稜線のむこう

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更新履歴:2009/11/23 memoコーナー更新。

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■memo0492 (2009/11/23)

 どうも、高原涼風です。
 皆様、三連休はいかがでしたか?
 さて、シスプリ小ネタ、行きます!



 ☆ ☆ ☆

「いや〜ん! 寒いんですの〜!」
 今日は朝からずっと曇り空、かなり冷える。
 夕方、晩御飯の材料の買出しに外に出た白雪、予想外の寒さに悲鳴をあげた。
「大丈夫かい?」
 心配して言葉をかけるが、僕は魔法使いでもない普通の人間だから、急に気候を変える事も出来やしない。
「こうすれば……少しは暖かいかな?」
 出来るのは、せいぜい白雪をそっと抱きしめる事ぐらい。
「にいさま……」
 少しは暖かくなったのか、白雪の顔がほうっと緩んだ。
 白い頬がほんのりと赤らむ。
「さあて、さっさと買い物を済ませて、暖かい晩御飯を作ってもらうとしますか」
「姫にお任せですの!」
 僕たちは近所のスーパーマーケットに歩いて行く。
 ふたり寄り添っていても、やっぱり空気は刺すほどに冷たい。
 それでもふたりならば、心まで凍える事は無い。
 お喋りをしながら、僕と白雪は歩いて行く。

「到着ですの〜♪」
 スーパーマーケットはそんなに遠くは無い。
 楽しく話していれば、着くのはいつもすぐの事。
「中に入るか」
「ですの!」
 微笑んで頷いた白雪の目が僕の肩越しに何かを見つけたらしい。
 ふと立ち止まった。
「どうした? 白雪?」
 白雪が何を見たのか、くるりと首を後ろに回すと、そこには白雪と同じくらいの年頃で背丈は少し女の子。
 ふわふわとした縦巻きの髪をふるふると震わせて、立っていた。
「ミナコちゃん……」
 ミナコちゃん、と聞いて思い出した。
 確か白雪のクラスメイトの女の子だ。
「あ、あら、白雪さん……。夕食のお買い物でもなさるのかしら?」
 地味な様で高そうな黒っぽいコートを着込んではいるものの、彼女も寒い事には変わりないようだ。
 声は明らかに凍えている。
「ですの。にいさまと一緒にお買い物に来ましたの。ミナコちゃんもお料理のお買い物ですの?」
 対する白雪の声は暖かい。
 ミナコちゃんは白雪の兄である僕に、こんにちは、と軽く会釈をして、再び白雪に向き直る。
「別に……、ちょっと買いたいものがあったから寄っただけ」
 今になって気がついたけれど、ミナコちゃんの手にはスーパーの白いビニール袋、この店で一番小さなサイズの袋が下がっていた。
 その大きさと薄さからして、確かに夕食の買い物では無いらしい。
「さて、今日はもう……」
 ミナコちゃんは挨拶もそこそこにその場を立ち去ろうとするが、心がぽかぽかの白雪は上機嫌にミナコを離そうとしない。
「ムフン、何を買ったんですの?」
 興味津々にミナコちゃんを捕まえる、首を傾け、袋の中身を覗こうとする。
「み、見ないで下さるかしら?」
 ミナコちゃんは慌てて袋を後ろに回す。
 きっと手がかじかんでいたのだと思う。
 後ろに回した勢いで、手から袋がすっぽ抜けた。
 ばさりと音を立ててミナコちゃんの後ろにビニール袋が落ちる。
「あ……」
 泡を食ってミナコちゃんが拾おうとする。
 でも、それより早く。
「僕が拾うよ」
 引き止めてしまったのも悪いと思って、僕が袋へツカツカと。
 ミナコちゃんより、男で大股の僕の方が早い。
 一足だけ先、ビニール袋を拾おうとした僕は、袋からはみ出した中身に気がついた。
「ん……こりゃ……」
 ビニール袋から少し顔を覗かせているのは使い捨ての懐炉。
「いや、み、見ないで!」
 ミナコちゃんが赤くなった。
 一瞬手の止まった僕の前から、袋を引っ手繰るように拾う。
「懐炉を買ったんですの……」
 ちょこちょこと僕の後をくっついて来ていた白雪が、ぽつりと呟いた。
「ミナコちゃんも懐炉を使うんですの……」
「な、何よ、あたくしだって寒いものは寒いんだから」
 別にいけない事だとは僕も白雪も言っていないのに。
「ああっ、手袋をして来れば良かった!」
 恥ずかしい秘密を知られてしまったかの如くにミナコちゃんはもうリンゴかトマト、目をそっぽに背ける。
 でも、見られた以上は今更隠しても仕方が無いといった風で、懐炉の小袋を破る。
 取り出した懐炉を軽く揉んで、それを持った手ごとコートのポケットに突っ込む。
「可愛いんですの〜♪ いつもツンツンのミナコちゃんもカイロを使うんですの〜♪」
 白雪にはミナコちゃんが懐炉を使っている事が本当に意外だったらしい。
 可愛いと心の底から萌えている声で、白雪がちっちゃい「ぐー」をふたつ握って体をふるふるとさせる。
「白雪さん?」
「イヤーン♪ 可愛いんですの〜♪」
 白雪の中のミナコちゃんのイメージとのギャップがツボだったみたいだ。
「何を言ってるの!? 白雪さん!」
 その白雪の反応がミナコちゃんの癇に障ったらしく、かなり不機嫌な顔になる。
「ミナコちゃん、可愛いんですの〜♪ お家に連れて帰りたいんですの〜♪」
 白雪の暴走は止まらずに、ミナコちゃんに抱きつき頬をむにむにと摺り寄せたりする。
「し、白雪さん、は、離れなさいな! 暑苦しい!」
 いくらなんでも寒い中、引きとめて大騒ぎしてはミナコちゃんに可哀想。
「白雪、その辺にしておきなさい」
 にいさまとして僕は白雪を窘めた。
「ミナコちゃん、ごめんね」

「ムフン♪ ムフン♪」
 買い物を終えて家へと進む僕たち。
 僕の手には、ずっしりとしたスーパーのビニール袋。
 白雪はすっかり暗くなった道も気にならないようなぽかぽか笑顔。
「白雪、今日はご機嫌だな」
 言うと白雪は、帰ったら作るであろう特製のクリームシチューの様なとろりとした暖かい笑いで、頷く。
「ですの♪ 今日は良い事がありましたの♪ にいさまとお買い物に出かけて……おまけに」
「ミナコちゃん?」
「ですの♪ ツンツンミナコちゃんに新しい一面を発見ですの♪」
 白雪がぴょこぴょこと僕の周りを跳ねる。
 本当に可愛らしいと思う、どんな事にでも幸せを見つけられる白雪。
 こんな白雪を見ていると僕も幸せ気分。
 ふたりでいても、やっぱり空気は刺すほどに冷たい。
 それでもふたりならば、心まで凍える事は無い。

「さあて、さっさと帰って、暖かい晩御飯を作ってもらうとしますか」
「姫にお任せですの!」
 お喋りをしながら、いつの間にか点いていた街灯の下を僕たちは歩いて行くのだった。

 ☆ ☆ ☆



 どうも、失礼しましたー。
 ではでは。





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