阪神タイガースから考える「鉄道企業とプロスポーツの関係」



TAKA  2005年 7月18日






 確かに阪神タイガースのビジネスモデルは素晴らしい物です。有る意味此処まで関連事業で収益を上げれるビジネスモデルを作り出せたのですから、これは有る意味欧米のプロスポーツチーム以上でしょう。欧米では地域密着経営で人気の有る球団やサッカーチームは良く聞きますが、阪神ほど「観客動員」で稼ぎ「球場への行き来の電車」で稼ぎ「優勝すればバーゲン」で稼ぐと言うまで、プロスポーツで完成した金儲けのシステムはそんなに無いでしょう。


(1)阪神の成功要因は「地域密着」を通り越した全国区の人気

 今やプロスポーツ成功に「地域密着」は必要です。プロ野球でも北海道に移転した北海道日本ハムファイターズが「地域密着」を打ち出し、ファンが増えたり観客動員が増えたりそれなりの効果を発揮しています。しかし経営的には楽ではない筈です。(公式資料はありませんがパリーグ球団は確か全部赤字だったと聞きました・・・)経営が赤字である状況では、今の時代では最終的にはプロスポーツは成り立たない事になります。
 となるとプロスポーツとしての採算を考えると「地域密着」だけでは足りない事になります。となるとやはりファンの基礎数字が増える「全国区の人気」が必要になります。やはり「人気が高い事」「優勝争いをする力が有る」と言う事が球団経営を成り立たせる基本条件になります。一昨年優勝時の阪神の観客動員が330万人に対し、地域密着効果と新庄効果とプレーオフ進出で盛り上がった日本ハムが対前年比23%増えても161.6万人、一昨年の阪神の半分の観客動員しかできません。阪神は99年〜02年の平均観客動員が239万人ですから、これにも大きく劣ります。
 この阪神の観客動員力の源泉はと言えば、関西723万人・全国1500万人の阪神ファンの力です。この数字は絶大な物ですが、阪神は日本ハムの様な「地域密着努力」でこのファンを集めた訳ではありません。現実には阪神は「地域密着努力」と言う点では殆ど努力をしていないと言うのが正解でしょう。しかし阪神は経営努力をしなくても関西だけでなく全国的に絶大な人気を得ています。(阪神も星野監督招聘等努力はしているが、「金で頬を打つ」作戦で有名選手を集めている巨人の方がチーム強化に努力している)
 この「全国区の人気」が支える「基礎数字の大きさ」が阪神球団経営の成功の要素と言っても間違いは無いでしょう。


(2)阪神成功の素晴しさは「成功のビジネスモデル」の波及効果を関西全体にまで広げた事

 しかし阪神の場合、「人気や優勝」により得られた物を自分達の内である「観客動員数の増加」だけに留めず、「阪神電鉄グループ全体」やより大きく「関西経済全体」に拡げるという点にあります。
 03年までは「阪神優勝」は奇跡的な物でしたから、03年のリーグ優勝時に今まで無い事を期待含みで検証する為に「阪神優勝の経済効果」と言う類の色々な経済分析が発表されています。(此処では主な物を紹介します。又下記2資料から此処で使った阪神関係の数字を引用しています)
(予測)「阪神タイガース優勝の経済波及効果」(UFJ総研)
(結果)「阪神タイガース優勝の経済効果を検証する」(関西経済研究所)
 これで見ると阪神タイガースの「観客動員増による増収→21.84億円」「阪神電鉄利用増による増収→4.55億円」「阪神百貨店のバーゲン効果→50億円」「阪神百貨店9月売上→対前年比+52.4%」「上期タイガースショップ売上→対前年比370%」「阪神電鉄・阪神百貨店の時価総額→4/1〜7/28で+374.5億円」と言う阪神関係の優勝効果は莫大な物です。
(比較の対象として考えられるダイエーの場合はダイエーホークス優勝に関係して「優勝バーゲンによる売上400億円」との事である。純増に換算すると200億円になるが、約1.49兆円のダイエー企業の売上から見ればこのバーゲン効果も無視は出来ない。この効果が「何とかして球団を保有しようとした」気持ちの源泉で有る事は間違いない)
 けれども此れだけでは有りません。一次的効果だけで関西圏で飲食・スポーツ新聞・グッズ販売で853.23億円の経済効果と言うのは非常に大きいものです。(間接効果を入れれば1587億円)この間接効果の大きさは阪神タイガース&関西特有の物であると思います。此れは地域密着の進んでいるダイエーホークス&福岡でも適わないでしょう。(ダイエー優勝時の福岡県への経済波及効果は417億円
 此れだけ大きな経済効果が有るのであれば、阪神ファンでなくても関西人ならば「阪神優勝のおこぼれ頂戴」を期待して阪神を応援したくなるでしょう。その様な気持ちでも応援すれば、段々阪神に入れ込んでいく人も居るでしょし、それが阪神ファンの数を拡大していき経済効果の規模を又大きくしていきます。
 これは阪神タイガースの優勝が「優勝効果による経済活性化で地域に貢献」→「よりファンが増えていく」と言う効果を引き出す可能性が高いと言うのは素晴らしい事であると言えます。
 此れだけ企業・地域・経済に影響を与えるプロスポーツも珍しいでしょう。そういう点では、阪神タイガースは優勝した場合には「世界に冠たるプロスポーツのビジネスモデル」が成立しているといえるかもしれません。又今シーズンは今の段階で首位を走っています。今年も優勝できたときに03年の時の様な経済効果が有るか注目したいと思います。03年に続いて今年も経済効果が出ればビジネスとしてモデルが出来ている証明にもなります。


