・ポール
人類補完機構の物語
 
<第81Q戦争>
 未来のチベットとアメリカの戦争模様を描く。
国際戦争委員会の認定の元、遠隔操作の戦闘機による戦闘。勝利はどちらの手に…
 
<マーク・エルフ>
 ナチスの支配を避け一万六千年の後に地球に帰ってきた少女カーロッタ・フォムハウトに現在の地球を知るすべはなかった。
ロケットから投げ出されたカーロッタの目の前には<愚者>が立っていた…
 
<昼下がりの女王>
 チャルズとオーダのもとに見知らぬ箱が落ちてきた。その中には若い女が入っていた…
 
<人々が降った日>
 ドビンズ・ベネット老が記者に語る物語。
ある日、何千万人もの人間がパラシュートで降りてきて金星を乗っ取ったんだ…
 
<青をこころに、一、二と数えよ>
 ヘレン・アメリカはミスター・グレイ=ノーモアを追って二百年の旅に出た。
それは想像を絶する旅だった…
 
<大佐は無の極から帰った>
 ハーケニング大佐は二次元化の宇宙船で旅立ち、帰ってきた。
しかし彼は人間らしい反応を失っていた…
 
<ガスタブルの惑星より>
 アンガリー・J・ガスタブルの惑星発見は悲しむべき失敗を招いた。
そこの住人アピシア人は不正直さ、貪欲さなどにおいて地球人とつりあいがとれていた…
 
<酔いどれ船>
 ランボーは恋人の元へ帰ってきた。すべてを失って…
 
<夢幻世界へ>
 ロゴフとチェルパスはロシア一の科学者夫婦だ。
そんな彼らがある日憑かれたように研究に没頭した。
その研究は極秘あつかいとされていた…

その他の物語
<西欧科学はすばらしい>
 ある火星人は西欧文明に関心を抱いていた。
どうすれば西欧文明に触れることができるだろうか…

<ナンシー>
 ゴードン・グリーン少尉はワレンスタイン将軍の元に呼ばれた。
深宇宙へと旅立つグリーン少尉へ彼の頭に注入されたソクタウィルスについて語ろうとする…
 
<達磨大使の横笛>
 古代インドにおいて一人の金属細工師が魔法の横笛の製法を発見した。
それは多くの物語を生み出した…
 
<アンガーヘルム>
 ネルスン老人をテープの前に坐らせたとき、あの言葉がひびいてきた瞬間を覚えている。
それ以前、事件は四つの場所から広まり始めた…
 
<親友たち>
 男は病院にいた。彼は再び宇宙に出ることを望んだ。そして友人たちの行方を…

感想
 筆者の尊敬するスミス師の短編集である。
中でも<ナンシー>、<親友たち>の読後感は静かな悲しみをみせてくれるものである。
他にも表題作<第81Q戦争>のほのぼのとした未来の戦争や<ガスタブルの惑星より>のブラックユーモアはシリアスなスミスの他の<人類補完機構>シリーズとは違う趣をみせていて楽しませている。
ユーモアという点では<西欧科学はすばらしい>の火星人と地球人の掛け合いも見事にはまっている。

評者:凹 


題名 ブレードランナー2 レプリカントの墓標 
原題 BLADE RUNNER2 The Edge of Human
作者 K・W・ジーター
訳者 浅倉 久志
出版 早川書房(SF文庫1307)
年代 単行本 1996年
   文庫  2000年
本国出版 1995年
あらすじ
 デッガードはロサンゼルスから逃れてレイチェルと二人暮らしていた。
二人の時間を引き延ばすためレイチェルを冷凍睡眠にかけながら。
しかしデッガードの前にレイチェルとうりふたつの女性であるタイレル社の総帥サラがあらわれたことにより事態は急変する。
以前地球へ逃亡してきたレプリカントは五人でなく六人であったという。
サラの依頼を受けたデッガードは再びレプリカントを追うためロサンゼルスに舞い戻ることになってしまった…

感想
 フィリップ・k・ディックによる『アンドロイドは電気羊の夢をみるか?』とリドリー・スコット監督による映画『ブレードランナー』のふたつの影響を受けた続編。
全体的に見てジーターらしい派手な演出は見られないように思う。
それでもこれはディックの続編というよりもジーターの書いた『ブレードランナー』だ。
物語の舞台となるロサンゼルスの描き方はディックの描くそれよりもよりリアルな感じがする。
無論これはディックのロサンゼルスをけなしているのではなくディックにはディックの、ジーターにはジーターのロサンゼルスがあるということ。
ジーターのロサンゼルスには『ドクター・アダー』のどろどろとした街並みが連想される。
 また物語りの進め方は映画版の影響らしくあまり立ち止まらずにすいすいと読める(筆者は映画『ブレードランナー』を見たことはあると思うが残念ながらはっきりとした記憶がない。したがってこの意見は憶測である)。途中で怪しげな宗教団体がでてくるところも吉だ。

評者:凹


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