パラグアイの言い伝え

夜爪を切ってはいけない、とか食べて直ぐ寝ると牛になる等、日本でも色々な言い伝えや迷信があります。パラグアイでも同じような言い伝えがあり、知らなければ何でも無いのでしょうが、パラグアイの生活が長くなり、最近は何となく気になり出しています。ここではパラグアイの言い伝え、有名な伝説・神話などを取り上げてみます。また、冬至が終わり日が延び始める6月24日(北半球のクリスマスとほぼ同じ時期にあたるのは偶然では無いのでしょう)、サン・フアンの日はパラグアイの人にとっては特別な意味合いがあり、摩訶不思議な力があると信じられ、色々な占いや願掛けをするのです。

1・カワクペの聖母

アスンシオンの郊外にカワクペの大聖堂があり、そこにある聖母像はパラグアイで最も信仰を集め、12月8日はカワクペの日として祝日になっている程です。これほどの信仰を集める聖母像にまつわる話が伝わっています。スペイン統治の始めの頃、ドミンゴ・マルティーネス・デ・イララの治世の時代、トバティの近くにフランシスコ派の拓いたインディオの街がありました。この街に原住民の中でもよく修行を積んだ偉大な彫刻家でホセという者がおりました。

ある日、彫刻にする為の木を探しに森の奥深くに行きますと森の方で大きな音がし、気がつくとムバヤ族という強暴な種族に囲まれ、逃げる事が出来なくなっていました。恐ろしいのをこらえ、必死に崇拝する聖母の事を思いだし、心の底から祈りを込めて「もし助かることが出来ましたら、聖母の像を彫刻すること」を誓ったのです。その時「奇跡」が起きました。草の茂みに姿が隠れてしまったのか、ムバヤ族達は彼を見失ってしまったのです。伝えられている話によりますと、聖母への祈りが通じて彫刻家はその時、透明になり助かったとのこと、早速彼は約束を果たす為、見事な出来栄えの聖母像を2体彫り上げ、1体はドバティにもう1体はカワクペに安置されました。カワクペの聖母像はパラグアイで最も崇められるようになり、多くの人が参拝に訪れるようになったとのことです。


2・イパカライ湖

海の無いパラグアイで皆から愛されているイパカライ湖の成り立ちの話。タパイクワという小さく透き通った泉の近くにまだ出来て間もなく、活力に充ち日増しに発展している混血の人達の部落がありました。ある日、部落の様子を見る為、トゥパ(グアラニ語で神の意味)は変装して一軒の民家を訪れ、「少し飲み水を分けて下さい」と言いました。しかしその家の主人は彼を近くの辺の沼地に住む原住民だと思い水を与えるのを断ったのです。トゥパは怒り、その怒りでその部落に洪水を起こしたのです。ジャゴロンに居た聖フライ・ルイス・ボラーニョスは、部落の生存者達の救いを求める声に応えてトゥパに対して、自分が洗礼を与えた者の悪行の許しを請い、聖書と十字架を手にし、荒れ狂う水におはらいをしました。するとどうでしょう、たちまち水はひき、洪水は治まりました。それによって出来あがったのがイパカライ湖ということです。


3・ニャンドゥティ

奥深い森の中のある部落でのこと、インディオ達は酋長の息子がある美しい娘結婚するというので、大掛かりな祭礼の準備を行っておりました。この息子は婚約者に捧げようと貴重で珍しいものをプレンゼントとしようと、森の奥深くに探しに行きました。

しかしながら、数日経ちましたが一向に帰って来ません。それからまた何日か経過し、心配して帰りを待ったいた婚約者の元に悲報が届いたのです。猟師が、豹の死体の横に彼が死んでいるのを発見し、蜘蛛達が彼の死体の骨の間に住みつき、非常に美しい巣をたくさん張っているというのです。話を聞いた婚約者は死体の在る場所に急いで行き、自分の愛する人の骨を軸に蜘蛛達が巣を注意深く眺めました。そして、他の生き物、蜘蛛達が愛する人の体を独占しているということに対して諦めがつかず、森の中で危険な動物達や敵達によって殺される危険も覚悟の上でその場に残ったのです。かなり長い間蜘蛛達の動きを眺め続けたお陰で巣を編む技術を習得し、彼女も見事な蜘蛛の巣(ニャンドゥティ)の織り手になったそうです。そしてその技術が他のインディオの女性達にも伝えらえ、現在ではイタグア市で盛んに織られパラグアイの特産工芸品になったのだそうです。


4・サン・ブラスの伝説

聖人サン・ブラスはパラグアイの守護神と言われています。昔、ティンブー族のインディオ達はスペイン人開拓者達からひどい扱いを受けたとして、反乱を起こすことを決意し、スペイン人達を自分達の土地から追い出すか、一人残らず抹殺しようとしました。それを聞いたスペイン人達はコルプス・クリスティの砦に立て篭もりティンブー族の攻撃に応戦したのでした。しかし、数に勝るインディオ達の方が次第に優勢となり、長く苦しい戦いが続いた末、玉砕して死ぬことを覚悟するところまで追い詰められたのです。そして、いよいよ最後の決戦の準備をしていたところ不思議な事に突然空より光が射し、白い服を着て剣を持った男が現れたのです。強烈な光に照らされてインディオ達は手にしていた武器を捨て、恐怖に慄いて逃げて行き、砦の中の人達は助かりました。人々は跪きこの奇跡を神に感謝しました。この奇跡は1,938年2月3日、サン・ブラスの日に起きたので、スペイン人達の命を救ったのは聖人サン・ブラスのお陰と考え、それ以来サン・ブラスはパラグアイの守護神となったのです。


