最近の話題 2007 9月15

1.AMDがサーバ用クワッドコア Barcelonaを発売

  2007年9月10日にAMDは,1チップに4コアを集積した,純正のクワッドコアプロセサであるBarcelonaを発表しました。正式発表は,サンフランシスコで午後6時半(日本時間では9月11日の午前10時半)ですが,CNETは9日の午後9時にニュースを流しており,AMDのサイトにもニュースリリースが掲載されたようで,6月30日の話題で紹介したよう な前回の発表手順の不評を挽回しようというのか,今回は発表会見以前にニュースを流す作戦をとったようです。

  発表された製品は,2ソケット構成の2300シリーズが標準電力版が2350,2347の2種,低電力版が2347HE,2346HE,2344HEの3種で,最大8ソケット構成が可能な8300シリーズは標準電力版が8350,8347の2種,低電力版が8347HE,8346HEの2種の合計9品種です。

  クロックは50が2.0GHz,47が1.9GHz,46が1.8GHz,44が1.7GHzで,キャッシュはコアごとのL2$が0.5MB,チップ全体の共有L3$が2MBで,先週の話題で紹介したIntelのTigertonのようなキャッシュサイズのバリエーションはありません。

  今回の発表の最初に書いてあるBarcelonaのウリですが,「Average CPU Power (ACP)を導入した」となっています。Thermal Design Power (TDP)は実用上起こる最大消費電力で,これに耐える電源や冷却の設計が求められるのですが,一般的な使用状態では,ユーザが電気代の観点から見た消費電力はもっと少なく,これをACPと定義したということです。AMDの標準電力版はTDPは95WですがACPは75W,低電力版はTDP68WがACP55Wと述べています。

  ACPはTPC-C,SPECcpu2006,SPECjbb2005,Streamの総走行状態での消費電力の幾何平均で求めています。これらのベンチマークにおかしなところは無いのですが,幾何平均ですから,一つでもゼロのものがあれば,結果もゼロになってしまうので,幾何平均と電気代が比例するかどうかは多少疑問です。

  しかし,CNETの報道では,ACPでIntelと比較することはやらないと言っており,比較しないなら,平均電力はTDPより低いという当たり前のことを言っただけでセールスポイントにもならず,こんなことを最初に持ってくる意図が分かりません。

  そして,次のウリはエネルギー効率の改善で,使用していない部分を止めるCoolCoreテクノロジ,CPUコアごとのクロック周波数制御,コアとアンコアの電源の分離による電源電圧の独立制御です。これは効果がありますが,既に2月のISSCCなどで発表されています。

  そして,3番目のウリが仮想化の性能改善です。今回の発表では,Rapid Virtualization Indexingというマーケティング用のわけの分からない名前を付けていますが,説明を読むと,2005年5月28日の話題で紹介したAMDの仮想化機構のPacificaの仕様のIOからのメモリアクセスのチェック機構と,この仕様ではオプションになっていたNested Translationを実装したと考えられます。

  この二つの機能は,仮想化には非常に重要な機能で,Intelの仮想化に勝っている部分なので,もっと大きく宣伝して良いと思うのですが,あまり一般受けしない機能なので,3番目という扱いになってしまったのでしょう。この2つの機能の追加により,仮想マシン間の切り替えに掛かる時間が25%短縮したと書かれています。

  そして,4番目が同じ電力,同じソケットなので既設のサーバがアップグレードできるという話で,5番目がOutstanding Performanceとなっています。性能がどれくらい凄いかというと,AMDのデータでは8360(今回は発表されていない)の4PシステムのSPECint_rate2006が196程度です。一方,Intelの2.93GHzクロックのX7350 Tigertonの4Pシステムは214となっています。

  また,4PサーバのSPECfp_rate2006は160(但し,未発表の8360の値)となっています。これに対応するIntelの値は無いのですが,SPECfp_rate2006_baseで3.0GHzのデュアルコアの4Pサーバの1.86倍という値があるので,peak値も同比率と考えるとX7350 Tigertonの4Pシステムの値は120程度になります。

