最近の話題 2007 6月16

1. 次世代日の丸スパコン 評価発表

  文部科学省が推進している次世代日の丸スパコン,別名,京速コンピュータですが,理研が富士通と一案,日立,NEC連合と一案を検討していた概念設計が終わり,その評価結果が公表されました。

 評価に当たっては,もっと詳しい情報が提示された筈ですが,この報告書は,参考資料として次世代スパコンの資料が数ページあるのですが,あまり情報の無い絵で,技術的な詳細は全くわかりません。

 評価作業部会には,偉い先生方が名を連ねておられるので,それらの方々がおおむね妥当と判断されたなら,それを尊重(鵜呑み?)にするしかないというところです。

  それでも,多少,わかる情報を拾うと,まず,当初,考えられていた二案のコンペではなく,結局,両者をどちらも取り入れ,名前はオールジャパンと美しいのですが,結局,スカラ部とベクトル部を繋ぐという構造で,計算ノードは二重開発になるようです。

  6月13日のThe Inquirerは,当初は両チームは競争する積もりだったのに,謎の研究機関である理研に説得されて協力することになったと書き,誰かこれが何を意味するのか知らないか?と聞いています。日本人にも良く分かりませんので,欧米人には,なお,分からないでしょうね。

  性能目標は,LINPACKで10PFlopsで,提案された構造は,この目標を達成できると判定されました。しかし,10PFlopsが出ても世界トップという保証は無いので,更に,拡張可能な設計にするように,というコメントが付いています。米国に負けそうな情勢になって来たら,予算を増額して物量で圧倒するということでしょうか。

  また,当初はHPC Challengeの28項目の過半数で世界トップという目標があったのですが,インタコネクトのレーテンシとバンド幅でそれぞれMax,Ave,Minの3項目があるなど,部分的な評価が多いので,単純な過半数は意味が無いということで,表彰の対象になるG-HPL,G-Random Access,EP-Stream,G-FFTの4種でトップに変更されました。これは妥当だと思います。

  しかし,世界トップという点でいうと,G-が付いているベンチマークをスカラ部とベクトル部の性能が足し算になるようにするのはチャレンジングな目標だと思います。

  この報告書の性能に関する記述はこれくらいで,プロセサのクロックとか,何GFlopsの性能があるとか,あるいは,スカラ,ベクトル演算部それぞれに何チップのプロセサがあるかなどは一切書かれていません。

  また,このシステムの小規模版を大学の計算センターなどに設置するという観点から,それが可能な構成になっているかという評価項目があり,大学のセンターは,設置面積が600m2,電力が1.5MW以下のところが多いが,それにも置けるような配慮がなされているのでOKという評価になっているのですが,肝心のご本尊の設置面積や消費電力は,やはり,書かれていません。

  スカラとベクトル部を持つ理由として,問題に対する向き,不向きがあるので,適した方のシステムを使えるようにする。また,複合された問題で,部分的にはスカラが適しており,他の部分ではベクトルが適しているというような問題では,両方を使って性能を上げるということが書かれています。そして,これを可能とするため,両方の演算部をユーザが意識することなく,最適の環境を使えると書かれています。このように性格の異なるシステム間のジョブ割り当てを自動的に,最適化するというのは,現状では例が無いと思うので,先進的な試みです。(もっとも,CRAYもOpteronベースのスカラ並列とCRAY-1系のベクトル機を単一のフロントエンドで制御し,シームレスに見せるということを言っているので,競争ということになるにかも知れません。)

2.TIが45nmプロセスにHigh-Kゲート絶縁膜の採用を発表 SunのSPARCに適用

  2007年6月13日のEE Timesが,TIは45nmプロセスの高性能版に適用されるとのことで,最初の適用はSunのSPARCプロセサになるようです。

  1月27日の話題では,EE Timesの報道を紹介して,TIは45nmからディジタル用プロセスの開発から撤退し,TSMCなどに委ねると書いたのですが,どうも完全にやめたわけでは無いようです。だとすると,RockはTIの45nmプロセスで設計され,今年の初めにTIにテープアウトされたということは有り得ないことではありません。

  TIのHigh-Kゲート絶縁膜ですが,HfSiON膜で,SiO2の90%の移動度を確保したと書かれていますが,ゲート電極に何を使っているかなどは不明です。

3.IntelのItaniumロードマップ発表記者会見

  2007年6月14日にIntelは,Itaniumのロードマップに関して記者会見を行ったらしいのですが,2008年のTukwilaでCSIを採用するというような既発表の内容ばかりで,新しい情報は,Poulsonの次のチップのコードネームはKittsonという程度であったようです。また,Itaniumの売り上げについても,Itaniumを使ったシステムの売り上げはPOWERサーバやSPARCサーバの売り上げに較べて何%という表現で,Itaniumチップ自体がどれだけ売れたかについては発表しませんでした。

  ということで,The InquirerのCharlie Demerjian氏は「いくら売れたかの数字を言わない限り,信用しない」と辛らつな記事を載せています。