出雲市の風力発電事業
 

出雲市の風力発電事業

出雲市の風力発電事業
要望書の提出
夕日スポットから眺める風車のイメージ図
「古代出雲の歴史的景観破壊を危惧する者一同」からの要望書
「出雲の風土を伝える会」の署名活動
「新出雲風力発電事業の建設に反対する協議会」からの公開質問状・「質問・要請」
島根県景観審議会資料から
賛否両派と行政の動き(2005年度)
賛否両派と行政の動き(2006年度)
定例知事記者会見から
賛否両派と行政の動き(2007年度)
風力発電と低周波音による健康被害
環境問題


出雲市の風力発電事業
日本野鳥の会島根県支部は電力会社の関連会社「きんでん」(大阪市)と「ユーラスエナジージャパン」(東京都)の風力発電事業計画の中止や見直しを訴える要望書を事業者・県・出雲市・環境省にに提出しました。当初は、2006年着工、2008年運転開始を目指し、出雲市十六島町から三津町までの約7キロの尾根に沿って羽の直径が90mの風車が39基建設される計画でした。出力7万8000kwと基数、出力とも国内最大級でしたが、この建設予定地は100種類の渡り鳥や留鳥の渡りルートや生活圏になっており、夜間に飛行中回転する風車へ衝突したり巻き込まれたりする「バードストライキング」によって野鳥の生態系が脅かされるとしています。日本野鳥の会島根県支部の要望書の提出に、9月、環境面への配慮から発電機数を27基に減らしたものの、1基あたり3000kwと増やしたため総出力は8万1000kwとさらに増えています。

わたしは、この建設計画を知ったときに「風力発電はぜひ推進して欲しいが、なにもよりによって遠くからはるばる宍道湖まで飛んできてくれた渡り鳥たちや宍道湖周辺に棲んでくれている鳥たちが羽根にぶつかって死んでしまうような場所を選んで建てることはあるまい」と呆れ果てましたが、問題はそれだけではありませんでした。「スペキュラム」掲載の風力発電事業計画の完成予想図によると、風力発電施設が建てられるのは宍道湖からみて日が沈む場所の向ってすぐ右横の山の稜線で、宍道湖の入り日が1番きれいにみえる嫁島から入り日の沈む山の端に林立する風力発電施設がみえてしまうのです! 自然美が大好きで人工建造物が嫌いなひとには、実にうんざりする変化です。松江在住のひとの感想を聞いてみましたが、守り伝えてきた故郷の美しい風景が変わってしまうのは嫌と感じるひとが多かったですし、風力発電施設の林立に抵抗を覚えないひとも「あの施設でバードストライキングが起きると思うと、景観を楽しめない」といっていました。

「松江ハイキングだよりno 283」掲載の「寄稿 平田風力発電事業計画について」によると、この事業では、工事と完成後の保守点検のために、復員6m弱の道路が稜線状に20km以上建設されますが、法面を加えるとその2倍以上の面積が必要になると考えられます。道路建設による環境破壊は排気ガスによる大気汚染だけではありません。十六島地区の森林にはミサゴ、オオタカ、サシバ、クマタカ、ハヤブサなどの猛禽類が生息していますが、それはこの森林が湿潤で豊かな植生を生み出し、多種多様な生物が生息できる環境を保全しているからです。その森林の真ん中に作られる道路は風の道となり、森林を乾燥させ、植生から環境を変えてしまうばかりか、急峻な地形のため、降った雨は走り水となって表土の流出を引き起こします。

