千葉都市モノレールを如何にするべきなのか?

 

TAKA  2004年11月23日

 

 

『需給調整規制に「適用除外」があってもいい』
『モノレールを自立経営可能な状態にして、より多くの市民が利便性を享受する過程のなかで、発生する便益が財産として沿線に帰着し、ここから税収を得て、借金を返すという「正のスパイラル」に持ちこむことです』
 という考えも、
『千葉モノレールに関しては、モノレールに肩入れする意義も何もあったものじゃないのです。』
 という考えも良く分かりますし理解できます。どちらも正しいといえるこの考えの間で現実的に「如何に千葉モノレール問題を皆にメリットの有る形で解決策を見出すか?」と言う事が難しい問題で有ると考えます。又究極の事例である千葉都市モノレールで解決策を見出す事は、今後の行方をも左右すると思います。

 

□如何にして“千葉モノレールの借金を返していくか?”(各論1)

 先ず「如何にして千葉モノレールの経営を安定化させ借金を返していくか?」という問題です。確かに廃止しても、収入の無い状況で借金のみ返していくのは正しく『茨の道』です。利用客の少なく社会的に有効に機能して居ない交通機関を梃入れして経営を安定化させる方策を打っていても「傷口を広げ損失を拡大させる」と言う結果を招く可能性も有ります。正しく『進むも地獄引くも地獄』状態であります。

 実際千葉都市モノレール調査検討委員会の「千葉都市モノレール調査助言報告書」で、1号線休止・廃止に関する試算と“千葉モノレール延伸計画に対する県民・市民の意識”に関する調査が行われています。
  千葉モノレール調査助言報告書

 この中で、18ページに1号線千葉〜県庁前間を「今のまま運行」「休止」「廃止」した場合の30年間の収支のシュミレーションが出ています。その中で試算として「今のまま運行→ 706億円の損失」「休止→ 645億円の損失」「廃止→ 677億円の損失+65億円の国費返還」と言う試算が出ています。

 この試算が正しければ、「1号線千葉〜県庁前間は何も対策を講じずに運営しているのなら休止にして野晒しにしておいた方が損失が少ない」という皮肉な結果が出ています。でも今回見に行ったときに感想ですが、この試算は「当たらずとも遠からず」でしょう。繁華街・ビジネス街路線に日曜日の夕方に1回だけ乗っただけという今回の訪問でしたが、1号線千葉〜県庁前間の「閑古鳥の鳴き方」は半端ではありませんでした。

 1号線千葉〜県庁前間に関しては、上記試算を基にすれば「今のまま運行していれば休止するよりかも30年間で61億円・1年間で2.03億円・1日で 557千円損失が増大する」という事になります(あくまで名目価格の単純計算ですが)。という事は裏返して考えれば、「原価が今のままで運賃が千葉〜県庁前間 190円に変化無しとして、千葉〜県庁前間で1日当たり片道2932人利用客が増加すれば運行した方が損失が減少する」という事になります。

 「せっかく作ったインフラが現存する」と言う事実が存在する以上、休止・廃止損失≧運行損失になるのならば当然運行する方が得策になりますし、インフラが有る以上何とかその様な状況になるように対策を練るのが最善の策です。しかし問題は「どのようにその方策を考えるか」と言う事です。

 果たして1号線千葉〜県庁前間で「原価を増大させず運賃を値下げせず1日片道2932人利用客を増大させる方策」「原価が増えたり値下げをしたとしても、1日当たり 557千円収支を改善させるだけの利用客増をする方策」というのが存在するかです。具体的に言えば千葉都市モノレールの1日の平均利用客は43,577人(平成15年度)であり、全線利用客の約 6.7%に当たる客を、一番不便な1号線千葉〜県庁前間でふやさなければならないのです。ただですら難しい内容に「社会全体の利便性を損ねずに行う」という前提を付けると限りなく難しくなります。なんせ気合が有れば歩く事も不可能でない距離ですし、ワンコインバスが頻発されている区間です。しかも利便性はワンコインバスの方が明らかに上です。

 その様な状況の中で「利便性が高い他交通機関が現存する現実」を考えると、「税金を投入したインフラの有効活用のためにモノレールを利用しましょう」と訴えかけても一般市民は「安くて便利なワンコインバス」に流れてしまうでしょう。モノレールがワンコインバス対抗策を打っても上記の廃止阻止の増収ラインをクリアするのは極めて困難だと思います。

 そういう状況が見えてきたときに「税金を投入したインフラ有効活用のために社会全体の利便性低下を覚悟して他交通機関を規制するべきか」「廃止・休止して収入ゼロで借金を返済すると言う『茨の道』をあえて選択するか」と言う「究極の選択」を迫られる事になると思います。

 その選択の中で、上記報告書で“千葉モノレール延伸計画に対する県民・市民の意識”の中で、「行政支援が無ければ運営できないモノレール事業は廃止すべき」と言う“事業中止”の意見が4分の1強存在するという現実があります。又3分の1は「延伸せず費用の安いバスなどの他の交通手段を充実すべき」という意見です(此れは複数回答のようですが……)。