  ということで,今回の9月発表の製品では,SPECintはIntelが高く,SPECfpではAMDが勝っているという状態のようです。

  お値段ですが,最上位の8350が$1019で,クワッドコアで一番安い8346HEが$698となっており,デュアルコアは2350が$389,一番安い2344HEが$209となっています。IntelのTigertonの日本での価格は,最上位のX7350が26.9万円で,8350の$1019に近いのは,2.13GHzのE7320の13.7万円,1.6GHzのE7310の10万円のあたりです。ということで,AMDとしてはもっと高く売りたいところでしょうが,クロックが同じTigertonと同程度の値付けがなされているようです。 この点では,明らかにIntelの先制パンチは効いています。

2.SunがBarcelonaベースのブレードサーバを発表

 Barcelonaの発表を受けて,Sunは2007年9月10日に,クワッドコアCPUを4個搭載するX8440ブレードサーバを発表しました。但し,デュアルコアのOpteronを使った製品は即日発売ですが,クワッドコア版の製品は今年の終わり頃となっており,Barcelonaの供給の立ち上がりの遅れを感じさせます。

  また,発表に際して,2U筐体に4チップを収容するX2200 M2,4U筐体に8チップを収容するX4600 M2もデモしたようで,2007年9月12日のThe Inquirerの記事に写真が載っています。

  2006年9月30日の話題で紹介したテキサス大学のTACCに納入されるスパコンは,このX4600 M2を使うと見られていますが,現状を見ると,今年11月のTop500の発表には間に合いそうにない感じがします。来年,6月のTop500発表となると,ANLに納入される1PFlopsのBlue Gene/Pが動く可能性が大で,TACCのシステムは世界一にはなれそうにありません。

3.Azulの経営は危機状態か?

  2007年9月12日のThe Registerが,Javaアクセラレータと作っているAzul社の経営は危機状態にあると書いています。

  Azul社のVega 2 CPUを使うサーバについては2006年12月9日の話題で紹介していますが,JAVA処理に最適化したコアを1チップに48コア搭載するという超マルチコアCPUを開発し,最大16チップ,768コアという大規模なJAVAアクセラレータを販売しているのですが,性能は良くても,ユーザーとしては,大規模で高価なサーバを買って一年もしないうちにメーカーが潰れて保守もできない 事態になったのでは困りますから,経営基盤の不安定なスタートアップから買ってくれるお客を見つけるのは難しいようです。

  Azul社はカリフォルニアとインドに開発拠点があるのですが,インドのソフトウェア部門の45人をレイオフし,カリフォルニアでの開発もストップ。社長のStephen DeWitt氏はボードに辞任を伝えたと書いています。

  但し,翌,9月13日にはAzulはベンチャーキャピタルから,合計$40Mのファンディングを取り付けたと発表しており,The Registerもこれを報じています。財政的にはこれで一息つくことができるのですが,Ashlee Vance記者は,これで買掛金などの負債を清算し,身奇麗にして身売り先を探すという見方をしています。

4.理研が次世代スーパーコンピュータの構成を決定

  2007年9月14日に,次世代スーパーコンピュータの開発を文部科学省か受託している理化学研究所は,「次世代スーパーコンピュータの構成を決定」と発表しました。

  スカラ部とベクトル部を持ち,両者を制御フロントエンドと共有ファイルシステムで接続した構成となっており,Linpackで10PFlopsの実現だけでなく,アプリケーションの実行性能に関しても世界一を目指すとしています。

  開発は,理研と富士通,日本電気,日立製作所の共同開発となっており,富士通がスカラ部を担当し,日本電気,日立の連合軍がベクトル部を担当するというのは,ほぼ,公然の秘密です。

  詳細という資料もあるのですが,これがちっとも詳細でなく,開発するシステムの詳細については書いてありません。なるほど,今回の発表は「構成を決定」したというだけで,構成を公表するとは書いてありません。アメリカなどに対抗措置をとられるとまずいので,詳細な内容はヒミツで,決定はしたけど教えてやらんもんね〜。というところでしょうか。