  目次
    建設までの経過
    日本野鳥の会島根県支部が提出した要望書
    日本野鳥の会島根県支部からの寄稿



建設までの経過

山陰中央新報の掲載(04/06/1104/10/1505/02/2505/06/1805/09/13)より

04/06/11平田市の長岡秀人市長の議会での答弁で「きんでん」(本社・大阪市)が十六島町などで40基を稼働させる風力発電施設の建設計画を進めていることが発覚
04/10/15「出雲国水素社会プロジェクト研究会」でわが国最大の風力発電事業者「ユーラスエナジージャパン」(本社・東京)が参画表明 
05/02/25事業者が澄田信義知事を訪ね、最大で40基で総出力は風力発電施設としては国内最大の7.8万キロワットとの計画を明らかにした。協力要請に澄田知事は地元協議が重要とした上で「県もできるところから協力したい」と答えた。
05/06/18野鳥の会が、鳥が羽根にぶつかるバードストライクが懸念され、「鳥類の生育環境に影響大」と風力発電中止要望 ユーラスエナジージャパン(本社・東京)は「鳥の生息状況を含めて調査中なので、現段階ではコメントできない」とした。
05/09/13事業者は環境面への配慮から風力発電機数を39基から27基に減らしたが、代わりに1基当たりを大型化し、総出力は国内最大規模の従来計画をさらに上回る。両社は共同出資して10月、出雲市内に現地法人を設立する。2006年度に着工し、運転開始は2008年度の予定。

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日本野鳥の会島根県支部が提出した要望書

日本野鳥の会島根県支部の会報「スペキュラム」No.106掲載
転載に関しては、日本野鳥の会島根県支部支部長の飯塚洋一さんの了承を得ています。

平成17年6月7日

島根県知事 澄田 信義 様

日本野鳥の会島根県支部
支部長 飯塚洋一

平田風力発電事業(仮称)計画について(要望書)


 表記の事業計画地、およびその周辺において、別表の鳥類が生息していることが確認されており、風力発電施設の建設はこれらの鳥類の生息環境に大きな影響を与えることが予想されます。
 特にオオタカ、クマタカ、ハヤブサの猛禽類3種は、全国レベルで個体数が減少し、島根県においても北山山地とその海岸部は数少ない生息地の一つとなっている地域です。風力発電施設の建設は、これら生態系の頂点ともいわれるオオタカ、クマタカ、ハヤブサの生息可能な山地を大きく改変するとともに、これらを含めた多くの鳥類を支える豊かな植生を破壊することが予想されます。
 そしてこの一帯は、ラムサール条約に登録されようとしている宍道湖などに飛来するマガン、ヒシクイ、県鳥であるハクチョウ、そしてカモ類、小鳥類などたくさんの鳥の渡りのルートになっています。彼らのほとんどは渡りを夜間に行うことがわかっていますので、尾根上で回転する風車の回転翼は非常に危険です。
 また島根半島のタカ類で特に生息数の多いミサゴが、この事業計画地内の尾根上を頻繁に飛び回っており、風車への衝突事故は免れないと思われます。
 そして、北山尾根上では年中住み着いている生息個体とは別に、多種、多数の猛禽類の渡りが見られ、島根県の東部の枕木山系、そして美保関などに飛来するすべてのタカ類の渡りのルートがこの北山と思われます。この一帯は、北側は海、南側は平野なので上昇気流を利用して飛ぶ猛禽類にとっては、この北山尾根上を移動する以外に通れるところはないのです。日中に移動する猛禽類にとっても、尾根上で回転する風車の回転翼は非常に危険な障壁になると思われます。すでに海外や、日本の北海道などでは、バードストライキングが大きな問題となっています。島根がその二の舞いにならないよう切に願っています。
 こんなにたくさんの鳥が必要としているこの山、その尾根が破壊されることは我々島根県民にとっても大きな損失です。その上、この計画が実施されれば、鳥類だけでなく多くの動植物が姿を消してしまい二度と元の豊かな自然は戻らないでしょう。そして、風光明媚な島根半島の景観も損なわれることは明らかです。
 どうか中止も含め、この事業の計画の見直しを指導されますよう要望いたします。

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日本野鳥の会島根県支部からの寄稿

松江ハイキングクラブの会報「松江ハイキングだよりno 283」掲載
転載に関しては、日本野鳥の会島根県支部支部長の飯塚洋一さんの了承を得ています。

寄稿 平田風力発電事業計画について

日本野鳥の会島根県支部 飯塚洋一

 依頼のありましたこの計画についての経緯なりを拙文ではありますが、述べさせて頂きます。
 まず、「京都議定書」というものがあります。地球温暖化防止のため、先進国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある数値目標が各国毎に設定されました。この国際会議が京都で開催されたため「京都議定書」と呼ばれます。日本については1990年の排出量を基準として2008年空2012年の間に6%の削減を目指す事になっています。このところテレビコマーシャルなどでやたらマイナス6%といっているのはこの事なのです。

