国境保安地帯設置法




国境保安地帯設置法なる外国人排斥を目的とするような法案が国会に提出され、日本人を始めとする外国人社会に大きな衝撃を与えました。下院では法案が通過しましたが、上院で圧倒的多数で否決となりました。ここではその経緯を追って行きたいと思います。



05・上院で否決 (2002年02月27日)

この日、パラグアイ上院で審議の後、採決が行われました。結果は圧倒的多数で廃案となりました。パラグアイ経済の発展を阻害することには反対するという意見が続出し、新聞には「これで安心して刈り入れが出来る」と書かれていました。



(写真:上院では圧倒的多数で否決となった:ABC紙)



04・生産組合にて合同意見陳述会が行われる(2002年02月25日)

生産組合にて4商工会議所(日・独・伯・亜)も参加して法案の問題点につき意見書を作成し、マスコミ(新聞、ラジオ、テレビ)等に本法案に反対の意見を述べました。上院への法案では当初案と比較しますと隣接する外国(ブラジル、アルゼンチン、ボリビア)に対象を制限する等かなり内容は狭まっていましたが、国外の投資家に対して大きな影響があると考え、対象外になった日本、ドイツの商工会議所もブラジル・アルゼンチンと共同歩調を取りました。一般的な意見の後、ブラジル、アルゼンチン、ドイツ、日本の順で各商工会議所の代表が経済への悪影響についてマスコミに訴えました。



(写真:意見書を読み上げる)



(写真:法律上の問題的を指摘)



(写真:ブラジル商工会議所会頭)



(写真:アルゼンチン商工会議所事務局)




03・4商工会議所(日・独・伯・亜)合同でイベント(2002年12月)

パラグアイ日本商工会議所(白沢寿一会頭)、フォーロ・ブラジル、アルゼンチン商工会議所、ドイツ商工会議所の4商工会議所合同で法案に対する内容の吟味検討を行うイベントがアスンシオン市内・ホテル・エクセルシオールで開催された。各商工会議所から多数参加し、法的な立場での法案の正当性の吟味、そして当法案の影響などに関して活発な議論が行われた。また4商工会から代表がそれぞれの立場から発言を行った。パラグアイ日本商工会議所からは奈良理事がパネリストとして参加、日本政府ならびに日本人・日系人社会がパラグアイ社会経済の発展に大きく貢献して来たことをアピール、この法案がその活動に対して大きな障害になりかねない事を憂慮するとのスピーチを行った。

このイベントの内容を受けて4商工会では合同で上院に対して憂慮の意を表す意見書を提出した。またこれとは別に日系社会からも連合会(小田俊春会長)等が中心となって日系社会として意見書を上院に提出した。



(写真:イベントに使われたシンボル)



(写真:イベントの様子)



(写真:パネリストとして発言するパラグアイ日本商工会議所・奈良理事)



(写真:テレビのインタビューに応えるブラジル商工会会頭)



(写真:受付:パラグアイ日本商工会議所からは松橋事務局)




02・日本人会連合会等でも議論される (2002年11月)

日系ジャーナルではこの問題を大きく取り上げ、11月30日号では日本人会連合会理事会での討議を一面で取り上げた。この記事の中でパラグアイ日本商工会議所から田中理事が出席したとありますが、田中理事はセントロ日系を代表する理事として連合会理事を務めております。

