最近の話題 2014年10月25日

1.IBMが半導体部門をGlobal Foundriesに譲渡

  2014年10月20日にIBMとGlobal Foundriesは共同のプレスリリースを発表しました。2014年10月20日のEE Timesの報道によれば,GFはIBMの全ての半導体工場とASICビジネス,1万件以上の特許の譲渡を受け,更に,今後3年間に合計$1.5Bの支払いを受けるとのことで,従来,予想されていたよりもGFに有利な内容になっています。

  IBMが5年間に先端半導体技術の開発に$3Bをつぎ込むという計画には変更はなく,GFはその成果を利用でき,今後10年に亘って,22nm,14nm,10nmのチップを独占的にIBMに供給する権利を持つという条件も付いています。

  これらの譲渡される部門の従業員は約5000人ですが,基本的には,全員をGFが雇用する計画で,工場の閉鎖や人員削減は計画されていません。

  全体として,IBMは$4.7Bをこの譲渡に伴う損失として,今期の決算に反映させるとのことです。

  なお,サーバ部門の半導体開発を担当する部隊はIBMに残ります。

  IBMとしては,当初は,少なくとも数Bドルでの売却を考えていたのですが,ハード部門の業績の悪化から,出血大サービスでも,早く,赤字の元を切り離したいというということのようです。しかし,IBMの半導体部門の価値がマイナス$1.5Bというのは,過去の栄光を考えると,悲しいものがあります。

  このように両社の合意は発表されたのですが,この取引が成立するためには,関係各国の当局の承認が必要です。IBMの半導体は,スパコンのBG/Qなど米国の安全保障にかかわる分野にも多く使われており,これがAbu Dhabi資本のGFの手に渡るという取引に,容易に当局の承認が得られるかどうかは懸念があります。また,会社の財産を棄損するということで,株主が訴えるというリスクもありそうです。

2.Soft Machinesが高性能Virtual Coreプロセサを発表

  2014年10月23日のEE Timesが,Soft Machinesというスタートアップの会社が32bit ARMやx86と比較して性能が2倍,64bitのHaswellと比較しても40%性能が高いというプロセサを発表したと報じています。

  Soft Machinesは,Intelでプロセサを開発していたMahesh Lingareddy 氏とMohammad Abdallah 氏が2008年に創立した会社で,これまでに$125Mの投資を集めたとのことで,プロセサの開発会社としては,破格に豊富な資金を集めています。Intel時代の上司のRichard Wirt氏やAlbert Yu氏も投資しているとのことで,成功しそうなアイデアと評価されているようです。

  記事に掲載されている図によると,ゲストのシーケンシャルコードをOSとHypervisor層でゲストISAのコードに変換し,さらに,バーチャルソフト層でバーチャルISAに変換してバーチャルコアと呼ぶハードウェアに入力します。バーチャルコアの中ではグローバルフロントエンドがバーチャルコアにスレッドを分配して実行を依頼します。バーチャルコアと処理の実体である物理コアの対応は固定ではなく,グローバルフロントエンドが,重い処理を行うバーチャルコアには多くのリソースを割り当て,軽い処理のバーチャルコアには少ないリソースを割り当てます。

  マジックは,バーチャルソフト層とグローバルフロントエンドで,バーチャルソフト層は,シーケンシャルコードを並列に実行できるバーチャルスレッドに分解するという処理を行います。このバーチャルスレッドは普通のスレッドより小さな単位で,シーケンシャルコードに含まれている並列実行可能な部分を抽出します。グローバルフロントエンドは各バーチャルコアが必要とする実行ユニット,メモリなどのリソースを有効利用するスケジューリングを行い,スレッド間の同期や整合性などを実現していると考えられます。

  細かい単位のスレッドを並列実行するので,コア間の通信や同期の機能が強化されているとのことです。

  SPEC2006ベンチマークの結果が示されていますが,1コアのApple A7の性能を1として,ARM A15 1コアは0.71,Atom 1コアは0.69,ARM A57 1コアは0.87に対して,32bitアーキのバーチャルコア2コアのSoft Machinesは2.1となっています。64bitアーキのHaswellは1.39となっており,2コアのSoft MachinesプロセサはHaswellと比較しても50%近く高性能です。

  そして,Apple A7 1コアと比較すると,2バーチャルコアは同じ消費電力で1.7倍の性能,4バーチャルコアでは2.1倍の性能で,同じ性能なら1/3〜1/4の電力になるとのことです。

  通常は並列実行ができないシーケンシャルコードの実行を細粒度スレッドの並列実行で高速化し,同じ速度なら電力も大幅に減るというのは,広い範囲のプログラムで自動的にこのような実行ができるようになるとすれば,素晴らしい技術です。

  しかし,どのようにしてシーケンシャルプログラムを並列実行できる細粒度スレッドに分解するのか,スレッド間の協調を実現し,実行リソースをダイナミックに効率よく割り当てるという難しいスケジューリングをグローバルフロントエンドがどのように実現しているのかなどカギとなる部分については情報がなく,どうしてうまく行くのか良く分かりません。

3.CHMがXerox Altoのソースコードを公開

  2014年10月22日のThe Registerが,マウンテンビューのComputer History MuseumでのXerox Altoのソースコードの公開を報じています。

  XeroxのPalo Alto研究所(PARC)で開発されたAltoは,ビットマップディスプレイ,マウス,Ethernetなどのハードウェアを生み出し,今では常識の見た目と同じドキュメントを画面に表示して編集するエディタ,マウスによる描画,e-mailなど現在のPCの基礎となっている多くの技術を生み出した試作ワークステーションです。

  そのAltoの1975年から1987年までの,ソートコード,バイナリ,フォント,ドキュメントなどを整理し,PARCの公開許可を取り付けて,公開に漕ぎ着けたものです。時代が古いので,まず,9トラックの磁気テープに書き出し,それから8mmのテープカートリッジにコピーするプログラムを作り,それをCDにコピーするという方法で公開ファイルを作ったとのことです。Xerox PARC Alto filesystem archiveは,このリンクからアクセスできます。

  また,CHMは,パソコンの最初のOSであるCP/Mのソースコードも公開しているとのことです。