 現在の発電施設は、原子力発電と火力発電が主体となっています。このうちの火力発電で使用する化石燃料が温室効果ガスを発生させるのです。その代替エネルギーとして注目されたのが風力発電なのです。国としては2010年までに300万kwの風力発電導入を目指しています。
 以上、ここまでは日本野鳥の会島根県支部としても私本人としても何の異論もありません。両手をあげて賛成したい気分です。

バードストライキング
 平成16年6月11日の朝、山陰中央新報の1面をみて愕然としました。平田の十六島町に風車40基を建設する大規模風力発電計画の大見出しです。
 頭に浮かんだのは、ラムサール条約登録直前の宍道湖に飛来する水鳥たちと風車の衝突事故(バードストライキング)です。
 アメリカでは多くの猛禽類のバードストライキングが発生し、日本でも昨年の2月に国の天然記念物であるオジロワシが北海道の風車に両断されました。

調査の開始と新たな問題点
 早速平田市に対し環境影響評価の実施を求めると共に、島根県支部としても渡りのルート確認の為に10月から夜間早朝の調査を開始しました。
 結果、渡りのルートについては不明な部分も多いものの、この地域の多様な生物、植物相が明らかになりました。
 特に、猛禽類についてはミサゴ、オオタカ、サシバ、クマタカ、ハヤブサ等、多種の生息が確認されました。植物については、我々は門外漢でありますが、鳥類調査の際に多種の貴重な植物を散見しています。
 調査の正確性を期する為に、事業者の調査チームと情報交換する中で、事業計画の提示を受け、この計画がバードストライキング以外にさらに大きな問題を発生させる可能性がある事に気付きました。
 それは、工事の為と完成後の保守の為に、幅員6メートルの道路が稜線上に20キロメートル以上建設されることです。法面を加えるとその2倍以上の面積が必要になると考えられます。
 現在の十六島地区の森林は湿潤な環境が保たれており、それが豊かな植生を生み出しているのです。稜線に道路が出来ると、それが風の道になり森林は乾燥化し、植物相に大きな変化をもたらします。さらに急峻な地形の為、雨が降ればそれは走り水となり表土の流失を引き起こします。
 最終的には、全ての自然環境が破壊し尽くされ、裸地になるのではと考えています。
宍道湖の夕日の背景は風車になる
 平田市(現在は出雲市)十六島地区というと、松江市周辺の方はあまりピンとこられないと思うのですが、宍道湖の夕日スポットである袖師ケ浦から嫁ケ島を眺めると丁度その真後ろが十六島地区なのです。宍道湖に夕日を眺めに行くと否が応でも40基の巨大風車が目に入るのです。
失われたものは復元できない だんまりの行政
 直径90メートル(キララ多岐の1.5倍)の巨大な風車が生み出す電力は7万8千キロワット。しかし風まかせという不安定なもので、建設してみなければ解らないという代物。既に日本でも北海道の第3セクター「恵山クリーンエネルギー開発」が事業当初計画の20%しか発電できず自己破産を申請しています。昨年は台風で、落雷による事故も多発し139基が稼働停止に追い込まれています。
 その不安定な電力と引替えに、我々は温室効果ガスを吸収してくれる森林、およびそこに内包された豊かな生態系を失ってよいでしょうか。この巨大施設が建設されれば自然環境は二度と回復することはできません。いくら後悔してもどうにもならないのです。
 日本野鳥の会島根県支部の調査で確認された 鳥類の中に、天然記念物のマガン、ヒシクイ、カラスバト。種の保存法で国内起床野生動物に指定されたオオタカ、クマタカ、ハヤブサが含まれています。
 天然記念物は「文化財保護法」により、国内希少野生動植物は「種の保存法」という法律で文言は違いますが、政府及び地方公共団体にその保護を求めています。しかしながら環境省も島根県も具体的な動きは見せていません。

 宍道湖はラムサール条約の指定湿地となることがほぼ決定しました。風力発電はワイズユースなのでしょうか。
そして出雲国楯縫郡に近代的な風車は似合わないのでは……。

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