国境保安地帯設置法への対応を協議・全パ日本人会連合会理事会(日系ジャーナル11月30日号)
全パラグアイ日本人会連合会(小田俊春会長)の第5回定例理事会が24日、アスンシオン日本人会会議室で開かれた。各地の日系団体から代表者約20人が参加、各種議案を審議した。主な議案は、日系体育振興会(仮称)の定款内容の審議、来年1月にペドロファン・カバリェロで開催予定の日本語シンポジウムに関する報告など。またこの日は、先日下院議会を通過した国境保安地帯設置法案に関する報告も行なわれ、同連合会としてもより詳しい情報収集をしつつ今後の対策を検討していくことが確認された。この国境保安地帯法案は、国境50キロ以内における外国人の土地所有、企業活動などを禁止する内容から成る。同法案は先月下院議会を通過、国境地帯に土地を所有する外国人は10年以内にその土地をパラグアイ国籍保有者に譲り渡す事や、外国人の個人企業経営の全面禁止、株式会社の場合でも株式の51%以上をパラグアイ国籍者が保有するなどの内容が盛り込まれている。ラコルメナ、ピラレタを除く主要な日系人居住地域が該当するほか、各国からの投資減退も予想される。上院の審議はまだ始まっておらず、仮に通過しても大統領拒否権があるため成立の可能性は低いとの見方もあるが、隣国ブラジルなどは大使館を通じて既に抗議を表明。ドイツなどでも、大使自ら入植地の関係者を呼んで話し合っているという。この日はパラグアイ日系商工会議所から田中裕一理事が出席、同法案に関する説明を行なった。パ日商工会議所では現在、ブラジル、アルゼンチン、ドイツなど関係する商工会議所と同法案に関する協議を始めている。田中理事は「この法案はパラグアイへの投資拡大を目指すマキラドーラに真っ向から反する法律。ドイツなどは既に投資者の腰が浮き始めています。こうした法案が下院を通過するだけでも悪影響」と、同法案の及ぼす影響を強調した。また同法案に関して12月4日に前記4商工会議所関係者による検討会を開催することも合わせて説明された。これに対して理事会出席者からは「脅しだと思うが、プレッシャーをかける必要はある」、「連合会としてもこうした動きに加わっていくべきでは」といった意見が出された。その一方で「移住地では大半がパラグアイ国籍を持つ二世に代替わりしているから問題はない」といった意見もあり、最終的に連合会としては、今後も情報の収集を続けつつ対策を検討していくことを確認した。



01・国境地帯外国人排斥法下院で成立(2002年10月)

2002年11月10日に下院で外国人を完全に排除する法案が下院を可決した。大きな目的は国境地帯に住んでいるブラジル人をターゲットにしているものと考えられるが、内容は広範で日系を含め外国人全体に大きな影響を与えるものと考えられる。 現在のパラグアイの置かれている状況を客観的に見るとこのような法案では無く、反対に外国からの投資を促進するアイデアが必要と考えるのですが、逆行する法案が下院を通過した事はかなり深刻であると受け止めております。

国境地帯50キロメートル以内には外国人は土地所有や企業経営禁止(日系ジャーナル 10月15日 号)  
 10日(木)、下院議会で外国人排斥法とも言える外国人に対する国境地帯での土地所有及び企業経営を禁止する法案が成立した。この法案は89年の政変後今回で4度国会に提出されており、過去3度は廃案となっている。しかし、この度隣国アルゼンチン及びブラジルとの貿易紛争をきっかけに、議員間で排斥機運が盛り上がり、下院での成立となったもの。この法案の骨子は、ブラジル及びアルゼンチン、ボリビアとの国境地帯50キロメートル以内には外国人は土地所有は勿論、企業経営も禁止すると言うもので、現在既に土地を所有している外国人は、その土地を10年以内にパラグアイ人に売却しなければならないと言うもの。この問題が浮上したのは、ブラジルとの国境地帯で、多くのブラジル人牧場主が国境を挟んでパラグアイ側とブラジル側に牧場を所有しており、彼らは自分の土地内に国境線が通っている事になり、従って両国を自由に往来するだけでなく、牛なども自由に移動させれるため、今回問題になったアフトーザ病の発生が、ブラジル側なのかパラグアイ側なのか判明しないし、その事によりブラジル側が肉類の輸入を禁止した事に端を発している。下院では可決しても上院で可決されるかどうかは分からず、また、大統領が拒否権を発動する事もあり未だ流動的である。しかし、もしこの法律が成立すれば、当然アスンシオン市近郊の土地も対象となるし、日系移住地の殆どはその対象となる。