(3)鉄道企業とプロスポーツの有るべき関係とは?

 しかし阪神タイガースの様な「成功のモデル」は誰もが作り出せる物ではありません。逆に幾ら地域密着でプロスポーツを運営しても、阪神タイガースほどの「伝統」「熱狂的ファン」「収益回収のスキーム」は作り出せません。ですから逆に「鉄道企業とプロスポーツの関係」で阪神電鉄&阪神タイガースは理想的では有りますが、現実的では有りません。
 そうなるとやはり、有るべき関係はプロスポーツは「地域密着」で自主的に運営してもらい、鉄道企業はそのサポートに廻ると言うとも様の意見が一番現実的と言うことになります。鉄道企業は「地域から離れられない地域密着企業」ですから、その地域密着企業が地域のプロスポーツを応援すると言うのが望ましい形でしょう。その点では北海道日本ハムファイターズ&JR北海道四国アイランドリーグ&JR四国の関係は非常に好ましい関係と言えるのかもしれません。
 この様な応援の関係ならば「札幌までファイターズ応援特急を道内から走らせる」等でJR北海道は協力できそれで収益を上げれるでしょうし、「四国アイランドリーグ選手&応援団移動臨時列車」を運転する等でJR四国も協力できるでしょう。これらで収益を上げた分スポンサー等で協力していけば受益範囲でプロチームを支える事もできるでしょう。又この様な流動が活発になれば経済も活性化するでしょうし、その効果も又バカには出来ません。それは経済の循環で交流の活発化等を引き起こしスポンサーのJRにも利益が帰ってきます。
 これからはこの様な関係を考えていかなければならないのかもしれません。有る意味阪神電鉄&阪神タイガースは特異な例です。ですから新規企業がオーナー企業になり上手くビジネスとして収益を上げると言うのは、鉄道企業では難しくなってきていると言えます。(IT企業なら他のやり方が有るかもしれないが・・・)
 その点から考えれば、地域企業としての地域のプロスポーツと地域そのものの活性化に応分の協力を行うという形が一番好ましいのかもしれません。


 今や民鉄経営でも、創業一族が経営者に残る「オーナー企業」と言える会社は東武鉄道だけになっています。(資本関係的にはオーナー企業とは言えないが・・・)株式市場等から厳しい判断を受け、経営が変化しつつある民鉄企業が「大旦那・タニマチ的心境」で「儲からないプロスポーツ」を抱える事はできません。そういう点では今までのプロ野球の様な民鉄のプロスポーツ所有の形態は存立しなくなっています。有る意味設けるビジネスモデルが有るからこそ球団を持っていられる阪神は例外中の例外と言う事になります。
 しかし地域密着企業であれば、地域で熱望され運営されているプロスポーツを応援しないと言うのも如何かな?と思います。そういう状況から考えるとJR北海道やJR四国のプロスポーツとの付き合い方・関係は今後の鉄道企業とプロスポーツの関係を示す物になる可能性は十分有ると言えます。





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