「虚業」は「実業」に勝利するのか?



TAKA  2005年10月04日





 村上ファンドによる阪神電鉄株の買占め問題ですが、正直言って重要議案を否決できる3分の1以上の株を市場で買い進めるとは思いませんでした。一体村上ファンドは何を意図して此れだけの株を買い占めているのでしょうか?

 ☆何を意図して買い進めているのか?
 
 表向きの村上ファンドの意図は大量保有報告書では「純投資」となっており、その表現は本事件の表面化以来変わっていません。村上ファンド自身も10月3日に新たなコメントを発表していますが、そのコメントも表面的な話に終始しており、コメントからその真意が見えてくる物ではありません。
 今回明らかになった売買状況に依れば、買占めが明らかになり株価が倍近くまで高騰した26・27・29・30日にも株購入を進めており、今や購入株数1億6076万株・投資金額936億4740万円になっており、単純計算の1株当たりの取得単価は583円になっており今日の株価1067円に対して含み益は膨大な物になっており、その点で見ればかなりの収益を上げているので「純投資」といっても問題は無いでしょう。
 しかし今や4割近く持っているこの株を市場では簡単に売却できません。大量に売却すれば暴落するのは必定ですから、此れだけの収益を上げる事はできません。又エルアルコン様のご指摘の通り配当での収益を期待しても、阪神電鉄から今の年6円配当の3倍の配当をひねり出したとしても18円*1億6076万株=28億9368万円にしかなりません。此れでは当然ファンドの利回りとしては低いと言わざる得ません。
 又此れだけの株を保有してしまったら、グリーンメールも期待できないでしょう。幾ら関西財界が「株持合を強化する可能性を示唆」といっても、此れだけの株を一株583円よりかなり高い金額で他企業に持ち合ってもらうのもなかなか難しいと言えます。そう考えると「単純なグリーンメール」は厳しい状況に有ると言えます。
 そうなるとエルアルコン様御指摘の「経営判断で資産の切り売りや内部留保の還元等を実行」する様な直接的手段や、他の第三者の取得希望者(ホワイトナイトを含む)に一括売却する等の方法しか「出口」を求める事が出来ない状況になっています。
 しかし出口戦略が明確に見えない分、今回の投資に対する村上ファンドの意図は見えなくなっていると言えます。

 ☆しかし今の段階では規制は出来ない
 
 上記のように意図が明確でない買占めである為、正直言って被害者の阪神電鉄にしても、周囲の鉄道利用者にしても非常に不安で有る事は間違い有りません。ましてや「収益優先が安全投資を怠たりATSに不備があったのが事故の遠因」と言われている福知山線尼崎事故の記憶が覚めやらぬ今の時期に、隣接する地域を走る鉄道会社が「営利追求集団」の究極である投資ファンドに乗っ取られつつある状況に、鉄道輸送の安全性を危惧する声が出ることは有る意味当然であると言えます。
 しかし「安全輸送を阻害するような強硬な要求」や「株取得に対する明確な違法性」等の問題行為が立証されない状況で、規制をかけることは今の状況では不可能で有ると思います。又それはもし村上ファンドが経営権を握った後でも同じ事が言えると思います。
 正しく竹中郵政民営化担当相の会見に有るような「投資、経済行為としてしっかり当事者で判断されるべき問題」と言う事であると思います。(閣僚に「阪神ファンとして如何思うか?」などと言う質問自体がレベルが低いと思いますが)
 今の段階で鉄道事業にたいし決定的に事業継続に問題が有る行為が行われ、安全が著しく損ねられたり事業存続が困難になる自体が発生しない限り、少なくとも監督官庁が規制することは好ましくないとかんがえます。
 あくまで問題が発生する兆候が明白になるまでは、阪神電鉄が幾ら投資ファンドが経営権を握る鉄道となっても他の鉄道事業者と格差をつけるべきでは有りません。
 今回の阪神電鉄を巡る危機は阪神電鉄が「自己の努力と責任」で切り抜けなければなりません。

 ☆しかし「虚業」が勝利する事が好ましいのか?
 
 けれども一般的常識として、金を右から左に動かすだけで利益を上げるような投資ファンドのような「虚業」が経済を支配する事が好ましくない事は明白です。その点阪神電鉄はバブルにも踊らず(踊れず?)地道に鉄道業とその周辺の事業を営み地域に貢献し利益を上げてきた「実業」の企業です。
 世の中「額に汗する」人がお金を儲け最後に笑うのが正しい世の中です。その点この前のライブドアに続いて今回の村上ファンドが「実業企業」からマネーゲームで金を奪い取る事は極めて好ましく有りません。
 しかし今回の場合「虚業に利せずに企業を防衛する」事は非常に難しい状況に有ります。少なくとも村上ファンドに先手を取られ株の3分の1強を握られている現況では、儲けさせずに穏便にお帰りいただくのは難しいでしょう。
 その為にはやはりエルアルコン様の言われるように「「虚業」が「実業」を営むのは難しい」と言う事「所詮「虚業」は「虚業」に過ぎない」と言う事を世間に証明させる事が必要なのかもしれません。
 欧米ではM&Aブームの時に乗っ取られた会社がバラバラに解体されボロボロにされた実例は数多存在します。今回阪神電鉄が村上ファンドに経営権を譲り渡せばその様になってしまうリスクも存在します。又村上ファンドが上手く経営し安全に輸送を果たして高収益を上げる高価値企業に変身させる可能性も同時に有ります。此ればかりは一度やらせてみないとわかりません。
 その様なリスクを敢て取っても今回「清水の舞台を飛び降りる」事も必要なのかもしれません。
 それにより村上ファンドが阪神電鉄を上手く経営していけば「虚業」が「実業」に変身する事になりますし、それは阪神電鉄の現経営陣が誤っていた事を示す事になります。もし阪神電鉄現経営陣が「今までの我々の経営が正しく最善だった」と確信しているのならそれ位の事を勇気を持って実施する事も必要かもしれません。
 但し万が一の時に「公共交通機関としての阪神電鉄」が安全に存続し社会的に不利益を蒙らないようなセーフティーネットを考えておく事が必要になりますが・・・。
 前のエルアルコン様の投稿での「自社株の非公開化」(いわゆる)も一つ方策で有るとは思います。確かに「株式公開=透明経営・株式非公開=不透明経営」と断言は出来ません。しかし日本の鉄道企業で「株式非公開化」と言うと非常に不透明な感じがしますし、一歩間違えると西武問題のような「不透明な経営」を再発させるのではないかと感じさせる物も有ります。(西武の親会社コクドが公開企業であれば堤義明氏はあれほど無謀な経営を行えたであろうか?)
 この様なことから考えると、「自社株非公開化」と言うような方策より、「株式市場で本来の目的を著しく逸脱する投機的活動を掣肘する」と言う方策の方が好ましいと思います。それが「虚業」を跳梁跋扈させない手段であると言えます。「虚業」が「実業」に転進すれば別に問題は無いのですから・・・。





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