最近の話題 2014年6月14日

1.HPがMemristorで記憶階層を統一するMachineを発表

  2014年6月12日のEnterprisetechが,ラスベガスで開催されたDiscover 2014におけるHPのMachineと呼ぶアーキテクチャの発表を報じています。HPは長らくMemristorと呼ぶ流した電流の積分に抵抗値が逆比例するという素子を研究してきましたが,結局は抵抗値の違いで情報を記憶するReRAMとしての実用化を目指しています。

  今回のMachineというアーキテクチャは,このMemristorを不揮発性の記憶素子として使い,すべてのメモリをこれで作ってしまうというものです。多階層のキャッシュ,DRAM,SSD,ハードディスクといった階層的な記憶は,速度,密度,コストの全てを満足する記憶テクノロジが存在しないことから必要になっているわけですが,これを一元化するというのは,大容量キャッシュ,DRAMからハードディスクまでの領域をMemristorでカバーするということのようです。

  これが実現できると,OSの記憶領域の管理は非常に簡単になりますし,不揮発性記憶なので,CPUを含めて電源を切ってもすぐに復旧できるので,こまめにスリープして消費電力を減らせます。ということでMachineの機能を有効に利用するためにはOSにも(全体的には簡単化の方向ですが)かなりの手が入るとのことです。

  HPのロードマップですが,2015年にMemristorのサンプル出荷,2016年にMemristorのDIMMの発売,そして,2017年にはスマホなどのEdgeデバイスのサンプル出荷,2018年にEdgeデバイスの量産出荷,2019年にサーバなどのCoreデバイスの出荷と長期にわたる壮大なプランになっています。

  HPC ChallengedeベンチマークのRandom Accessでは,現在は京コンピュータが1位で28.8GUPsの性能ですが,12,600kWを消費しています。これがMachineアーキテクチャのサーバでは8ラックで160kWの消費電力で160GUPsの性能を出せるとのことです。ラックあたり256ソケットで,各チップは2GHzクロックの24コアのSoCとのことです。すごいのは各SoCは256GBのMemristorメモリを持ち,各SoCがNICを持ち,NICは2本の100Gbpsの光リンクを持つというところです。この光リンクもMachineの売りです。時期は書かれていないのですが,先のロードマップと合わせると2019年かと思われます。

  今後,5年間がHPの見込みのように進展するかどうかは予断を許しませんが,少なくともMemristorに関してはHPはかなりの自信を持っているというのは確かと思われます。

2.HPがHPC向けのApollo 8000とApollo 6000を発表

  HPは2014年6月9日にApollo 8000と6000というHPC向けのサーバを発表しました。

  Apollo 8000はProLiant XL730fというブレードサーバを搭載システムで,サーバ自体は水冷ではないのですが,サーマルバスバーを水冷して,そこまでは伝導で熱を運ぶシステムです。XL730fはXon E5 26xxデュアルソケットのサーバボードを2台を収容し,各ボードはDDR4-2133をサポートし,16DIMM搭載で,各サーバにMellanox ConnectX-3 ProというFDR IB NICを搭載しています。

  f8000ラックは24インチ×48インチの床面積で,72台のXL730fと8台のIBスイッチを搭載できます。従って,最大288CPU, あるいは144アクセラレータを収容できます。IBスイッチはuplink,downlinkが各18ポートと書かれていますので,72台のサーバのフルコネクト網を2系統持っていると考えられます。

  f8000ラックに水を供給するのがApollo 8000 iCDUという,Intelligent Cooling Distribuion Unitです。1台でf8000ラック4本に水を供給し,320kWを冷やすことができます。iCDUラックには26Uの空きがありスイッチなどを入れられるようになっています。

  Apollo 6000の方ははXeon E3 1200 v3を使う1プロセサのProLiant XL220aサーバを使う,空冷のシステムです。48Uのラックに最大80トレイでXL220aを160台搭載できます。

3.Hot Chips 26のプログラム発表

  商品レベルの先端プロセサの技術を発表する場として人気の高いHot Chips 26のプログラムが発表されました。今年は8月10日から12日の日程で,一昨年と同じDe Anza CollegeのFlint Centerで開催されます。

  今年の最初のHigh Performance Computingのセッションでは,NECの百瀬氏がSX-ACEプロセサ,続いて富士通の吉田氏がSPARC64XIfxを発表します。SX-ACEの方は,昨年11月のSC13でも百瀬さんが説明されているので,どの程度,新しい話が出てくるのかと言ったところですが,SC13でモックアップの展示は行われたものの,富士通スパコンの次世代CPUチップに関する技術的な発表は初めてで期待されます。なお,このセッションのもう一つの発表はD.E.ShawのAnton2の発表です。有力ヘッジファンドのオーナーとは言え,専用プロセサLSIを開発し,スパコンをポケットマネーで作っているのはShaw氏くらいです。

  そして,モバイルプロセサのセッションではNVIDIAのDenverプロセサの発表があります。これも技術的な発表は初めてです。

  テクノロジ関係ではSK HynixのHBMと,かのTransmetaのDave DitzelがIntelを辞めて作ったThruChipと慶応の黒田先生の連名の磁気結合の3Dチップの発表があります。

  ARMサーバのセッションでは,AMDのSeattleの発表,ARMとLSIの連名で,LSIのハイエンドネットワークをサポートする次世代IPの発表と,AMCCの第2世代のX-Gene2プロセサの発表があります。

  高性能ASICのセッションでは,IBMのテキスト解析アクセラレータ,MovidiusのMyriad2ビジョンプロセサ,そしてConterraという会社のGoldstrike1というBitcoinのマイニングプロセサが発表されます。このセッションではRayChipというリアルタイムのレイトレーシングチップが発表されるのですが,所属が??となっており,このような所属不明の発表というプログラムは,これまで見たことがありません。著者名を見ると韓国の人のようです。

  高密度サーバのセッションではSCORPIOと呼ぶMITの36コアプロセサの他に,Oracleの次世代SPARCサーバとIntelのC2000 Atomの発表が予定されています。

  そして,最後の大規模サーバのセッションは,IBMのPOWER8サーバ関係とIntelのIvyBridgeサーバの発表となっています。

4.VLSIシンポジウムでSamsungとSK Hynixが3D積層DRAMを発表

  2014年6月13日の日経テクノロジが,ハワイで開催されたVLSI SymposiumでのSamsungとSK HynixのTSVを使うDRAMの3D積層の発表を報じています。

  Samsungの発表は積層するDDR4チップ間の性能ばらつきを補正して2.4Gbit/s/pinの性能を実現とのことで,今年中に量産を始める計画とのことです。

  SK Hynixの発表は4枚のDRAMチップを積層する8GBのHBMの発表で,不良TSVをスペアのTSVに置き換えるという技術によって1000本を超えるTSV接続を実現し,128GB/sというバンド幅を実現と書かれています。

  どちらの発表も量産時の歩留まり向上技術の発表で,実用化に向けての開発が進んでいることをうかがわせます。

  また,これらの発表に続いて慶応の黒田先生のグループが,DRAMとSoCの間を磁気結合で352Gbit/s(8Gbps/coil)で伝送するという発表を行っています。2014年6月12日の日経テクノロジに詳しい記事があり,TSVを使う場合と比べて製造コストが約40%減,LPDDR4とSoCを積層する場合に比べて消費電力を約80%減とのことです。前項のHot Chips26での発表は,この技術の実用化を目指すものと言われています。