蔵元探訪 天埜酒造(愛知県半田市)

訪問日 2000/03/25

 愛知県半田市の天埜酒造の天埜家には,明治20年代建築の洋館がある。今回敢えて,この天埜酒造を訪ねたのは,一つにはこの洋館を見てみたいという思いがあったからだ。昨年2月に週間新潮に紹介されたこの天埜家の洋館はとても素敵なものだった。
 建物本体は建築当時のまま,今に保存されているが,玄関に向かうスロープ状の階段は,後から付け加えられたものではないか,と建物を診断してもらったときに言われたそうだ。
 今は,埋め立てられ,往時を偲ぶことは出来ないが,その昔,この洋館の前は,一面に海が広がっていたのだという。海に面した洋館。さぞかし景色が良かっただろう。

 早速,応接室に案内される。年代ものの調度品に囲まれた,応接室は,とても立派なものだった。部屋の片隅に足踏み式のオルガンが,まだ現役で活躍していた。ヤマハのオルガンはHAMAMATUと記されていて,年代の古さを感じさせる。
 昔,我が家にも,妹のためにオルガンが置かれていた記憶がよみがえる。そう言えば,我が家にあったオルガンもこんな感じだったろうか。 

 この,洋館の大きな特徴は,木製の水洗トイレがあるということだ。明治時代から水洗トイレを使用していたというのだから驚いてしまう。高台にある井戸から,高低差を利用して作られた水洗トイレ。排水設備はどうしたのだろう。ちょっと気になったが,こんな田舎町に,こんなハイカラな設備があったのだ。当時の天埜家当主の心意気が感じられる。

 天埜家の洋館を後にして,蔵元に向かう。こじんまりとした小さな酒蔵である。いかにも,手作りの酒蔵という感じが漂ってきて,好ましい。
 今の季節は,酒造りが終わって,閑散とした雰囲気だった。もう1ヵ月前なら,ちょうど酒造りの最中で,蔵元見学に最適だったのにと残念がられた。
 ただ,試飲できるお酒を次から次へといただいて,大満足の酒蔵見学だった。特に貯蔵タンクから,直接柄杓ですくって飲んだお酒の美味しさは堪らない。純米酒も本醸造も,上撰も,何もかもが美味しい。今日,秋田に戻ったら,車で帰らなければならないことをすっかり忘れて,美酒を堪能した。

 試飲した中で,3年間熟成した古酒が美味しかったので,1本買ってきた。古酒は評価が分かれて,好き嫌いがはっきりするのだという。ボクには,とても美味しく感じられた。
 この古酒については,地酒の味わいで紹介したいと思う。
(2000/04/02)