国境安全地帯設置法 (国会下院議院)
◆パラグアイ共和国の国境保安地帯 を制定する法律・パラグアイ国国会は以下を法律として制定する。
第1条・陸上及び河川域にある国境線から50Kmの範囲内にある地域を国家の安全上不可欠であると見なし、「保安地帯」として制定する。
第2条・国家防衛審議会の意見に基づいた行政権の政令によって許可する場合を除き、「保安地帯」内において外国人、または、構成員の大部分が外国人である法人が以下の行為を行う事を禁止する。
1.公有地の委譲及び道路の開通、音声及び画像の放送を行うための通信手段施設の設置、
2.橋梁及び国際道路、並びに航空機用滑走路の建設、
3.国家保安上重要と見なされる産業施設の設置及び運営、.下記の業務を行う企業の設置、
a・憲法第112条に定める鉱物資源に関する研究及び発掘、利用、
b・入植事業及び農地の分譲、不動産の支配権又は所有、その他の実質的な権利譲渡を意味する農地の売買、外国人又は外国の株式に基づいた会社や一部、又は、全部が外国人によって構成される法人が不動産に対する実質的な権利を行使しょうとする場合は、国法に従って認可を受けなくてはならない。
第3条・保安地帯において産業又は第2条第及び、項に挙げる業務に携わる企業は以下の条件を満たさなくてはならない。
1.資本金の少なくとも51%をパラグアイ国籍を有する者が保有すること。
2.労働者の、少なくとも3分の2がパラグアイ国籍を有すること。
3.運営、管理権の大部分がパラグアイ国籍を有する者に属し、彼らの支配権を確保すること。
第4条・個人又は個人企業の場合、前記する施設や事業はパラグアイ国籍者のみに対して許可される。
第5条・本法第2条の規定に該当する者は、「保安地帯」内にある所有地を、その土地が合理的利用されている場合は本法公布日より10年の間に、合理的利用が行われていない場合は3年の間に、パラグアイ国籍保有者に譲渡しなくてはならない。この規定に従わない場合は憲法第109条の規定に基づいて収用される。
第6条・第5条に規定する事項は農村福祉院および国防審議会の常設事務局を通じて実行するものとする。
第7条・本法が規定する全ての行為を実行するにあたり、国家権力、政府機関、公共サービス提供機関は国防審議会が事前に許可したことを証明する証拠の提出を求めなくてはならない。無許可の場合は全ての行為が無効となる。
第8条・公証人又は公証職務を遂行するものが、保安地帯内にある不動産の所有権及びその他の実質的な権利の譲渡に関する公正証書の登記を行う場合、権利を取得する個人、又は法人の構成員がパラグアイ国籍である証拠事実を確認しなければ登記を許可することができない。
第9条・本法の規定に反する会社の契約書及び権利委譲の公正証書、定款の登記や一時的な内容変更を登録する事はできない。
第10条・公証人及び不動産登記所の職員、市町村の職員が本法第7条及び8条、9条の規定を忠実に遵守しない場合、当該の民法及び刑法上の罰則とは別に、登録抹消の処分を受ける。
第11条・登記所は、本法の規定に反する権利委譲書の登記を行わない。
第12条・市町村及び農村福祉院やその他の全国土地台帳の作成に携わる政府機関は、保安地帯の土地台帳の作成を最優先させる。この土地台帳を政府の関係機関が常時利用できるように整備しなくてはならない。
第13条・保安地帯内に位置する不動産の土地台帳登記証明書及び固定資産税の納付票には、「保安地帯」であることを明記する。
第14条・外国籍を有する者が保安地帯内で不動産を所有することを禁止する。帰化によってパラグアイ国籍を取得し、国籍取得後8カ年が経過したものについては本規定から除外する。
第15条・本法の規定に反するその他の規定を廃止せよ。
第16条・行政権に通告せよ。
 2002年10月10日、国会下院にて。
 カルロス・アニバル・パエス=国会書記長
 オスカル・A・ゴンサレス・ダエル=下院議長
       (翻訳・花野富夫)




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