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山の価値は高さや名前で決まるものではない。そんなことは分かっている。 しかしたどり着いた山頂に「ゴクローさん」とでも言うように、それを示す標識でも立っていて欲しいと思うのも人情である。まして三角点など深い雪のはるか下のこの季節には。 それも景観を壊すほどバカデカクなく。どこかの山岳会のコマーシャルでも興ざめしてしまう。 奥ゆかしくひっそりと三つ指をついて、「お待ちしておりました」と花びらのようなくちびるでやさしくそっと言って欲しい。 まさか風呂が沸いていたり、食卓に酒と肴が並んでいるわけはナイだろうが。 ![]() 高度差はわずか400m足らずというのに、登ったと思ったら下ったりとヤブをぬって延々と続く。 追い打ちを掛けるようにシールがはずれたりバインディングが緩んだりとトラブルが重なる。 おまけに寝不足、二日酔い。仲間には老眼が始まったり痴呆ぎみもいる。 それでも止めようと言い出さないのは、今日でカタを着けたい、言い換えればこんなにツラく滑りも楽しめそうもない山は二度と登りたくないからだ。 全身汗びっしょりなのだが気温はかなり低く、およそマイナス15℃。ペットボトルのお茶に氷が浮き、ほんのわずかの休憩に髪がイワトビペンギンのように尖って凍りついた。 ![]() 山頂部はやせ尾根がそこだけまわりよりいくらか高いだけで標識も先人の赤テープもなにもなかった。 そこをくまなく歩いたので山頂を踏んだということは間違いないが、こここそが山頂だという確固たるものがないので、およそ5時間も歩いてきたというのになんだか実感が湧かない。 山頂なんて読んで字のごとく一番高い場所のことで、他人の決めたものでオノレを確認するというのは情けなくもないが、やはりこれはひとつの句読点なのだ。 そこで後進のために以下の標識?を残した。ただしそう長くは保たないので、行くなら早いうちに。 あくまでも暫定ピークなので納得できない御仁は自身で決めて欲しい。 ![]() |