 この様な人々には「更なる税金投入」や「社会全体の利便性低下を覚悟して他交通機関を規制しモノレールを有効活用する」という方策が認知されるでしょうか? そう考えると千葉の場合は特に1号線千葉〜県庁前間に関しては、生かしていく方策が難しくなると思います。

 

□しかし"千葉モノレールは全て救えないのであろうか?"(各論2)

 確かに千葉モノレールの1号線千葉〜県庁前間は上記の様な末期的状況です。しかし全部が全部救えないのでしょうか? 確かに千葉モノレールは「高い・遠廻り・遅い・本数が少ない」という“不便の四重奏”という状況です。しかし上記の「税金を投入したインフラの有効活用」という視点から考えても、“千葉モノレールの全否定”は出来ないと考えます。

 少なくとも現況においても千葉モノレールの千葉港〜千城台間は償却前黒字の状況です。と言う事は1号線千葉〜県庁前間の償却前赤字で運行経費も賄えないという状況に比べれば“未だ救う余地が有る”という状況であると思います。この区間は確かに地域の主要な流動から外れているものの、千城台周辺〜都賀や穴川周辺〜千葉等の流動も無視できない量があり、正しく三国志にいう“鶏肋”のような状況であります。

 ただし、幾ら流動に沿っているといえども、穴川〜稲毛〜稲毛海岸等の延伸のような大きな投資を伴う積極策は(たとえ採算性が良さそうでも)厳しいものがあると思います。それならば既存設備の有効利用をして、穴川での千葉方面の流動をバスからモノレールに乗せる方策(割引運賃採用)や速度向上で千城台等の遠距離区間でも対東京始発のある千葉まで乗ってもらえるような方策(遠距離利用割引・速度向上)を打ったほうが効果が有るのではないかと感じます。

 2号線に関していえば、「税金を投入したインフラ有効活用」方策を取る事が社会全体のコストから考えて有効な方策ですし、他の交通機関とあまりに劣勢な競争をしている訳ではないので(どの競争相手ともモノレールはドングリの背比べ競争)、モノレールの利便性向上方策が社会全体の利便性を損ねるような抑圧の上に行われる必然性がありません。

 その点では“どの様な方策が有るか?”といわれるとなかなか方策が見つからないですが、少なくとも「なるべく税金投入は最低限にする」「今後生かしていく」「もっと利用してもらえる方策を採る」という方針の下で、今後とも安定的に千葉モノレール2号線区間を維持できる施策を考えていくべきで有ると思います。

 最終的目標は「少なくとも1号線を切り離した千葉都市モノレール会社で当期利益を確保できる状況」であり、しかも「今より利用客を増加させ地域全体の交通に対する利便性を向上させる」という所であると思います。少なくとも収支的には上記報告書での「千葉〜県庁前をオフバランスした場合の2003年〜2032年の30年間収支見込」で当期利益を確保できるシュミレーションが有るので不可能ではないと考えます。

 

□千葉都市モノレールの生きる道(総論1)

 結局のところ「千葉都市モノレール調査検討委員会」の助言報告書の記述に近くはなりますが、「1号線千葉〜県庁前間休止」「2号線運営に特化させた上で割引運賃や速度向上等の競争力向上策を実施」というのが落とし所であると考えます。

 1号線ははっきり言ってお荷物です。幾ら千葉都市モノレールから“オフバランス化”してもそのツケが何時か税金に廻ってくるのは必定であり、それならば「敢て茨の道を選択」しても“損切り”をして犠牲を最低限にする事が重要です。そうでなければ傷口が拡張するだけです。

 しかし2号線は「バスでは賄うのが難しいが、さりとて軌道系で有る必然性は乏しい」という中途半端な状況であり、沿線の人口集積が多い分見込みがあるといえます。ということは生かすための方策、しかも少ない投資でモノレールの利便性を上げる形でのモノレール活性化策は可能ではないかと考えます。

 そのように考えれば「調査検討委員会」の助言報告書は良い線を衝いていると思います。正直言って「第三セクターだから取りあえず延命措置で生き延びさせよう」という状況は千葉都市モノレールに関していえばすでに過ぎているといえます。特に1号線を抱えたままでは、多少まともな区間も巻き添えで壊死してしまいます。それは避けるべきです。その為にも思い切ったリストラクチャリングが必要であると考えます。

 

□では第三セクター新設鉄道・新交通システムは如何していたら良いのであろうか?(総論2)

 千葉モノレールの場合は確かに“最悪の事例”では有りますが、1113に示されているようにこのような事例は多々存在します。「鉄道・第三セクター・新規開業路線・経営不振」と絞り込んでも、私がレポートで取り上げた多摩都市モノレール・千葉都市モノレールだけでなく、埼玉高速鉄道・東葉高速鉄道・北総開発鉄道等多数存在します。千葉都市モノレールだけでなく千葉都市モノレールの議論を基にそれ以外のこの様な事例についても検討していくべきなのだろうと私も考えます。

