最近の話題 2018年5月5日

1.Intel CPUに8個のSPECTREクラスのセキュリティーホールを発見

  2018年5月4日のThe Inquirerが,ドイツのHeiseという技術サイトが8個のSPECTREクラスのセキュリティーホールを発見したと報じています。これらのセキュリティーホールは,まとめて,SPECTRE New Generationと呼ばれ,CVE番号が予約されたとのことです。

  Intelは,4つのセキュリティーホールを高リスク,4個を中リスクと判定したとのことです。高リスクのもの中には,VMの壁を越えてパスワードや暗号化キーを盗み出せる可能性を持つものも含まれているとのことです。

  HeiseはAMDやARMのCPUでも,これらのセキュリティーホールが問題になるものがあると書いていますが,AMDやARMからは,まだ,コメントが出されていません。

  投機実行によるキャッシュの書き換えなどの副作用を全て取り消すのは難しいので,これを突かれると,いろいろとセキュリティーホールが見つかると思っていましたが,今回,8個見つかったということで,やっぱりという感じです。

2.GoogleとBaiduが中心になってMLPerfを開発

  2018年5月2日のEE Timesが,GoogleとBaiduが中心になって,MLPerfというマシンラーニングのベンチマークを開発していると報じています。GoogleとBaiduに加えてAMDとIntelが加わり,AIスタートアップのCerebras,SambaNovaとWave Computingが入っています。さらに,大学ではHarvard大,Stanford大,U.C.Berkeley,Minnesota大,Toronto大が入っています。

  将来は,Inferenceやエッジデバイスでの組み込みのInferenceのベンチマークもスコープに入っていますが,当面は,Training(学習)のベンチマークの開発を目指すそうです。Image Classification,Object Detection,Speech to text,Translation,Recommendation,Sentiment Analysis,Reinforcement Learningの7分野のベンチマークの開発を進めるようです。

  そして,ベンチマークは,Trainingが規定された認識率に達するまでの時間を計測します。バッチサイズや学習率などのパラメタは規定の値を使うClosedモデルと,より自由度をもたせて調整できるOpenモデルというカテゴリがあり,それぞれのカテゴリの総合成績は,SPECベンチマークと同様に,含まれるベンチマークの成績の幾何平均で決められるとのことです。

3.TSMCがロードマップをアップデート

  2018年5月2日のEE Timesが,TSMCのロードマップのアップデートを報じています。それによると,7nmプロセスは既に量産に入っており,5nmも今年中には50品種のテープアウトを受け付ける予定とのことです。

  7nmプロセスは,16FF+プロセスと比較すると,35%高速,あるいは同一速度なら65%電力を減らせます。そして,配線込みのゲート密度は3倍になるとのことです。EUVを使うN7+プロセスは,ゲート密度を20%改善し,10%電力を減らせるのですが,速度の改善はないとのことです。

  TSMCはN7+のIPの品揃えに努力しているのですが,28-112GHzのSERDES,組み込みFPGA,HBM2,DDR5インタフェースなどのIPは今年末から来年初めころにならないと準備できないとのことで,先端的なチップの設計は,このころまで待たなければならない感じです。

  TSMCは2019年の前半には5nmプロセスのリスク量産を開始する予定です。5nmプロセスは,EUVを使わない7nmプロセスと比べて,ゲート密度は1.8倍に改善しますが,電力は20%減,あるいは速度を15%改善に留まるとのことです。

  EUVの光源は,現在,145Wですが,4月の数週間では250Wを達成しており,来年4月には300Wを目標としているとのことです。また,EUVレジストの感度やペリクルのEUV透過率の改善も行われており,量産適用は間近という感じです。TSMCのEUVを使う量産の時期はSamsungに対して6ヵ月以下の遅れで,大手ファブレスメーカーが発注先を切り替えるというレベルの差ではないと見られています。

  チップ性能の改善のペースが落ちてくるのに伴いTSMCはパッケージの改善に力を入れていますシリコンインタポーザを使うCoWoSはレティクルサイズの2倍のサイズのインタポーザを使えるようになるとのことです。また,InFOはHBM搭載向けのInFO-MS,DRAMチップ搭載用のInFO-oS,アンテナ組み込みができるInFO-AIPと用途別のパッケージテクノロジが追加されました。

  さらに,新テクノロジとして,WoW(Wafer on Wafer)パッケージとSoIC(System on Integrated Chips)というパッケージが追加されました。

  また,40nmプロセスのResistive RAM,22nmプロセスへのMRAMの使用が可能になり,MEMSの小型化,GaN on Siliconの650Vデバイスの追加など,使用領域を広げています。

4.AI研究者がNature Machine Intelligenceをボイコット

  2018年4月30日のThe Registerが,2000人を超えるAI研究者が,Nature Machine Intelligenceをボイコットするというオープンステートメントに署名していると報じています。Natureは自然科学の分野では圧倒的な名声を誇る論文誌で,Nature Machine Intelligenceは,AIにフォーカスしたNatureの論文誌として来年1月に創刊の予定になっています。

  Natureは,年間の購読契約,あるいは論文ごとにお金を払って購入するという形態のクローズドアクセスの論文誌です。昔は,論文誌の出版元は,投稿された論文を査読に回し,査読が終わり,掲載が決まると,組版を行い,雑誌を印刷して,購読者に送るという作業を行っていたのですが,現在では,組版などの作業は投稿者が行い,査読も研究者が無償で行っており,オンライン出版の場合は印刷,製本,送付も不要で,出版元の作業は少ないのに,高い購読料を取っている。広く,研究成果を利用してもらえるオープンアクセス(無償で読める)にすべきという主張です。また,研究自体は,多くが税金で賄われ,Natureが費用負担しているわけでもないのに,成果の出版でNatureが儲けるのはおかしいということも主張しています。

  このような観点から,Nature Machine Intelligenceには,投稿しない,査読も引き受けないというオープンステートメントをオレゴン州立大のThomas Dietterich教授が作成し,署名を集めました。

  成果を早く,広く公開するという観点ではarXiv(アーカイブと読む)というWebサイトがあり,投稿は無料で,査読なしに論文がWebに公開されます。そして,アクセスやダウンロードは無料です。しかし,査読が無いので,内容は玉石混交で,個々の論文を信じて良いかどうかは,読み手が判断する必要があります。