5・ジャス・ジャテレ、ポンベロ(パラグアイの妖精)

ジャス・ジャテレとは昼間に現れる小さな裸で遊ぶ黄金の髪の美しい少年の姿をした妖精だと伝えられています。青い目をしていて、手に王杖を持ち、この王杖に不思議な力が宿っていたそうです。昼間に現れて無邪気に遊んでいる少年達を引き付けて森へ誘って連れて行く。悪意は無いのですが彼に接吻されると声が出なくなったり、森へ行ったまま家に子供達が戻らなくなったりする。大人が後を付けようとすると彼は透明になり姿を消してしまう。子供が好きで子供と遊びたがるのですが、親達は余り子供達を近づけないようにしていたのです。現代のパラグアイでは子供達が遠くに遊びに行こうとするのを戒める時に「ジャス・ジャテレに連れて行かれるよ」と言うのです。

ポンベロ、こちらは夜の妖精で背が小さくて毛むくじゃらで嫌いな人間には脅かし、気に入った人間は守るのです。土で出来た竈の中にジェルバ、蜂蜜、カーニャ(さとうきびで作った地酒)を置いておくとポンベロに好かれると言われています。また、手が長くて家々を廻りお土産を置いていない家には物音をさせて自分が来たことを知らせるのです。ポンベロに守られいると暗い道でも平気で歩けると言い伝えられています。現代のパラグアイ、特に田舎では「ポンベロが居るから夜遊びをしないように」と子供を諭したり、家の廻りで物音がすると「ポンベロが来た」などと言うそうです。


6・サン・フアンの日

6月24日はパラグアイではサン・フアン日として宗教的な意味あいを持った民族的なお祭りの日として昔から祝われています。このサン・フアンのお祭り日には普段では余り食べられない純パラグアイ料理を食べ、色々な肝試しが行われたり、占いを行ったりします。その中でも特に有名なのが火渡りで、前の日の昼頃から綺麗な薪を積み上げ火を起こし、夕方になると程よく炭と灰になり、7メートル程の火の絨毯を作り、その上を裸足で渡るのです。日本にもよく似ている風習がありますね。

また、願掛けみたいな事も行われます。例えば、サンフアンの前夜祭に泉の綺麗な水を瓶に入れ土に埋め、1年間埋めたままにしておき、次ぎの年の同じ時間に取り出し、水が綺麗なままであったらその年に結婚出来る、変な匂いが付いていたら一生独身となる。また、前夜寝る前にトウモロコシとトウモロコシの粉をベットの下にばら撒く、夜が空ける時、一番鳥が鳴く前にベットの下に手を入れ、最初に手に触ったものを摘む。男性であって触ったのが粉であれば結婚出来る、粒であれば結婚出来ない、逆に女性は粒であれば結婚出来て、粉の方では結婚出来ないと伝えられています。ただ、それを意中の人に手渡さなければならないそうです。また、色々な占いも行われます。鉛を溶かし水に垂らす、その形によって将来を占うのです。例えば牛の形であれば牛が増える、異性の形ならば結婚出来る等々。そして、言い伝えもあります。前日にバナナの木に深くナイフを刺し込む。サンフアンの日にそれを抜いてみてナイフの刃に結婚する相手のイニシャルが出る。サンフアンの前夜に初めて卵を産んだめんどりの卵を土に埋めておく、一年後のサンフアンの日に掘り返すと金の卵になっている。前日の正午にお金を埋めて、お金の母となる為にここに埋める、明日の同じ時間に取り出してあげる、というような事をとなえる。掘り起こしたお金を貯金箱に入れておくとたくさんのお金が集まって来る。このような事を遊び半分にやり、サンフアンの日にはその成果の話で盛り上がるのです。 


7・パラグアイの言い伝え・迷信

パラグアイにも色々な言い伝え、迷信があります。その幾つを紹介しましょう。最近、筆者も気になり出して来ました。

(1)Rの文字が入っている曜日に爪を切るのは駄目だ、奥歯が痛くなる。(火、水、金曜日)5の付く日に爪を切ると不幸になる。
(2)妊娠中にレバーか血のソーセージを食べると黒い子供が生まれる。
(3)妊娠中にワインもしくはさとうきびの蜜も飲むと黒い子供が生まれる。
(4)妊娠中に箒で掃くと産後の出血が大変だ。
(5)石の上に座ると怠けも者になる。
(6)臼の上に座った男の子は大食いになる。
(7)おしめを絞ってはいけない、赤ん坊のお腹が痛くなる。
(8)災難が起きて欲しい人間には塩を送る
(9)火の中に塩を入れるか、ドアの後ろに箒を逆さに置くと好まざる客を遠ざける。
(10)サン・アントニオの像を盗んで逆さに置いておくと結婚がかなう、でも結婚出来たら元の持ち主に返さなくてはならない。
(11)嫉妬深い旦那を持った場合は臼の中に水を入れてそこから洗面器に入れて顔を洗う、そうすると嫉妬が消える。
(12)子供を良い心の持ち主にする為には子犬の口を舐めさせる。
(13)道に石炭が落ちていると拾う、するとお金が入る。
(14)拾ったお金はしまっておく、さらにお金を引き付ける。(15)太陽の出る方に頭を置いて寝ろ、頭が良くなる。
(16)道の真中に火の付いたタバコを捨てる、降っている雨が止む。
(17)引越しの車か救急車を見た時、他の人と肘をぶつけ合えば何か良い事が起きる。
(18)木で出来ているものを触ると運が付き、自分に災難が来なくなる。
(19)人の足元で箒で掃くと、その人の幸運を遠ざける。
(20)結婚間近の女性が鍋から直接食べると結婚式には雨が降る。


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