 特に北総や東葉は以前から別の場で議論してきたところですが、我々以上に公共セクターも当然危機感を抱いていることは確かで、「官が主導した新規開業第三セクター鉄道」は軒並み苦戦しています。各社を所管する自治体も“千葉都市モノレール検討調査委員会”と同じように委員会等を作り、いろいろな方面から経営等について検討・提言したりしています(経営者に名うての第三セクター改革経営者を登用したところもありますし……それも危機感の現れでしょう)。

  千葉都市モノレール調査検討委員会
  埼玉高速鉄道検討委員会
  埼玉高速鉄道検討委員会 経営部会中間提言
  多摩都市モノレール「機能するバランスシート−−新交通システムとバランスシートの役割−−」

 この様に軒並み第三セクター新規開業鉄道は悪戦苦闘し経営的にも問題になっています。しかし今の日本で民鉄が自己資本だけで事業拡張に新規路線を開業するのは極めて難しくなっています。しかし未だ交通不便地域で鉄道建設を必要とする区間もあり又今正しく建設中の区間もあります。

 ですから今現存していて経営を改善しなければならない路線も沢山有りますし、今後開業する路線に関しては開業時点から苦戦しない方策を考えなければなりません。それが重要になってくると思います。その方策を議論の前提に示して見たいと思います。

(1)“上下分離”の一層の促進
→旅客設備のみ持つ会社に公共セクターが施設を賃貸し運行会社からインフラを徹底的にオフバランス化する。又インフラ部に関してはその比率をより多く見る。それによりインフラ部は税金と賃貸料で投資回収と設備再投資に対応する。運営その物に関しては第三セクターに限らず、運営会社解散の上運営会社を入札制にする事も考慮する。(責任分担の明確化と公的補助の導入・効率的運営の推進)

(2)“総合的交通政策の実施”
→新規開業時にはその地域に対し「総合的交通政策」を導入し公共セクターが主導の上段階的に交通をコントロールし、より効率的かつ社会の利便性の高い交通手段へ移行できるようにする。(公共性優先のために一部的に需給調整規制を逆に強化する。但し既存企業に関して配慮をすると同時に、完全に競争を阻害する状況は避けるようにする)

 正直いって(1)(2)は良く考えられる一例です。第三セクター鉄道の場合、比較的補助比率が低く償却負担が重く償却前は黒字でも苦戦している鉄道が比較的多いですが、その先に償却前も赤字で救いようの無い鉄道も存在します。昔と違い昭和40年代から新線建設費は加速度的に値上がりしてきていて建設費は莫大な物になっています。その様な状況の中で“真に必要とする鉄道”であればその建設費に補助を加えるなり、上下分離でオフバランス化して対応という事も可能です。

 又より効率的かつ社会全体の利便性の高い交通手段の有効活用に段階的に誘導していく(具体的には平行バス路線・遠距離の他路線にアクセスするバス路線の段階的整理・新規路線のフィーダー路線への再編成を半年〜2年程度かけて行う)という方策も必要であると考えます。但し最初から“総合的な交通マネジメント”をする事が前提であり、「公的セクターの経営が苦しくなったので税金を投入したインフラの有効活用を優遇します」ということを後から官の力を使ってやるのは反則です。あくまで開業前の最初から周囲の合意を取りつつ行う事が必要であると考えます。

 それに「全ての第三セクター鉄道を救済すべき」という考えもまずいと言えます。上記の(1)(2)の方策を取っても生き残れない事例は存在します。それが地方ローカル線であれば「地方産業育成(特に観光産業)」「最低限の公共交通維持」等採算性を抜きにした基準を引く事ができるでしょう。しかし都市内公共交通であるのなら、そのような基準は適当ではありません。公共性の側面を考えなければなりませんが、基本的には人口超密地域に走る路線です。と考えると「建設時の補助」「総合交通政策的な乗客誘導策」は必要ですが、それ以上の過剰な保護をするのも又好ましくありません。少なくとも最低限の採算ライン「償却前黒字」が果たされているところであれば、「今からの上下分離導入」等の補助も必要です。しかしその最低ラインをクリアできないような路線(具体的には千葉都市モノレール千葉〜県庁前間等)は“損切り”も必要であると考えます。それは一定の基準の上民意や総合的な利便性等を勘案しつつ果断に判断すべきで有るといえます。

 ですので最終的には“公共交通”である以上、有る程度公共セクターが今まで民間が成長させてきた“公共交通”の良いところを生かしながら間接的にコントロールする事も必要であると考えます。しかし道路関係ではガソリン税や自動車関係諸税等で財源も豊富ですが、鉄道関係は「利用するたびに徴収される目的税」が無く財源も乏しい状況です。この様な状況の改善(例えば交通税の導入等)から色々な点を考えていく必要があるのではないかと考えます。

 

 

 

 

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